Gemini Enterprise の Idea Generation を使ったら、発想力より“読む力”が問われた話

2026年2月20日掲載

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普段のアイデア出し、地味に大変ではないですか。

私はアイデア出しをする時、0から考えているつもりが、どこかで聞いたような案ばかりが出てきたりします。

最近は AI でいろいろな案を一気に出せるようになってきて、「アイデア出しは AI に任せればいいのでは?」という時代になってきました。そんな中で、アイデア生成に特化したエージェントとして Gemini Enterprise の Idea Generation がプレビューとして提供されていたので、試してみることにしました。

結論から言うと、詰まったのは「発想」ではなく、「読書」でした。

Idea Generation の発想力は想像以上だったのですが、そのぶん人間側に新しいボトルネックが出てきます。読む時間が足りない。選ぶ時間も足りない。 気づけば「考える」より「読んで選別する」作業に追われていました。

この記事では、そんなふうにして遭遇した “発想過多問題” と、そこから見えてきた「どう向き合うべきか」を、体験ベースでまとめていきます。

目次

そもそも Gemini Enterprise とは

Gemini Enterprise(旧 Agentspace)とは、Google Cloud が提供する企業向けの AI エージェント基盤です。社内に散らばった情報を横断的に扱えるようにしつつ、情報を検索するだけでなく、メール送信やカレンダーを登録したりといったアクションまでつなげられるのが特徴です。

Gemini Enterprise の機能概要については、以下の記事もあわせて参照してください。

Gemini Enterprise とは? Gemini Enterprise 機能紹介

Gemini Enterprise の Idea Generation とは

ざっくり言うと、「問い」を投げると、まとまった量のアイデアを一気に返してくれる機能です。人間がやると1時間かけてせいぜい10〜20個といったアイデア出しを、Idea Generation では放っておくだけで100個近くのアイデアを生成することができます。詳細については公式ドキュメントをご確認ください。

今回試してみたのは、アイデア出しでよくある以下のような課題の解決です。

  • 新規施策のアイデアを短時間で大量に出したい
  • 自分の思考の偏りをなくしたい
  • 企画検討の初速を上げたい

アイデアを生成するところまでは期待通りでした。
問題は「その先」にありました。

実際にやってみた:出力が”多い”だけじゃない

以下が Gemini Enterprise の Idea Generation の画面です。試しに、「情報システム部門の業務効率化に向けた仕組みについて、アイデアを生成して」といったプロンプトを入れて実行してみました。

Gemini Enterprise の Idea Generation の画面

アイデアの生成にはかなり時間がかかりました。
体感としては「ちょっと待てば出る」ではなく、普通に“待ち”が発生するタイプです。

その間は別の作業をしながら放置して、待つこと約1時間。
返ってきた結果がこちらです。

アイデアの生成結果

ぱっと見の感想としては、箇条書きというより 1案ごとに概要から解決する課題、効果やリスク等が書かれたミニ企画書が大量に並んでいて、量だけでなくその情報密度の多さに驚かされました。

セッション詳細を見てみると、1時間で95件のアイデアが生成されていました。

1時間で95件のアイデアが生成された旨のメッセージ

しかも、1案あたりの文字量が5,000字前後〜1万字超までばらつきはありますが、平均しても約7,000字。案ってもっと箇条書きで概要だけ返ってくると思っていたのですが、実際はアイデアの説明だけでなく、期待できる効果や想定される課題まで丁寧に書かれたミニ企画書が100本近くずらっと並んでいました。

「全部読む」のに何時間かかるか(概算)

出てきたアイデアは、読んで初めて価値が出ます。逆に言うと、読めなければ“出ていない”のと同じです。では実際、これを全部読むのにどれくらい時間がかかるのか計算してみました。

  • 7000字 × 100案 = 70万字
  • 読む速度を 400〜600字/分(日本人の1分間の平均読書速度とされている)とすると
    • 70万 ÷ 600 = 約1167分(約19.5時間)
    • 70万 ÷ 400 = 約1750分(約29.2時間)

つまり「アイデア出しを時短したい」つもりで、約19〜29時間の「読書」が発生します。

Idea Generation を使うことで、アイデアが出ない問題は解決できました。代わりに残ったのは、この大量のアイデアをどう読んで、どう選ぶかという “発想過多問題” でした。

似てるけど同じじゃない:差分が判断を難しくする

出力の質については、単純に「良い/悪い」で切れる感じではありませんでした。入力した問いにちゃんと沿って返ってくるので、ぱっと見は似たようなアイデアが並びます。ただ、詳細まで読むと「何を解決するのか」「どう実装するのか」が少しずつ違っていて、意外と差分がある。この「似てるけど同じじゃない」が、判断を難しくします。

Idea Generation では案を列挙するだけでなく、各案に評価値を付与して提示します。今回の出力結果について、一部の案の概要を抜粋すると次のようになります。

「AI駆動型インテリジェント運用・ナレッジプラットフォーム (AIOps-KIM)」(Elo 評価:1623)

「AI駆動型インテリジェント運用・ナレッジプラットフォーム (AIOps-KIM)」は、情報システム部門の業務効率を大幅に向上させる革新的な仕組みです。生成AIと機械学習を核として、情シス部門のナレッジマネジメント、ヘルプデスク、インフラ・アプリケーション運用を統合・最適化します。具体的には、散在するナレッジをAIが統合・構造化して高精度な検索・回答を可能にし、ヘルプデスクのL1対応を自動化、さらにAIOpsと連携して障害の予兆検知から初動対応、根本原因分析までを支援することで、属人化の解消、MTTR(平均復旧時間)の短縮、および戦略的な業務へのシフトを促進します。

「Enterprise IT DevEx Platform (EIDP)」(Elo 評価:1616)

「Enterprise IT DevEx Platform (EIDP)」は、情報システム部門のITプロフェッショナル体験(ITPX)を革新的に向上させるためのセルフサービス型統合プラットフォームです。AIを認知機能の中核に据え、散在するナレッジ、非効率なプロビジョニング、複雑なセキュリティ管理、分断されたツールチェーンといった課題を解決します。具体的には、AI駆動型内部ナレッジプラットフォームがTier 1/2サポートを自動化する「ITPX Co-Pilot」として機能し、人間スペシャリストの高度な問題解決を「Expert Augmentation Station」で支援することで、ITプロフェッショナルが迅速、セキュア、かつ標準化された方法でITサービスを構築・運用できるようになり、業務効率の劇的な向上とIT人材のモチベーション向上に貢献します。

「自己進化型ITネクサス (SEITN)」(Elo 評価:1145)

「自己進化型ITネクサス (SEITN)」は、情報システム部門の業務効率を劇的に向上させるため、生成AIと自律エージェント技術を中核に据えた、認知型・自律型プラットフォームの提案です。これは、ヘルプデスク、インフラ管理、アプリ開発、セキュリティ運用といったIT部門のあらゆる業務プロセスを統合し、膨大なデータに基づき自己学習・自己修復・自己最適化を繰り返すことで、属人化や複雑化といった根深い課題を解決します。SEITNは、AIによる予測、根本原因分析、自動解決、そして人間による承認・介入の仕組みを通じて、IT運用コストの削減、サービス品質の向上、従業員の戦略的業務へのシフトを実現する一方、導入コストやAIの誤判断リスク、セキュリティといった課題も考慮すべきとされます。

Idea Generation には、上記のように生成した案を、トーナメント形式で比較して優劣の評価値を付ける仕組みがあるので、基本は上位から見ていけば良いはずです。実際、上の方には筋の良さそうな案が並びます。

でも、上位の案を信用して割り切りたい気持ちと同時に、「下位にも前提がハマれば化ける案があるんじゃないか?」という感情も出てきます。結局、全部に目を通した方がいいのかなと思ってしまう。こうなると、アイデア出しというよりは大量の案を読み込んで選別する作業になっていきました。

ここで効いてきたのが、評価と検討プロセスをセットで見るという使い方です。

評価を信じて割り切る:Idea Generation の使いどころ

Idea Generation では、トーナメント形式で案の優劣を付けてくれるだけでなく、「なぜその評価になったのか」という検討プロセスも確認できます。

Idea Generation の検討プロセス

この検討プロセスがなかなか面白くて、専門家がアイデアを比較するディスカッションをしているような体裁で書かれています。現時点だと日本語での出力と英語での出力が混ざっていて少し読みにくい部分もあるのですが、それでも、どこが評価され、どこが悪かったのか、理由の筋道まで追えるのが参考になります。順位を見るだけでは見えない観点が得られるので、迷いが減って取捨選択が進みます。

なので Idea Generation を使うなら、上位の案から見つつ、気になった案については検討プロセスを確認するのが良さそうです。全部を精読しにいくのではなく、評価と理由を手がかりに探索範囲を絞ることで、“読書”の時間を減らしながら、効率よく当たりを探すことができます。

つまり、最初から全部を精読するのではなく、まずは上位と一部の気になるアイデアに絞って検討をすすめる。そうして、ミニ企画書レベルのアイデアを短時間で増やし、次の検討に回すことに価値がある。そんな使い方がしっくりときました。

まとめ

Idea Generation を触ってみて感じたのは、AI が「アイデア出し」を楽にしてくれる一方で、人間側の仕事が「発想」から「読む・選ぶ」へシフトするということでした。出力の量と情報密度が上がるほど、今度は評価軸や取捨選択の仕組みがないと回りません。

今回の学びをまとめると、ポイントは次の3つです。

  • まずは評価値を信頼して上位から見る。全部を最初から読まない
  • 気になる案は、検討プロセスで「なぜその評価か」を確認する
  • 発散は AI、収束は人間。次の検討に回せる形に整えるのが価値

アイデアが出ない悩みは、かなりの確率で解消できます。その代わりに出てくるのは「読書」の問題。ここをうまく捌けるようになると、Idea Generation は企画の立ち上げをかなり楽にしてくれると感じました。

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