近年、防水・防塵性能を備えるスマホが数多く発売されています。この性能を表す表記として使われているのが、「IP〇〇」。スマホの製品情報やカタログでよく見かけますが、正しい読み方や詳しい意味をご存じでしょうか?
今回は、防水・防塵性能を表すIPコードについて解説します。スマホを安全に使うためにも、IPコードを正しく理解しておきましょう。
IPコードは保護性能をあらわす規格
「IP〇〇」とは、IP(International Protection)コードと呼ばれるもの。2003年に国際電気標準会議(IEC)によって定められた、電気製品の防水・防塵性能を表す規格です。「電気製品の」と述べたように、IPコードは身のまわりの電子機器に幅広く使われています。
例えば、カメラやラジオなどの家電製品。最近はお風呂で使えるポータブルテレビや、アウトドアで活躍する防水スピーカーといった製品も増えてきています。また、雨にさらされる屋外や、湿気の多いプールや銭湯、食品工場といった場所に設置される照明や電光掲示板なども防水・防塵性能は欠かせません。
その中で、スマホもまた高性能化が進むにつれて使用シーンがどんどん拡大。いまやスマホにおいても防水・防塵性能は重要な機能となっているんです。
IPコードの読み方は? 「IP68」はどんな意味?
では次に読み方を見ていきましょう。IPコードは「IP」の文字の後ろに2つの数字が続き、前の数字が防塵性能の等級を、後ろの数字が防水性能の等級を表します。つまり、図のように「IP68」と書かれていた場合、その製品は6級の防塵性能と8級の防水性能を備えていることを示します。
防塵・防水のどちらかだけを示す表記も
一方で、「IP6X」や「IPX8」という表記を見たことはありませんか? これは、防水と防塵の性能のうち、どちらかだけを表すときに使われる表記なんです。
図のように、該当する性能の方に数字が入ります。このとき、どちらの保護等級を表す数字なのかがわかるように、省略されるほうには「X」を入れるのがポイント。「アイピー6エックス」や「アイピーエックス8」と読みます。
IPコードの読み方と意味を知ったうえで、次に防塵と防水それぞれの等級ごとの保護内容を見ていきましょう。
防塵は7等級、防水は9等級に分かれている
防塵性能は0~6の7等級
防塵性能とは、製品外部からの固形物の侵入に対する保護等級のこと。「IP0X」から「IP6X」までの全7等級に分かれており、それぞれ具体的な固形物が想定されています。防“塵”といっても砂やホコリといった細かな物体だけでなく、手やワイヤーといったものも想定されているんですね。
等級が上がるにつれて侵入しうる固形物は小さくなっていきますが、具体的にサイズが想定されているのはIP4Xまでで、IP6Xになると粉塵レベルの微粒な物体すら入らない、という性能になります。つまり、IP5X以下は規定よりも小さい固形物であれば侵入する可能性があります。スマホに関しては、防塵性能がある場合、IP5X以上に該当することがほとんどです。
防水性能は0~8の9等級
防水性能とは、製品外部からの水の侵入に対する保護等級のこと。製品が耐えうる水の勢いや侵入する範囲によって、「IPX0」から「IPX8」までの全9等級に分かれています。
IPX0~IPX7までは試験方法や条件が規定されていて、等級が上がるほど水量や水深(水圧)、水没時間などの条件が厳しくなっていきます。しかし、実は最高等級のIPX8は試験方法が定められていません。“IPX7よりも厳しい環境下で試験すること”のみが条件となっているため、メーカーが製品ごとに独自の規定で試験しています。
IPX7以下は規定よりも厳しい環境下に置かれた場合、浸水し正常に動作しなくなる可能性があります。そのため、メーカーや製品によって異なりますが、浸水を防ぐ「防水」ではなく、水に耐えうる「耐水」と表記される場合もあります。
生活防水や完全防水はどんな意味?
IPコードに加えて「生活防水」「完全防水」と併記されていることもあります。生活防水は、キッチン周りのように水しぶきが飛んだり濡れた手で操作したりする日常的なシーンを想定していて、完全防水は水中や大雨など製品にとってさらに厳しい環境を想定していています。日常的な使用であれば、IPX4程度の生活防水で問題ないでしょう。アウトドアでハードに使用するならIPX7はほしいところです。
高い等級でも注意が必要!
等級で見ればIP68が最も優れた保護性能になりますが、どんな環境にも耐えられるわけではありません。該当する等級以下の使用シーンでも故障する危険性があるんです。
例えば、IPX8の性能を備えていても、IPX6に相当する「強い噴流水」には耐えられないことがあります。水中では使えても、直に水洗いをしたりシャワーのような勢いの強い水流にさらされたりすることは想定されていないのです。製品にもよりますが、水中でも使用でき、噴流水にも耐えられる場合は「IPX5/IPX8」と2つの防水等級が表記されます。
さらに、防水試験は常温の真水で行われるのが一般的。そのため、塩分を含む海水や化学物質を含む雨、アルコール類、せっけんなどは、保護性能には含まれていません。他にも、水蒸気は液体よりも製品に内部に侵入しやすいため厄介です。お風呂でスマホやタブレットを使う人も多いと思いますが、気温の低い部屋に戻ったときに製品内部の空気が冷えて結露が発生することがあるので注意しましょう。
また、IP6Xの防塵性能を持っていても、充電ポートやイヤホンジャック、スピーカーといった部分への侵入は故障を招きかねません。フタやカバーが付いている場合は必ず閉じた状態で使用しましょう。
このように、必ずしも等級どおりの保護性能を発揮できるわけではありません。メーカーや製品によって保護性能が異なることもあるので、製品を安全に使い続けるためにも、取扱説明書や製品ページで防水・防塵性能を詳しくチェックしておくことが大切です。
自分が使っているスマホの防水・防塵性能を確認してみよう
(掲載日:2020年6月30日)
文・編集:友納一樹(TEKIKAKU)
撮影:高原マサキ