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ソフトバンクのエンジニア有志を中心にしたテック勉強会「SB Tech Night」が、2022年3月10日に開催されました。
6回目となる今回のテーマは「NTN (Non Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)」について。イベントの内容をご紹介します。
講演は、以下の5講演が開催されました。順にレポートしていきます。講演者の自己紹介などはイベントページからご覧いただけます。
| ソフトバンク Non-Terrestrial Network構想について | 小野 敦久 (ソフトバンク株式会社) |
| 世界のどこでもだれでもつながる通信を届けるOneWeb | 磯崎 隆徳 (ソフトバンク株式会社) |
| ナローバンド衛星IoTサービスSkylo | 浦 真人 (ソフトバンク株式会社) |
| HAPS移動通信システム~シリンダアレイアンテナ~ | 近藤 充弘 (ソフトバンク株式会社) |
| LT: 国境や産業を越えたBAコミュニティ紹介 | 今枝 裕晴 (ソフトバンク株式会社) |
冒頭のセッションではテクノロジーユニットの小野 敦久さんよりNTN構想の全体像と提供するソリューションの概要について発表しました。
ソフトバンクでは「インターネットを世界中に提供したい」というミッションを掲げ通信サービスを提供しています。インターネットにより人々の生活が大きく変化している一方で、現在でも世界の半数の人がインターネットにアクセスできない現状があるようです。このようなデジタルデバイドの解消を目指し、ソフトバンクはNTN構想を立ち上げました。
NTN構想は下の図のように、地上基地局ではカバーしきれないエリアを空にある基地局を使ってカバーしていく構想です。
ソフトバンクでは、NTN構想を支える「3種の神器」として3つのソリューションを提供しています。
・skylo
36,000kmにある静止衛星から地上に電波を送り、IoT向けのナローバンド通信回線を提供するサービスです。モバイルの電波が届かないような地域や海上船舶等で活用できます。
・OneWeb
高度1,200kmにある低軌道衛星から高速大容量の通信回線を提供するサービスです。静止衛星よりも地上に近いため、より高速・低遅延の通信が可能となります。モバイルの電波が届かない上空の飛行機内のインターネット通信や災害時にモバイル回線が不通となった際にも活用できるようです。
・HAPS
高度20kmの成層圏エリアにて展開する通信サービスです。モバイルダイレクト通信を実現するため、既存の携帯電話やスマートフォンを利用できる特長があります。1機体で直径200kmのエリアをカバーできるため、島しょ部や山岳などの人口が少ないエリアにも提供できるようです。
小野さんは「これらの3つのソリューションでグローバルな空からのネットワークを構築し、地球上の全ての人やモノがつながる世界を目指しています」と語りました。
続いて、ソフトバンク株式会社テクノロジーユニット磯崎 隆徳さんは「OneWeb」の取り組みについて紹介しました。
OneWebは2012年に英国に設立された通信企業で低軌道衛星を活用した衛星通信サービスを提供しています。2021年にはソフトバンクとグローバルでの衛星通信サービスについての協業を発表しました。(関連プレスリリース)
OneWebの低軌道衛星はこれまでの主流だった通信衛星よりも低い高度(約1,200km)で衛星を運用しているため、アップリンク32Mbps、ダウンリンク195Mbpsの高速通信と従来の静止軌道衛星の約10分1の低遅延の通信が実現できるようです。
OneWebは複数の衛星を利用する「衛星コンステレーション」という方式でサービスを提供しており、現在打ち上げ済みの衛星の数は428基、将来的には648基になるようです。複数の衛星を切り替えながら通信を行うことで、高速・低遅延の通信が実現できるのだとか。
現在は一部地域でのサービスを提供しておりますが、2022年中には北極圏を含むグローバル展開が可能になる予定です。
テクノロジーユニット浦 真人さんは「Skylo」の取り組みについて紹介しました。
Skyloは静止衛星を利用したIoT向けの通信サービスです。自社で衛星を保有せずに既存の通信衛星から通信帯域をリースするため、低コストで早期なサービスの立ち上げが可能になるようです。
Skyloの衛星と通信するユーザ端末はさまざまなIoTセンサーの通信規格に対応しているほか、IoTプラットフォームも標準で提供しているため「End to End」でIoTサービスを提供できることが特長とのこと。浦さんはリソースを有効に活用する方法として、コア設備の仮想化技術や、通信間隔をスケジュール化してトラフィックを平準化する方法などを紹介しました。
Skyloは既存の通信環境が届かない場所で効果を発揮するようです。ユースケースとして、トラックや電車の位置情報や運転状態を監視した事例や船舶の緊急通報として利用された事例などが紹介されました。
テクノロジーユニットの近藤 充弘さんは成層圏通信プラットフォーム「HAPS」の移動通信システムについて発表しました。
HAPSは高度20kmの成層圏に滞空している無人航空機を利用した通信サービスです。衛星通信と違って専用端末を必要とせず、地上と同じ周波数を利用しているため、普段使うスマートフォンなどのモバイル端末と直接通信することが可能です。
HAPSの航空機1体あたりのカバーエリアは最大200km。このエリア内を複数の「セル」という単位で構成し、地上での利用状況に応じて機体から投影するセルの大きさを変動させることも可能です。利用者が増えるとセルの数を増やして高密度化させ、安定した通信を実現できるようです。
しかし、セルが増えることのデメリットもあるようです。HAPSの機体は常に旋回飛行をしているため、セルが移動してしまい、ハンドオーバー(セルの切り替え)が頻繁に発生したり、電波が切れてしまうことがあるのだとか。
このような課題を解決するために開発したのが「シリンダアレイアンテナ」です。三次元デジタルビームフォーミング技術によって機体の旋回にあわせて電波の向きを変えられるため、フットプリントの固定化が実現できるようです。このように円筒状(シリンダ状)にアンテナを配置することからシリンダアレイアンテナと呼ぶそうです。
シリンダアレイアンテナはフットプリントを固定化させるだけでなく、エリアを最適化することもできるようです。三次元デジタルビームフォーミング技術によって水平面と垂直面にビームを制御できるため、サービスが必要なエリアに対してのみ集中的にビームを集めることができるのだとか。
ユースケースとして、人口密度や通信トラフィックが高いエリアにビームを集中させ、端末それぞれの通信速度を向上させる事例が紹介されました。
LightningTalkとして、テクノロジーユニットの今枝 裕晴さんは「BAコミュニティ」の活動について発表しました。
BA(Business Analyst)とは、ビジネスとテクノロジー両方の知見を兼ね備え、プロダクトや開発、運用部門等のコミュニケーションハブとなるポジションを指すようです。アメリカでは、人気職業ランキングの上位に入っており、人材の数は約100万人にもなるようです。日本でも企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)がトレンドになっていく中で、BAの重要性がさらに国境や産業を越えて高まってきているようです。
今枝さんはBAの国際団体であるIIBAの日本支部のイベントで講演を行っていたり、独自のコミュニティ「BACE」を主催するなど、BAのナレッジを共有する活動を精力的に行っているようでした。
今回はソフトバンクのNTNのスペシャリストにその技術を解説していただきました。
SB Tech Nightでは、今後も定期的にソフトバンクのエンジニアによる技術発信をおこなっていきます。 次回は、テーマは現在調整中ですが、5月後半の開催を予定しています。決まり次第 Connpass に公開しますので、ご興味のある方は、ぜひconnpassのSB Tech Night グループのメンバーになってください。
宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)」。 ソフトバンクでは、「Skylo」「OneWeb」「HAPS」の3つの通信サービスによるNTNソリューションを展開します。
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