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無人のAIカメラでスポーツ中継革命!? 「B.LEAGUE」のバスケ撮影現場に潜入

無人のAIカメラでスポーツ中継革命!? バスケの撮影現場に潜入

スポーツ業界には今、さまざまなテクノロジーが取り入れられ、そのあり方がどんどん進化しています。スポーツ中継の現場もまた同じです。

2019年3月25~27日にアリーナ立川立飛でバスケットボールの大会「B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUP 2019」が開催されました。ソフトバンクはこの大会で、AI自動カメラを活用して無人でのスポーツ中継を行いました。

現場にカメラマンがいない、AI自動カメラの仕組みとその可能性についてご紹介します。

AIで自動制御された、無人カメラのスポーツ中継

まずはこちらの動画をご覧ください。いつもと変わらないバスケットボールの試合の中継映像に見えるはず。実はこの映像の一部は、人間のカメラマンが撮った映像ではなく、AI(人工知能)が自動で撮影した映像なんです。

撮影に使用しているのは「Keemotion」というAI技術を活用した自動映像制作ソリューション。プロ野球のライブ配信をはじめとしたOTT分野で10年以上の実績を持つソフトバンクの新しい取り組みとして、今回の配信を実施しました。

  • Over The Top:インターネットを通じてメッセージや音声、動画などのコンテンツやサービスを提供すること
「Keemotion」の仕組み

メインカメラとスコアカメラの2台のカメラによって自動で撮影を行います。メインカメラは、3つのレンズを搭載し、3方向から試合が行われているコートを撮影します。3つの映像がサーバーによって瞬時につなぎ合わされ、1枚の大きなパノラマ映像に統合します。

天井に設置されたメインカメラ。中央に3つのレンズがあるのが見える

メインカメラで撮影されたパノラマ映像をAIが解析。どのようなカメラアングルが最適かを自動的に割り出し、ズームやアングルの切り替えを行いながらリアルタイムで配信します。

スコアカメラ。スコアボードを撮影し、得点情報などを取得する

もう1台のスコアカメラは、スコアボードを常に撮影。それによって現在の得点数や試合時間、クオーター数といった情報を取得し、メインカメラの映像に重ね合わせることで、配信映像にスコアデータが表示される仕組みです。

実際の配信映像画面

2台のカメラとAIサーバーはLANケーブルで接続されている必要があるため、サーバーを会場内などカメラから近い場所に設置する必要があります。そのため、現在は設備の整った屋内などでの撮影が前提となりますが、今後5G通信が実用化されれば、配線やサーバーの場所にとらわれず、全国どこからでもAI自動カメラでのスポーツ中継が可能になるかもしれません。

AI自動カメラで働き方が変わり、人間の仕事もよりクリエイティブに

今回の「B.LEAGUE U15 CHALLENGE CUP 2019」での結果も踏まえ、ソフトバンクではAI自動カメラの本格的な実用化に向けて、今後さらなる研究開発を重ねていく予定です。今後の展望も含めて、ソフトバンクのソリューション担当者のお二人に話を聞きました。

ソフトバンク ライフスタイル推進室 榊俊人(さかき・としひと)さん

ソフトバンク ライフスタイル推進室 榊 俊人(さかき・としひと)さん

ビジネスプロデューサー的な立ち位置で、「Keemotion」を活用したビジネス展開を検討している。

ソフトバンク ライフスタイル推進室 大塚 哲治(おおつか・てつじ)さん

ソフトバンク ライフスタイル推進室 大塚 哲治(おおつか・てつじ)さん

テクニカルディレクター的な立ち位置で、技術的な視点から「Keemotion」の実用化に向けたサポートやマネジメントを行っている。

「Keemotion」のようなAI自動カメラのメリットはどんなところでしょうか?

榊俊人

一番大きいのが、映像制作費などのコスト削減の面です。スポーツ中継の現場にはカメラマンをはじめ、ディレクターや音声担当など、10人以上のスタッフが携わる場合があります。AI自動カメラを数台導入するだけで、いずれは完全にリモート化できるかもしれません。

大塚哲治

あとは、カメラマンが撮影当日に病気になってしまったり、移動中にトラブルに巻き込まれたり、そのようなリスクも低減されると思います。また、距離の問題も解決できるため、九州で撮影があるような場合でも、自分は東京の自宅にいてスイッチング(カメラを切り替える操作)だけやればいいなど、カメラマンの働き方も大きく変わってくるでしょう。

カメラマンの仕事がなくなってしまう…なんてことは起こりませんか?

大塚哲治

そのような不安を抱える人も、いらっしゃるかもしれません。しかし、カメラマンの仕事が全てAIに置き換わるというようなことは、現状では起こりにくいと考えています。

榊俊人

人間の良さは、状況に応じた撮影判断ができること。試合中の奇跡的なシーンを撮ったり、タイムアウトのときにベンチの様子を撮ったり、そういった機転を利かせた映像はまだまだ人間に分があります。

大塚哲治

AIに任せられる部分は積極的に任せることで、カメラマンの経験や感性がものをいう撮影に時間を割くことができます。AI自動カメラが普及することで、人間の仕事が奪われるのではなく、よりクリエイティブな映像制作が可能になるはずです。

チームの強化にもつながる、AI自動カメラの活用方法

チームの強化にもつながる、AI自動カメラの活用方法

スポーツ中継以外でのAI自動カメラの活用用途などは何かありますか?

大塚哲治

「Keemotion」で撮影したスコアデータは、何分何秒に誰が得点を入れたかなどをはじめ、全ての映像データが記録されます。管理者側でタグ付けしてデータを整理することもできるので、「スリーポイントのシーンだけ」など、特定の場面をピックアップして視聴することもできるんです。

榊俊人

普段の練習の様子を撮影しておいて、ミーティング時などに確認したいプレーがあれば、検索するだけですぐに見られます。「今のシーン、ちょっと巻き戻して」なんてもうやらなくてもいいわけです。フォーメーションやフォームの確認、プレーの精度向上など、チームの強化にも十分活用できるはずです。

管理画面では、さまざまな数字情報のフィルタリングが可能(一般の方は閲覧不可)

インタラクティブに進化していく、スポーツ × テクノロジーの未来

本格的な実用化に向けて、今回の配信ではどんなところが検証のポイントになってきますか?

大塚哲治

ひとつは視聴者目線で「どれくらい会場の臨場感が味わえるか?」というところ。やっぱりAIが自動的に作る映像となると、「人間が見ても本当におもしろいの?」という疑問が必ず出てくると思うんです。

ただ淡々と流れる映像ではなくて、「この試合展開ならここにフォーカスしてほしい」「このシーンはもっとアップで見たい」など、中継映像としての完成度は重点的にチェックするつもりです。

榊俊人

技術的な話でいうと、AI自動カメラはまだ審判とプレーヤーを区別することができません。そこで、今やろうとしているのは「人を認識する」技術を取り入れること。それが可能になれば、今後はある特定のプレーヤーにフォーカスした映像配信なども可能になるかもしれません。

(イメージ)観たい選手を自動追尾

最後に、AI自動カメラが普及することで実現したい今後の展望について教えてください。

榊俊人

予算的な問題で、上位リーグ以外はなかなか中継や配信ができないという問題があります。AI自動カメラで低コストのスポーツ中継が実現できれば、下位リーグやアマチュアの試合もどんどん配信できるようになるはず。

それによって、マイナーなスポーツなども人目に触れる機会が増えて、スポーツ界全体により活気が出てくる。そういうビジョンを実現できるといいなと考えています。

大塚哲治

現時点では、「Keemotion」の撮影に対応しているスポーツはバスケをはじめ、バレーやフットサル、柔道、剣道といった屋内スポーツがメイン。今後は、野球やサッカーなどの屋外スポーツなども対応できるように、ジャンルの幅を広げていきたいですね。AI自動カメラで、スポーツ界全体の盛り上がりに貢献したいです。

ありがとうございました!

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(掲載日:2019年4月9日)
文:エクスライト
撮影:山﨑悠次

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