小学校や習い事など、子どもが一人で出歩けるようになると、心配もつきまとうのが親心。でも高機能なスマホを持たせるほどではないし、できれば安く手軽に子どもを見守りたい……。そんなニーズに応えたいという思いで生まれたIoT商品「どこかなGPS」の特長や開発裏話を、企画開発担当者に聞いてきました。
今回話を聞いたのはこの人
ソフトバンク
プロダクト&マーケティング統括 プロダクト本部
畑田 光毅(はただ・みつき)
外出している子どもをリアルタイムで見守りたい
最初に「どこかなGPS」のキホンから教えてください。
一人で出歩く子どもの通学カバンに入れておくだけで、親御さんのスマホから、居場所をリアルタイムに確認することができる小型のGPS端末です。
専用のスマホ地図アプリでは「リアルタイムで位置情報」を見られるほか、「本体のボタンが押されると居場所を親のスマホへ通知」「指定したエリアに出入りすると親のスマホへ通知」などの機能を搭載しており、外出中の子どもを見守っていただくことができます。
今回の商品を企画した背景を教えてください。
「手軽で安価に子どもを見守りたい」という親御さんのニーズに応えたいという思いがありました。
子ども向けの携帯電話市場は、1学年100万人のポテンシャルがありますが、実際にキッズフォンなどの電話を持っている子どもの割合は、小学校低学年では1~2割程度。持たせていない理由の多くは、多機能を必要としないことや、料金が高いこと、学校への持ち込みが禁止されていることなどがあります。
そこで、見守りの“位置情報機能”に特化したシンプルかつ安価な端末であれば、このような悩みを持つお客さまの悩みを解決できるのではないか、ということから企画が始まりました。
より気軽に使い始められる商品を届けるために、既存のしくみを変える
「手軽で安価に子どもを見守りたい」というニーズに対して、具体的にはどのように開発を進めたのでしょうか?
「どこかなGPS」の開発では次の3点に注力しました。
① 商品の手軽さ
「子どもが持ち歩きやすいように小さく約34gの重さにすることで、ランドセルなどに入れたりぶら下げたり、子どもでもストレスなく手軽に持ち歩けるサイズにしました。
また、バッテリーを大きくすると、その分サイズが大きくなったり価格も高くなってしまうので、実際に子どもが学校へ行く行動パターンを推定し、平日は充電せずに使い続けられ休日にランドセルから取り出して充電するというユースケースをベースに、バッテリー、サイズ、価格のバランスを保ったお手軽な端末になるよう心掛けました」
② 販路の見直し
「『どこかなGPS』のような通信機能付きの端末はこれまで、ソフトバンクショップ、ソフトバンク公式オンラインページ、家電量販店の携帯コーナーでしか購入できませんでした。電気通信事業法による届け出を提出した販売店であることと、契約時の本人確認や顧客情報の登録などさまざまな手続きが必要となることなどのハードルがあったためです。
そこで今回、行政機関との交渉や調整をすることで、Yahoo!ショッピングやAmazonなどのECサイト、一般的な小売店などで、2年分の通信料と端末代をセットにした一括料金で、あたかも家電を買うのと同じような感覚で購入できるようにしました」
③ 回線開通の見直し
「お客さま操作によるセルフ回線開通の仕組みを構築しました。家電のように購入したとしても、この商品は4G LTE回線を使うため回線開通作業が必要となります。回線開通作業は通常、ソフトバンクショップの登録システムなどでしか実施できません。しかし、新たなオンラインアクティベーションシステムを社内横断で構築し、お客さまのスマホアプリからインターネット経由で、簡単に回線開通をしていただくことができるようになりました」
位置測定に準天頂衛星を活用。開発では思わぬ苦労も!?
ECサイトなどで気軽に購入できるのは便利ですね。子育て世代には特に助かります。ほかに特長はありますか?
「どこかなGPS」では準天頂衛星「みちびき」よるGPS補完測位に対応した点が特長です。従来の通信機能付き端末で装備していたGPS、携帯電話基地局、Wi-Fiといった測位のほかに、GPS測位では不安定だった屋内・地下・ビルの谷間・山間部などで、安定的な位置測位ができるようになりました。
また、マルチキャリア対応も特長の1つです。この「どこかなGPS」の回線自体はソフトバンク回線ですが、見守る親御さんのスマホアプリはどの通信キャリアでも使うことができます。
日常生活を便利で楽しくワクワクするものに
開発において苦労した点はありますか?
一般のECサイトや小売店でも購入できることや開通のしくみを作ったことなど、この商品は端末・スマホアプリ・システムや既存の位置サービスなど、開発や連携の範囲が多岐にわたったため、それぞれの開発状況の同期をとることが特に困難で、実にさまざまな部門との調整が必要でした。関係者が多くなるほど、仕様を決める中で意見が割れるようなことも多々ありましたが、お互いがより良い製品を世の中に届けるという目標に向け、納得いくまで議論して1つずつクリアしていくことで、商品化を実現することができました。
「どこかなGPS」を世に送り出し、現在の心境と今後の目標を聞かせてください。
お客さまが手軽に購入し使い始められる商品を世に送り出せたことに関係者一同喜んでいます。発売後、さまざまなお客さまのご要望やご意見をいただいており、ニーズや反響がある商品ということを改めて認識しました。頂いた意見を元に、より良いサービスが提供できるようにしていきたいと思います。
また、今後はどこかなGPSだけでなく、これまでソフトバンクでは実現や販売が難しかった商品でも、今回取り入れた新しい仕組みを活用することで、今後実現の可能性を広げていけるのではないかと、この端末の開発を通じて実感しています。
IoT商品を企画する上では、あくまでもモノは手段で、「その先のサービスと合わせトータルでどのような付加価値をお客さまへ提供できるか」が大事です。付加価値というと堅苦しいですが、日常生活がいかに便利で楽しくワクワクできるものか、という観点を大事にし、今後もさまざまな商品やサービスの企画をしていきたいです。
(掲載日:2020年6月15日)
編集:ソフトバンクニュース編集部