餓了麼・美団を活用、中国の生鮮市場「農貿市場」のEC化事例

2020年7月17日掲載

農貿市場 農貿市場

中国では、「農貿市場(ノンマオシーチャン)」と呼ばれる野菜や肉などを販売する生鮮市場が健在です。農貿市場(以下「市場」)の中には小さな店が沢山あり、それぞれの店が数種類のとれたて野菜を販売しています。都市部の市場に行けば、老年層を中心に、各店での野菜を選別しながら買い物をする光景が見られるでしょう。大都市ではキャッシュレスでのやりとりも目立ちますが、現金でのやりとりも健在です。

近年では「網紅」な場所、つまり映える場所として、市場が若者向けに改造されました。しかし、今では「失敗した」「盛り上がらなかった」と報道されている市場が目立ちます。人々の活気や熱気がある感じがいいのであって、洒落てしまってはそれも失われるというもの。若者ウケを狙った市場の改造は、残念ながら成功したとは言い切れません。

一方、近年の市場ではIT化やECサイト化してネットを利用する若年層中年層を呼び込もうとする動きが見られます。筆者が目撃したある市場では、市場内の各店舗にディスプレイを用意し、産地情報がわかるQRコードを表示しているところもあります。素直に生産農家情報を表示したほうが手間がかからないような気がしますが、それはトレンドゆえ。ライバルのスーパー、特にアリババのニューリテールスーパー「盒馬鮮生」が、各商品に生産地情報がわかるQRコードが表示された電子ペーパーのタグを設置しているので、それに合わせたのでしょう。

さらに一部の市場では、ひっそりとオンライン対応するべく変革しています。食事や食材デリバリーなどで知られるアリババの「餓了麼(ウーラマ、Ele.me)」や「美団(Meituan)」では、青色のスタジャンの餓了麼配送員や黄色のスタジャンの美団配送員が、市場の野菜を運ぶようになりました。餓了麼や美団で野菜のデリバリーを注文すると、市場で売られている野菜が届けられます。

ですが考えてみれば、コンビニがデリバリー対応するのとは違い、毎日数種類しか野菜を販売しない店の農家の人々がECサイトを開き、デリバリー配送に対応するのは少し困難です。では、どうやってデリバリーに対応したのでしょうか。

市場の各店舗をまとめて美団の一店舗として販売する 市場の各店舗をまとめて美団の一店舗として販売する

中国各地の市場の中に、市場内の店舗の代わりにまとめてひとつの店として商品の販売代行を行う企業があります。「gan霖科技」や「鮮多多」といった全国展開の企業もあれば、省や都市限定の小規模な企業まであります。

あまり報じられていないですが、「菜公社」や「鮮菜到家」や「鮮多多」という市場配送代行店が、中国全土の市場で展開しているのです。さらに美団自身も、各地の市場と提携して配送する「菜大全」というサービスを立ち上げました。無数の市場内店店舗の食材販売を代行することで、餓了麼や美団では大型スーパーのように様々な種類の生鮮食品が売られているように見えるわけです。

餓了麼や美団のプラットフォームから注文するので、配送料金は変わりません。消費者はオンライン上で、市場の様々な野菜の販売店舗が確認できるのです。そして商品ラインナップや値段から選べば、買物は完了。あとは商品が届くのを待つだけです。

現在の日本では、新型コロナウイルスへのリスクと隣り合わせの中で以前より外出を自粛する傾向にあります。一部の商店街では、自らECサイトを立ち上げて商店街の各店舗の商品を販売するという取り組みを行っています。ただし、独自のサイトを立ち上げて地元の新聞やテレビ番組やサイトなどで宣伝しても、なかなか認知されるものではありません。よほど魅力的でなければ、人々は新たにサイトを訪問したりアプリをインストールしたりするのは手間だと感じてしまいます。中国においても日本においても、すでに定番となっているサービスから利用したいという気持ちは大きく変わりません。

中国で市場のネット販売が活用されているのは、定番のプラットフォームの上にあるからこそ。中国では、億単位のユーザーを擁する餓了麼や美団といった大きなプラットフォームへの展開代行を行いました。日本でも同様に、商店街から有名ECサイトへ展開するサポートをする企業が、必要とされているのではないでしょうか。

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