クラブネッツ エネルギーカンファレンス参加レポート

2025年6月27日掲載

キービジュアル

こんにちは、ソフトバンクのAIテクノロジー本部で「Routify」の開発を担当している敷島真也です。2025年6月6日、東京国際フォーラムで開催された「クラブネッツ エネルギーカンファレンス」に参加してきました。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の成功事例として多くの学びがありましたので、レポートします。

「DXで必要なことはなにか」という問いを探ることを目的に参加したのですが、カンファレンスで私が学んだのは以下の6点です。

  • DXでは、スピード感のあるサービス投入が重要
  • DXでは、自社のコア技術が重要
  • DXでは、業界横断型で俯瞰×ペインポイントの解消が重要
  • DXでは、顧客接点の強化が重要
  • DXでは、差別化とストーリーが重要
  • DXでは、ポイント商圏は重要

この記事では、それぞれの学びについて、当日の流れを時系列で追いながら紹介したいと思います。ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

目次

株式会社クラブネッツについて

株式会社クラブネッツと言われて「あの会社だ!」とすぐに思いあたる方もいらっしゃると思います。登録者数が数百万人を突破しているといわれるCNポイントを運営している会社で、ポイントサービスを活用したDX推進を手掛ける企業として知られています。

近年、ポイントサービスは、「商圏の形成」や「顧客接点の確保」の観点から注目されており、企業の事業構造を変革する可能性を持つものです。

誰しも、手元にたくさんのポイントがあるなら「今日はこっちで買おうかな」などと考えてしまいますよね。

事業者からみれば、「ポイントを通じて差別化を図っている」ということになりますし、これを足がかりに他の会社と共創して新しいサービスの展開をすれば、文字通り商圏の形成につながり、新しい事業構造への大きな足がかりになります。


株式会社クラブネッツは、ラウンドワンのポイント事業から始まりました。2004年に冨安仁社長が創業され、Tポイント、ドコモポイント、WaONポイントをはじめとした他ポイントとの交換ができるCNポイントでサービスを展開され、現在では国内のDXを牽引する企業として成長しています。2016年に設立された「インダストリー事業本部」は、エネルギー業界向けに業界横断型のサービスを多数展開し、エネルギー業界全体の変革を牽引されています。

クラブネッツ エネルギーカンファレンスとは

クラブネッツエネルギーカンファレンスとは、株式会社クラブネッツが主催するガス・エネルギー業界の「ガス業界DXセミナー」です。今回は、DXに積極的に取り組まれているガス会社が3社来られ、ガス・エネルギー業界の未来を考えるパネルディスカッションが行われました。

参加の目的

今回のカンファレンスに参加させていただいた背景には、2つの動機がありました。

  • 株式会社クラブネッツのDXの取り組みを直接学ぶこと
  • エネルギー業界の有識者の生の声を聞くこと

加えて、カンファレンスのなかで、ソフトバンクが提供している配送最適化サービス「Routify」を紹介いただけるということで、それを聞きにいったというのもあります。開発者として、自分の手を離れたところでサービスが紹介されていたり、使われているのを見ることほどうれしいことはありません。

カンファレンスの内容と印象に残った点

カンファレンスで学んだことは冒頭にも挙げた6点です。

  • DXでは、スピード感のあるサービス投入が重要
  • DXでは、自社のコア技術が重要
  • DXでは、業界横断型で俯瞰×ペインポイントの解消が重要
  • DXでは、顧客接点の強化が重要
  • DXでは、差別化とストーリーが重要
  • DXでは、ポイント商圏は重要

それでは、それぞれについて当日の流れを時系列で紹介しながら共有したいと思います。

場所

東京国際フォーラムの当日の様子

午前中の仕事を終えて、本社から東京国際フォーラムへ向かいました。当日は天気にも恵まれ、広場のランチ屋台がにぎやかだったのですが、早めに入りたかったので直接向かいました。もう200人ほどが入る会場はほぼ満席でした。

オープニング

13時。会場が暗くなり、株式会社クラブネッツ インダストリー事業本部の歩みを紹介する動画からスタートしました。その後、インダストリー事業本部の中前様から事業が紹介されました。

内容は、

  • 2016年に新しい事業部を2名で始めた
  • エネルギー業界には馴染みがなかったが
  • 新しいサービスを数多く投入し、現在はエネルギー業界全体にDXソリューションを提供している

というものでした。

「株式会社クラブネッツのDXの取り組みを直接学ぶこと」がわたしが訪れた動機の一つだったのですが、早速このお話の中に学びが多いと感じました。

ポイントだと感じたのは以下です。

  • DXでは、自社のコア技術が重要
  • DXでは、スピード感のあるサービス投入が重要
  • DXでは、業界横断型で俯瞰×ペインポイントの解消が重要

「エネルギー業界に馴染みがなかった会社が、なぜそもそもサービスを立ち上げられたのか」と考えたとき、やはり大きかったのは別に培ったコア技術があったことが大きいと思います。既にTポイントなどとの連携といった実績があったことが、馴染みがなかった業界に参入できたポイントであり、コア技術というのがDXのポイントの一つだと感じました。

また、講演のなかで、ガス業界のワークフローを整理したあと、それぞれのプロセスに対してプロダクトを展開しているというスライドがあったのですが、業界全体を俯瞰して、顧客のペインポイントを的確に把握されていることは学ぶべきものがあると感じました。そして、そのペインポイント一つ一つに迅速にサービス展開している。これがその後の成長の要因だと思いました。

続いて、後半のパネルディスカッションに移ります。

パネルディスカッション

後半は3つの会社の経営層から対談形式で取り組みについて伺うというパネルディスカッションでした。

地域のインフラを支える「北信ガス株式会社」「服部産業株式会社」「山陰酸素工業株式会社」の幹部の生の声をインタビュー形式で聞くという企画は興味深いものでした。

対談の詳細については各社のユニークな取り組みとなるので控えますが、共通しておっしゃっていたのは「顧客接点の強化が重要」、「差別化とストーリーが重要」ということでした。そして、わたしの理解では、これはガス業界にとどまらない話であり、実は「ほかの業界がこれから直面するであろう課題に先んじて取り組んでいるガス業界の先行知見なのだろう」と感じられました。

というのは、エネルギー業界というのは売っているものは同じなんですよね。そうすると、ただでさえ価格競争に巻き込まれやすいことになります。

加えて、日本では高齢化と少子化による人口減が進んでいます。売上は下落トレンドであるという厳しい状況に直面するなか、「新しい価値をどのように創出していくか」という課題に他の業界により先行して向き合っているのがエネルギー業界なのです。どのように事業を導いていくのか、どの会社も真剣に模索をしているようでした。

そのなかでポイントだと感じたのは、以下の3点です。

  • DXでは、顧客接点の強化が重要
  • DXでは、差別化とストーリーが重要
  • DXでは、ポイント商圏は重要

顧客接点について

顧客接点の強化についてはどの会社さんも強く言及されていたように思います。

顧客にしてみれば、「顔の見えない会社」よりは、「顔なじみのお世話になっている会社」にお金を払いたいのは普通のことだと思います。例を挙げれば、毎日飲み物やお弁当を届けて挨拶をしてくれるサービスがあったら「接点」がやはりうれしいわけです。そして「いつも良くしてくれる」会社ならなおよい。だからこそ、「他の会社が同じものを売る」ガス業界にとって「顧客接点の強化」が大事になってくるのだろうと感じました。

この点について、株式会社クラブネッツは「+ダイレクト」(プラスダイレクト)というLINEの拡張システムを提供されているとのことでした。クラブネッツの方は「顧客接点を作るためのツールはなんでもよい」ということを仰っていたように思いますが、実際は「+ダイレクト」の人気が高い。それはLINEを使えるからだろうというのが私の理解です。

実際、顧客接点のためのツールは本来はなんでもよいはずです。しかし、新しいサービスに誘導するのはコストも掛かるし利用者の負担は大きいですから、理想は多くの人が既に使っているサービス上であればよい。これは自然な発想だと思いますし、老若男女が利用するガスサービスにおいてはディジタルディバイドにつながらないように配慮しなければなりません。

だからこそどの会社もLINEが使える「+ダイレクト」というサービスを使うのだろう、というのが自分の理解です。利用者としてもLINEでお知らせをしてくれれば見落とすことがないし、手間も少ない。どの会社も「+ダイレクト」を絶賛していたのも個人的には納得でした。

 

差別化とストーリーについて

もう一つ、対談のなかでどの会社もおっしゃっていたのは、ポイントサービスの重要性です。これは端的に差別化につながるためであり「(どの会社でも提供する機能が同じなら)なぜこの会社のサービスでなければならないか」という疑問にガス会社として答えることができるからだと感じました。

また、対談のなかで一歩踏み込んだ話だと感じたのは、ポイントをどのようにお客さんに使ってもらいたいかという部分です。料金に充当する会社もいれば、ギフトを提供する会社もあり、さらに地域の他のお店と連携して地域を盛り上げるツールとして使おうとする会社もありました。ポイント商圏を使った地域連携や街興しまで考えてるなら、まさにこれは事業構造の変革であり、DXという名前にふさわしい取り組みだと感じました。その企業が地域の振興を目指していればストーリーマーケティングの観点でも効果的だと思います。

 

「人口減」「売上下落トレンド」。エネルギー業界が直面する課題というのは、日本全体が抱える課題です。そして、エネルギー業界は他の業界より早めにその課題に向き合っている。そのなかにおいて、顧客一人ひとりとの接点を基盤にして、新しいサービスや価値の追求、さらには商圏の構築まで挑むそれぞれの企業の姿勢は非常に示唆的である・・・・

などと感じているうちに3時間ほどのスケジュールはあっという間に終わりました。

 

まとめ

「クラブネッツのDXの取り組みを直接学びたい」、「エネルギー業界の有識者の生の声を聞いてみたい」ということで参加しましたが、非常に実りのある時間でした。

前者については、DXでは、「自社のコア技術が重要」、「スピード感のあるサービス投入が重要」、「業界横断型で俯瞰×ペインポイントの解消が重要」というのが自分がこのカンファレンスで学んだことです。株式会社クラブネッツでは、これからも新しいサービスの展開を予定されているようで、なかには情報のプラットフォーマーとしての躍進に繋がりそうなものもあり、勢いを感じました。

後者については、各社の幹部の話を直接聞けて単純に楽しい時間を過ごせたということに加えて、「日本全体の課題に先行して向き合った先行事例を聞く」というように捉え直すと、今後、どの業界でも「顧客接点の強化、差別化とストーリー」がより重要になっていくこと、そして、ポイントサービスを通じた商圏の拡大が一つの重要な方向性の一つになっていくという新しい視点を学ぶことができました。

何度か言及しましたが、日本は課題先進国であると言われており、エネルギー業界はまさにそのフロンティアにいると感じています。

これまで、わたしはRoutifyという配送最適化のサービスを提供に関わってきましたが、このカンファレンスを通じてより大きな視点で捉え直すことができたように思います。インフラを守るという極めて重要な業界において、お客さまの声に応えられるサービスをしっかり開発していかなければならないという思いを新たにしました。

最後になりますが、Routifyは、人手不足が進むなかで配送員の負担をより減らすことを目的としたサービスです。

ご興味のある方は以下にお気軽にお問い合わせいただければと思います。話を聞きたい、そんなところからでもだいじょうぶなので、ご連絡をお待ちしております。

Routifyの概要

LPガス事業者が保有している検針データや配送データなどをインプットして、AIで分析。AIが最適な配送対象の抽出・並び替えを実現するサービスです。

おすすめの記事

条件に該当するページがございません