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【書き起こし】2018年3月期 第1四半期 決算説明会(後編)

ソフトバンクグループ株式会社は2017年8月7日に、2018年3月期 第1四半期 決算説明会を開催しました。

動画
資料

決算説明会書き起こし(前編)

SoftBank Vision Fund(SVF)事業

ソフトバンクが組織体系として、当初から「こういう組織体でありたい」と想定していた“群戦略”。昔から「孫の二乗の兵法」について話してきたが、その“群戦略”をやるに当たり一番の要になる部分として、今回の「SoftBank Vision Fund(SVF)」で構えができた。われわれは単に投資家になるつもりではなく、マネーゲームとして、投資事業をやろうということでもない。われわれは情報革命を成し遂げたい。

革新的起業家集団が拡大

情報革命は、1人の人間ではできない。多くの人々の力が結集し、初めて革命ができる。従って、多くの起業家たちを集めた起業家集団が一緒の塊として、情報革命を起こしていく、というのがわれわれの組織論。われわれは51%の株を持ち、子会社として支配しているからうれしいとか、そういう関係性を持とうと思っているのではない。

昔のコンピューターのアーキテクチャーは、メインのコアがあり、下にダム端末があって…というピラミッド構成だった。組織論も同じように、ヘッドクォーターがあって、それに従属する子会社がたくさんあった。しかし、われわれの思いは、むしろウェブに近い形で、上意下達ではない同志的結合として、それぞれが自由性を持って意思決定のできる起業家集団を構築したい。その構えができたのが、このSVFである。

「NVIDIA」はそのうちの一つ。支配しているわけではないが、思いを共有している。思いを共有している「NVIDIA」が、特にAIの分野で画期的な技術革新をし、ポジション取りをしている。CEOのジェンスン・フアンは、そういう思いを共有する同志だと思っている。

「DiDi」は、世界最大の登録者数で、ドライバーの数が2,600万人おり、シェアリングエコノミーの代表格として、急激にシェアを伸ばした会社。中国におけるタクシーでは、99%以上のマーケットシェア、個人の所有している自動車のライドシェアでも、95%のマーケットシェアを持っている。

医療の分野では、血液のゲノム解析によるがん診断事業を行う「Guardant Health」が圧倒的シェアで成長している。

これからIoTを進めていく上で、データのプラットフォームが鍵になるが、「OSIsoft」は米国の電力業界の90%、医薬品、石油・ガス業界というように、世界トップの大企業に多くのデータプラットフォームを提供している。

「Nauto」もわれわれのグループに入った。カメラで運転手や車外の状況を常時モニタリングし、AIで分析して、後々の自動運転に欠かすことのできないデータの集積をする。これを使ってすでに、追突事故の件数が37%減ったということで、今、多くの保険会社と契約が始まってきている。

「Plenty」はIoT・AIを使って、革新的な屋内農場を手掛けている。GAPという国際基準の審査史上最も短期間でオーガニック野菜としての認可が下りた。非常に期待している会社である。耕す面積も水分も99%削減して、IoTとAIを使ってオーガニックで安全でおいしい野菜を作ることができる。

「IMPROBABLE」は、バーチャル・リアリティ(VR)などを活用した大規模なシミュレーションを可能とするプラットフォームの提供企業。

「Brain corp」は自動運転を一般道路ではなくて、建物内の囲われた空間で始めた会社。自動運転を今すぐ一般道でやろうとすると、政府の許認可が要る。しかし建物の中、ショッピングモールの中でやれば、政府の許認可なしに今すぐ自動運転が実現できて、かつ今すぐ人件費の削減ができて、安全に、安心してコストダウンができる。

上に人間が乗って運転する業務用の掃除マシンに「Brain corp」のアダプタを付けて、AIで画像処理をしながら自動運転をする。それで空港やショッピングモール、倉庫などの中で自動運転をすでに実現し、コスト削減と効率化をしている。

われわれソフトバンクグループは従来の日本にあった財閥とも違う。財閥は、自分のマークのようなものを、グループの会社に上意下達でブランドとして共有し、自分たちで染め上げたもので統一してやっていく。しかしわれわれはむしろ、ブランドは自由でいたほうがいい。“SoftBank”のブランドはむしろ付けさせない。自由に伸び盛りの会社が集合して、十分に成長し切ったら卒業していく。そういう成長起業家集団として、それぞれが独自のビジネスモデルで一緒に革命をしていく。従来のシリコンバレーのように、1社丸ごと完全買収して、一つの事業部門として吸収し、一つのブランド・一つのモデルに完全に封じ込めるやり方でもない。われわれはソフトバンク独自の組織論と体系で、世界中のベンチャーキャピタルを全部足した規模よりも大きな資金で、同志的結合集団、起業家集団を結集しようとしている。これが、私が思い描いた“群戦略”そのもののかたちである。

質疑応答

「WeWork」「DiDi」が構築するプラットフォーム論

「WeWork」や「DiDi」などについて、「プラットフォームとそうでないものは全く違う」「分かる人には分かる、分からない人には分からない」と話していたが、プラットフォームとそうでないものの違いについて、詳しく説明してほしい。

 プラットフォームというのは、言ってみれば胴元みたいなもので、OSのような存在。OSの上には、いろいろなアプリケーションが乗るように、一つの共通基盤として多くのパートナーが、上に乗ってくる。そういう共通基盤を提供しており、単なる1アプリケーションではないということ。プラットフォームは、圧倒的マーケットシェアをもって、その業界の基盤を作らなければいけない。自らがアプリケーションと競合するのではなく、多くのアプリケーションを提供する事業者を、自分たちのプラットフォームの上に抱え、場を提供する。

例えば、アリババは多くのマーチャントを、そのプラットフォームの上に乗せて、それぞれのマーチャントは一般消費者に物を売る。課金のプラットフォームを提供するのが、アリババグループであり、商品を検索したり、やり取りをする場も提供する。

同じように、「DiDi」の場合でいうと、自らが運転手を抱えて運転業務を提供するのではなく、そのプラットフォームの上に、多くの運転手が個人事業主のような立場で乗っかる。「DiDi」は、顧客をどの運転手に配分するのか、ヒートマップを作って個人事業主である運転手が、どこに行けば今お客さんが手を挙げるか、ということを事前に予測する。さらに課金のプラットフォームも提供し、全体を俯瞰して多くのお客さまに、サービスを提供する。これがプラットフォーム。

「WeWork」も同じように、自分で不動産・ビルを持っているわけではない。多くのビルを所有している不動産事業者から、ビルのフロア、あるいはビルを丸ごと預かる。その上に、オフィスを持ちたい個人や、中小企業・スタートアップの会社にオフィスの場を共有スペースとして提供する。また最近はAmazon、ゴールドマン・サックスのような大企業も、続々と「WeWork」のプラットフォームの上に乗っている。「WeWork」のプラットフォームに乗ったほうが、オフィスのコストも下がるし、コミュニティーの増大によって、仕事の効率も上がるということを、大企業も認識し始めたということ。

プラットフォームというのは、一般的には、その分野の30%、50%、80%というマーケットシェアをもって、多くのプレイヤーをその上に集める。そのような生業のこと。そして、われわれの好む投資先の多くは、そういう立場の会社が多い。

スプリント再編の行方について、3カ月前の決算会見で、「一番の本命はT-Mobile」と言っていたが、その考えに変わりはないか。また、いつごろ話がまとまりそうか。

 スプリントについては、今複数の事業統合の相手先を想定し、また交渉を行っている。われわれなりに「近い将来」だと思っているので、コメントは控えさせていただきたい。

国内競合他社の新料金プランについて

NTTドコモとKDDIが、分離プランと呼ばれる、料金が1,500円安かったり、5段階に変動する新料金プランを導入したが、ソフトバンクは特に対抗策を打ち出していないように思う。ワイモバイルが好調だからそのままでいいなど、何か考えがあるのか聞かせてほしい。

宮内 われわれは常に、世の中の状況によっていろいろなプランを考えるが、現在のところは全く考えていない。なぜかというと、先ほど孫がプレゼンしたように、ワイモバイルも順調で、ソフトバンクも「デビュー割」などで、スマートフォンの数字がどんどん伸びている状況。そのような意味で、ここ1カ月ほど様子を見てきたが、全く影響がない。同時に、従来から申し上げているように、ワイモバイルとソフトバンクの差別化がうまく演出できており、ユーザーにもフィットしているのではないか。今のところ、全く変える方向性はない。

 ご質問にもあったように、“分離”プランということで、実態として特段大きな値下げにはなっていないのではないか。お客さまがそちらに多く流れ込んでいるというようには、認識していない。従って今のところ必要ないのではないかと考えている。

5G実現に向けた取り組み

5G技術について、取り組みの状況と、孫社長の技術に対する期待の言葉をいただきたい。

 5Gは重要な技術だと認識している。技術が2Gから3Gになり、3Gから4G、4Gから5Gになるのは、大きな流れとして間違いなくやってくると思っている。

5Gになると、何が良くなるのかというと、通信速度が速くなれば、通信のレイテンシーが短くなり、IoTのいろいろな接続に、より適したネットワークができる。利点はたくさんある。いつ頃の時期かというと、2020年以降だと思う。しかしソフトバンクは、5Gのスタンダードが完全に固まる前に、世界で最も早く5Gの中核的技術の一つであるMassive MIMOの商用サービスを開始している。われわれの2.5GHzを使ったTD-LTEでより早く実現できるということで、5Gの主要機能を先取りしてやりはじめている。2.5GHzは5Gの時代のプラチナバンドになると認識しており、それをたくさん持ち、またその技術を蓄積してきたソフトバンクグループには、そのメリットがたくさんやってくると考えている。

SVFと従来のベンチャーキャピタルとの違い

ソフトバンクグループのビジネスモデルは日本の財閥とも、従来のベンチャーキャピタルとも違うという話があった。組織論について、もう少しくわしく聞きたい。

 SVFというのは、必ずしも株式の51%を取りにいくのではなく、われわれのブランドで染めるわけでもなく、経営陣を送りこみ子会社としてマネージすることでもない。だいたいのケースにおいて、20%から40%近い株式を持ち、筆頭株主あるいはそれに近い立場で、その会社の経営に影響を与えるレベルのグループを構築していく。単なる事業提携であれば、3年や5年で事業提携が終わってしまう可能性があるが、やはり資本を持っている、血のつながりがあるということは大きいと思っている。ベンチャーキャピタルのように、株式を3%、5%持って上場したらすぐ売るような短期的取引や、従来の銀行のような貸付をしているという相手でもない。血のつながりを持った資本的提携であり、もっと重要なのは、情報革命という志・ビジョンを共有している起業家集団だということ。いろいろな業界にただ跨って、儲かればいい、金銭的つながりだけ、ということとは違う。「同志的結合」というソフトバンクグループなりの新しい概念のあり方で、“群戦略”をやろうとしている。情報革命のシナジーを出し合うための戦略的シナジー集団だと、捉えている。

スプリントの事業統合について

先日の会見でクラウレ社長が「自由に統合相手を選べたら、やはり移動通信事業者が理想」と言っていたが、孫社長も同じ考えか。そしてやはり、今もT-Mobileが本命で、T-Mobileとの交渉が続いていると理解していいか。

 先ほどから言っているように、われわれが意思決定する時期は近いと思っている。また1社ではなくて複数を考えているので、残念ながら、なおさらヒントになるようなことは言えない。ごめんなさいね(笑)。言いたいのですよ、私も。言うとスカッとするだろうと思う。それでも、やはりそこはグッとこらえて、我慢しているところ。

米画像処理半導体メーカー「NVIDIA」の将来性

「NVIDIA」について、上場している株の含み益が投資1,000億円出ているが、それだと金融投資と同じ。ソフトバンクグループとしては、アームと「NVIDIA」を組み合わせて、どういうプラットフォームになっていくと考えているのか。商品的には、今は自動運転などあると思うが、やはり自動運転を核とした新しいプラットフォームを、半導体ベースで構築していこうとしているのか。

 「NVIDIA」のCEO ジェンスン・フアンは、もう何年も前から尊敬する友人として付き合っている。特にこの数年間、彼らのGPGPU(GPUによる汎用計算)に対する先見の明と、そこにかけた先進テクノロジーは、非常に賞賛に値すると思っている。本当は、まだ彼らの時価総額が5,000億円ぐらいだった2、3年前から、もっとたくさん買いたいという思いがあった。しかし、上場し金額も大きかったので、買うに至っていなかった。しかし、ビジョンや思いは非常に共有する部分が多い。われわれはグループにアームを持っており、彼らはアームの有力なライセンス先の1社でもある。従って、事業提携としては、これからお互いにいろいろな機会を持って、やっていくことができればいいなという思いがある。まだ具体的に、何をいつどうしようということがあるわけではない。

「孫正義育英財団」の狙い

先日、「孫正義育英財団(以下「育英財団」)」を発表したが、反響はあったか。また、設立は“群戦略”にも影響するのか。

 将来、自分の生命が尽き果てた後も、多くの若者、特に異能を持った若者たちに挑戦し続けてほしい。そういう思いから社会貢献の一環として、設立したものである。そのため、直接的にソフトバンクグループの事業にメリットがあるものではない。ただ、投資先も含めたグループ会社や、その知人や教授、学者など、いろいろな皆さんで、直接あるいは間接的に、異能を持った若者が将来目指す夢の実現の手助けや成長をさらに促進することができればいいなと思っている。

アメリカズカップへの挑戦

アメリカズカップについて、残念ながら、セミファイナルで敗退ということになったが、活動2年間の評価と、次回大会について何か考えがあれば聞かせてほしい。

 やってよかったのではないかなと思っている。やはりスポーツは、多くの人々にとって関心の高いものなので、われわれのブランディングにも貢献したのではないかと思う。次回大会以降については、その成果を費用などと照らし合わせて、どうするか、これから話し合うところ。

60歳を迎えて

あらためて60歳を目前に迎え、やり遂げたこと、あるいは一方でやり残したことは。また、経営・人生において、60歳までの自己評価が100点満点中何点ぐらいか聞かせてほしい。

 自分の自己評価だと、しまったなぁ、と。28点。

この間、育英財団で、8歳の子どもたちを何人か見て、「もう一度戻りたい」と思った。そうしたらもうちょっと、とことんやれたのだけど、と思う。後悔することだらけだし、自分の不甲斐なさに地団駄を踏む思いだが、まだ人生が終わったわけではない。

特にソフトバンクグループという生命体は、少なくとも300年ぐらい伸び続けていく組織体であってほしい。そういう思いで、群戦略・組織体系を作っていっているつもりである。先ほどから、組織体系についてこだわってSVFの話をしているが、まさに今、300年に向けた体系が始まったばかり。300年の中の30年という位置付けでいうと、まだ1合目だという思いである。いろいろやり残したことだらけで、後悔がいっぱいあるが、先は明るく楽しみだ。これからまだまだ攻めていくぞという思い。

「Uber」「Lyft」への出資の可能性

ライドシェアビジネスの企業が、実際に事業統合となった場合、ソフトバンクグループの役割はどのようなものになるのか。

 ご存じの通り、われわれは、「DiDi」「Ola」「Grab」などの株式を保有しているが、うわさによれば「われわれは『Uber』に関心がある」というような記事もある。「Uber」「Lyft」との議論については関心があるが、どちらに、というのは何も決まっていない。米国は非常に大きな市場で、最も重要な市場でもあるため、非常に関心が高いということは間違いない。相手が「Uber」なのか、「Lyft」なのか。それは全く分からないが、関心はあるということだけ申し上げておく。現在いろいろと模索・検討しており、両社と議論は続けたいと考えている。

シェアエコノミーは、非常に重要な業界の一つであると考えている。交通の利用の仕方や生活様式は、今日と30年後、50年後とでは全く違うものになる。自動運転も間違いなくやってくる。その段階がくれば、ライドシェアというビジネスが、より重要性を増してくると考えている。

決算説明会書き起こし(前編)

(掲載日:2017年8月16日)
文:ソフトバンクニュース 編集部

    • 原則として、株式会社や有限会社、社団法人などを省略して社名・団体名を表記しています。