農薬・農業資材の商社として長年の歴史を持つ株式会社コハタは、近年、スマート農業分野に注力しています。広大な農地の広がる北海道や東北地域では、ドローンや農機の自動運行による効率化が求められていますが、それには手動での煩雑な位置補正作業が求められるという課題がありました。そこで、ソフトバンクのRTK測位サービス「ichimill」を導入。手動での位置補正作業が不要となったことで、熟練者でなくてもドローンや農機を扱うことができるようになり、作業効率の大幅な向上を実現しました。
「ドローンの自動航行に関しては、飛行ルートを補正する必要がなくなるネットワークRTKが使えることで作業性がかなり向上したと感じています」
株式会社コハタ 営業部 スマートアグリチーム 久本 翼 氏
昨年、創業100周年を迎えた株式会社コハタ(以下、コハタ)は、農薬や農業資材の販売を主軸に、北海道に7拠点、東北に5拠点を構え、地域に根ざした事業を展開しています。
近年では、農業用ドローンや農機の自動操舵といったスマート農業分野にも積極的に取り組んでいましたが、ドローンによる農薬散布や農機の自動操舵において不可欠な「高精度な測位サービスの確保」に課題を感じていました。当時、位置測位に利用可能だったRTK※サービスは測量向けに開発されたものが多く、価格も非常に高価であったため、農業分野での導入には大きな障壁がありました。また、地域によってはRTKサービス自体が提供されていなかったり、ドローンでの利用が難しいといった問題も存在していました。さらにRTKがない環境では、ドローンの飛行ルートや農機の走行経路のずれを手動で補正する非常に煩雑な作業が必要で、作業効率を著しく低下させていました。特に、何十、何百という区画で作業を行う請負業務においては、この手動補正の負担が大きく、事業拡大の足かせとなっていた同社は、「安価でどこでも使えるRTKサービス」を強く求めていました。
「農機の自動操舵は、トラクターなどのハンドルに電動モーターを取り付け、RTKを使ってまっすぐ走るように補正制御します。特に正確性を重視する播種作業は手動ではかなり難しく、低速で継続して走り続けるには集中力も必要になるため、誰でも同じ精度でまっすぐ走らせることができる自動操縦は作業の効率化には欠かせません。農薬散布ドローンにおいても、自動飛行や散布の精度向上のためにRTKが必須となり、農家や販売会社の間で『安定したRTKがほしい』という声が一気に高まりました」(久本氏)
※RTK:リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)。GNSS(衛星測位システム)を利用し、リアルタイムでセンチメートル単位の高精度な位置情報を取得する技術。
農機の自動操舵
例年農業に関する大型展示会へ参加されているという同社は、スマート農業に関するイベントでGNSSと全国3,300以上の独自基準点によってRTK測位行い、誤差数センチメートルの測位を可能にするichimillを知り、導入の検討をはじめたそうです。ichimillを選定した理由は、その価格設定とサービス提供エリアの広さにあったと言います。
「ichimillは自社の販売エリア全域でサービスが展開されており、価格も比較的安価でした」(早坂氏)
インターネット経由で仮想的な基準点からの補正データを使うネットワークRTK※測位なら自分たちで基準局を設置する手間が不要で、より広範囲で手軽に高精度測位が可能となるため、ichimillはまさに同社の求める「安価でどこでも使えるRTKサービス」だったと言います。
また、農業用途において十分な精度があったことが導入の決定打になりました。
「ドローンを用いて現地で実際に信号を拾えるかどうかのテストを実施し、問題なく利用できることを確認した上で導入を決定しました。この実機での検証によって安心してサービスを導入できました」(久本氏)
導入当初は、RTK技術に関する社内知識の浸透に苦労した側面もあったそうです。
「RTKという技術やネットワークRTKの利点、営業知識を社内で共有するため、社員向けの研修を毎年実施し、技術理解と活用を促進しました。この地道な取り組みが、ichimillの社内での定着と、その後の事業拡大につながったと思います」(早坂氏)
※ネットワークRTK:従来のRTKは基準局と移動局の2つの受信機で衛星信号を受信し、両者の差分をリアルタイムに補正するため、現場ごとに基準局を設置する必要があるが、ネットワークRTKでは複数の基準局のデータを利用したインターネット経由の補正サービスを使い、移動局(測量機)1台でリアルタイムにcm級の精度を実現するため、利用者自身が基準局を設置する手間がなくなり、広範囲で高精度な測量を手軽に行える。
従来、ドローンではGNSS測位の誤差を手動で補正することである程度の運用が可能でしたが、自動操舵では手動補正ができないため、誤差のあるGNSSでは直進走行の精度が保てず、実用が困難でした。ichimillの導入により、リアルタイムで高精度な位置情報が取得できるようになったことで、自動操舵においても安定した走行が可能となり、業務効率が大幅に向上したと言います。
「ichimillによるネットワークRTK測位の導入によって、手動の位置調整作業が一切不要となりました。機体の電源を入れて衛星の信号を拾うだけでドローンを飛ばせるため、作業が格段に楽になりました」(久本氏)
特に、広大な農地や多数の区画で作業を行う業務においては、こういった手間の削減が大きなメリットとなったと言います。
この効率化は、事業構造や事業の拡大にも大きな影響を与えました。
「以前はラジコンヘリによる手動散布が中心だった請負業務が、ichimillを活用したドローンによる自動散布へと急速に移行し、現在では請負業務の約7割がドローン散布に切り替わっています。作業時間の短縮だけでなく散布精度も向上しました」(久本氏)
ドローンによる果樹園での自動散布
さらに、ichimillの導入は事業の拡大にも貢献しています。
「高精度な自動操舵が可能になったことで、ドローンや自動操舵システムの販売促進にもつながりました。ネットワークRTKの存在がなければ、ここまでドローン散布の請負業務を拡大することは難しかったです」(久本氏)
スマート農業分野においてもはや不可欠なものとなっているRTK技術を活用し、業務効率向上を実現した同社。RTK技術が農業が抱える構造的な課題解決にも貢献していると語ってくれました。
「手動では難しい『まっすぐな走行』が誰でも実現できるため、熟練者でなくても作業が可能になり、後継者不足や人手不足の解消、省力化に貢献しています。まだ手動で作業している農家も多く存在しますが、機材の買い替えに伴い、今後数年でネットワークRTKを利用した自動化がさらに普及すると思います」(久本氏)
今後もスマート農業の発展に貢献していく強い意志を持つ同社に期待します。
お話をうかがった方
株式会社コハタ
営業部 スマートアグリチーム
久本 翼 氏
株式会社コハタ
営業部 スマートアグリチーム
早坂 智史 氏
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