和歌山県紀の川市

2026.1
個人端末の業務利用を一掃しセキュリティを強靭化
紀の川市が挑む防災強化とDX

お客さま
和歌山県 紀の川市

業種
公共

エリア
近畿

従業員規模
501〜1,000人

導入サービス
ConnecTalk

概要

庁内通信設備の老朽化と、職員による「個人端末の業務利用」の常態化という二重の課題を抱えていた和歌山県紀の川市。当初は電話交換機(PBX)の単純更新が検討されていましたが、最終的にクラウドPBXとFMC※を融合したサービス「ConnecTalk」の導入と全職員へのスマートフォン貸与という大きな決断をしました。現場の「交換手業務」に配慮した独自の運用や内線ルールの策定など、細やかな配慮によって導入ハードルをクリア。併せて業務用スマートフォンへの全面移行によりセキュリティを確保しつつ、「災害時の情報連携強化」と「将来的な業務効率化」に向けた通信基盤を確立しました。
※ FMC (Fixed Mobile Convergence ):携帯電話やスマ-トフォンなどのモバイル端末とオフィスの固定電話間でシームレスな内線通話を可能にする仕組み

導入前の課題

オンプレミスPBXが老朽化。不具合に備えて予備の中古基板や電話機を買い集めてはいるものの、いつ限界がきてもおかしくない「綱渡り」の運用が続いていた。

導入後の効果

「ConnecTalk」への移行により、庁舎内のオンプレミスPBXを撤廃。ハードウェア故障のリスクから解放され、安定した通信基盤を確立した。

導入前の課題

職員の約6割が業務で個人のスマートフォンを使用しており、セキュリティリスクへの懸念に加え、災害時の情報連携にも課題があった。

導入後の効果

全職員約700名に業務用スマートフォンを配備。ビジネスチャットの導入と併せ、「個人端末の業務利用」を一掃。災害時には現場の写真をリアルタイムで共有するなど、防災力の強化も実現した。


目次


紀の川市 畠口 郁弘 氏

「全職員へのスマートフォン配備で『個人端末の業務利用』を一掃し、セキュリティと防災力を強化できました。災害時の写真共有など機動力を生かし、市民の安心・安全につなげていきます」

紀の川市 企画部 企画経営課 デジタル推進室 室長 畠口 郁弘 氏

庁内業務を圧迫する固定電話運用の負担

紀の川市は2023年4月に策定した「紀の川市DX推進計画」に基づき、行政手続きのオンライン化、庁内業務の効率化、デジタル人材の育成、デジタルディバイド対策を重点的に進めています。

特に庁内業務の効率化においては、固定電話の運用が負担となっていました。導入プロジェクトを主導した畠口氏は、その負担について次のように語ります。

「4月の人事異動や数年に一度の組織改編、レイアウト変更のたびに、電話の配線工事や番号追加にコストと手間がかかっていました。
また、固定電話は複数人で共有するため、『誰宛てか分からない』『担当者に直接つながらない』という非効率さも課題でした。特に電話件数の多い部署では、不在時の伝言メモ作成を含む取り次ぎ業務が職員にとって大きな負担になっていたと思います」(畠口氏)

デジタル化診断で浮き彫りになった「個人端末の業務利用」の実態

そんな中、紀の川市が通信環境の刷新に踏み切ったきっかけは、2つの「課題」が重なったことだと畠口氏は続けます。

「1つは、設置から12年が経過した庁内の電話交換機(PBX)の老朽化です。 いつ壊れてもおかしくない状態で、中古市場で予備の基板や電話機を買い集めて対策していたものの、どれだけ持つか不安な日々でした。

もう1つは、市が実施した庁内のデジタル活用状況を可視化する『デジタル化診断』によって顕在化した、業務環境の課題です。診断の結果、職員の約6割が業務で個人の携帯電話を使用していること、そしてその約8割が『業務用端末がほしい』と回答している実態が明らかになりました。
LINEなどを使った『個人端末の業務利用』が発生しており、セキュリティ面や紛失時の情報漏えいリスクが非常に高い状態でした。また、災害時の情報伝達や連携が円滑にできていないという点も、診断結果から見えた大きな課題でした」(畠口氏)

「スマートフォン全面導入」を選んだ理由

単純にPBXを更新する場合と、スマートフォンを全職員に配備して、クラウドPBX・FMCサービスを導入する場合とで比較検討が行われました。

「クラウドPBX・FMCサービスを導入したとしても、固定電話でできていたことは全てできるようにすることが条件でした。庁舎の館内放送にも固定電話を使用していたため、館内放送設備との連携についても要件に含めました。基本的には職員が違和感を感じずスムーズに移行できるようにすることを一番に考えていました」(畠口氏)

導入検討時、単純な機器費用の比較では、既存のPBXの更新よりもConnecTalkの導入コストの方が上回る試算が出ていました。しかし、紀の川市はあえてこの新たな環境への投資を選択しました。その背景には、平時の業務効率化と有事の際の対応力向上がありました。

「コストだけを見ればPBX更新の方が安価でしたが、それでは組織変更のたびに発生する配線工事の手間や、不在者への電話取り次ぎといった職員の負担は残ったままです。私たちは、そうした見えない人的コストの削減や、将来的な働き方の変化までを含めて費用対効果と考えました。

また、危機管理部門が新たに導入する防災システムとスマートフォンを連携させることで、災害時に現場の職員が写真を撮影し、位置情報とともにリアルタイムで対策本部に送信できるようになります。単なる電話の置き換えではなく、『災害時の情報連携強化』という付加価値を強調し、議会の理解を得ることができました」(畠口氏)

現場のリアルに即した独自の運用ルール

全職員約700名へのスマートフォン配備にあたり、プロジェクトチームが最も腐心したのが「現場の運用ルール」の策定でした。単にデバイスを配るだけでなく、既存の業務フローや職員の心情に配慮した、きめ細やかな調整が行われました。

<悩める「内線番号」は、PCの管理番号で解決>
スマートフォンは正規職員には全員配布とし、それ以外の職員については部署ごとにヒアリングを行って必要数を決定しました。その準備段階でまず直面したのが、700台分の内線番号をどう割り振るかという問題です。ネットワーク周りや設定調整などの実務を担った岡氏は次のように語ります。

「当初は職員番号を使おうという案もありましたが、人事担当課から管理が煩雑になると難色を示されました。そこで目を付けたのが、職員1人1台のPCに割り振られている『ホスト名(固有の数字)』です。既存のPC管理番号をスマートフォンの内線番号として流用することで、新たな番号体系を作る手間を削減しました」(岡氏)

<交換手業務を守る「島ごとのガラケー」設置>
また、代表電話を受ける「電話交換手」への配慮も欠かせません。全職員が個別のスマートフォンを持つと取り次ぎ先が一気に増え、交換業務がパンクしてしまう懸念がありました。 そこで採用したのが、各課の「島(デスクのグループ)」ごとにガラケーを設置し、交換手はいったんそこに転送するという「ワンクッション」置く仕組みです。 

「そのガラケーが鳴ったエリアにいる職員がピックアップする形であれば、内線番号の数は従来の固定電話と変わりません。完全なスマートフォン化ではなく、交換業務の実情にあわせたハイブリッドな運用を選択しました」(畠口氏)

<スマ-トフォンの「持ち帰り」は管理職のみに限定>
休日や夜間の端末持ち帰りについても、議論が重ねられました。

 「当初は全員持ち帰らないルールとする予定でしたが、議会から『いつ起こるか分からない災害に備えるためにも、常に携行できる体制が必要ではないか』という意見もあり、方針を見直しました。
一方で、一般職員からは『監視されている気がする』といった抵抗感もあったため、最終的には組合との調整を経て『管理職以上のみ持ち帰り』という運用に着地しました」(畠口氏) 

このようにそれぞれの意見のバランスを取りながら、紀の川市にとって最適な運用を模索しました。

短期間での導入を支えた「手厚いサポート」

運用ルールの策定や合意形成に時間を要したものの、技術的な環境構築そのものはスムーズに進みました。 

「『ConnecTalk』用に新しくネットワーク回線を引き込んだため、既存の庁内ネットワークとつなぎこむ調整などはなく、そこまで大変ではありませんでした」(岡氏)

一方で、物理的な課題が発生しました。

「庁舎が全面ガラス張りという構造上、一部で電波が入りにくいエリアがあることが判明しました。 導入までの期間が限られる中、ソフトバンクがアンテナ設置や調整などのエリア改善に尽力してくれました。こうしたハード面での手厚いサポートもあり、無事に全庁での安定稼働を実現しました」(畠口氏)

「個人端末の業務利用」の解消と、働き方の変化・BCP対策の強化

令和7年3月に運用を開始した新環境は、すでに大きな効果を上げています。最大の成果は、課題だった「個人端末の業務利用」の解消です。

「スマートフォンの配布と同時にビジネスチャットを導入しました。これにより、職員はセキュアな環境で業務連絡を行えるようになり、個人のLINE利用などのリスクは払拭されました」(畠口氏)

また、職員の働き方にも変化が生まれています。

「自分の部署の直通番号で、どこからでも発信できるので、特に現場に出る職員からは『ありがたい』という声が上がっています。また、席を外していても手元で『不在時の着信履歴』が見られる点も便利だと好評です」(畠口氏)

「固定電話のときはできませんでしたが、ヘッドセットをスマートフォンとつないで通話しながらPC操作ができるようになり、業務効率が上がりました」(岡氏)

もう一つのテーマである「BCP対策」についても、いざというときの体制が整いました。

 「幸い、導入してから大きな災害は起きていませんが、災害発生時に備えて、職員のスマートフォンから現場の写真や位置情報をリアルタイムで入力やアップロードできるようにしています。いち早く正確な状況を把握できる『情報連携の土台』ができました」(畠口氏)

ConnecTalkを利用している様子

次なるステージ「AI活用」と「行政DX」へ

安定した通信基盤と全職員へのデバイス配備が完了した今、紀の川市はさらなるDX推進を見据えています。

「現状はまだ、固定電話をスマートフォンに置き換えた状態に近いです。今後は、この通信基盤の上で生成AIによる音声データの活用などを進め、業務効率化をさらに加速させていきたいと考えています」(畠口氏)

最後に、同じ課題を抱える自治体へのメッセージをうかがいました。 

「今回の導入は、単に機器を新しくするだけでなく、業務の在り方そのものを見直す大きなチャンスになりました。管理部門の負担は増えますが、情報部門だけでなく、総務や管財など関係部署としっかり連携し、役割分担をして進めることが成功の鍵だと思います」(畠口氏)

老朽化した設備の更新を単なる「入れ替え」で終わらせず、働き方改革と防災力強化への投資へと昇華させた紀の川市。その決断と試行錯誤のプロセスは、自治体DXのモデルケースとして多くの示唆に富んでいます。

お話をうかがった方

紀の川市 畠口 郁弘 氏

紀の川市 企画部デジタル推進室 室長
畠口 郁弘 氏

紀の川市 岡 敏礼 氏

紀の川市 企画部デジタル推進室 主任 
岡 敏礼 氏

こちらから資料をダウンロードしていただけます。

本事例での導入サービス

ConnecTalk

拠点間の内線通話をシームレスにつなげたり、外出先でもオフィスの電話を受発信できます。PBXのクラウド化により初期投資を抑え、高音質なVoLTEを活用することで安定性のある通話環境を構築します。既存PBXとの接続も可能なため、拠点ごとの段階的なクラウド化も実現できます。

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