Model Studioと大規模言語モデルQwen3の最新状況( Alibaba Cloud )

2025年6月25日掲載

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ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。

最近のめざましい生成AIの進化により、企業や開発者はより高度なAIアプリケーションを構築することが可能になっています。Alibaba Cloudでも「Model Studio」と呼ばれる生成AIサービスを提供しており、ベースには大規模言語モデル(LLM)である「Qwenシリーズ」が使用されています。

本記事ではModel StudioとQwenシリーズの最新状況について解説します。

目次

Model Studioとは

Alibaba Cloud Model Studioは、生成AIアプリケーションの開発、デプロイ、管理を一元的に行えるクラウドサービスです。使いやすいインターフェースを備えており、簡単にAIアプリケーションの開発を始めることができます。また、OpenAI互換のAPIを提供しており、既存の開発環境と簡単に統合することもできます。

Model StudioとQwen2.5については当Blogの別の記事にも投稿されていますので、そちらも参考にしてください。

Qwenシリーズと最新のQwen3

Qwenシリーズは、Alibaba Cloudが開発した大規模言語モデル(LLM)で、Model Studioのコアになっています。2024年9月にリリースされたQwen2.5から約半年後の2025年4月にリリースされた最新のQwen3では、最大2350億パラメータを持つMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用して計算効率を大幅に向上させ、さらに推論時に必要なパラメータ数を削減しつつ、高精度な出力を実現しています。

Qwen3では、Qwen2.5に比べて以下の点が強化されています。

1. 事前学習データの規模

Qwen2.5では約20兆トークンでしたが、Qwen3では事前学習データが約36兆トークンに増加しています。

2. モデルアーキテクチャの進化

Qwen2.5でもMoEアーキテクチャは採用されていましたが、Qwen3ではMoEアーキテクチャに加えて、Denseモデルも提供されるようになりました。さらに、ハイブリッド思考モードを導入し、複雑なタスク向けである「thinking mode」と、高速な回答を返す「Non-thinking mode」を切り替えることができます。

3. 多言語対応の強化

Qwen2.5では、29言語でしたが、Qwen3では119言語に拡大されました。主要な言語だけでなく、学習データが限られているためにAIモデルの対応が難しい言語にも対応しています。

4. エージェント能力とツール統合

Qwen2.5は基本的なツール呼び出し機能を備えていましたが、Qwen3ではエージェント能力が大幅に強化され、複雑なタスクの実行や外部ツールとの統合が容易になりました。

5. モデルのラインナップと効率性

Qwen2.5では最大で約1000億パラメータのモデルが提供されていましたが、Qwen3では最大で2350億パラメータのモデルを提供しています。さらにアクティブなパラメータ数を抑えることで、計算効率を向上させています。

参考ですが、他のLLMとの比較表を掲載します。
パラメータは非公開のモデルが多く比較しにくいですが、Qwen3は対応言語の多さや、オープンソースで提供されていることに注目です。

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Model Studioの主な機能と特徴

QwenシリーズをAlibaba Cloudコンソール上から使用可能なModel Studioには、様々な機能や特徴があります。

1.モデル

Model Studioのテキスト生成では下記のようなモデルが提供されていますが、2025年6月時点でQwen3に対応しているのは、商用版のQwen-Plus、Qwen-Turbo、オープンソース版のQwen3のみとなっていますので注意が必要です。

■商用版モデル
・QwQ
・Qwen-Max
・Qwen-Plus
・Qwen-Turbo

■オープンソース版モデル
・Qwen3
・Qwen2.5
・Qwen2
・Qwen1.5

■マルチモーダルモデル
・Qwen-VL
・QVQ
・Qwen-Omni

執筆時点では、Modesl StudioのコンソールからModelのメニューに移動すると、Qwen3に対応しているモデルは、モデル名の横にQwen3とアイコンが付いているので解りやすくなっています。

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これらのモデルを活用することで、例えば以下のようなタスクを補助するアプリケーションを作成することができます。

・テキスト生成:物語、公式文書、電子メール、詩などの作成。
・テキスト処理:要約や校正などのテキスト編集。
・プログラミング支援:コードの生成や最適化。
・翻訳:多言語間の翻訳機能。
・対話シミュレーション:インタラクティブなチャットボットの構築。
・データの視覚化:グラフやチャートの自動生成。

2.関数呼び出し機能

LLM(大規模言語モデル)に外部ツールを統合し、リアルタイムデータの取得や計算処理を自動化することで、より高度なAIアプリケーションを構築することができます。

3.高セキュリティ環境

専用のVPCネットワークやPrivateLinkを利用して、セキュリティの高い環境を実現することで企業の機密情報も安全に扱うことができます。

4.Retrieval-Augmented Generation (RAG)アーキテクチャの統合

企業データを活用した検索拡張生成(RAG)に対応し、ユーザー独自の文書やナレッジベースを活用した高精度な応答を生成できます。

5. マルチモーダルモデルのサポート

Qwen2.5ベースになりますが、テキスト、画像、音声、ビデオなど、複数のデータ形式に対応しています。統合されたマルチモーダル処理機能により、よりリッチなアプリケーションを構築することが出来ます。

Model Studioの料金体系

Model Studioを有効化したりアプリケーションを作成するだけでは課金は発生しませんが、使用したトークン数に応じて従量課金が発生します。また、期限ありかつ1度きりなど条件がありますが、新規ユーザーにはモデルごとに100万トークンの無料枠が用意されています。

以下は、100万トークンあたりの商用版モデルの料金例です。Qwen-PlusとQwen-TurboでQwen3を使用する場合、「thinking mode」を利用すると出力の料金が変わります。

• Qwen-Max:入力 $1.6、出力 $6.4
• Qwen-Plus:入力 $0.4、出力 $1.2 (Thinkingの場合の出力 $8、Non-thinkingの場合の出力 $1.2)
• Qwen-Turbo:入力 $0.05、出力 $0.2 (Thinkingの場合の出力 $1、Non-thinkingの場合の出力 $0.2)

詳細な料金情報、最新の価格、無料枠の詳細は、Alibaba Cloud公式サイトをご確認ください。

まとめ

Alibaba CloudのModel StudioとQwenシリーズは、柔軟性と拡張性を兼ね備えた生成AIプラットフォームとして、さまざまなニーズに対応できます。

とくに、QwenシリーズはMoEアーキテクチャ、多言語対応、 業界特化型モデルなどによって世界中のユーザー向けに最適化されており、注目分野ということで開発スピードもとても早くなっています。

短期間で進化を続けているModel StudioとQwenシリーズは、生成AIの導入を検討している企業や開発者に、今後も注目いただきたい生成AIプラットフォームとなっています。

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