Alibaba Cloud × サーバーレス × WebAssembly 次世代クラウド実行基盤の可能性

2026年3月18日掲載

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ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。

クラウドの進化は「仮想マシン」から「コンテナ」、そして「サーバーレス」へと移り変わってきました。Alibaba Cloudでも、サーバーレスやクラウドネイティブ領域のマネージドサービスを拡充し、その進化を強く推進しています。

サーバーレスは、インフラ管理を意識せずコード実行に集中できるモデルとして広く普及してきた一方で、以下のような課題も指摘されています。

  • コールドスタートの遅延
  • ランタイム依存(言語やOSに縛られる)
  • コンテナ基盤のオーバーヘッド

これらの課題は、サーバーレスの利便性を損なうものではありませんが、「より軽量で、より高速に起動できる実行基盤はないのか」という議論を生み出しています。

こうした背景の中で注目されているのがWebAssembly(Wasm)です。本記事では、Alibaba Cloudとサーバーレス、そしてWasmとの関係性が今後どうなっていくのか推察してみます。

目次

Alibaba Cloud のサーバーレス戦略

Alibaba Cloud では、執筆時点で以下のようなサーバーレス関連サービスを展開しています。

■FC(Alibaba Cloud Function Compute)

FCは、Alibaba Cloudのプロダクトの中でも初期からあるプロダクトで、実務的な別の記事もありますので、そちらもご覧ください。
FCは、イベント駆動型の FaaS(Function as a Service)でコード単位で実行でき、従量課金モデルを採用しています。

■ ACS(Alibaba Cloud Container Compute Service)

ACSは、別の記事でも詳しく紹介していますので、そちらもご覧ください。
ACSは、Kubernetes の運用を意識せずにコンテナを実行できる、完全サーバーレス型のコンテナ実行基盤です。Pod 単位で自動スケールし、インフラ管理を最小化できます。

■ ASM(Alibaba Cloud Service Mesh)サーバーレスゲートウェイ

ASMについては、Weekly Update以外の関連記事がなかったため、機会があれば今後別の記事で触れてみたいと思います。
ASMはクラスタ依存を減らしたゲートウェイ構成を提供し、マイクロサービスやAPI管理をより柔軟にします。

3つのサービスの特徴や違いを図で表すと、下記のようになります。

Alibaba CloudのACSやASMサーバーレスゲートウェイは、Kubernetesクラスタの設計やノード管理をユーザーに委ねるのではなく、コンテナ実行やAPI公開という結果だけを提供する設計になっています。これはユーザーにKubernetesを「使わせる」のではなく、「意識させない」方向への進化と捉えることができます。

しかし多くのサーバーレス基盤の内部では、依然としてコンテナが実行単位として使われています。コンテナはサーバーレスを支える重要な技術ですが、それ自体にもオーバーヘッドは存在します。

では、コンテナよりもさらに軽量な実行モデルは存在しないのでしょうか。実行単位をさらに軽くできれば、サーバーレスの弱点であるコールドスタートの遅延改善にもつながります。

そこで注目されているのが WebAssembly(Wasm)です。

WebAssembly(Wasm)とは

WebAssembly (Wasm)はもともとブラウザ向けの軽量バイナリ実行形式として誕生しましたが、現在では「クラウドネイティブ実行基盤」としても注目されています。

Wasmについても、別の記事で詳しく紹介していますので、そちらもご覧ください。

Wasmの特徴

  • 軽量なバイナリ形式
  • 高速起動(コンテナより起動オーバーヘッドが小さい傾向)
  • 実行環境への高い移植性(ランタイムがあれば同一バイナリを実行可能)
  • 強力なサンドボックス機構

特にサーバーレスとの相性が良い理由は「分離性」と「起動の速さ」にあります。

この分離性の特徴はセキュリティ面でも有利に働き、コンテナはホスト OS カーネルを共有しますが、Wasmはランタイム内の仮想実行環境で動作し、直接OSのシステムコールを実行するのではなく、ランタイムを介して制御された形でホスト機能にアクセスします。必要な機能のみを明示的に許可する構造のため、攻撃対象領域を小さく設計できる可能性があります。マルチテナント型のサーバーレス基盤において、この性質は大きな意味を持ちます。

Wasmは小さなバイナリをランタイム内で直接ロードして実行できます。構造上、コンテナのようなイメージ展開や名前空間構築を伴わないため、初期化工程を大幅に簡素化できる場合があります。その結果、オーバーヘッドが少なくなる傾向があり、短時間で起動できる特性を持つため、実行時間の短い関数型ワークロードと相性が良いと考えられています。

コンテナとWasmの違いを簡単な図で整理すると、以下のようになります。

Alibaba Cloud × Wasmの現在地

執筆時点ではAlibaba Cloudが「Wasmネイティブ実行環境」を公式プロダクトとして大々的に展開しているわけではありませんが、以下のような動きがあります。

  • コミュニティベースでKnativeとWasmの統合例
  • サーバーレスコンテナ基盤との組み合わせの可能性
  • エッジコンピューティングとの親和性

Alibaba CloudにおいてWasmはまだ主流プロダクトではないものの、周辺技術と組み合わせて使用される可能性が見え始めている段階と言えます。こうした状況を踏まえると、Wasmの「軽量」「ポータブル」「セキュア」という特性はエッジ+サーバーレスの文脈で今後大きな可能性を秘めています。

Wasmの面白さとこれからの展望予想

「クラウドネイティブ実行基盤」として、Wasmが注目される理由は「置き換え」ではなく「拡張」にあります。コンテナを完全に消すのではなく、高頻度かつ短時間の処理はWasmで行い、長時間・状態保持が必要なものはコンテナで行うという使い分けが考えられます。

また、AI 推論やデータ前処理などの軽量なワークロードを、エッジで高速実行する用途にも適しています。Alibaba Cloudが推進するサーバーレス化の流れと、Wasmの軽量実行モデルは、方向性として非常に相性が良いと言えるでしょう。

これからの展望はあくまで推測になりますが、今後想定されるAlibaba Cloudプロダクトの進化シナリオとしては、以下のようなシナリオが考えられます。

  • Function ComputeにWasmランタイムが統合される。
  • ACS上でWasmワークロードをネイティブで実行可能になる。
  • エッジ × Wasm × AI 推論基盤が強化される。

サーバーレスの「次の最適化レイヤー」として、Wasmが本格採用される可能性はあります。

まとめ

Alibaba Cloudは「サーバーレスコンテナ」、「サービスメッシュの簡素化」、「イベント駆動アーキテクチャ」といった方向で着実に進化しています。

そこにWasmという軽量実行基盤が組み合わさることで、「より速く、より小さく、よりポータブルなサーバーレス環境」が実現する未来が見えてきます。Kubernetesの抽象化が進んだ先にあるのは、実行基盤そのものの最適化です。その候補の一つとして、Wasmが現実的な選択肢に入りつつあるのかもしれません。

Wasmはまだ発展途上の技術ですが、クラウドネイティブエンジニアにとっても、今のうちに追いかけておく価値のあるテーマではないでしょうか。

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