MS&ADインシュアランスグループの中核企業として、代理店を通じた損害保険の販売を行う三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上)とあいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下、あいおいニッセイ同和)では、顧客とのデジタル接点拡大の一環として、個人のお客さま向けマイページ「ご契約者さま専用ページ」の利用促進を行っています。そのページへの登録率アップとセキュリティ強化を実践すべく、SMS送信サービス「SoftBank Message Link」を導入。保険の契約内容案内はがきなど郵便物の電子化に伴う更新通知やページログイン時のSMSによる二要素認証を実施し、顧客の保険手続きにおける効率化を実現しました。
業界をリードする大手損害保険会社である三井住友海上とあいおいニッセイ同和。両社は、保険に対する顧客ニーズの多様化や近年激甚化している自然災害による保険の引き受け・支払い頻度の増加といった事業環境の変化に適応すべくデジタルの活用を率先して行っています。
「保険を単純に販売するだけではなくて、災害による被害拡大の防止や事故の未然防止、復旧を早めるソリューションの販売など補償(保障)の前後におけるサービスの開発にも力を入れています。こうした従来からの事業の変化も踏まえつつ、お客さまのさまざまなニーズにお応えするために行っている取り組みの1つに、お客さまとの『デジタル接点の拡大』があります。当社もあいおいニッセイ同和も、基本的には代理店を通して対面コミュニケーションを行うのが通例です。そこに、よりデジタルに寄せた動きを取ることでお客さまの体験や提供価値向上につなげていこうと行っているものです」(辺見氏)
MS&ADインシュアランスグループ中期経営計画の基本戦略の中でも語られている「お客さま接点のデジタル化」。その入り口の1つである「ご契約者さま専用ページ※」は、保険契約における手続きの効率化や簡素化といった顧客の利便性を考慮する上で重要視されています。
ご契約者さま専用ページのTOP
「当社は、ご契約者さま専用ページの運用を2003年からスタートしているのですが、ページへの新規登録が思うように進みませんでした。というのも、保険契約時はお客さまに多くの手続きが発生するため、それに加えてご契約者さま専用ページの登録をご案内すること自体が負担になっていました。さまざまな推進活動を行ってきましたが、契約全体の40%程度にとどまっていた状況でした」(辺見氏)
※ご契約者さま専用ページ:保険の契約内容確認・変更や保険金請求手続きなどの幅広いサービスを24時間365日行えるインターネットサービスです。
ワンプラットフォームという枠組みで、システム開発検討が入る場合は、普段から声を掛け合うことの多い三井住友海上とあいおいニッセイ同和。同じシステム基盤でご契約者さま専用ページを運用するあいおいニッセイ同和でも、ページの利便性向上や登録率の底上げなど同様の課題を持っており、両社は共同でシステムの改善を行うことになりました。改善ポイントとして挙がったのは3点あり、1つ目は「ページ登録の簡略化」です。
「ページへの新規登録は、お客さまに登録ページのQRコードを読み取っていただき、登録したいメールアドレスから空メールを送る方法を取っていました。保険契約に必要がない情報であるメールアドレスを取得しなければならない点や登録の途中で迷惑メールフィルタに引っかかりメールが届かないなど、完了いただくまでの工程が多いというハードルがありました」( 酒井氏)
2つ目は、ページへログインを行う際の「セキュリティの強化」です。
「保険会社への大量の不正アクセスのニュースもあり、以前行っていたメールアドレスでの二段階認証だけでは、セキュリティレベルに不安がありました。いつ攻撃されてもおかしくない時代です。世間的にも、より強固な二要素認証が求められていることもあり、対策が必要と判断しました」(辺見氏)
3つ目は、契約更新や長期契約顧客向けの「郵便物(はがき)の電子化」です。
「『ご契約内容にお変わりはないですか?』と確認するはがきを年に一回お客さまへお送りしています。このはがきを電子化してお客さまへ通知すれば、スムーズにご契約者さま専用ページの中で現況確認や保険証券の閲覧ができます。『紙で通知を受け取りたい』『紙は管理できないからいらない』といったお客さまのご要望にあわせて選択できるようにすることも大事だと考えています。また、企業側からしてもペーパーレスになりますし、コストの削減やカーボンニュートラルへの貢献という点でも電子化は進めたいところでした」(酒井氏)
また、郵便物の電子化については2024年10月からの郵便料金値上げもあり、対策したい部分であったと辺見氏は語ります。
「10月時点での値上げは数十円と大したことがないように感じますが、今後もさらに値上げは止まらないと考えています。そうすると両社いずれも、送付数が100、200の単位ではないですから、数円上がるだけでもかなりのコストアップにつながってしまいます。そうした側面でも、電子化は避けられない課題でした」(辺見氏)
インタビューに応える辺見氏(左)と酒井氏(右)
これらの課題を解決する手段として両社が選択したのがSMS(ショートメッセージ)でした。SMSは携帯電話番号が宛先に設定されるため、メールアドレスを介さずお客さまに通知が可能です。そこで、両社のグループ会社であるMS&ADシステムズ株式会社とともにサービス選定を行い、すでに社内で利用実績のあったSMS送信サービス「SoftBank Message Link」 を導入することになりました。
「何かあったときに迅速に連絡が取れるように、保険の申し込みの際に携帯電話番号を記載してくださるお客さまも年々増えています。お客さまからの情報収集のしやすさやメッセージの届きやすさを考えると、SMSという選択肢が妥当だろうとなりました。
サービス選定にあたっては、コストを比較する手間だけでもかなりかかるものなので、やはり実績があり、信頼がおけるものの中からピックアップするのが前提になります。SMS送信サービス自体は各社大きくコスト差があるわけではないので、その中でも『SoftBank Message Link』を選択した理由は『障害検知がリアルタイムであること』『レスポンス遅延の検知ができる』といった機能面が優れていたためです。それがすでに利用実績の中から分かっていたので、今回採用させていただきました」(酒井氏)
「ご契約者さま専用ページ」と「SoftBank Message Link」をAPI連携で組み込み、システムテストを終えて本格稼働が始まったのは2023年の10月でした。導入後大きなトラブルはなく、順調に運用できていると辺見氏は語ります。
「今回『SoftBank Message Link』が導入できたことで、申込書に書いた携帯電話番号を使ってそのままページ登録ができるようになりました。登録が簡略化できたことで、例えば三井住友海上のページでは、以前40%程度だったページ登録率が2023年10月以降70%くらいまであがってきているので『SoftBank Message Link』での効果はあったと感じています。今後代理店も含めてさらに登録促進を行っていければと考えています。
また、セキュリティ面でもSMSによる二要素認証が達成でき、社内外から求められているセキュリティレベルに追いつけた部分も大きい効果だと思っています。
郵便物の電子化は、まだ一部分の例にはなりますが、自動車保険のご契約者さまへ送っていたはがき約25万通/月のうち約20%にあたる5万通が電子化されてきているという状況です。お客さまの希望制にはなりますが、さらに切り替えを進めていければと対応しているところです」(辺見氏)
同様にあいおいニッセイ同和でも、チラシなどを配布して登録のお願いをしていた以前の方法よりも、ページ登録の伸び率はあがっていると効果を実感しているそうです。
今後はご契約者さま専用ページの利用率の向上に向けて、機能追加や施策を計画しているそうです。そこにも「SoftBank Message Link」を活用する予定があると辺見氏は語ります。
「API連携するとなるとさまざまなシステム開発が伴いますが、そのような使い方とは別に、Webブラウザ上で使える管理画面からSMSを送付できるので、今度ログインされていないお客さま向けにキャンペーンのご案内も兼ねてSMSを送り、ログインを促してみようと考えています」(辺見氏)
最後に、ご契約者さま専用ページという顧客とのデジタル接点の場をどのように活用していきたいか、今後の展望をうかがいました。
「先日の令和6年能登半島地震の際にも『いろいろ家から物を持ち出すことができない状況下で、スマホから証券の確認ができてとても助かった』とお客さまのお声をいただくことができました。普段は感じにくい部分ではありますが、ご契約者さま専用ページにどこからでもアクセスできる環境は、得られる安心感やそこに到達するまでのお客さまの不安が少しでも早く解消されるという点で大事なことだと感じます。
現状、ご契約者さま専用ページの機能は限られたものになっているので、もう少し定期的にログインしていただけるように機能拡充や既存の仕組みと組み合わせたりしながら、お客さまとのコミュニケーションをより活発で価値のあるものに変えていきたいです」(酒井氏)
時代とともに変化するデジタルコミュニケーションの在り方を模索しながらも、よりよい顧客体験を目指して日々取り組む三井住友海上とあいおいニッセイ同和。両社の挑戦はこれからも続いていきます。
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