お客さま
株式会社セイノー情報サービス
業種
運輸物流
エリア
東海
従業員規模
101~500人
導入サービス
AIエージェントMVPモデル構築支援
株式会社セイノー情報サービス(以下、セイノー情報サービス)は、労働力不足が深刻化する物流業界の課題解決のため、ソフトバンクと協業し、業界特化型AIエージェントのMVP※1モデルを構築。倉庫管理システム「SLIMS」をはじめ、自社が外販するロジスティクスソリューション(LCBM※2)にエージェント機能を持たせることで、物流現場の状況把握から判断・行動までをAIが支援し、属人化の解消と業務効率化を目指します。
※1 MVP(Minimum Viable Product):必要最低限の機能を備えたプロダクトの開発を行い、製品開発の方針決定をする手法
※2 LCBM(Logistics Component Business Mapの略)
「AIやロボットなどの新しい技術を物流に取り入れてきました。その取り組みの一環として、業界に特化したAIエージェントの構築を進めています」
株式会社セイノー情報サービス
執行役員
説田 亮 氏
株式会社セイノー情報サービス(以下、セイノー情報サービス)は、西濃運輸グループのITを支える内販事業と、ロジスティクスITサービスを提供する外販事業を担う企業です。まず、同社の事業内容や取り組みについてうかがいました。
「弊社は1984年に西濃運輸の電算室から独立し、内販と外販事業を展開しています。特に外販は全体の6割を占め、製造業や流通業、小売業のお客さまをはじめ多くの企業様に、倉庫管理システムや配送管理システムといった物流領域に特化したITソリューションを提供しています」(説田氏)
近年はBRAIS(ブライス)という独自の概念を掲げ、物流DXを推進していると言います。
「BRAISとは、Big Data、Robot、AI、IoT、Sharing の頭文字を取ったもので、単に最新技術を導入するのではなく、それらを組み合わせて物流現場に新たな価値をもたらす取り組みです。BRAISをコンセプトに、ロボットやAIなどの新しいテクノロジーを既存のITソリューションと組み合わせ、より高付加価値なサービスを展開していきたいと考えています」(説田氏)
現場で培った知見とITを融合させることが強みであるという同社。その代表が倉庫管理システムのSLIMS(スリムス)です。
「弊社の外販事業を代表するプロダクトであるSLIMSは、物流現場の効率化や在庫管理に貢献する倉庫管理システム(Warehouse Management System=WMS)です。導入実績は400社以上、標準レベルの稼働率は99.9%以上で、BCPにも対応可能な信頼性の高いソリューションとなっています」(説田氏)
「SLIMSは柔軟なカスタマイズ性を備えており、業種や業態を問わず最適な業務フローを構築できるのが大きな強みです。入出荷や在庫、棚卸といった基本機能に加えて、進捗管理や補充計画など現場に即した機能も揃えており、クラウドからオンプレミスまで幅広い提供形態に対応しています」(原氏)
セイノー情報サービスでは、ニーズに応じたさまざまなロジスティックスソリューションを提供している
日本社会全体として、人口減少に伴う労働力不足は大きな課題となっています。多くの産業で担い手が減少し、持続的な成長やサービス品質の維持に支障をきたしつつあります。中でも物流業界は、社会インフラを支える重要な役割を担うため、この影響が特に深刻だと言います。
「物流業界は深刻な人手不足に直面しています。物流業務は大きく「運用」と「運営」に分けられ、これまでのDX化は、ピッキングロボットや自動搬送機といった「運用」の効率化が中心に進んできましたが、物流全体をマネジメントする「運営」については属人化が進み、効率化が難しい状況と言えます。突発的なトラブル対応や緊急出荷なども、個々人の経験と判断に依存しており、こうした課題を解決するためには、新しい技術の力が必要だと考えていました」(説田氏)
物流の現在と未来のイメージ
こうした背景から、現場状況を分析・判断し、未来を予測して問題への改善策など次のアクションをガイドするという業界に特化した「ロジスティクス・エージェント」の導入を検討し始めたと言います。劇的に進化するAI技術を活用し、”持続可能な物流を目指す”という明確な狙いがありました。
労働力不足や属人化という業界課題に直面し、AIによる新たなアプローチが必要だと考えた同社。MVP構築の相談先としてソフトバンクを選定した背景について次のように話します。
「きっかけは名古屋で開催されたソフトバンク主催のセミナーに、弊社の経営層が参加したことでした。そこでAIエージェント技術の可能性を知り、物流業界に特化した活用が大きなインパクトをもたらすと確信しました。また、ソフトバンクさんのAIに対して持つ明確なビジョンと、その実現に向けた投資姿勢に強く共感し、弊社もともに取り組むべきだと検討を進めました」(説田氏)
MVP構築のパートナーとして、ソフトバンク社一択であったと話す説田氏は、次のように続けます。
「ノウハウがなく、この分野を我々だけで先行して進めることは難しいと感じていた中で、ソフトバンクさんから的確な提案や社内有識者による講演の機会をいただき、安心して挑戦できると感じたことが決め手になりました」(説田氏)
ソフトバンクの社内には、社内外のAI活用・推進を手がける「AI Ready推進室」があり、AI関連ソリューション全般にわたる包括的な支援やアドバイスを得られたことや、営業担当者による的確な提案や親身な対応から、「ソフトバンクならば任せられる」という信頼をさらに強めたとお話しいただきました。
「2025年の5月にソフトバンクさんと進めていく方針が決まり、8月までにはMVPモデルのフレームワークがすでに完成しました」(石井氏)
同社が最初に取り組んだのは「緊急出荷」を支援するAIエージェントです。従来は複数の人が電話やメールでやり取りして30分以上かかっていた確認作業を、AIが数分で判断・指示できるようにするものです。
「緊急出荷の依頼が入った場合、従来は営業担当が物流センター長へ確認し、さらに現場のリーダーや輸送会社へと連絡を何度も重ねていました。ロジスティクス・エージェントを活用すると、AIが在庫確認・作業可否・輸送手配まで一括で判断し、SLIMSへの出荷登録や館内放送による指示、輸送会社への報告までを自動で行ってくれます。従来30分以上かかっていた対応を、わずか数分に短縮することが期待できます」(石井氏)
「MVPモデル構築では、成果がでやすいことから小さく始め、手応えをつかみながら拡大していくアプローチが非常に有効だったと感じています」
株式会社セイノー情報サービス
LLP事業部 BRAISグループ 長崎ラボ 課長
石井 哲治 氏
この緊急出荷エージェントを起点に、ロードマップに沿ってほかのユースケースにも展開を広げている同社。日常的に現場担当者や管理者が時間を割いていた業務にAIを適用する計画を進めています。
「まずは緊急出荷という、成果の出やすいユースケースで手応えをつかみ、今後は最適作業計画や輸送ルートの最適化などへの展開を目指しています。小さく始めて成功体験を積み重ねながら、今後に広げていくアプローチが有効だと考えています」(石井氏)
AIエージェントが担う役割は、人間が行ってきた「状況把握」と「判断」を補完することです。これまで属人化していた現場の判断をAIが代替することで、管理者の業務負荷を大幅に軽減し、対応スピードを飛躍的に高めることができます。
「AIが現場状況を分析・判断し、未来を予測して改善策をガイドしてくれるのは、まさに我々がイメージしていたものでした。AIエージェントが現場状況を分析し、次のアクションを提示してくれることで、従来は人の勘や経験に依存していた業務が標準化されます。結果として、属人化が解消され、管理コストの効率化にも大きく貢献できると考えています」(説田氏)
ロジスティクス・エージェントのイメージ
ロジスティクス・エージェントのMVP構築を足がかりに、さらなる物流DXの推進を目指す同社。今後の展望についてお話いただきました。
「緊急出荷のエージェントを作る際にも、現場で行われている手順や人の頭の中にあるノウハウをどう組み込むかが大きな課題でした。今後もユースケースを広げていく中で、そうした知識を標準化していくことが重要だと考え、取り組みを進めて行きたいです」(原氏)
さらに、AI×人の関係性について、次のように続けます。
「AIは人の仕事を置き換える存在ではなく、知的パートナーだと考えています。社員を雇うような感覚でAIエージェントを活用し、AIが提案する判断を取り入れることで、より精度の高い業務運用を実現できると考えています」(石井氏)
「今後はMVPモデルで得られた知見を生かし、お客さまからの意見を参考にしながらユースケースの視野を広げていきたいと考えています。AIは常に進化しているため、その進化に追従しながら、さまざまなシチュエーションで利用できる環境を構築していきたいです。将来的には、物流現場のオペレーションだけでなく、マネジメント層やサプライチェーン全体をAIが最適化できることを目指して行きたいです」(説田氏)
ロジスティクス・エージェントは、単なる現場の業務効率化にとどまらず、輸送ルートの最適化や在庫管理の高度化にも貢献し、サプライチェーン全体の最適化に向けた基盤を築くことを目指します。これらは欠品リスクの低減や、配送最適化によるCO₂排出量の削減といった環境負荷低減にもつながり、結果として持続可能な物流業界の実現に寄与していくでしょう。
物流DXの新たなスタンダードを確立するために挑むセイノー情報サービスの取り組みは、これからも続いていきます。
お話をうかがった方
株式会社セイノー情報サービス
執行役員
(第一営業担当、事業開発担当)
説田 亮 氏
株式会社セイノー情報サービス
LLP事業部 BRAISグループ
長崎ラボ 課長
石井 哲治 氏
株式会社セイノー情報サービス
LLP事業部 BRAISグループ 担当課長
兼 事業開発室 担当課長
原 謙介 氏
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