さっきまで晴天だったのに、いつの間にか空が真っ黒くなりゴロゴロという音が…。どうやら雷が近づいているようです。雷が怖いと思っていても、いざ発生すると、どのように対処すれば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか?
正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。
今回は、雷が発生した際の被害想定や対処法などをご紹介。
この災害テーマのポイント
- 雷は一年中発生する。地域によって起こりやすさは異なる
- 人体へ落雷した場合はすぐに対処を。被害は建物、家電製品にまで及ぶことも
- 雷が発生したらすぐに屋内に避難、壁から離れるようにしよう
この災害テーマのポイント
- 雷は一年中発生する。地域によって起こりやすさは異なる
- 人体へ落雷した場合はすぐに対処を。被害は建物、家電製品にまで及ぶことも
- 雷が発生したらすぐに屋内に避難、壁から離れるようにしよう
目次
注意喚起:全国で発生する雷! 特に夏は注意
雷の発生には、発達した積乱雲が関わっています。地表より温度の低い上空では、巨大な積乱雲の中でいくつもの氷の粒が発生し、粒同士がこすれる際に静電気が生じることで、雲の中に電気がたまります。やがて雲の下部にたまったマイナスの電荷が、地上に帯びているプラスの電荷に向かって放電されます。これが落雷の正体です。
強い上昇気流によって生まれる積乱雲は、特に地表と上空の温度差がある夏時期に多く発生します。また、夏は大気の層が厚く、高空まで上昇気流が達するため、大きな積乱雲ができやすい傾向にあります。
雷の発生しやすい月
上記のグラフは日本列島および周辺海域を含む2,600km四方に発生した落雷数を月別にまとめたものです。落雷は一年中発生しますが、そのうち約25%は8月に集中しています。
雷の発生しやすい地域
雷の起こりやすさは地域ごとに異なります。図は2023年の年間雷日数ランキングです。1位は北海道、2位は鹿児島ですが、同数2位から9位にかけて、東北地方から中国地方の日本海側の地域が集中しています。これは北西の季節風が日本海の湿気をたっぷり含むために、積乱雲が急激に発達することが原因です。なお鹿児島の雷日数が多いのは、低気圧および前線通過時の落雷によるためと考えられます。
リスク:人体や建物の他、家電製品にも被害が及ぶ可能性あり
雷被害を受けやすい場所
- 周辺より高い場所(山頂など)
- 広く開けた場所(キャンプ場、海岸、公園など)
- 高い木や電柱の近く、森の中など
雷の特徴として「高いものに落ちる」という性質があります。周辺より高い場所や広く開けた場所では、そこにいる人が「最も高いもの」となってしまうため、雷被害を受けやすくなります。また、高い木や電柱なども「最も高いもの」となるため、その近くにいるのは危険です。
人体の約60%は水分でできているため電気を通しやすく、外にいる場合、雷の被害を受けてしまう可能性が高まります。落雷の中で特に被害が多いのが「直撃雷」と「側撃雷」です。「直撃雷」とは、建物や人体に直接雷が落ちること。「側撃雷」とは、木などの物体に落ちた雷電流が周囲の人や物体に再放電する雷のことです。
落雷による人体への被害と応急処置
- 心肺停止
- やけど
- 意識障害
- 鼓膜穿孔(せんこう)
雷害を受けた人への手当てはスピードが命です。声かけに反応がなく、脈が止まっている場合は、すぐに心肺蘇生を施します。同時に、近くの人に頼んで救急車とAEDの手配を行いましょう。AEDは機器の指示が終了するまで続けることが大切です。
やけどの手当は心拍の再開を確認してから行います。やけどした部位には、清潔な布を巻きつけ、よく冷やしながら救急隊の到着を待ちましょう。周りの方も雷の被害に遭わないよう十分気をつけてください。
落雷がもたらすその他の被害
- 停電:雷が電線などに落ち、送電設備が損傷することにより発生します。
- 窓ガラス破損:近くに落雷した衝撃により窓ガラスが破損する恐れがあります。
- 雷サージ:雷によって異常な電流や電圧が一時的に発生し、家電製品やパソコンなどに影響が出ます。
- 火災:電流が電子機器やブレーカーなどに放電し、火花が散ることにより発生します。
落雷の直接的な被害ではありませんが、夏場の発達した積乱雲からの強い降水は、都市部ではいわゆる「ゲリラ豪雨」や「都市型水害(降水が浸み込みにくく、下水道などの排水能力が追いつかずに、一気に水位が上がる)」などを伴う場合もありますので、併せて注意が必要です。
過去に発生した落雷による被害
雷が電子機器などに放電した場合、高温の火花が発生し、その影響で火災が起きてしまう可能性があります。実際に、落雷被害の多い北陸・石川県では2020年4月に落雷の影響で火災が発生し、民家が全焼する被害がありました。
さらに火災による二次被害にも注意が必要です。2021年7月28日に埼玉県の変電所で、落雷による火災が発生しました。飯能市、川越市、日高市などを中心に12万軒以上の大規模停電が起きています。
対処法:雷発生時はすぐ屋内へ避難! 積乱雲の接近に警戒を
落雷の発生前には以下の兆候が見られます。避難を検討する際の判断基準として覚えておくとよいでしょう。
- 積乱雲が見る見る大きくなる
- 黒い雲が近づき、周囲が暗くなる
- 急に冷たい風が吹いてくる
- 稲光が見える、雷鳴が聞こえる
雷までの距離を計測する方法
音が1秒間で約340m進む一方で、光は100万倍のスピード(約30万km)で進みます。つまり雷が光ってから3秒後に音が鳴った場合、約1km(340m×3秒=1,020m)の位置に落雷があったと予想できます。ただし積乱雲の下にいる場合、いつ自分の近くに雷が落ちるかわかりません。遠くで鳴っているからと安心せず、早急に避難しましょう。
屋外にいる場合の対処法
鉄筋コンクリートでできた頑丈な建物などに早く避難しましょう。その際、家の中に侵入してくる雷を避けるため、窓や家電製品から離れてください。車やバスなどの乗り物も安全性が高い場所です。近くに建物などがない場合は、しゃがみ込むことで落雷のリスクを下げることができます。
屋内にいる場合の対処法
雷が屋内に侵入する場合があるため、電気器具や壁、柱から1m以上離れましょう。雷サージの影響でパソコンなどが故障する可能性もあります。念のためデータを保存し、コンセントやLANケーブルはすぐに抜きましょう。
落雷に備えた事前対策
- 機器のアース線をアース端子につなぐ
- 雷サージ対策電源タップを使う
- 火災保険や火災共済へ入っておく
特に火災保険と火災共済は契約内容をよく確認しておきましょう。建物のみが補償対象となっている場合、電子機器や家電製品などの家財は補償されません。
雷への備え・雷が発生ときに役立つサービス・ウェブサイト
- 気象庁「雷ナウキャスト」
雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、1時間後までの予測を確認できるウェブサイト。雷の活動度がレベル別に色分けされており、一目で危険度がわかります。
- Yahoo!天気・災害(雷レーダー)
天気に関するあらゆる情報を迅速に収集できる総合サイト。エリアごとの雷レーダー、停電情報も確認でき、早めの避難に役立ちます。
監修者プロフィール
防災講師・防災コンサルタント 高橋洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
(掲載日:2024年3月14日)
監修者:高橋洋
文:大瀧亜友美
編集:エクスライト
イラスト:高山千草