フォーム読み込み中
日本では町名と番地名などが書かれている住所表示板。中国でも「〇〇路△△(〇〇通り△△番地)」などと書かれていますが、中国全土でQRコードが加えられたものに変更されつつあります。
あるところでは住所表示版のQRコードをスキャンすることで、その住所を担当する警察署の場所と住所を見ることができ、加えて警察署の該当地域担当警察官の関連情報(名前、警察番号、連絡先電話番号など)も把握でき問い合わせが可能です。自宅から関連業務の問い合わせをするとき、ちょっと外に出て住所表示版のQRコードをスキャンし、警察の担当者にオンラインで問い合わせるといったことができるわけです。
蘭州公安による紹介(出典:甘粛公安)
「そんなことができて、意味があるのか?」と思う方もいるかもしれません。ところが中国の手続きでは、担当の派出所ひとつとっても「地域が異なるので対処しません!」と言われることはよくある話。派出所だけでなく、中国での役所の手続きをしたいときに、どの部署に行って手続きをすればいいのか、担当者が誰なのかがわからず、振り回されて1日消費してしまうということはしばしばあります。経験された中国在住者は少なくないはずです。
そこで電子政府の解決策の一つとして、アリババ系金融会社アントの「アリペイ(支付宝)」やテンセントの「ウィーチャットペイ(微信支付)」などはオンラインで手続きできるようになっています。これらの便利で洗練されているサービスと同じようなことが、住所表示板のQRコードからある程度できるようになります。また派出所や役所の担当部署に直接訊ねたいといった場合は、派出所をはじめとした役所の担当者にオンラインで相談したほうが、アリペイやウィーチャットペイなどのポータルから入っていくよりも便利な可能性があります。つまり、QRコードによってスマートシティを利用する選択肢がさらに増えたわけです。
泰興市公安局の画面(出典:泰興市公安局アプリ)
「住所表示板にQRコードを記載しても、いずれ表示板自体が汚れて使えなくなるのでは?」と考える方もいるかもしれません。筆者の経験ですが、中国で生活していた時にも「汚れたか経年劣化で情報が見れない」もしくは「見にくい表示板を見た」といった記憶はありません。もちろん、意図して汚せば罰せられるでしょうし、場所によってはネットワークカメラも設置されています。いずれにしてもQRコードが読み取れなくて不便が発生する事態は、日常的には発生しないでしょう。
住所表示版にQRコードを表記するメリットとしては、基本的に変わることのない住所情報と、時々更新する必要がある各種情報を併記できることが挙げられます。文章量の長い情報はそこで掲載できるというのもメリットです。加えて、QRコードをスキャンすることでクラウドアプリを起動することも可能です。
ただし各地域が手探りで制作しているらしく、クラウドアプリでできることは地域差があります。
上海に近い江蘇省蘇州市相城区では、コロナ対策として、蘇州の外から来た感染リスクの高い人を対象とした「コロナ感染に関する健康アンケート」へのリンクを用意しています。該当者は毎日家のドアを開けてQRコードをスキャンして健康アンケートに答えるわけです。同じく江蘇省の泰興市では、QRコードをスキャンした先の画面で、付近の不動産賃貸情報や郵便宅配情報が確認できるほか、治安や消防に懸念がある際に最寄りの派出所に問題個所の写真を送って伝えることができます。
コロナ対策の隔離に活用される事例(出典:蘇州市相城区新聞)
よく「QRコードの住所表示板に力を入れている」と紹介される福建省福州市の場合は、QRコードをスキャンした先の画面で各種光熱費を支払うことができます。またフードデリバリーを頼むことができ、かつ注文者が許可した場合に配達員が集合住宅の門のQRコードをスキャンすると、門のロックが解除され中に入れるという仕組みが用意されているのです。
さらに文化観光振興にも活用されており、寺などの観光地で門の住所表示板のQRコードをスキャンすると、その場所の説明が表示されます。一言コメントを担当者に書き残したり、緊急事態ですぐに駆け付けるようお願いしたりすることも、QRコード先のメニューから可能です。企業の場合は、QRコードをスキャンした先から企業の各種情報の登録をすることもできます。
これまでの中国のQRコードは、情報を得たり他人と繋がったり送金したり、サービスを利用したり支払ったりするときなどによく使われていました。それだけでも十分便利だったのですが、さらに各建物各戸にQRコードを設置してサービスや情報の入口を作りました。これにより「各建物にスマートな身分証を持たせた」と紹介されています。アリペイやウィーチャットペイでQRコードをスキャンしてできるサービスが年々拡大したように、各戸各建物のQRコードスキャンでできることも、これから試行錯誤の中で増えていきそうです。
条件に該当するページがございません