兵庫県神戸市では、庁舎で利用していた従来の固定電話について「オンプレミスPBX保守・運用管理のコスト」「有線接続による弊害」「働き方改革の推進」「非常災害時の対応」などの複数の課題を抱えていました。そこで、2021年4月にクラウドPBXとFMC※1が融合したサービスである「ConnecTalk」を導入。1,000人を超える職員が本庁舎にて活用しています。
「ConnecTalk」導入により課題解決につながり、電話配線工事が不要なことからコロナ禍という非常災害時においても、行政としての迅速な対応に役立ちました。
※1 FMC(Fixed Mobile Convergence):携帯電話やスマ-トフォンなどのモバイル端末とオフィスの固定電話間でシームレスな内線通話を可能にする仕組み
「非常災害時においてどこまでフレキシブルに活用できるかは未知数でしたが、コロナ禍の経験を経てとても有用であることが分かり、柔軟に対応拠点を設置できるなど活用イメージが明確になりました」
兵庫県神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 中井 秀太郎 氏
人口約150万人を有する政令指定都市の神戸市では、全国的な課題である人口減少に大きな危機感を持っていると言います。
「2023年10月には人口が150万人を割り、市役所内でも大きな話題となりました。少子高齢化が進み課題が増えていく中でどうやって行政として対応していくか、検討を重ねながらさまざまな取り組みを進めています。そのひとつとして『行財政改革方針2025』を策定し、同方針の中で、将来にわたって市民サービスの維持・向上を目指す『スマート自治体』の実現を目標として定めており、目標達成ための取り組み事項として『DXの推進』が重要な役割を占めています」(中山氏)
神戸市がDXを推進していく中で、見直しの対象として取り組んだのがオンプレミスPBXをベースとした固定電話の運用でした。従来の運用には大きく4つの課題があったと中井氏は語ります。
「まず『オンプレミスPBX保守の運用管理のコスト』です。オンプレミスPBXの保守には専門的知識を有する作業が必要となりますが、この作業を業者へ委託するには高額なコストがかかっていました。
次に『有線接続による弊害』が挙げられます。
組織改正やレイアウト変更などにより座席の大きな移動が必要となった場合、座席の場所に基づいて固定電話を移動させ、電話配線工事を行う必要がありました。大規模な組織改正が生じる前は、ただでさえ通常業務などで慌ただしいところに業者との工事調整・立ち合いが重なり、工事の際の人的コストや業務負担が生じていました。
加えて、職員の座席が固定されていたことも弊害として挙げられます。電話取り次ぎの手間を減らすためには、自身の外線・内線番号が紐づけられた電話に自身で出る必要があり、固定電話の配置によって座席が固定されていました。このことがフリーアドレスを阻害する要因になっていました。
さらに『働き方改革を推進』する上での課題もありました。
昨今『働き方改革』がトレンドとなる中で『固定電話のままでよいのか?』との声が挙がりました。座席に固定されないことに加えて、あらゆる所属で生じている電話取り次ぎなどの手間を軽減できるような形で電話環境を整備する必要がありました。
そして『非常災害時の迅速な対応』も課題でした。
電話環境の用意には、2つ目の課題『有線接続による弊害』でも挙げたように電話配線工事の必要がありますが、非常災害時の重要なインフラである通信環境の整備に時間を要することは、大きな課題と感じていました」(中井氏)
これらの課題を抱える中、ソフトバンクからの提案によりクラウドPBXとFMCを融合したサービス「ConnecTalk」を知った神戸市。新たな電話環境の整備にあたってはさまざまなパターンを検討・試算し、「ConnecTalk」には当時以下の点にメリットがあったと中井氏は語ります。
「神戸市には本庁舎である1号館庁舎に加え区役所などの複数の庁舎がありますが、当時1号館庁舎のオンプレミスPBXが更新タイミングを迎えていたことと、組織改正などにより頻繁に座席替えやレイアウト変更が行われていた状況を踏まえ、1号館庁舎への導入を検討しました。『ConnecTalk』は導入に伴う他庁舎での大きな電話環境の変更が不要なため、そのまま引き続き運用できる点は大きなメリットでした。また、職員が使い慣れている端末であるiPhone を提案していただいたことや、クラウドPBXと連携した1,000台を超える規模の携帯電話の導入実績があったことによる安心感も大きかったです。加えて、WEB上で簡単に端末の回線設定を変更できることや柔軟な着信設定が可能であること、設定に関して分からないことがあった際にはすぐに確認・相談できるサポート体制が整っていたことも安心材料の一つでした」(中井氏)
実際に運用管理をする中でも「サポート体制が充実しているのでとても助かっている」とも中井氏は語ります。
「『このような設定ができますか?』など、ちょっとしたことでもすぐにソフトバンクさんへ相談できて助かっています。また『ConnecTalk』は固定電話と異なり、電波の影響を受けてしまいますが、電波対策もしっかり行っていただいています」(中井氏)
「ソフトバンク様には、導入時はもちろん導入後もしっかりとフォローや追加電波対策などご対応いただいています」
兵庫県神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 中井 秀太郎 氏
神戸市では、「ConnecTalk」の導入と併せて固定電話をiPhone およびフィーチャーフォン(従来型携帯電話)に置き換えるとともに、台数も約3割削減しています。
議会対応などで職場を離れることの多い課長級以上の職員へは、より柔軟な活用が可能なiPhone を1人1台貸与、係長級以下の職員については既存の固定電話をフィーチャーフォンに置き換え、複数名で端末を共用する形で活用しています。
これによって導入前の課題が解決できたと家久氏は語ります。
「『オンプレミスPBX保守の維持管理のコスト』については、クラウドPBXにしたことで全体費用としては上がったものの、維持管理コスト、人的コストを削減できました。加えて、固定電話に代わりiPhone およびフィーチャーフォンを導入したことで『有線接続による弊害』も解消できたほか、複数の『働き方改革』も推進することができました。具体的には、電話配線工事に係る費用が不要となったほか、各所属内の電話配線工事の調整・立ち合いを担っていた各所属の庶務担当者の負担も軽減されました。また、持ち運びができる電話端末となったことで、電話による座席の制約がなくなり、フリーアドレスが促進されました。私が所属するデジタル戦略部でも係単位でのフリーアドレスを導入しており、毎週水曜日は係を超えて部内の好きな席に座ることも可能な運用となっています。普段業務で話す機会のない職員との会話が生まれるなど、職場全体のコミュニケーションが活性化されていると感じます」(家久氏)
また電話が持ち運びできるようになったことで、従来より電話の取り次ぎがスムーズになったと語ります。
「以前は、ほかの職員宛の電話を受けた際、固定電話では転送に一定の時間がかかってしまうケースもありました。『ConnecTalk』導入後は電話端末をその職員へ渡すだけで取り次ぎが完了するため、相手方を待たせる時間が減少し、市民サービスの向上や人的コストの削減につながりました。また、会議室での作業時や庁舎内の倉庫などに物を取りに行く際にも電話端末を携帯することができ、執務室内の座席のみでなく広く柔軟に庁舎内で電話を活用できるようになりました」(家久氏)
その他の導入効果として、中井氏はこう語ります。
「オプションサービスの活用により通話履歴データ内容の収集※2も便利になりました」(中井氏)
※2 3rd Party製の通話録音サービスおよびそのオプション機能である通話履歴データ収集サービスとConnecTalkを連携させることで、0ABJ通話履歴の録音・収集を行うことも可能
神戸市ではデータ利活用に力を入れており、通話履歴データから庁内の内線使用状況データを取得し、BIツールを用いて可視化。庁内で共有し通話状況を分析することにより、職員の働き方改革に役立てているとのこと。
導入前の課題「非常災害時の迅速な対応」について、実際に「ConnecTalk」の導入が役に立った場面があったといいます。
「コロナ禍において、PCR検査を受けた市民に対して、検査の結果陽性であった旨の連絡、療養期間および療養中の注意事項の案内、またその他市民の方からの問い合わせ対応を行うため、急遽150人規模のコールセンターを設置する必要が生じました。電話対応の人員は各部署からの応援職員を動員し、電話端末は庁内の各所属で固定電話に代わり使用しているフィーチャーフォンを一時的に引き上げて準備したほか、一部追加で調達も行いました。ソフトバンク様には、庁内から引き上げた電話端末の電話回線設定変更や端末の追加調達を依頼し、どちらもすぐに対応していただいたことにより迅速にコールセンターを設置することができました。『ConnecTalk』を導入していなければ、電話配線工事などに一定の時間を要していたと想定されるため、ここまでのスピード感でコールセンターを設置することは難しかったと思います。コールセンター業務の立ち上げを迅速に対応できたという点で『ConnecTalk』を導入した効果を実感しました」(家久氏)
「神戸市ではコロナ禍前の2019年10月から『ConnecTalk』導入検討を始めており、導入当初に『非常災害時の対応』を考慮していたものの、実際にどこまでフレキシブルに活用できるかは未知数でした。コロナ禍の経験を経てとても有用であることが分かり、柔軟に対応拠点を設置できるなど非常災害時の活用イメージが明確になりました」(中井氏)
現在は既存のオンプレミスPBXを使用した固定電話を使用している庁舎もあるという神戸市。今後の電話環境の展望についてもお話を伺いました。
「神戸市では現在、『ConnecTalk』を導入した1号館庁舎の隣で2号館庁舎の再整備プロジェクトが進行しています。新たな2号館庁舎においても、1号館庁舎の環境を拡張することができれば大掛かりな工事が不要となり、初期投資コストを抑えることができます。最終的には区役所などを含めて庁内の電話環境を一元化できれば庁内全体の管理コストも低減できると思いますが、すでにさまざまな電話網が構築されているので一筋縄ではいきません。タイミングを見計らいながら検討していきたいと考えています。また、神戸市ではBYOD※3を導入していることも踏まえながら、公用の電話に必要な機能を整理しつつ、引き続き庁内全体の電話環境・執務環境の最適化を図っていきたいと思っています」(中山氏)
※3 BYOD(Bring Your Own Device):個人で所有するスマートフォン・タブレット・PCなどの端末を業務で利用すること
また、神戸市では電話環境の整備以外にもさまざまな取り組みを進めていると言います。
「RPAやデータ利活用などの取り組みを進めるため、さまざまなICTツールを導入しつつ、DXに関わる人材の育成にも力を入れています。ほかの自治体との連携も積極的に進めており、近隣の自治体からの職員研修派遣の受け入れも行っています。他自治体と連携し取り組みも参考にしながら、スマートな自治体を実現していきたいと考えています」(家久氏)
最後に、神戸市においてDXを推進する上で大切にしている思いを伺いました。
「デジタル戦略部としては、所管課と一緒にDXを進めていきたいと思っています。所管課の積極性を大切にしながらツールの導入が目的にならないように、業務フローを整理した上で適切なツールが導入できるよう意識しています」(家久氏)
また、中山氏は続けてこう語ります。
「人口減少が叫ばれる中、神戸市としても今後さらにDXを進めていき、魅力ある職場として『神戸市』を選んでもらえるよう、スマートな働き方ができる環境を整備していきたいと思っています」(中山氏)
デジタル技術を積極的に活用しながら、DXを推進する神戸市。
「ConnecTalk」の導入は、そうした基盤の礎として大いに役立っていくでしょう。
お話を伺った方
兵庫県神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 ICT業務改革担当 係長
中山 圭輔 氏
兵庫県神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 ICT業務改革担当
中井 秀太郎 氏
兵庫県神戸市 企画調整局 デジタル戦略部 ICT業務改革担当
家久 いづみ 氏
拠点間の内線通話をシームレスにつなげたり、外出先でもオフィスの電話を受発信できます。PBXのクラウド化により初期投資を抑え、高音質なVoLTEを活用することで安定性のある通話環境を構築します。既存PBXとの接続も可能なため、拠点ごとの段階的なクラウド化も実現できます。
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