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この記事は、ソフトバンク アドベントカレンダー 2025 の3日目の記事です。
Google Meet の自動メモ生成機能は、AI(Gemini)によって会議中の内容を要約・記録し、会議後に自動で議事メモを生成する仕組みです。
日本語対応が開始されたことで、国内でもこの機能を導入・活用する動きが加速していると思います。
会議中の発言をAI(Gemini)がさらっと見直し、最終的に要点をまとめてGoogleドキュメントにしてくれる機能は、たしかに面倒な議事録作成を大きく支援してくれます。社内会議やオンライン商談の議事録作成を効率化する手段として期待される一方で、運用が軌道に乗らず、十分に活用できていないケースも少なくないと思います。
この記事では、こうした自動メモ生成機能の課題を整理し、より実用的に活用するための具体的な工夫・知見をまとめました。
すでに利用している組織にとっても、導入後の運用改善に資する内容になれば幸いです!
Google Meet の自動メモ生成機能は、会議の議事録作成を自動化してくれる便利な仕組みですが、実際に使ってみると技術面・運用面での課題もいくつか見えてきます。
ここでは、よくあるつまずきポイントや、注意すべき点を整理してみます!
生成される議事メモは、AIによる要点抽出・要約という特性上、曖昧な言い回しや結論の明示が不十分な発言は反映されない場合があります。
これは要約モデルは主に強調された情報(結論、繰り返し、明示)を重視するため、曖昧な発話はスキップされがちな技術的背景が大きく影響しています。
また発話スピードや滑舌、話し方の癖によっても認識精度に差が出ることも報告されています。
会議室などで複数人が1台のマイク・端末を共有している場合、誰の発言かが判別できないことがあります。特にハイブリッド会議(会議室参加者+オンライン参加者)では、発言者名の自動記録が機能しないケースが多く、後から発言の文脈を把握するのが困難になります。
会議音声の文字起こしに関する研究で、マイクが1台のみで複数人が発話した場合の環境においては文字認識ミスが最大38.2%に達したとの報告があります。また複数人の同時発話や発言者の識別が難しい状況では、認識ミスや話者の取り違えが増えることも示されています。
これらのことから「音質・発言環境・話者構成」が文字起こし精度に影響するという示唆を得ることができます。
Google Meetの自動メモ機能は1言語のみ対応であり、日本語と英語が混在するような会議では、認識精度が著しく低下する傾向があります。会議中に話者が言語を切り替えるケースでは、AIが正しく要約できないことがあるため、事前の会議設計上の工夫が必要となります。
自動生成されたメモはGoogleドキュメント形式で共有されますが、共有先の設定が不適切だと関係者がアクセスできない/関係者以外に意図せず公開されるなどの問題が発生します。
特にGoogleカレンダーの設定によって共有範囲が左右される点に留意が必要で、知らず知らずのうちに関係者以外に意図せず公開されるかもしれないので改めて確認してみてください!
自動生成されたメモは、発言の要点を抽出するスタイルであるため、文脈や因果関係、会議の流れが分かりづらいことがあります。そのまま資料として外部共有するには、追記・再構成などの補完作業が前提となる場合が多いです。
このように技術的な制約そのものだけでなく、会議の設計や進行ルール、さらには社内での情報共有ポリシーといった運用面の整合性にも課題が見えてきます。
例えばどのタイミングで議事メモを共有するか、誰が確認・修正するのかといった“人の運用”部分が定まっていないと、せっかくの自動化が十分に機能しません。
また自動メモ生成は音声データをクラウド上で処理する仕組みのため、機密会議や社外関係者が含まれる場では取り扱いに注意が必要です。組織によっては、Google Workspaceの管理者設定で自動メモを制限している場合もあるため、利用前に自社ポリシーや権限設定を確認しておくと安心です。
自動メモ生成機能の利便性を最大限引き出すには、単に機能を「ON」にするだけでなく、会議の設計・進行・記録・共有の一連のプロセスにおいて、人の工夫と補完を組み合わせることが不可欠です。
本章では、代表的な課題への対処方法を、業務レベルで活用するために必要な補完・改善策を提示します。
自動メモはAIが発言内容を抽出・要約して構成される性質上、曖昧な表現や話し言葉の文脈に依存した発言はうまく反映されにくい。そのため会議参加者、とくにファシリテーターが、発言時に次の点を意識することで、記録の精度を高めることができます。
このようなフレーズは、そのままAIによる要約文に反映されやすくなるため、文脈の脱落や誤要約の防止につながります。ファシリテーションガイドラインとして事前に共有しておくことで、複数人の会議でも統一的な発言品質が担保できます。
Google Meetの自動メモ機能では、基本的に話者が端末単位で識別される設計となっており、会議室に複数人が集まり、共用の端末やマイクで参加している場合、誰の発言かをAIが識別できないという問題が発生します。
この課題への現実的な対策として、以下のような運用工夫が有効です。
これによりメモ上の発言(誰が何を言ったか)を明確化し、記録の信頼性・可読性を担保することができるようになります。
Google Meetの自動メモ生成機能は現時点で一度に1言語にのみ対応しており、日本語と英語が混在する国際会議やバイリンガルチームでの会議では、認識精度が大きく低下することがあります。
この課題を軽減するためには、会議設計そのものを見直す必要があります。
たとえば、以下のような対応が有効です
特にグローバルな環境での運用を想定する場合、AIの限界を前提にした会議進行ルールの整備が求められます。
補足:字幕(ライブキャプション)機能との関係
ちなみに、Google Meet の字幕機能(ライブキャプション)も、この自動メモ生成と同じ音声認識の仕組みを使っています。
つまり、リアルタイムで画面下に出てくる字幕の精度が高ければ、その後に作られる議事メモの内容も安定しやすい、という関係になっています。
多言語の会議では、字幕の言語設定を統一しておくことがとても大切です。英語と日本語が混ざるような会議では、字幕の誤認識や翻訳ズレがそのままメモに影響することもあります。
また字幕の自動翻訳をONにしていても、メモ生成は「話された言語」をもとに処理されるため、「翻訳字幕が正しくてもメモがうまく要約されない」ケースもあります。
字幕は「その場で理解を助ける機能」と思われがちですが、実は議事メモの精度を下支えする“入力層”でもあります。会議前に参加者全員の字幕設定をそろえておくだけでも、自動メモの精度がぐっと安定するので、ぜひ意識してみてください。
自動メモ機能はGoogleドキュメント形式で議事メモを生成しますが、共有範囲はカレンダーの設定や管理者ポリシーに依存するため、意図しない非公開・誤公開が発生しやすくなっています。
このような課題には、以下のような対応が有効です。
このように、機能の出力結果そのものではなく、それをどう流通・保全・再利用するかの設計まで含めた運用が求められます。
自動生成されたメモは、基本的に「要約ベースのドラフト」として扱うのが適切です。そのため、会議後に一定のレビュー・修正フローを設けることで、完成度の高い記録として活用可能になります。
推奨される運用の例として
これにより、単なる“記録”としてではなく、意思決定やナレッジ蓄積のためのドキュメントとしての価値が高まります。
Google Meetの自動メモ機能で生成された議事メモは、そのまま使うだけでなく、ChatGPTなどの生成AIを活用して整形・要約することで、精度と読みやすさを高めることも可能です。特に、ToDo抽出や決定事項の整理といった編集支援には大きな効果が期待できます。
Google Meetの自動メモ生成機能は、会議における記録業務の効率化を支援するツールとして自動化を促進しているだけでなく、チームの業務効率・コミュニケーション品質・情報資産の管理体制といった広範な要素に影響を与えるポテンシャルを持っています。
その効果を最大限に引き出すには、ヒトによる補完を前提とした“半自動”運用が最も効果的であり、会議の設計から発言スタイル、共有ルールの整備まで一貫した活用方針が求められます。また言語の制限や認識精度の限界といった技術的特性を踏まえ、継続的な改善と補完が重要だと思います。
自動メモ生成機能の本質は、「議事録を書かなくていい」ことではなく、「記録という業務を再定義し、情報の流通と活用の質を高める」ことにあると考えています。言い換えれば、議事録が議事録で止まらない仕組みづくりが重要になるということになります。
この記事を通して、さらなる進化を秘めてるAIを業務に取り入れる際にはその特性と限界を理解した上で、ヒトと技術の役割分担を常に最適化する視点を持ち続けることが重要であることがお伝えできれば幸いです。
ソフトバンク アドベントカレンダー 2025 の4日目の記事もおたのしみに!
参考資料
サービス紹介ページ:Google Meetの自動メモ生成
弊社ブログ:サービス紹介ページ
参考論文
Abstractive Meeting Summarization Using Hierarchical Attention Networks(Zhong et al., 2021)
Utterance‑Wise Meeting Transcription System Using Asynchronous Distributed Microphones(Horiguchi et al. 2020)
Meeting Transcription Using Virtual Microphone Arrays(Yoshioka et al. 2019)
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