建設業の2024年問題とは? 働き方改革に向けた課題と解決策

2023年10月27日掲載

建設業の2024年問題とは? 働き方改革に向けた課題と解決策

建設業では、2024年問題による人手不足やコストの増大が業界全体の課題となっています。2024年4月の働き方改革関連法の適用に向けて、働き方改革の推進や労働環境の整備が急務です。
2024年問題を解決するためには、工期の見直しや適切な労務管理、そしてDXによる労働生産性の向上が必要です。この記事では、2024年問題の概要とともに建設業の現状や働き方改革への対応策について紹介します。

目次

建設業の2024年問題とは

建設業の2024年問題とは、2024年4月に働き方改革関連法が適用されることで発生する、建設業の人手不足やコスト増大などのさまざまな課題の総称です。
働き方改革関連法は2019年に施行され、「時間外労働の上限規制」が盛り込まれていますが、建設業においては環境改善に時間がかかる点を考慮し、適用まで5年間の猶予が与えられていました。2024年4月で猶予期間が終わり、建設業においても残業規制などが盛り込まれた改正労働基準法が適用されます。

働き方改革に伴う労働環境問題

2024年4月から働き方改革関連法が適用されることにより、さまざまな問題が持ち上がっています。例えば、労働時間の上限規制や年5日の有給休暇取得などにより一人の職人がこなせる作業量が減少します。

施工業者は、同じ業務量をこなすために職人を増やすか、工期を延ばすなどして既存のリソースで対応できる体制を取らなければなりません。また、時間外賃金の割り増しによるコスト増や、インボイス制度の適用による個人事業主の減少といった影響も懸念されます。

建設業界への影響とは

建設業界は、労働力人口が減少する中でそもそも人手不足に悩まされてきました。さらに今回の働き方改革関連法の適用が人手不足に拍車をかける恐れがあります。

人材確保のためのコストや人件費の増加、割増賃金の負担と言った複数の要因が収支を圧迫し、特に経営基盤の弱い中小規模の業者の中には倒産・廃業に追い込まれるところも出てくるでしょう。

建設業が抱える現状と課題

働き方改革関連法が施行された要因でもある、建設業の現状と課題を解説します。

労働力人口の減少と高齢化

国土交通省が令和3年11月に公表した「建設業の働き方改革の現状と課題」にて建設業の就業者数をみると、減少傾向が進んでいます。

  • 建設業就業者: 平成9年|685万人 →令和2年| 492万人
  • 技術者 : 平成9年|41万人 →令和2年| 37万人
  • 技能者 :平成9年| 455万人 →令和2年| 318万人     
建設業の就業者数は減少傾向

年齢構成でみると55歳以上が全体の30%以上を占め、逆に29歳以下の若手は10%程度となっています。超高齢化社会で、日本全体として労働人口が減少傾向にあるのが原因の一つです。さらに、建設業の長時間労働や厳しい労働環境などが敬遠されて、建設業で働くことを希望する若手が減少している実態が問題となっています。

長時間労働で休暇の少ない労働環境

建設業の働き方改革の現状と課題」によると、建設業の労働時間は年間で1,985時間と、全産業平均の1,621時間と比べて20%ほど長くなっています。また、近年進む労働時間の削減においても他業種対比で出遅れています。4割の労働者が4週4休以下(週休1日以下)で働いているという実態もあるのです。

働き方改革関連法が適用されれば労働環境の改善が期待できる反面、もともと労働者の長時間労働で工事に対応してきた分、人手不足のさらなる深刻化が懸念されます。

法改正で建設業界の何がどう変わるのか?

働き方改革関連法案など建設業を取り巻く法改正によって、次の4点の変化がもたらされます。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 時間外労働への割増賃金率引き上げ
  3. 年5日の年次有給休暇取得
  4. インボイス制度の適用

それぞれのポイントについて、詳しく紹介します。

時間外労働の上限規制

働き方改革関連法案では、他業種と同等の労働時間の上限規制が強化されます。まず、労働基準法では以下のような労働時間が定められています。

  • 実労働8時間/日
  • 実労働40時間/週

また、時間外労働は、月45時間・年360時間以内に制限されています。

ただし、労働者と企業側が通称「36協定」を結んでいれば、以下の上限を適用できます。

  • 年間の時間外労働上限が720時間 
  • 時間外労働と休日労働合計が月100時間未満
  • 2〜6ヵ月の時間外労働・休日労働が平均で月80時間以内
  • 時間外労働45時間超の月は年6回まで

繁忙期には時間外労働が増加しがちな建設業において、この上限を遵守することが今後の重要課題です。

時間外労働の上限規制

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」をもとに作成

時間外労働への割増賃金率引き上げ

2023年4月より、中小企業の60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられています。大企業ではすでに適用済でしたが、2023年からは企業の規模に関係なく適用となりました。

月60時間を超える職人の人件費が大幅に増大する要因となるほか、中小規模の企業においては勤怠管理システムや給与管理システムなどのシステム対応も課題です。

年5日の年次有給休暇取得

2024年より年5日の有給休暇取得が義務付けられます。義務なので、必ず休暇を取らせなければならず、違反すると罰金が科せられます。正社員はもちろん、条件次第では契約社員などの非正規社員にも有休を付与する必要があります。休暇を取得する従業員がいても進行に影響が出ないように余裕をもった人材確保が必要になります。各社が多めの人材確保に動くことは、建設業界全体においては人手不足のさらなる加速要因となるでしょう。

インボイス制度の適用

インボイス制度は正式名称を適格請求書等保存方式といい、2023年10月に導入された消費税の仕入れ税額控除に関する制度です。建設業では、インボイス制度の適用により個人事業主が減少することが懸念されています。
▶関連記事:インボイス制度の概要と対応方法を解説

今後は課税事業者である企業がインボイス登録をしていない個人事業主などの免税事業者と取引をした際、消費税控除を受けられなくなるため、消費税分だけコストの圧迫要因となります。この影響でインボイス未登録の個人事業主とは、取引をしづらくなる恐れがあります。

これには経過措置があり、2023年10月1日から3年間は80%、その後3年間までは50%の控除が受けられます。発注を行う企業はこの間に個人事業主に対してインボイス対応を求める、または課税事業者へ取引先を変更するといった判断をしなければなりません。

一方でこれまで免税事業者であった個人事業主がインボイス登録をすると、納税義務が発生するため、税負担が増大することになります。

建設業では、「一人親方」と呼ばれる個人事業主が人的リソースを支えてきました。「一人親方」は個人の請負契約で施工を依頼できるため、現場の特性にあわせた専門技能者を確保するのに有効活用されてきました。しかしインボイス制度の適用にともない「一人親方」が減少することが予測されており、今後さらに人材確保や作業工程に即した柔軟な要員調整が難しくなる恐れがあります。

2024年問題の具体的な解決策

建設業の2024年問題の解決に向けては、人員をふまえた適切な工期の設定や厳格な労働時間の管理、労務環境の改善などの対策が求められます。さらに、DXによる業務効率化や生産性の向上により、限られたリソースで施工を進める工夫も有効です。

適切な工期の見直し

残業制限や休暇取得の制限をふまえて余裕をもった工期設定に注力することが大切です。悪天候による遅延などが発生しても、残業上限を逸脱せずに済む工期を設定する必要があります。

国土交通省では「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定して、週休2日の確保を前提とした適正な工期設定を求めています。受注側が不当に短い工期の案件を受注しないよう注意するのはもちろんですが、発注側も制度変化を理解のうえ、無理な工期の発注を避けなければなりません。また、精度の高い工事計画を立てられるように、施工条件を明確化するなどの配慮も必要です。

労働時間の管理

労働時間を可視化し、意図せず法制度違反を犯さないように徹底する必要があります。ICカードや勤怠管理システムの導入などにより、管理者は労働者の勤怠状況を正確に把握しなければなりません。スマートフォンのアプリケーションなどで簡単に打刻や勤務関連の申請ができる仕組みを導入して、労働者の打刻漏れ・申請漏れなどを防ぐ仕組みも重要です。

給与や保険など労務環境の見直し

人手を確保するためには、魅力的な労働条件を課すことが重要です。給与や福利厚生の待遇を見直し、また社会保険の加入を徹底するなど、労働者が安心して働ける条件を作る必要があります。

また、スキルに応じて着実に給与が上がる仕組みを作ることも重要です。国土交通省では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入を推奨しています。これは働く技術者の資格や社会保険加入状況、就業履歴などを、現場を問わず蓄積していくことで、働く場所が変わっても過去の実績やスキルを正当に評価できる仕組みです。

DX推進による業務効率化と生産性の向上

DX推進により業務を効率化し、作業の生産性や安全性を向上させることが建設業の課題解決のカギとなります。たとえば、モバイル機器で図面や設計図をリアルタイムで共有できたり、遠隔で指示出しや相談ができたりといったICTを取り入れたデジタルツールの活用が有効です。DXにより、情報共有やコミュニケーション、調査などに要する時間が削減されて、少ない労働量で作業をこなせるようになります。

また、計測や計算、検査などにデジタル技術を導入すれば、誤差、誤認、チェック漏れなどに伴って発生する無駄な作業を削減可能です。さらに、危険な箇所にICT重機やドローンを導入すれば、安全性向上にも役立ちます。

ソフトバンクでは2024年問題の対応策に関する無料のオンデマンドウェビナーを用意しています。法改正動向のほか、対策の事例も紹介していますので、本稿とあわせてぜひご視聴ください。

▶無料ウェビナー:【建設業界向け2024年問題対策】毎日50分の残業時間削減に成功した地方の工事会社の事例をご紹介

建設業2024年問題の解決にはDXによる労働環境の整備が不可欠

建設業における働き方改革関連法の適用は、すぐそこに迫っています。工期の適正管理や就労条件の改革、そしてDX化による労働生産性の向上などを通じて、人手不足を改善しつつ魅力的な職場環境を構築しましょう。

建設業のDX化に最適なソリューションとしてクラフトバンクオフィスがあります。

クラフトバンクオフィスは社内連絡ツールや日報、労務管理、スケジュール管理など、建設業の経営・管理に必要な機能が一つにまとめられています。これ一つ導入すれば、職人・管理者・事務職全ての業務効率化が実現します。

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また、働き方改革に伴うDX推進には、補助金や助成金が利用できます。ソフトバンクでは補助金に関するコンサルティングも行っています。IT導入にあわせて補助金を利用したいと考えている方は、ぜひ以下の補助金コンシェルにご相談ください。

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