オンライン健康医療相談サービス「HELPO」が日本の健康をDXする

2020年9月10日掲載

  • 法人・自治体向けオンライン健康医療相談サービス「HELPO(へルポ)」がリリース。
  • 24時間365日のオンライン健康医療相談で、未病以上医療未満の領域をサポート。
  • 将来的にはオンライン診療、オンライン服薬指導支援ツールの提供も検討。
  • 健康・医療サービスのプラットフォームとして、各機関と連携し、未病から、医療、介護まで一気通貫したサポート体制の構築を目指す。

コロナ禍で生活者の健康への意識が高まっている。コロナ以前から、社員の生産性や満足度に良い影響を与えるとして、多くの企業が健康経営に力を入れてきた。

しかし、リモートワークが推奨される現在のワークスタイルにおいては、会社が直接社員の健康を管理することは難しい。

2020年7月29日、ソフトバンク株式会社のグループ会社であるヘルスケアテクノロジーズ株式会社は、法人・自治体向けオンライン健康医療相談サービス「HELPO」をリリースした。

社員の健康相談から始まり、日本の医療問題の解決まで見据えているという同社の展望について、代表取締役社長兼CEOの大石怜史氏に話を聞いた。

大石怜史氏

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

目次

リモートワークが推奨されている状況下で、私たちの働き方は大きく変わった。社員を取り巻く健康不安は感染症に限ったものではない。

上記のデータは、ソフトバンクが試験導入した「HELPO」に対して、社員からの相談内容をまとめたものだ。(ソフトバンクでは2019年12月より試験導入を開始)在宅勤務が続いたことによる運動不足や環境の変化に伴うストレスなど、ニューノーマルと呼ばれる働き方が始まったことで、その変化の渦中でさまざまな問題が生まれ始めている。

「劇的に就労環境が変化したことで、在宅勤務が続いて腰が痛いなど、細かな健康相談が増えています。新型コロナウイルスに関する相談も約2割ありますが、実はコロナウイルス以外の一般症状に関する相談が約6割を占めています。

企業にとって事業を継続するための最も重要な資本は人です。どこに相談すべきかわからないような社員の健康への不安にひとつひとつ丁寧にお応えし、安心感を提供する必要があると考えています。

コロナ禍がどこまで続くかわからない中で、企業側が早期に手を差し伸べてあげる。それが『HELPO』の役割の1つなのだと思います」(大石氏)

オンライン健康医療相談サービス「HELPO」

「HELPO」は法人・自治体向けのオンライン健康医療相談サービス。導入企業の社員や自治体の住民は、アプリを立ち上げ、チャット形式で24時間365日、いつでも気軽に健康相談をすることができる。対応するのはヘルスケアテクノロジーズが直接雇用する医師や看護師、薬剤師などの有資格者。プロフェッショナルがすべての相談内容に丁寧に回答していく。

電話やビデオ通話による健康相談と比較し、チャットだからこそ不安を感じたときにいつでもどこでも簡単に利用できる。また、場合によっては画像や映像を送るなど、汎用性が高いのもチャット形式のメリットだ。

また、症状に合わせて診療科を案内する「病院検索」、一般用医薬品を推奨する「ヘルスモール」の機能も有する。社員本人だけでなく、社員の家族の健康状態も相談可能だ。健康医療相談にとどまらず、具体的な診療や処方までの間をつなぐことができるのが「HELPO」の特徴だ。

「新型コロナウイルスもそうですが、誰かに相談しづらい健康のことは、皆さん自らインターネットで調べるなどして、病院に行くか行かないかなど、判断をしています。そういった中で、病院に行くべきなのに行かなかったり、逆に飲まなくてもいい薬を飲んでいたりといったことが起きています。

『HELPO』では日常の何気ないやりとりを基に、医療行為(病名の診断や薬の処方)にならない範囲で、医師、看護師、薬剤師がそういった判断のお手伝いをすることができます。病院に行くべきであれば、症状に合った診療科の一覧を表示したり、一般の医薬品で十分対応可能なケースであれば、該当する医薬品の一覧を表示し、自宅まで配送するというサービスを一気通貫で提供します」(大石氏)

なぜ、今、日本で「健康相談」が求められているのか?

コロナ禍における健康不安のほか、「HELPO」が向きあう日本の医療の根源的な課題がある。

高齢化が進み、人生100年時代と言われる中で、現在日本では医療費の増大が問題化。平成30年度の医療費で42.6兆円。10年以内に100兆円を超えるという予測もされている。

増大する医療費の多くを占めるのが重症患者に対する高度医療の費用。そのため、今、病気になる前の「未病」で健康状態の悪化を食い止めることが課題となっているのだ。

「重病の患者を減らしていく。そう考えたときに、私たちができることは何か。健康診断を毎年やっていても、それで自分の健康状態を改善できない人もいます。

『HELPO』は医療の手前、未病以上医療未満の領域のサービス。『何となく体調が悪いのを、このくらいならまだ病院に行ったり、薬を飲まなくても大丈夫、と放置していませんか?』というメッセージになることで、日本の医療課題解決の一助になるのではと考えています」(大石氏)

『HELPO』のヘルスケアプラットフォーム構想

「HELPO」が提供するのは、医療行為に当たらない範囲のサービス。つまり「診療」は行われない。現在、日本ではオンラインでの診療は厳しく規制されているが、コロナ禍で暫定的に初診からのオンライン診療が認められるなど、規制緩和に向けた動きは活発化している。

「HELPO」は規制緩和後を見越し、健康医療相談から始まり、オンライン診療、オンライン服薬指導の支援まで一気通貫で提供できるヘルスケアプラットフォームの構想を掲げている。

「規制緩和がされた場合の話になりますが、オンラインで問診を行い、電子カルテや受付システムと連携することで、そのままオンライン・オフラインの病院の予約・決済へとつなげていく。またオンラインで服薬指導を行い、そのまま処方薬の配送を行う。現在、相談でとどまっているところから、より医療の根幹を支える領域までサービスを広げていくことも可能です」(大石氏)

一連のプロセスを通じて、「HELPO」には、健康相談の内容、そして病院への通院、処方薬など、さまざまなデータが蓄積されていくことになる。

これらのPHR(Personal Health Record)と呼ばれる患者の医療・健康情報を一元的に保存したデータは、医療の現場での質・効率の向上のほか、日常生活でのセルフケアなど、さまざまなシーンでの活用が期待される。

日常の生活習慣から既往歴、処方されている薬など、PHRに各医療関係者がアクセスできるようになることで、未病時、医療の現場、そして介護の現場まで連携しながら患者の健康状態を管理できるようになる。

「チャットで寄せられる健康相談の内容は、いわばGoogleやYahoo!で調べる時の検索ワードのようなもの。ユーザの悩みやニーズを知ることができます。それと共に性別、年齢などの属性データもわかります。

そういったデータをユーザに提供してもらうことで、相談時に、より適切な診療科や一般用医薬品のアドバイスが可能になります。アドバイスした後に、どう行動したかもアプリの範囲内ではわかるので、例えば『その後の体調はいかがですか?』とフォローアップすることもできる。

またオンライン診療支援ツールの提供が可能なフェーズになれば、病院や薬局のデータと連携し、さらに質の高いユーザ体験を提供することができるようになります」

また、このような構想を実現して、国民皆保険制度の維持と効率的な医療資源の配分に貢献するためにも、大石氏は学会等※における政策議論に参画するなど、より良いICT活用の姿を模索していくとのことだ。
※直近では、医療・ヘルスケアICTの社会実装に向けた最新動向や課題をテーマにした「モバイルヘルスシンポジウム2020」(2020年9月12日、13日開催)への参画を予定している。

ソフトバンクが目指すヘルスケア分野のDX

ソフトバンク株式会社のグループには、「HELPO」のほか、さまざまなヘルスケアプロジェクトが存在する。疾病予測アルゴリズム、生活習慣病アルゴリズム、ライフサポートAI、東京大学とのBeyond AIなどの研究プロジェクトもそうだ。

医療、健康に関するデータを軸にAIなどのテクノロジーを活用しながら、医療の現場と日常のヘルスケア双方をDX(デジタルトランスフォーメーション)していく。

その中心にあるのが、ヘルスケアテクノロジーズが提供するプラットフォーム、「HELPO」だ。

ソフトバンクのヘルスケア分野でのDXが、今、第一歩を踏み出そうとしている。

「HELPO」事例記事:福岡市11万人のPCR検査を支えるヘルスケアテクノロジーズ

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