高知県でLPガスの供給を行う土佐ガス株式会社(以下、土佐ガス)は、配送計画作成業務の属人化や、配送員の高齢化といった課題を抱えており、配送事業の安定的な継続のための解決方法を模索していました。そこで2024年4月より、AIで残量予測と配送計画を自動化できる「Routify(ルーティファイ)」を導入。全7名の配送員が毎日活用し配送業務を実施しています。これにより、紙伝票からタブレット管理への切り替えで効率化を図るとともに、配送先選定・配送ルート作成などの業務負荷を軽減。経験を問わず誰でも配送業務をこなせる環境を目指しています。
「配送計画が可視化され、配送員の経験に頼る作業が削減されたことで、未経験者が早期から活躍できるようになり、配送員の急な体調不良による応援配送※にも対応できました」
※応援配送:配送員の急な休暇等の際に、別のスタッフが代わりに配送業務を行うこと
土佐ガスグループ 株式会社アツミ電子計算センター 佐藤 瑞希 氏
災害時にも強いLPガスを供給している土佐ガスでは、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる省電力広域通信技術に対応した無線機をガスメーターに取り付けることで、お客さまの検針情報を毎日自動的に受信できるスマートメーターの導入に注力しています。現在は、高知市横浜・土佐清水市・四万十町窪川にある3つの充填所(じゅうてんしょ)※を拠点としてデータを登録・管理することで、迅速な配送対応を実現しています。
「会社として配送の最適化のためにもスマートメーターは付けていくべきという方針があります。補助金を活用しながら、現在はグループ全体で55%以上のお客さまへスマートメーターの導入を進めており、自動で検針できる件数が増えてきています」(佐藤氏)
しかし同社では、数年前から課題を抱えていました。
「ガス残量予測の精度はスマートメーター設置で向上させることができますが、従来のシステムでは配送順序・ルートの決定を行うことはできず、配送計画作成を配送員に一任していました。しかし配送員の高齢化も進む中で、従来のやり方では現在活躍されている配送員の引退後も安定的に配送業務が継続できるか不透明であり、配送計画作成業務の属人化が課題となっていました。
そこでこの課題を解決するために新たなシステムの導入を決めました」(佐藤氏)
※ 充填所とは、LPガスを容器に充填する設備を有する基地のこと
新たなシステムの導入を検討する中でAI(人工知能)を活用してLPガスなどの残量予測と配送計画の自動化を実現する「Routify」を知ったと言います。
「前任の担当者が、ソフトバンクが九州大学と共同でAIを活用したLPガス容器の配送最適化を可能にするシステムを作っているという情報を収集しており『Routify』の存在を知りました」(佐藤氏)
「Routify」の残量予測から配送計画の作成までシステムとして一気通貫で実施できる点が導入の決め手になったと語ります。
「サービスのご提案や導入前の効果検証をしていただく中で、『Routify』はガスの残量予測、最適な配送タイミングの決定、効率的な配送ルートの自動計算をシステムとして提供してくれる点が、当社の目指している効率的な配送の仕組みの実現に近いのではないかと判断し、導入を進めましょうという話ができました」(佐藤氏)
また、ソフトバンクと行った導入前の効果検証も、導入を決める大きな要因になったと言います。
「当社は高知市内の市街地だけでなく、郊外エリアにも配送を行っています。しかし、特に郊外エリアでは、配送先までの移動距離が長く、配送先も点在しているため、配送タイミングやルートの検討が難しいという課題がありました。残量だけに重きを置くのではなく、郊外への配送最適化のために残量と移動距離の両面を考慮してほしいという要望に対し、ソフトバンクは地域性を理解しチューニングも含め対応してくださいました。これが導入の決め手となりました」(佐藤氏)
お客さまごとに異なる課題や状況があるため、「Routify」を導入したらすぐに配送が最適化できるものではありません。しかし、ソフトバンクも並走し1つずつ課題を潰す形で理想の形に近づけていっていると言います。
「『Routify』を導入した当初は、データ連携の不具合もありました。その中には、導入前の検討事項に含まれていなかった予想外の原因もあり、ソフトバンクの方と一緒に原因を1つずつ調査・解決していきました。その結果、現在ではデータ連携による問題はほとんど発生しなくなりました。『Routify』導入から半年が経過しました。まだ繁忙期を迎えていない状況であり、今後もいろいろな課題に突き当たることもあるかもしれませんが、その都度ソフトバンクの方とともに解決に向けて並走し、安定的なサービス運用実現に向け取り組んでいきたいと思います」(佐藤氏)
管理面では「Routify」上ですべて管理ができるようになったと言います。
「今まで紙で出していた伝票が、基本的にはシステムを使用してタブレット上で管理ができるようになり、紙や印刷のコストの削減や紛失リスクが低減しました。また管理者画面のダッシュボードには1週間でガス切れになる物件や、3日以内に片側のガスが切れる物件のリストなども可視化されているので、毎日視覚的に配送状況をチェックできています。配送員の皆さんは『Routify』の指示通りに配送してくださっているので、配送管理もやりやすくなり非常に助かっています」(佐藤氏)
当初、ベテラン配送員の方は「Routify」が出す配送ルートが自身の考える回り方と違うことがあるので多少ストレスを感じることもあったそうですが、導入後は業務負荷が減ったと配送員の山崎氏は言います。
「以前は、会社から渡してもらう1週間分の配送指図顧客リストから、自分で移動距離を考慮し訪問する順番を考えていました。1日に訪問するお客さまの選定とその順番のリスト作成に毎日30分ほどかかっていましたが、『Routify』を導入してからは、その日訪問するお客さまのリストが自動的に出てくるようになりました。ルートも自動作成されているものの、担当経験の長い地区のため、どうしても自分なりに順番を再検討してしまい、その作業が5〜10分ほどありますが、すべて手作業で行っていたのと比較して、明らかに業務負荷が減ったと感じます」(山崎氏)
配送時に、Roufifyを活用している様子
さらに、未経験者が早期から活躍できるようになり、配送員の急な体調不良による応援配送にも対応できるようになったそうです。
「従来は配送計画作成を各配送員に一任していたため、配送人員や担当物件の入れ替えなどが発生した際の業務引継ぎや巻き取りが非常に大変でした。また体調不良などによる配送員の急な休みが発生した際、応援配送の調整や手配が難しいという課題もありました。『Routify』導入後は、配送員の画面上では毎日配送計画が自動で作成・表示され、管理者画面上では各配送員の配送計画や配送状況が可視化されるので、本来の配送担当者でなくても配送業務を行うことができる状態が実現できました。その結果、土佐清水の配送拠点で2024年6月頃より配送業務を開始した新人配送員も問題なく配送業務が行えていますし、インフルエンザによる急な配送員の病欠が発生した際も速やかな応援配送手配で対応することができました」(佐藤氏)
初の繁忙期を迎えるにあたり、引き続き1歩1歩ソフトバンクとともに『Routify』の安定運用や効果の最大化に取り組んでいると言います。
「ベテラン・新人といった配送員の経験値を問わず、また閑散期や繁忙期といった季節性を問わず、“誰に対して”も“いつでも”安定かつ最適な配送指示が出せる状態を『Routify』を使って作っていきたいと思っています。
これから、導入後初の繁忙期である冬を迎えますが、ソフトバンクの方とともにこの繁忙期を乗り越えたいと思います。そして、『Routify』に全てを安心して任せられるようになったら、さらに会社が理想とする配送最適化の実現に1歩近づくことができると思っております。
また当社社長からも、『Routify』の活用により配送員の経験値に依存することなく、安定してお客さまにガスを供給するというガス会社の責務を継続的に果たすことが可能になります。また、業務効率化による配送員の業務負担軽減はもちろん、配送車の移動距離短縮によりCO2排出量が削減でき、環境負荷の軽減にも効果が表れると考えております。導入企業が増えデータが累積されていくことで、『Routify』が今後さらに改善されていくことを期待しておりますとのコメントもございます」(佐藤氏)
「Routify」導入をきっかけに、効率化を進めている土佐ガス。理想とする配送の仕組みを目指す挑戦が、地域のエネルギーインフラを支えています。
お話を伺った方
土佐ガスグループ
株式会社アツミ電子計算センター
佐藤 瑞希 氏
土佐ガスグループ
株式会社アツミ物流
山崎 氏
LPガス事業者が保有する検針データや配送データなどをもとに、ガスの残量予測と配送計画を自動で作成。LPガス容器の配送最適化を実現し、配送員の高齢化や人材不足を解決します。
本事例のサービスに関する導入へのご相談やお見積りなどについては、下記よりお気軽にお問い合わせください。
条件に該当するページがございません