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茶道家が巡る静岡県川根本町「お茶街ック天国」。高級緑茶の未来を支えるテクノロジーとは

高級緑茶の未来を支えるテクノロジー! 茶道家が巡る静岡県川根本町「お茶街ック天国」

日本で古くから親しまれ、家でほっとひと息つきたいときや大切な来客をもてなすときに欠かせない緑茶。実は今、農園は生産者の後継不足に頭を抱えているそう。そこに現れた強い味方が、ソフトバンク株式会社が提供する農業AIブレーン「e-kakashi」。

「e-kakashi」が農園でどんな風に使われているのか? 茶道家の久保田慶一(宗専)さんと、ブランド緑茶「川根茶」を生産する静岡県川根本町にある「つちや農園」に伺いました。

お茶を知り尽くしたプロ

久保田慶一

茶道家の久保田慶一(くぼた・けいいち)(宗専)さん
1984年、静岡県生まれ。20歳から遠州流茶道を始め、2019年に家元師範代を取得。地元でホテル経営などを行う老舗企業・静岡保徳株式会社の専務取締役も務める。

標高600mで高級茶を作る「天空の茶園」農園主に聞く、川根茶の魅力と農園の実態

ゆったりと流れる大井川沿いを走る鉄道に揺られて着いたのは、レトロな木造駅舎が愛らしい田野口駅。そこから車で15分ほど離れた高地につちや農園があります。

久保田さん

つちや農園で栽培している「川根茶」はどんなお茶なのでしょうか?

土屋さん

川根茶は、静岡県の川根本町と川根町で摘んだ茶葉を100%使用し、町内の工場で出来上がったものだけが名乗ることが許されるブランド商標です。そもそも静岡県では鎌倉時代ぐらいからお茶の栽培が始まったと言われ、この川根地域では江戸時代にお茶が租税として納められた記録があります。明治時代になるとさらに製法の研究が進み、今では宇治茶、狭山茶と共に日本の三大銘茶として扱われています。贈答用に選ばれる方が多いですね。

つちや農園のご主人 土屋さんが、茶葉の成り立ちや農園の栽培方法を説明してくれました。

久保田さん

高級茶なんですね。いつからお茶の栽培をスタートしたのですか?

土屋さん

昭和30年ごろに私の祖父が始め、私は3代目として昨年継いだばかりです。つちや農園は標高600mの高地にあり、「天空の茶園」とも呼ばれています。この辺りは、霧が深く昼夜で温度差があり、さらに土の水はけも良いので、お茶の栽培にとても適しているんですよね。玉露のような甘みのあるお茶が育ちます。

茶道家が高級茶を試飲! プロ視点のコメントが冴える。さらには、お茶のキャラ例えも

つちや農園で栽培されたお茶をいただくことに。1煎目と2煎目の変化も面白いとのこと。まずは、やぶきた品種を使用した最高級品「天空の風」からいただきます。

1種類目「天空の風」

久保田さん

では、まずは1煎目から。…少しとろっとした舌触りに、この薄い色から想像できないほどしっかりとした味にびっくりです! いわゆる砂糖などの甘みではなく、お茶そのものから滲み出る自然の甘みを感じます。

土屋さん

お茶農家の間では、良いお茶は色が薄くて味が濃いと言われているんですよ。川根茶を初めて飲む人が1煎目に見せる「こんなに味が濃いの!?」という驚きの表情を楽しみにお茶作りをしています。2煎目は、さっきよりも少し熱めの温度でどうぞ。

久保田さん

飲んですぐに分かるぐらい、はっきりと味が変わりますね! 2煎目は、さっきよりも渋みや香りが増しています。それぞれを人で例えると、1煎目は「優雅な見た目の中に情熱を秘めたナイスミドル」、2煎目は「芯が強く頼り甲斐のあるラガーマン」ですね(笑)。

2種類目「はるみどり」

久保田さん

先ほどの「天空の風」と比べて、ガラッと印象が変わりますね。1煎目はキレのあるメリハリのある味わい、2煎目はさわやかな渋みとともにお茶らしい香りの主張が強くなりました。寡黙で知的な女性が、秘めた能力を発揮して華やかに開花する。例えるなら、そんな変化ですかね(笑)

今回はつちや農園の2種類のお茶をテイスティングさせていただきました。左 はるみどり 90g2,200円(手摘み)、右 天空の風 90g2,600円

土屋さん

つちや農園では、不定期でこうした飲み比べセットを用意しています。緑茶に馴染みのなかった方でも、「この体験をきっかけに緑茶にハマりました!」なんて声もあるんです。ただ 残念なことに、農園はどこも後継者不足で悩んでいます。というのも、お茶の栽培は水や肥料を与えるタイミングや虫対策など、長年の経験で培う勘に頼る部分が大きく、初心者にはとってもハードルが高いんです。

久保田さん

お茶栽培は1年に1回しか収穫できないから、技術も一朝一夕で身につくものではないですよね…

土屋さん

そうなんです。けれど今年から、勘ではなくデータでお茶の栽培を支えてくれるテクノロジーを導入しました。

久保田さん

こののどかな茶畑にテクノロジー、ですか? 詳しく教えてください!

プロでも見極めが難しい「土の状態」も。栽培環境を“見える化”する農業AIブレーン「e-kakashi」

土屋さん

「e-kakashi」を導入したきっかけは、川根本町からの誘いでした。町としても川根茶を後世に残すためにさまざまな施策をしているんです。話を聞いてみると、私自身も四苦八苦した土の温度や湿度の管理を、スマートフォンやパソコン上でできるらしい。「これは、初心者でも使えるツールになる!」と思い、即決でした。

e-kakashi

ソフトバンク株式会社が提供する、農業を科学するサービス。農業AIブレーンが植物目線※1で栽培をナビゲートして、ほ場で取得した環境データ※2を見える化するだけではなく、現在すべき作業を判断する支援を行います。農業において、最適な生育環境を24時間365日体制でナビゲートしてくれる心強いIoTソリューションです。

「e-kakashi」のウェブサイト

  • ※1植物科学に基づいた科学的アプローチを指す
  • ※2気温、相対湿度、地温、水温、土壌体積含水率、EC、日射量、CO2濃度

久保田さん

それは心強いですね。実際に導入してみて、感じることはありますか?

土屋さん

まだ導入して半年なので、今は活用するためのデータ集めの最中。少なくとも3年はデータを蓄積しようと思っています。将来的には、このデータを用い、作業の効率化、品質の向上と安定的な収穫、そしてデータをもとにした新たなお茶商品の開発などに役立てたいと考えています。

e-kakashiで収集したデータは、PCやタブレット、スマホ上で簡単に確認できます。温度、湿度、日照時間など基本データはもちろん土壌の含有水分などの数値が時間毎に細かく把握できます。

現時点では、土の温度や湿度などの「土壌情報」がほぼリアルタイムで正確に分かるのは非常にありがたいですね。複数の場所の地質を比較できるので、現場に行って確認する時間が省けますし、プロでも状態を見分けるのは難しいんです。

複数箇所の土壌の温度や湿度などをほぼリアルタイムで把握可能

久保田さん

それにしても、農業にテクノロジーを導入するというのはある種の革新ですよね。私は茶道家として日本の伝統を今に伝えていますが、同時に、私の家は明治から続く会社を経営しています。父の受け売りですが、「伝統は革新の連続だ」と常々感じているんです。

土屋さん

通じるものがありますね。茶道や久保田さんの会社では、どんな革新を取り入れてきたんですか?

久保田さん

私は遠州流(えんしゅうりゅう)という流派なのですが、“綺麗さび”というキーワードがあります。これは千利休が追求した“わび・さび”の精神に美しさや明るさを加えたもので、遠州流は茶器の一つ取ってもエレガントな雰囲気です。

例えば日本のお城も、戦の多い時代には熊本城のように黒くどっしりとした要塞風のお城、平和な江戸時代には姫路城のように白くおおらかな雰囲気のお城が建てられましたが、そういった変遷と近いと思います。

土屋さん

その時代に合った、新しい要素を取り入れてきたんですね。

茶道教室をVRで体験? テクノロジーとの融合で、伝統文化を末永く残し続ける

久保田さん

一方、会社では、今まで社員間で共有したいことをノートに手書きしていたのですが、それでは全員が見るとは限りませんし、書いてから見るまでの時差も課題でした。そこで最近、全社員にスマートフォンを支給したんです。万が一誰かがミスをしたときでも、その原因や対策を全員ですぐに共有できる仕組みがあれば今後に生かせます。スピーディーかつ全員に共有できるようにしたことで、仕事の質がアップしました。

土屋さん

農業もどんどん新しいものを取り入れていきたいです。川根茶がもっと多くの人に親しまれて、私の次の世代、そのまた次の世代にも残り続けられるように。

久保田さん

伝統ある茶道の世界も、多くの人たちに知ってもらう必要があると考えています。茶道を学ぶ時間が取れない人でも、VRを用いて一連の作法を指導できる教室、とかはやってみたいですね。それこそ今は、VRでは五感の研究も進んでいると聞きます。味覚を体感できれば、世界のどこにいても新茶の味と香りを味わえる、といったテクノロジーも想像するだけでワクワクしますね。

つちや農園

つちや農園

川根本町の中でもひときわ高い標高600mにある「おろくぼ」地区の小さなお茶農家。「天空の茶園」とも呼ばれ、急傾斜の厳しい立地の中、有機質肥料を中心とした自然に優しいお茶作りで多くの賞を受賞する銘茶を生み出しています。

つちや農園のウェブサイト

こちらからお茶も購入できます

ソフトクリーム、羊羹、生キャラメル…川根茶の旨味が染み込んだ茶グルメを味わい尽くす

つちや農園を後にした久保田さんが向かったのは、川根茶を使ったスイーツや飲み比べ体験が楽しめる選りすぐりの4スポット。お店の方にお話を伺いながら、川根茶のさまざまな楽しみ方を教えてもらいました。

【1】川根茶の歴史を学べる道の駅 フォーレなかかわね茶茗舘の「川根茶セット」300円

フォーレなかかわね茶茗舘では、茶室で風情あふれる和の庭園を眺めながら川根茶と和菓子が楽しめる川根茶セットが人気。スタッフの方が品種の特徴や淹れ方のコツを教えてくれるので、川根茶について詳しくなりそう! 品種は、川根茶の定番品種「やぶきた」と、個性的な香りが特徴の「おくひかり」の2種から選べ、久保田さんは「やぶきた」をチョイス。

久保田さん

1煎目は、まったりとした甘みとうまみが口に広がりますね。続く2煎目では、一気にすっきりとした味わいに変わって面白いです。熱めのお湯で淹れる3煎目は、渋みがグッと増して甘いお茶菓子がより美味しく感じます。無理やり変化を人に例えると、隠れ美人のメガネをかけた文学少女が、日に日に色気を増し、周囲にバレ始める感じですかね(笑)

道の駅 フォーレなかかわね茶茗舘

住所:静岡県榛原郡川根本町水川71-1

Yahoo!マップ

ウェブサイト

【2】川根物産株式会社の「川根茶ソフトクリーム」350円

店内には、家庭用から贈答用まで、自社農園で育った川根茶がずらり。久保田さんのお目当て「川根茶ソフトクリーム」は、煎った川根茶の茶葉をソフトクリームに混ぜたもの。一年を通して、これを求めて遠方から訪れる人も多いのだとか。

「の、濃厚っっっ」

久保田さん

やさしいグリーンの色からは想像つかないほど、お茶の風味が濃厚です! 甘さ控えめでさっぱりとした味わいなので、甘いものが苦手な人でも食べやすいと思います。

川根物産

住所:静岡県榛原郡川根本町千頭1216

Yahoo!マップ

【3】大正15年創業の老舗製菓店・三浦製菓の「お茶羊羹(3個セットから)」356円

左から、お茶羊羹、柚子羊羹、栗入りお茶羊羹

三浦製菓のお茶羊羹は、久保田さんはプライベートでもよく食べているそう。茶壺のイラストが描かれたレトロなパッケージも、地元民から愛されている理由の一つ。筒の底を押して下からニュルッと押し出す感触もくせになります。

久保田さん

地元では子供からお年寄りまで幅広く親しまれている銘菓です。程よい苦味と渋さが絶妙で、お茶と一緒にいただくのがぴったりですね。

三浦製菓

住所:静岡県島田市川根町家山717-5

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ECサイト

【4】川根茶の専門店・いっぷく茶処やませきの「FLAVOR GREEN TEA」各500円と「静岡お茶生キャラメル」650円

いっぷく茶処やませきでは、ユニークな川根茶製品に出会えます。とりわけ目を引いたのは、「FLAVOR GREEN TEA」と「静岡お茶生キャラメル」。普通の緑茶じゃ物足りない!という人におすすめです。

久保田さん

「FLAVOR GREEN TEA」は、ぶどう、いちご、りんご、柚子、ももの5種類ありますが、それぞれ個性が立っていて飲み比べるのが楽しい。特に果物感がはっきりしているのはぶどうですね。「静岡お茶生キャラメル」は、洋と和で一見合わなさそうな生キャラメルとお茶ですが、それぞれの風味が見事にマッチしていますね。緑茶の新たな可能性を感じます!

いっぷく茶処やませき

住所:静岡県島田市川根町身成3533

Yahoo!マップ

ECサイト

テクノロジー×農業の未来形を感じた川根本町お茶ツアー

茶道と老舗企業、2つの伝統を受け継ぐ久保田さんと巡る川根茶ツアーはいかがでしたか?

この川根本町のようにソフトバンクでは、テクノロジー×農業のソリューションとして「e-kakashi」を提供しており、他にも地方創生の手助けとなるような取り組みをしています。川根茶を次世代に繋ぐために、先進のテクノロジーを取り入れたお茶栽培を試みる農園。そこに息づく人の温もりや伝統はそのままに、新たな農業の在り方を感じることができるツアーとなりました。

e-kakashi

「e-kakashi」を詳しく知る

(掲載日:2019年7月1日)
文:秋葉成美、エクスライト
撮影:山崎悠次

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