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【解説】なぜタッチで操作できる? サクサク動かすコツは? 知っておきたい「タッチパネル」の秘密

【解説】なぜタッチで操作できる? サクサク動かすコツは? 知っておきたい「タッチパネル」の秘密

指やペンで操作するタッチパネル。スマホやタブレット、ゲーム機器、駅の券売機や銀行のATMなど、さまざまな端末で幅広く採用されています。

そんなタッチパネル、実はいくつかの種類があることをご存じでしょうか? 今回は、広く採用されている主流の方式をピックアップし、その特徴や仕組みを解説。またタッチパネルの反応が鈍いときの注意点も紹介するので「パネルが反応しない……」とお悩みの方は参考にしてみてください。

主流タッチパネルの4つの方式

タッチパネルは画像や映像を映す「表示装置」と、どこに触れたかを検知する「位置情報入力装置」が組み合わさったもの。実は、このタッチ位置の検知方法によってタッチパネルの種類は分かれているんです。

代表的なタッチパネル方式

代表的な方式は「投影型静電容量方式」「抵抗膜方式」「赤外線遮断方式」「超音波表面弾性波方式」の4つ。始めに、スマホやタブレットなどで広く採用されている投影型静電容量方式を解説します。

① スマホは、指が触れると変化する電気の量を測定する「投影型静電容量方式」

静電容量方式とは、指で画面に触れたときに起こる“静電容量(電気の量)の変化”によって位置を検出する方法のこと。静電容量方式には大きく「投影型」と「表面型」の2種類がありますが、ここでは投影型をメインに解説します。

仕組み

パネルには電気を通す金属の膜が貼られていて、ダイヤモンド型の電極が重ならないように縦横に配置されています。

投影型静電容量方式

隣り合う電極は容量結合をしています。簡単に言うと、パネル全体に電気が均一に蓄えられているイメージです。ではパネルのある地点(この図でいえばX=5、Y=4の場所)をタッチすると、どんな変化が起きるのでしょうか。

人間の体は水分を含んでいるため、この電極膜と同じように導電性(電気を通す性質)を持ちます。そのためパネルに指を近づけると、それまで隣同士で結合していた電極が指とも結合するようになります。つまり、パネルに蓄えられていた電気が指に移動するわけです。

投影型静電容量方式

このように電極(X、Y)と指の間で容量結合が起きると、電極間の静電容量が変化します。その変化した場所を検知することで、どこにタッチしたかを認識できるんです。

メリット/デメリット

同時に複数箇所をタッチできる「マルチタッチ」に対応する点がメリット。また、指が完全に画面に触れていなくても位置を検出できるため、フリックやスワイプといった操作ができます。画面の透過率が高いので、表示品質を損なわないのも利点です。

デメリットは、手袋を着けるなど導電性を持たない状態では反応しない点。タッチペンも専用のものでなければ操作できません。また、近距離にある金属の影響を受けやすいという難点もあります。繊細な設計が必要で大型化が難しいため、スマホやタブレットなどの小型端末に広く用いられています。

よりシンプルな構造の「表面型静電容量方式」

もう1つの表面型静電容量方式は投影型よりも以前から使われてきた方式で、大型のディスプレーに採用されることが多いのが特徴です。

仕組み

投影型と同様にガラス基板に透明な電極膜を貼った構造をしています。ただし、表面型は四隅に電極を配置するのがポイント。各電極に電圧をかけ、パネル全体に均一な電界をつくります(各電極は同じ電圧のため、この時点では電流は流れません)。

表面型静電容量方式

ある地点をタッチすると、パネル表面の電圧に変化が起き、4つの電極とタッチ箇所のあいだに電流が発生します。このとき、各電極からタッチ箇所までの距離により異なる大きさの電流が流れ、それを座標としてタッチ箇所を検出します。

メリット/デメリット

投影型よりも構造がシンプルであり、耐久性の高さが特徴です。長期間の使用に耐えうるのはもちろん、キオスク端末のようなセキュリティ面や安全性が重視される端末にも用いられています。ただし、構造上マルチタッチに対応しづらく、ペンによる入力も難しいというデメリットがあります。

残り3つの方式を一気に紹介!

② 医療や製造業で活躍する「抵抗膜方式」

次に紹介するのが、抵抗膜方式。身近なところでは、初期のスマホやゲーム機、カーナビ、コピー機など、タッチパネルが普及した当初から幅広い製品に採用されてきた方式です。

仕組み

ディスプレーは、ガラス基板に2枚の電極膜を向かい合うように置き、そこにフィルムを重ねた構造。2枚の電極膜は接触しないように隙間を作ります。

抵抗膜方式

画面をタッチすると、上下の電極膜が重なり、通電します。その電気が流れた(電圧が変化した)場所を検知しています。電極膜どうしが物理的に接触することで電気が流れ、その地点を位置情報として検出しているんです。

メリット/デメリット

電極膜同士が触れるようにディスプレー表面を押せればよいので、手袋を着けていてもペンを使っても操作できます。また、ほこりや水滴の影響を受けにくいこともメリット。そのため、医療や製造の現場など、手袋を着けていたり汚れが付着したりした状態で操作することの多い設備機器に使われています。

デメリットは、電極膜を2枚重ねるために透過率が低く、画面の視認性が落ちること。また、基本的にマルチタッチには非対応。周辺環境によって「位置ずれ」が発生することもあり、その場合はタッチ箇所を正しく検出できるように画面のキャリブレーション(校正)が必要になります。

③ 光の遮断地点を検知する「赤外線方式」

赤外線を用いてタッチ位置を検知する方式。「赤外線走査方式」や「赤外線遮断方式」と呼ばれることもあります。静電容量方式や抵抗膜方式とは異なり、パネル内部ではなく周囲にセンサーを配置するのが大きな特徴です。

仕組み

パネルの周囲に赤外線の発光素子と受光素子を対になるように配置。発光素子から赤外線を照射すると、向かい合う受光素子がそれを受け取ります。

赤外線方式

画面をタッチすると、その地点で赤外線が遮られるため、受光素子に届く光量が減少します。つまり、赤外線の受光量が減少した地点を位置情報として検出しています。図に示した構造は最も基本的なものですが、1つの発光素子から複数の受光素子に向けて赤外線を発信する構造もあります。

メリット/デメリット

フレーム部分に素子を取り付けるため、画面の透過率が高く、大型画面にも対応できます。また、表面に赤外線を照射するためにディスプレーの厚みに左右されません。防犯の観点からガラスを厚くでき、実際にATMや自動券売機などに利用されています。ペン入力、マルチタッチも可能です。

デメリットとしては、構造上フレーム部分が分厚くなることは避けられません。また、赤外線は光であるため、太陽光などの影響を受けやすいという欠点もあります。

④ 超音波の減衰を検知する「超音波表面弾性波方式」

最後に解説するのが、超音波表面弾性波方式。パネル構造や検出原理は赤外線方式と似ていますが、表面弾性波を用いて位置を検出するのが特徴です。

仕組み

パネルの隅に超音波表面弾性波の発信子と受信子を配置。X・Y受信子から出た表面弾性波は反射板(リフレクター)ではねかえり、パネル全体に行き渡って、受信子に戻ります。

超音波表面弾性波方式

画面をタッチすると、その地点で表面弾性波が指に吸収されて弱まります。減衰した地点を検知することで位置を特定しています。

メリット/デメリット

赤外線方式と同じく電極膜などを貼る必要がないので視認性に優れます。また、高い耐久性を備え、画面に傷がついても操作に影響が出ないこともメリット。手袋をしていても操作できます。キオスク端末やアミューズメント施設の機器などに使用されています。

ただし、表面弾性波を吸収できる柔らかいもの(指や布など)でなければ正しく操作できません。パネル上のほこりや水滴に反応しやすいことも欠点です。

スマホのタッチパネルをサクサク動かすコツも紹介

4つのタッチパネル方式の特徴をおさらい

ここまで駆け足で紹介しましたが、各方式の仕組みや特徴を表にまとめたので、最後におさらいしておきましょう。

4つのタッチパネル方式の特徴をおさらい

投影型静電容量方式はマルチタッチやスワイプなど多彩な操作ができるのが特徴。表面型は高い耐久性が持ちます。抵抗膜方式は手袋やペンでも操作可能ですが、視認性では劣ります。赤外線方式と超音波表面弾性波方式はともに視認性に優れますが、太陽光や水滴の影響を受けやすいデメリットもあります。

乾燥していると反応しづらくなるってホント?

投影型静電容量方式を採用しているスマホやタブレットでは、指先が乾燥しているとタッチパネルが反応しないことがあります。

復習すると、電極から指に電荷が移動した場所を特定するのが、投影型静電容量方式の仕組みでしたね。また、人間の体は水分を持つために電気を通します。つまり、指先が乾燥していると電荷のやり取りが起きず、位置を検出できないことがあるのです。

乾燥していると反応しづらくなるってホント?

対処法としては、ハンドクリームなどで手を保湿することが大事。操作する際に息を吹きかけて指先を湿らしてもいいでしょう。スマホに対応するタッチペンや専用の手袋を使えば、乾燥に左右されず快適に操作できます。

また、スマホの機種によりますが、通常の手袋でも操作できるようになる「手袋モード」を搭載していることもあります。乾燥しやすい秋冬の時期など、スマホがうまく反応しないと感じたら、自分に合った方法を試してみてください。

(掲載日:2020年6月22日)
文・編集:友納一樹(TEKIKAKU)
撮影:高原マサキ