【SEMICON Japan 2025】ー AIと共に描く持続可能な未来 ー 牧園 CIO 講演レポート

2025年1月14日掲載

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2025年12月17日から19日にかけて東京ビッグサイトで開催された「SEMICON Japan 2025」。その2日目の基調講演(サステナビリティ・キーノート)において、ソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CIO の牧園啓市(以下、牧園さん)が登壇しました。

AIと共に描く持続可能な未来」と題されたこの講演では、加速するAIエージェントの活用と、それを支える膨大な計算需要・電力消費という課題に対し、ソフトバンクがどのような次世代インフラで挑んでいるのかが語られました。本記事では、その講演内容をレポートします。

目次

ここからは、SEMICON Japan 2025 で牧園さんが語った内容を、筆者が整理してお届けします。発言をそのまま引用するのではなく、趣旨を損なわない範囲で要約・編集・補足したレポート形式の記述になります。

2025年、加速する「AIエージェント」

これまでの生成AIはテキストや画像、音声を生成する段階にありましたが、2025年からはAIが自ら判断し、行動してタスクを完遂する「AIエージェント」の時代へと突入しています。

ソフトバンクでは「10億エージェント」を活用し、業務効率化と新たな価値創造に取り組んでいます。

「10億という数は膨大に聞こえますが、AIが自律的に動く世界では瞬間的に到達する数字だと考えており、そうした世界で我々がやるべきことは大きく変わってくるでしょう。人が介在せず、AIがすべての仕事をこなす状態にシフトすることを見据え、その過程で見えてくる課題を一つずつ解決しています。」

急激なAIの活用は、同時に爆発的なデータ処理需要をもたらします。そうした需要増加に対し、ソフトバンクではAI計算基盤の構築を進めています。

深刻化するデータ処理需要と「電力の壁」

一方、膨大なAIデータ処理に必要な電力は急増しており、2030年に日本全体でAIデータ処理に必要とされる電力は大型火力発電所6基分にものぼると試算されています。

ソフトバンクは、この課題に対し、以下の3つのレイヤーで対策を進めています。

1. サーバー水冷化

サーバーの冷却効率を測る指標の一つに「冷却電力比率」があります。冷却電力比率は、データセンター全体の消費電力のうち、冷却に使われる電力の割合を示します。この割合が小さいほど、同じ計算能力を維持するために必要な冷却電力が少なく、冷却効率が高い状態だといえます。

最近のデータセンターの冷却電力比率は、空冷式で30〜50%程度になります。水冷式を採用することで冷却電力比率を低減することができます。

その効果を10,000基のGPU(NVIDIA B200)を水冷化した場合で例えると、次のようになります。

  • 省エネ効果: 一般家庭1万世帯分の消費電力を削減できます。

  • 環境貢献: CO2排出量に換算すると、杉の木100万本分の年間吸収量に匹敵する削減効果があります。

2. 分散型AIデータセンター

データ処理と電力消費を都市部に集中させる現状のインフラは限界を迎えています。ソフトバンクは、エネルギーの地産地消やレジリエンス強化などを目的に、地方分散型のデータセンター構築を進めています。

ソフトバンクは、こうした「分散させて最適化する」という考え方をデータセンターだけでなく計算リソースやネットワーク全体にも広げ、分散と最適化によってさらなる省エネとパフォーマンス向上を目指しています。

  • AI計算基盤と量子コンピューター: 両者を適材適所で組み合わせることにより、計算処理の効率化・省エネにもつながります。

  • AI-RAN: AI-RANアライアンスで世界の企業と共に開発を進めています。その取り組みの中では、AIと無線アクセスネットワーク(RAN)を組み合わせ、効率的なリソース利用を促進します。

3. All-optical network

AI基盤とユーザーを結ぶネットワークの省電力化も不可欠です。従来のネットワークでは、電気信号と光信号の変換が複数回必要であり、エネルギーロスが発生していました。

  • ネットワーク内での光電変換が不要なAll-optical networkでは、従来のネットワークと比べて最大90%の電力削減が可能です。

  • 2023年10月にコアネットワークへ展開完了、2025年10月からは全国のメトロネットワークへも拡大しています。

 

AIとサステナビリティが共存する未来へ

これまでに話をした取り組みを導入して構築されているのが「苫小牧データセンター」です。冷涼な気候も活かして空調電力を削減し、消費電力を69%、CO2排出量を64.5%削減する次世代グリーンデータセンターです。

また、ソフトバンクはサステナビリティ活動も加速させています。

  • 日本森林再生応援プロジェクト: 企業版ふるさと納税での寄付により、今後15年間で全国に180万本の植樹支援を目指します。

  • NatureBank: エコサービスの利用を通じてユーザーが削減したCO2排出量に相当する植樹をソフトバンクが支援します。例えばPayPay 1取引あたりで約8gのCO2削減につながります。消費者参加型でCO2排出抑制・植林を進めるプログラムです。

こうした取り組みの結果、ソフトバンクは「第7回日経SDGs経営大賞」で2年連続「プライムシート企業」に選定されるなど、社外からも高い評価を得ています。

講演まとめ

牧園さんは講演の最後、会場に集まった半導体業界の関係者に向け、次のようなメッセージを寄せ、締めくくりました。

「ソフトバンクは『情報革命で人々を幸せに』をキーワードに、AIやサステナビリティに関する取り組みも積極的に進めて行きます。そうした取り組みには今日来場されている半導体分野の技術発展が強く影響してくると考えています。日本のために、皆さんと共に、人々の幸せを実現したいと思います。」

編集後記

筆者は、本講演の資料作成に関わっていたのですが、その過程で、まず「2030年に大型火力発電所6基分の電力が必要」という試算を目にし、AIの進化がもたらす電力不足という課題の深刻さを改めて痛感し、衝撃を受けました。

この難題に真正面から挑み、さまざまな環境配慮型テクノロジーを実践しているソフトバンクの姿勢は、真に人々を幸せにする「AI共存社会」を目指す強い決意の表れだと感じました。

特に心を打たれたのは、消費者の日常的な行動がエコにつながる「NatureBank」の取り組みです。最先端のインフラ技術だけでなく、私たち一人ひとりが環境維持に貢献できる道筋を示す姿勢に深く共感し、私もPayPayなどのエコサービスを積極的に利用していきたいと強く思いました。

本記事がAI時代のインフラとサステナビリティについて考えるきっかけになればうれしいです。

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