株式会社サンゲツ(以下、サンゲツ)は、壁装材や床材、カーテンなどを中心にインテリア事業を展開するリーディングカンパニーです。同社では、現場から上がる数多くの業務改善要望に対して、IT部門の人員が対応しきれないという課題に直面していました。そこで、専門的な知識がなくてもアプリケーションの開発ができる、ノーコード開発プラットフォーム「AppSheet 」を導入。社員自らが「市民開発者」となりアプリケーションを開発することで、業務効率化の実現と、企業文化の醸成に挑んでいます。
「DX人材の強化を視野に、市民開発者の育成を推進することで、現場が主体的に課題を捉え解決へ導く組織風土の確立につながっています」
株式会社サンゲツ
DX部門 情報システム部 システム二課長 森 祐輝 氏
名古屋に本社を置くサンゲツは、壁装材や床材、カーテンなど豊富なデザインやラインナップを強みとするインテリアのリーディングカンパニーです。多角的な事業を展開するサンゲツの特徴について詳しく伺いました。
「インテリア事業をはじめ、エクステリア事業、海外事業、空間総合事業、新規事業を行っており、インテリア事業における壁紙シェアと実績はわが社の強みと言えます。また全国に営業網があり、配送機能、施工能力を有していることも特徴です」(森氏)
1849年創業と長い歴史をもつ同社。近年の取り組みをこう話します。
「175年を超える長い歴史の中で、壁紙を中心としたインテリア事業を主軸としてきましたが、近年では”空間全体”をご提案できる『スペースクリエーション企業』を目指し各種施策に取り組んでいます。家具や照明、植栽なども含む、空間全体をトータルでご提案する取り組みを強化しています」(森氏)
サービスの導入を担当したお二人に、業務内容やサービス導入にあたっての役割を伺いました。
「情報システム部 システム二課長を務めており、主な業務は基幹システムの運用保守です。社内アプリケーションを広く管理し、同時に生成AIやRPA、そして今回のAppSheet のような新しいサービスの模索・検討にも携わっています。
AppSheet 導入のプロジェクトでは、初期段階から社内合意形成を図り、全社をあげて推進できる環境を整えるためのプロジェクトマネージャーを務めました」(森氏)
「メイン業務は、弊社で取り扱っている商品情報を管理するシステムサポートです。AppSheet 導入においては、アプリケーション作成時のシステム面での相談役であり、自身でもアプリケーションを作成しています。AppSheet は勉強すればするほど、自分のやりたいことがカタチになる魅力があります」(矢巻氏)
課題として感じていたことを次のように話します。
「現場から上がる多種多様な業務改善要望を、IT部門の人員のみでカバーすることが難しい状況でした。ユーザーからの数々の要望に応えていくには、コストと時間がかかり、個別対応をしていくと属人化するリスクも考えられます。そこで、IT部門に依存しすぎず、ユーザー自身が『困っていることを自分で解決する環境』を整備すれば、細かな要望に素早く対応することができて社員の満足度も向上し、IT部門の負荷軽減にもつながるのではないかと考えました」(森氏)
AppSheet を導入した経緯について伺いました。
「2022年5月にGoogle社で本サービスの説明を受け、『このサービスの導入により、現場に市民開発者が生まれ、多くの課題やニーズを解決できるのでは』と感じました。また、IT部門以外のDX人材を育成していきたいという会社の方針もあり、現場の社員が課題解決の戦力になれると感じたことがAppSheet 導入のきっかけです。その後、社内検証や全社説明を経て、本格導入に至りました」(森氏)
「専門知識のない社員でもアプリケーションの開発ができ、現場からさまざまなアイデアが生まれ、年間で11,618時間の業務削減に貢献しています」
株式会社サンゲツ
DX部門 情報システム部 システム二課長 森 祐輝 氏
「現在は60名以上の社員がアプリケーションを作成することができ、これまでデプロイされたアプリケーションの数は269件に上ります」(森氏)
開発している社員はプログラミングの経験やコード作成の知識があるのでしょうか?
「専門知識がある社員はほとんどいません。商品開発担当でデザイン素材を効率良く探すアプリケーションを作成した社員は、コードの知識やIT部門経験がない入社2年目の若手社員でした。そのため、現場とIT部門が連携し、開発者が作りたい内容をアプリケーションに反映していけるよう相談を重ね、作成をサポートしていきました」(矢巻氏)
開発されたアプリケーションの具体例を教えていただきました。
「内容は多種多様です。例えば、社内で失くしものをした際の遺失物を検索するアプリケーション、地方エリアを担当する営業が効率よく活動ができるよう顧客管理システムと連携したアプリケーション、Googleマップと連動し全国オフィス周辺の美味しい飲食店を探すアプリケーションなど、さまざまな発想が現場から生まれています」(森氏)
AppSheet 導入によって生まれた削減効果について次のように話します。
「アプリケーションリリースの審査を行うデプロイ判定時に、開発者が業務削減効果を申告してもらう形にしています。その数字をベースにすると、年間11,618時間の業務削減に貢献しています」(森氏)
ソフトバンクのサポート体制はいかがでしたか?
「営業の方にライセンスに関わるフォローをしていただいたほか、新しいサービスの情報をこまめにもらえるので、セミナーや新しい情報をキャッチアップしていく上でも大変助かっています」(森氏)
AppSheet のプロジェクトには、営業や商品開発、人事や総務、財務などあらゆる部門から参加しているそうです。市民開発者を増やす取り組みとして次のように語ります。
「それぞれの部門から多くの発想が生まれ、数々のアプリケーションがリリースされていますが、業務効率に直接的に関わるものだけではありません。しかしそれが社員の職場環境の満足度向上に貢献する場合もあります。まずはAppSheet で開発することを楽しんで取り組める環境作り、その入口を作れるように取り組んでいます」(森氏)
一定の水準を保つために、AppSheet で検定の仕組みを導入したと言います。
「アプリケーションを作る上でのガバナンスを整えています。スキルセットのために設けた『AppSheet 検定』は5級~1級まであり、3級が簡単なアプリケーションが作れるレベル、1級は相談会を開催できたり、高度なアプリケーションが開発できるレベルと、難易度別に分かれています。現在は65名が検定をクリアし、1級取得者も現場から数名出ています」(矢巻氏)
AppSheet で作成した数々のアプリケーションはどのように社内展開しているのでしょう。
「部署横断的に取り組みをしているため、全社の業務連絡を行うツールで共有を行っています。また、月次で行っているプロジェクトメンバーの定例会議でも新しい情報を共有しあい、有効な情報を横展開できるよう利用促進を行っています」(森氏)
AppSheet の活用をさらに広めていくために、お二人は次のように語ります。
「市民開発者を増やし、DX人材を育成していくことについては実績がでているので、今後はより効果を定量的に示し、生産性にどれだけ貢献しているというのをしっかり出していきたいです。
自社で開発者を増やして業務効率を上げていくことは、グループ全体の価値向上にもつながると考えています。そこで、サンゲツ以外にも、国内外のグループ企業にも同じスキームを展開し、いずれは業界全体の業務効率の一助になればと考えています」(森氏)
「まだ弊社の中でも全体に浸透しきっていないという部分があるので、より幅広い部署のメンバーに知ってもらい、アプリケーションの開発人材を増やし、利用率も上げていきたいです。そのためにも、検定の実施や相談会によるサポート、全社に向けて取り組みを広く展開して、理解を深めていきたいと思っています」(矢巻氏)
新しい発想を柔軟に取り入れ、常に前進を続ける組織風土。“現場視点”を取り入れた自発的なアプリケーション開発によって、従来の属人的な対応やIT部門に依存した業務改善の課題を大きく変えつつあります。サンゲツの生産性向上と企業価値の向上に、今後も一層の期待と注目が集まります。
お話を伺った方
株式会社サンゲツ
DX部門 情報システム部 システム二課長
森 祐輝氏
株式会社サンゲツ
DX部門 情報システム部 システム二課リーダー
矢巻 名津美氏
「DX&Fun! Presented by SoftBank」
東海地域で放映されている、DXを進めたいと考えている企業の皆さんの背中を押すミニ番組です。その中で放映されたサンゲツ様の取り組みについてはこちらからご覧いただけます。
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