2018年9月にPepperが「立体商標」として特許庁により登録されました。Pepperの外観だけでPepperと認識できると認められたことになります。
ところで、この「立体商標」って聞き慣れないけどどんな権利なの? と思っている方も多いはず。そこで「立体商標」について調べてみました。
立体商標って?
字面から、立体の物品の商標権なんだろうなぁ~、と想像する人が多いと思います。では、立体の物品のデザインには「意匠権」という権利がありますが、その違い、説明できますか?
知的財産権には、特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標、商号、…などがあり、中でも特許権(発明)、実用新案権(考案)、意匠権(デザイン)、商標(ブランド)の4つは産業財産権と呼ばれ、特許庁が管轄しています。
知的財産権 | 知的創作物についての権利等 | 特許権 | 発明を保護 |
---|---|---|---|
実用新案権 | 物品の形状等の考案を保護 | ||
意匠権 | 物品のデザインを保護 | ||
著作権 | 文芸、学術、美術、音楽、プログラム等の精神的作品を保護 | ||
回路配置利用権 | 半導体集積回路の回路配置の利用を保護 | ||
育成者権 | 植物の新品種を保護 | ||
営業秘密 | ノウハウや顧客リストの盗用など不正競争行為を規制 | ||
営業上の標識についての権利等 | 商標権 | 商品・サービスに使用するマークを保護 | |
商号 | 商号を保護 | ||
商品等表示 | 周知・著名な商標等の不正使用を規制 | ||
地理的表示 | 品質、社会的評価、その他の確立した特性が産地と結びついている産品の名称を保護 |
(引用:特許庁ホームページ 「知的財産権について」)
立体商標は、その名の通り「商標権」に含まれる権利の一つで、看板やイメージキャラクター、お菓子、容器など、特徴的な立体的形状の創造物が対象となります。従来の商標権では、文字や記号、図形など平面的形状のものに対してのみ有効でしたが、1996年の商標法改正によって、立体的形状の商品にも商標権が認められることになりました。
現在では、不二家のペコちゃん・ポコちゃん人形やKFCのカーネル・サンダース像、コカ・コーラの瓶、明治製菓のきのこの山、キッコーマンのしょうゆ卓上びん、ジャポニカ学習帳など、様々な商品が登録されています。
さて、話を戻して「意匠権」と「立体商標」の違いについて。ソフトバンクの知的財産担当者に教えてもらいました。
「意匠権は『デザインそのもの』が保護されるのに対して、立体商標は『使用により商品の形状に蓄積された信用』が対象となります。さらに、商標権は意匠権と違い、様々な商品・サービスごとに登録できるため、より強い権利で保護されることになります」(ソフトバンク株式会社 法務統括部 知的財産部 前出吉兼さん)
立体商標に登録されるってスゴいことなんじゃ…?
聞いてみると、立体商標として登録されるのは簡単なことではなさそう。
「前提として、特徴のある形状で、自社商品と他社商品で明らかに区別ができる必要があります(これを自他商品識別力と呼ぶそうです)。それに、単純な立方体や球状のようなありふれた形状のものや、商品の性質(形状)そのものの場合は、登録できません」(前出吉兼さん)
Pepperは…どこからどう見てもPepperにしか見えないので、確かにオリジナルの形状という条件はクリアしていますね。
「意匠権として登録されるには、今までになく簡単に思いつかないようなデザインであるかが必要です。一方で、立体商標として登録されるには、Pepperの形状がソフトバンク(ソフトバンクロボティクスグループ)の商品であるということが、世の中で広く認知されているというのが重要です。形状を見ただけで『この形はあの会社の商品だ』と認知されることを証明しなければならないので、立体商標を登録するのはとても大変なんですよ」(前出吉兼さん)
全てを説明するのは難しいですが、立体商標の登録を受けるまで、特許庁に対して様々な資料や証拠を提出したり、相当な苦労があったようです。
登録第6081795号
9類 人工知能搭載ヒューマノイドロボット
28類 人型ロボットおもちゃ
登録第6047746号
7類 工業用ロボット
9類 コンピュータ類
14類 貴金属
16類 印刷物
28類 玩具
35類 広告
38類 電気通信
2014年6月5日にPepperが発表されてから4年。いわば立体商標は「Pepperの形のロボットを見たら、誰もがソフトバンクの人型ロボットだと思う」ことの証明。これだけ広く世の中に浸透したPepperには、ロボット界のリーダー(?)として、ますますの進化を期待したいですね。
ソフトバンクロボティクスグループ株式会社 プレスリリース
人型ロボット「Pepper」の立体商標登録について
(掲載日:2018年11月22日)
文:ソフトバンクニュース編集部