自治体DXとは? 総務省が示す重点項目や進め方を簡単解説

2024年2月21日掲載

自治体DXとは? 総務省が示す重点項目や進め方を簡単解説

さまざまなシーンで耳にすることが多くなった「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。これは、デジタル技術を活用して、ビジネスを変革・再定義することを指す言葉です。さらに、自治体での取り組みに応用したものが、「自治体DX」と呼ばれています。今回は自治体DXとは何か、背景や取り組みのポイントについて総務省の開示情報を用いながら簡単に解説します。

目次

自治体DXとは?

自治体DXとは、地方自治体が情報通信技術の活用を通じて、行政サービスの提供方法や業務プロセスを変革し、住民の利便性や満足度を向上させることを目指す取り組みのことです。

地方自治体は、人口減少や高齢化といった社会構造の変化に直面しています。これにより、従来の行政サービスの提供方法や業務プロセスが限界に達し、効率的なサービスの提供が求められるようになりました。また、民間企業のDXの進展もあり、市民はより便利でスムーズなサービスを求めるようになりました。このため、自治体では市民の利便性や満足度を向上させるためにも、DXに取り組む必要性を感じるようになっています。

自治体DXのメリット

自治体がDXに取り組むことで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。例えば下記のようなものが挙げられます。

行政サービスの効率化

デジタル化を進めることで、これまで手作業で行われていた作業が自動化されたり、データベースの活用が広がり情報を瞬時に共有・検索できるようになります。これにより、行政職員の業務効率が大幅に上がり、手間や時間を削減できるようになります。例えば、電子申請システムにより紙ベースの手続きが不要になることが挙げられます。

市民サービスの利便性向上

市民に対するサービスがオンライン化することで、時間や場所に制限されることなく、いつでもどこからでも利用できるようになります。これにより、窓口の混雑を解消したり、仕事などの理由で日中に役所に行けないような人でも手続きを行えるようになります。例えば住民票のオンライン申請などです。

自治体内や市民とのコミュニケーション向上

スマートフォンやチャットツールを活用した職員間のコミュニケーションも向上し、情報共有の促進も期待されます。コロナ禍で検討・実施されたリモートワークやテレワーク推進なども自治体DXの一つと言えるでしょう。また、SNSなどデジタル技術を活用することで、市民とのコミュニケーションがスムーズになります。市民からの要望や意見を受け入れる仕組みを構築することで、よりよいサービスの提供が可能になります。

財務効果

業務の効率化による行政コストの削減はもちろんのこと、データ分析による予算の最適化や資源配分により、効率的な行政運営が可能となります。例えば、廃棄物処理の最適化によるコスト削減や、保育園の待機児童問題解消にデータ分析を活用する政策策定などがあります。

新たな取り組みによる行政サービスの質の向上

自治体DXを通じて、新たな課題解決に取り組めるようになり、市民の生活の質の向上に寄与します。例えば、AIを活用した防犯・防災対策、IoTを活用したスマートシティの構築、民間企業とのデータ連携による新たなサービス開発などが可能になるかもしれません。

透明性と信頼性の向上

デジタル化やデータの可視化により、情報を公正かつタイムリーに公開できるようになり、市民参加の促進や、意思決定過程の透明性を確保します。例えば、今までは紙で行われていた公金の使途報告の公開、市民向けに意見・アンケート・議会情報の公開などがSNSで行われるようになったり、これらの報告やデータの解析などが挙げられます。

自治体DXにおける重点取組事項とは

メリットが数多くある自治体DXですが、総務省では重点的に行うべき取り組みとして下記の7つのポイントを挙げています。各自治体ではDXの推進にあたり、これらの重点項目について取り組んでいくことが示されています。(もともとは6つでしたが、2024年2月5日より7つに変更になりました)

1 自治体フロントヤード改革の推進
住民と行政との接点(フロントヤード)の改革のこと。住民サービスの利便性向上や業務効率化することで、企画立案や相談対応に人的資本をシフトさせ、持続可能な行政サービスを確保することが狙いです。「書かせない、待たせない、迷わせない、行かせない」に取り組む必要があります。

2 自治体の情報システムの標準化・共通化
標準化基準に適合した基幹業務システム(標準準拠システム)の利用を義務化することで自治体の基幹系業務の効率化を図ります。また、総務省(デジタル庁)ではこれらにガバメントクラウドを利用することを推進しています。

3 公金収納における eLTAX の活用 (2024年より新しく追加)
公金収納における事務の効率化・合理化や納付時の利便性向上が求められており、eLTAX(地方税共同機構が運用している地方税ポータルシステム)の活用を進めています。

4 マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
マイナンバーカードを利用することで、対面に限らずオンラインでも確実・安全に本人確認や認証ができるようにし、各種カードとの一体化や行政手続きのオンライン・デジタル化などの活用が見込まれています。マイナンバーカードの申し込みを促進するためにマイナポイントと呼ばれるポイントを配布する施策が2023年まで実施されていました。

5 セキュリティ対策の徹底
多様化するサイバー攻撃に対するセキュリティ対策の強化も欠かせません。

6 自治体の AI・RPA の利用推進
AIやRPA※を用いて、定型業務の効率化や自動化の推進が求められます。

7 テレワークの推進
ICTを活用した時間や場所にとらわれない多様な働き方の改革、促進も必要です。
 

※RPA:ロボティックプロセスオートメーション。ソフトウェアのロボットが人間の代わりに作業を行い自動化する技術のこと。

自治体DXの進め方、ステップ

総務省では自治体DXを進めるために、「自治体DX推進計画」を定めており、以下のような推進体制の方針を示しています。

組織体制の整備

極めて多くの業務に関わることから全庁的・横断的な推進が必要となり、それぞれの部門で役割を遂行していく必要があります。

  • 首長(強いコミットメントを示す)
  • CIO(全体のDX推進体制を整備。副市区村長などが多い)
  • CIO補佐官(専門知識が必要。外部人材の活用がおススメ)
  • 各部門担当
    ー情報政策担当(予算やシステム全体の最適化)
    ー行政改革・法令・財政担当(管理部門、DX旗振り)
    ー人材育成・人事担当(デジタルスキルを持つ人材育成や登用)
    ー業務部門担当(実業務への落とし込み)

デジタル人材の確保・育成

上記のような役割で行う場合、CIO補佐官などは専門スキルや知識を持つ人材が必要になります。各自治体内で適任者がいない場合は、民間企業など外部任用も検討せねばなりません。総務省も外部人材の活用を推進していて、外部人材の採用時の参考になるようにスキルや経験を図示化した「スキル標準」も策定されています。

 人材像役割望ましい主なスキルなど
プロデューサー
(CIO補佐官など)
全庁的なデジタル変革を
主導する。
国の政策動向に関する知見、
全体方針立案
プロジェクトマネージャー各プロジェクトの
企画・推進を行う。
企画構想、
スケジュール管理、
コスト管理
サービスデザイナー各プロジェクトにおける
サービス・業務の設計を行う
業務改革、
サービス設計、
UI・UX
エンジニア各プロジェクトにおける
テクノロジーの実装を担う。
PRA、ローコードなどに
関する知見

また、同時に自治体内のリーダー層だけでなく一般行政職員のデジタルリテラシー向上や育成も必要です。「人材育成・確保基本方針策定指針 概要」では、デジタル人材の育成や確保について下記方針を展開しています。

  • 職員のデジタル分野の知識・スキル当を把握の上で、求められる人材のレベルごとに育成・確保すべき目標を設定
  • 人事担当部局とDX担当部局等の緊密な連携、首長等のトップマネジメント層のコミットメント等によるデジタル人材の育成・確保に係る推進体制の構築
  • 自団体だけではデジタル人材の育成・確保が困難な市区町村に対する都道府県により支援
  • デジタル分野の専門性・行政官の専門性を合わせて向上させながらキャリアアップを図ることができるキャリアパスの提示

計画的な取り組み

スケジュールも重要なポイントです。例えば、重点取り組みの一つである「情報システムの標準化・共通化」の目標時期が2025年度(令和7年度)とされており、現行システムの調査やスケジュール策定など計画的に進めていかねばなりません。総務省から大枠のスケジュールが展開されているため、これらを参考にしつつ詳細のスケジュールを立てていく必要があります。

自治体DX_自治体の主な取り組みスケジュール

※参考:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画 【第 2.3 版】 」の「別紙1自治体の主な取り組みスケジュール」をもとに作成

都道府県による市区町村の支援

また、自治体DXを推進していくためには、市区町村の中だけに留まらず、全体で足並みを揃えて取り組んで行く必要もあります。特に都道府県と市区町村が連携して取り組んでいくことが求められており、情報交換は元より限られたデジタル人材を複数の市区町村で兼務することも方法の一つとして言われています。

自治体DX取り組み事例

全国の各自治体でDXが進む中、多くの事例もでてきました。総務省では体制整備や人材確保や育成、重点取り組みに関する各自治体の事例を紹介しています。まずはこれら事例を参考に自身の自治体で実施していくことを検討していくことがおススメです。

なお、ソフトバンクでは全国の自治体とさまざまな取り組みを実施しています。ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

今回は総務省から発信されている情報を用いて、自治体DXの用語解説やメリット、取り組む方法などの基本について解説しました。

以上のように、自治体DXはICTを活用して行政サービスの改善や新たな価値創出を目指す重要な取り組みです。人口減少や過疎化の問題解決に向けて、各自治体がDXを進めることで、市民サービスの質向上や新たな発展につながっていきます。

DX推進には信頼できるIT企業や専門家との連携や、組織内でのICTリテラシーの底上げが重要となります。ソフトバンクはそのような地方創生の一助となることを目指し、一気通貫でのサービスやサポートを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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