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「テーマパークで地元の友だちによく合う日がある?」 統計データからわかる意外な人の流れ

テーマパークで地元の友だちによく合う日がある?統計データからわかる意外な人の流れ

新型コロナウイルス感染拡大以降、繁華街などの人出の増減に関するニュースを見かける中で、「人流」という言葉を耳にする機会も増えましたね。この「人流」とは「人がいつ、どこに、何人いるのか」「人がどこからどこへ移動しているのか」といったデータのことです。

ソフトバンクでは、パシフィックコンサルタンツ株式会社との共創により、人流統計データ「全国うごき統計」を提供しています。世の中の人の動きがわかることで、どんな社会課題の解決につながるのか、担当者にインタビューしてきました。

どこからどこへ移動しているのか、全国1.2億人の移動データを可視化

龍野さん

お話を聞いた人

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部
第三ビジネスエンジニアリング統括部
スマートシティ事業推進部 プロジェクトマネージャー
龍野 祐太郎(たつの・ゆうたろう)さん

まず、全国うごき統計とはどんなサービスなのか、教えてください。

一言でいうと、「人がどこからどこへ移動したか、その際にどういう経路を通ったかどの交通手段を使ったのか」がわかる統計データサービスです。

ニュースなどで見かける「先週と比較した人出の増減」を表す時に使われることが多い「どこにどのくらいの人が集まっているか」というデータの把握はもちろん、移動している人を対象に「移動手段や経路までを統計データとして把握できること」が、このサービスの特徴です。

どこからどこへ移動しているのか、全国1.2億人の移動データを可視化

位置や動きの情報をどうやって取得しているのですか?

位置情報というと、地図アプリなどで使用しているGPS(Global Positioning System)※1を使うのが一般的です。地図アプリを使うときに、今いる自分の場所が点で表示されるのにGPSが使われています。

  • ※1
    アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システム(地球上の現在位置を測定するためのシステム)

GPSという言葉は何となく聞いたことがあります。全国うごき統計もGPSを使っているのですか?

全国うごき統計では、ソフトバンクの全国の携帯電話基地局を基に端末の位置情報を把握しています。

ソフトバンクでは全国約23万カ所に携帯電話基地局を設置しています。モバイル通信機能をオンにしている携帯電話がソフトバンクの提供エリアにいる場合、いずれかの携帯電話基地局から電波を受信しています。どの携帯電話基地局から電波をキャッチしているかを定期的にログとして取得していて、それによって対象となっている携帯電話のおおよその位置を把握することが可能です。このようなデータを、鉄道などの交通機関の利用状況や、人口などの統計データと掛け合わせて、十分に匿名化した状態で集計・加工していきます。

どこからどこへ移動しているのか、全国1.2億人の移動データを可視化

集計・加工する時に我々のデータを基に約1.2億人の動き、すなわち日本全国の人の動きを捉えらえるように拡大推計※2を行うのですが、その点についてはパートナーのパシフィックコンサルタンツ社に技術協力してもらい、独自のロジックにより高い精度での処理を実現しています。

  • ※2
    全てのサンプル調査ができない場合、取得したサンプルデータをもとに全体の状態を類推する方法。

私が、いつ、どこから電車に乗って、どこに買い物に行った、という情報もわかってしまうんですか?

そこはご心配になる点だと思いますが、先ほども少し触れた通り、「誰が」という個人はわからない形で、統計データ化していますのでご安心ください※3。また、ある程度のエリア規模や一定時間の単位でしか集計していませんので、ピンポイントで個人の特定はできません。

  • ※3
    利用許諾を得ている情報を使用しています。

ほっとしました! では、こういったデータを使うことの良さは何でしょうか?

これまでは、人流を把握する方法として、交差点などで人手を介して行なっている交通量調査や国勢調査などのアンケート調査が主な手法でした。そういった手法だと、特定の日・特定の場所以外のデータを取得することは難しかったのですが、全国うごき統計では、日本全国の24時間365日のデータを収集できるため、行政や民間企業からの細かなニーズにお応えできます。また、多くの人流データを取得することで細かなニーズまで汲み取ることができることもメリットだと思います。

どこからどこへ移動しているのか、全国1.2億人の移動データを可視化

「埼玉県の人が地元の友だちによく会う日がある」という都市伝説を検証

君野さん

お話を聞いた人

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション事業第1統括部
IoTプロダクト企画推進部
君野 健太(きみの・けんた)さん

複雑な計算ロジックで集計していることはわかったのですが、もう少し身近なところでどんな風にデータが見られるのか、具体例を教えていただけますか。

「埼玉県の人が地元の友だちによく会う日がある」という都市伝説はご存じですか?11月14日は埼玉県民の日で、この日に千葉県舞浜市のテーマパークに行くと、友だちにめちゃくちゃ会う、と言われているんです(笑)。「埼玉県の多くの学校が休みになるので、テーマパークに遊びに行く人が多いんだろう」という想像はしやすいのですが、「実際はどうなの?」ということで、全国うごき統計のデータを使って確認してみました。

「埼玉県の人が地元の友だちによく会う日がある」という都市伝説を検証

2019年は埼玉県民の日が平日だったので、同じ平日どうしで埼玉県民の移動データを見てみました。埼玉県民の日である11月14日木曜日のデータと、その前の週の11月7日木曜日を比べてみると、埼玉県民の日はなんと埼玉県の方が約2.5倍も多くテーマパーク周辺を訪れていたようでした。

たまたまその日にお天気が良さそうなので、テーマパーク行こう! と思いついただけでは……?

晴れだったから遊びに行ったと思いますよね? 実際には、11月14日、埼玉県民の日の午前中は、千葉県周辺は雨だったので、多くの方がテーマパークへのお出かけをためらったのではないかと思います。参考として東京都や神奈川県など他の地域からの移動を見てみると、逆に来訪者数は軒並み減少しておりました。一方で、公立学校がお休みと思われる埼玉県の方は、「平日に学校が休みで、雨かもしれないけど、いつもよりテーマパークが空いているし行きたい!」と、外出のモチベーションが高かったのではないでしょうか。

また、埼玉県の方の中で、どの年代が最も増加したのか調べたところ、10代においてはなんと約12倍も多く訪れていることがわかりました。こうしたことから、友だちとの遭遇率も高かったと思われます。

「埼玉県の人が地元の友だちによく会う日がある」という都市伝説を検証

ちなみに、10代の子どもの保護者層と見られる30代、40代も増えており、子どもの休みに合わせて親御さんも含めてテーマパークに遊びに行かれたと思いますので、その日は埼玉県の方によってある一定の経済効果もあったのではないでしょうか?

ちなみに、このグラフで20代が減っているのは、雨予報が出ていたこともあり、通常通りに仕事をするなど、普段の行動を選択された可能性があります。

こうやってグラフで見ると、本当に地元の友だちがたくさん集まっている、と納得しますね。年代の特徴以外にどんなことがわかりましたか?

テーマパークへの交通手段がどう変化したのかも見てみました。

「埼玉県の人が地元の友だちによく会う日がある」という都市伝説を検証

この日は埼玉方面からテーマパーク周辺まで、鉄道の利用者が増えているように見えました。また、車での移動も増えているようでしたので、おそらく家族連れが自家用車で移動したので、普段よりも交通量に変化があったと推測されます。千葉県隣接の他の都県のデータを見ると、特に目立った増加傾向は見られないため、この都市伝説はデータによって確からしいと言えそうです。

鉄道利用者の増減や、家族連れが増えたということも推測できるんですね。

テーマパークでめっちゃ友だちに会う、という感覚的なものを、統計データ化して分析することでビジネスチャンスにつなげることも可能になると思います。

このように人流統計データが活用されることで、私たちがなにげなく必要と感じている移動や買い物などさまざまな分野のニーズが見えてきます。今までに無い新たなサービスやインフラが街に広がっていくと期待していますし、そうした街の実現に向けてパートナーとなる各業界の皆さまと共に取り組んでいきたいと思います。

生活者の立場に立った出店や避難計画を可能に

生活者の立場に立った出店や避難計画を可能に

杉本さん

お話を聞いた人

パシフィックコンサルタンツ株式会社
デジタルサービス事業本部 DX事業推進部 部長
杉本 伸之(すぎもと・のぶゆき)さん

具体的に、全国うごき統計の活用や検討が進んでいるケースを教えてください。

全国展開する飲食店や小売店が、出店計画を立てる時などです。出店場所を選ぶ際は、交通量の多い道路に面しているのが重要でして、地図上で出店場所の狙いを予めつけてから、人や車の量がどのくらい多いのかを、現地に行って人手で計測していることが多いんです。人が計測するとお金も時間もかかるうえに、狙いをつけていない場所はそもそも計測しないので、もしも出店すれば多くの集客が見込める場所を見逃している可能性もあります。全国うごき統計を活用すれば、人が計測するという手間が省け、しかも多くの集客を見込める可能性があります。それに生活者のニーズも推測できるんですよ。

生活者の「ここにこんなお店があったらいいな」という思いが、データ化されて出店計画に生かされるんですね。

まさにそうです! 周辺住民の方のかゆいところに手が届くような計画が立てられます。飲食店や小売店など単一店舗の出店計画だけでなく、大型の複合ショッピングモールの出店計画などにも応用できます。例えば、モールに来るお客さまが増えないし、滞在する時間が短いという問題があるのであれば、もっと遠方から来てもらいつつ長くいてもらうために、フィットネスクラブ、歯医者、パン屋、花屋など、一見関連がなさそうな業態を1つのショッピングモールに入れよう、という計画も成り立ちます。また、人流データの分析により、この業態とこの業態の店舗は集客的に相性が良いという組み合わせが分かれば、セットで出店することで集客力アップにつながります。

生活者の立場に立った出店や避難計画を可能に

商業施設以外ではいかがでしょうか。

公園の改修工事などに有効です。とても広い駐車場やトイレがある公園で、実際の利用者をデータで確認してみると、駐車場の空きが多いこと、トイレがあまり利用されていないことがわかったとします。次に、その公園には、どこから、何の交通手段で人が移動して来ているのかを、全国うごき統計で調べます。その結果として、自転車や徒歩で公園に来る人が多いため駐車場の利用率が低いこと、また、公園の近くに住んでいる人が多いため公園でトイレを使う必要性が低いことが推測されます。

そうであれば、駐車場やトイレのスペースを、別の有効なスペースに転用するという計画も立てられるんです。

駐車場がいつも混んでいるという逆のケースにも対応できそうですね。民間以外での活用シーンについても教えてください。

災害時の避難誘導に活用できると考えています。例えば、全国うごき統計を使うと、過去の災害時に、エリアの違いによって、避難が早かった・遅かった、の違いを見ることもできます。もちろん、年齢や性別の分布もわかります。人流データを基に原因を探ってみると、避難が早かったエリアは、地域住民の交流が盛んで声をかけあう習慣が普段から多い。遅かったエリアは、新しく引っ越ししてきた住民が多く、声をかけあう習慣がまだできていなかった、などの地域事情が見えてきます。では、遅かったエリアでは、普段からどういった準備をしておけば良いのか、全国うごき統計のデータと他の情報を掛け合わせることで、将来の避難計画の見直しにも活用できます。

今後は民間企業での活用はもちろん、自治体での活用が進むことで生活者に寄り添った社会インフラや住民サービスの実現につなげていきたいですね。

生活者の立場に立った出店や避難計画を可能に

全国うごき統計に関する講演情報

2021年7月8日、9日に開催される「Super City / Smart City OSAKA 2021 ~未来都市のスマート化 EXPO & カンファレンス~」において、ソフトバンクが「スマートシティにおける都市最適化マネジメント」について講演します。

Super City / Smart City OSAKA 2021公式サイト

(掲載日:2021年6月29日、更新日:2021年7月5日)
文:ソフトバンクニュース編集部

人流統計サービス「全国うごき統計」とは

ソフトバンクの携帯電話基地局の仕組みを利用した人流統計サービスです。 日本全国の人流を24時間365日把握し解析することができます。

全国うごき統計を詳しくみる