友人や会社の同僚だけでなく、SNSでも投資をやっている人をよく見かける昨今。貯金で利息を得ることがなかなかできない中、さらにコロナ禍による将来への経済的な不安が重なり、自分も投資を始めてみようと思う方もいるのではないでしょうか。
初心者が投資を始める際は、投資のリスクをしっかりと理解し、資産形成への向き合い方を考えることが必要です。今回は、投資初心者が知っておくべき基礎知識や、実践的に投資がどんなものか学べる「スマホ投資」の特徴と運用のコツについて、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに伺いました。
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話を聞いた人:高山一恵さん
2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務め、退任後はMoney&Youの取締役に就任。「FP Cafe」や女性向けマネーメディア「Mocha」を運営し、講演・執筆・相談業務に従事。『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など著書多数。
- Twitter:@takayamakazue
コロナ禍で貯蓄や投資に関する意識が変化!?
現在の日本は超低金利時代といわれており、銀行にお金を預けるだけでは貯蓄はほとんど増えません。さらに、「老後2,000万円問題」や新型コロナウイルスの流行など、現在の経済的な不安から将来に備えて投資を始める人が増えてきているといいます。
高山さんのお話にもあったとおり、2021年の「投資の実態についての意識調査」(エイチームフィナジー「ナビナビ証券」調べ)では、約4割が20代で投資を始めているというデータが示されています。ただし、社会的に投資への関心が高まっているとはいっても、やみくもに手を出しては意味がありません。まずは、投資のリスクを理解し、資産形成への向き合い方を考えることが重要になります。
「投資で大切なのが、マインドコントロールをいかにして行うかです。利益を大きく得たいと考えて、たくさん投資する方もいらっしゃいますが、安定的に利益を増やしているのは淡々と中長期的に投資している方が多いですね。投資で安定的に資産を増やしていくためには、例えば株価が1割下がったら売るなどのルールを作ったり、資産形成を継続する仕組みを作ることが大切です」
初心者でも手軽に始められる「スマホ投資」とは?
初めて投資をする場合は、少額から始められるスマホ投資がおすすめです。その理由は主に以下の4つが挙げられます。
①まとまった資金がなくても数百円から始めることができる
「通常の株式投資は100株から買わなければなりませんが、スマホ投資であれば1株から買えることも。“数百円から買える”など、少額から投資を始められるのも魅力ですね。初心者の場合、普通の証券会社のWebサイトを見ても情報量が多くてわかりづらいといった意見もありますが、スマホ投資は、アプリの操作がシンプルなので感覚的に始められる点が魅力です」
②投資を実践的に学ぶことができる
「最初は少額から始めて、慣れてきたら金額を増やしていくというステップがおすすめです。何事もやってみないと分からないですし、教科書通りにはなかなか進みません。実践をしながら投資がどういうものかじっくり勉強していくことが大事です。続けているうちに、投資を通じて経済の動向に興味を持てるようになりますよ」
③スマホでいつでも情報をチェックできる
「証券口座の開設や取引まで、全てスマホひとつで完結するスマホ投資。スマホでいつでもリアルタイムに情報をチェックできる点もメリットです」
④初心者でも銘柄を選びやすい
「投資初心者は株を買うにしても何の銘柄を選んだらいいのか分からず、そこでつまずいてしまうことが多いんです。スマホ投資はある程度取扱銘柄が絞られていて、誰もが見たことがある大企業の株を中心に扱っているため、初心者でも銘柄を選びやすいというメリットもあります。銘柄の情報やヒストリーをマンガで学べるものもあったり、分かりやすいコンテンツが多いので楽しく続けられますよ」
初心者におすすめなスマホ投資のアプリ
スマホ投資のアプリにもいくつか種類があるため、操作のしやすさや扱っている銘柄など、比較したうえで選びましょう。
「PayPay証券は日本株も米国株も1,000円から買うことができ、誰もが知っている大企業が連なっているため、選びやすいのが魅力です。毎月1,000円ずつの積み立てもでき(※毎週、毎月、毎年積立の3種類から設定できます)、操作が簡単ですぐに設定ができます。LINE証券はLINEユーザーであれば口座申し込みから取引までLINE上で完結する点が魅力です。LINEポイントを利用して投資ができるのも魅力的ですね。投資信託も扱っており、「いちかぶ」の取扱銘柄が多いという特徴もあります」
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スマホ投資と普通の投資の違いは?
スマホ投資の特徴やメリットについて紹介してきましたが、普通の投資との違いについて「投資金額」「手数料」「取扱い銘柄」「取引ツール」の4つの観点から比較してみましょう。
スマホの株式投資、普通の株式投資の一般的な特徴
スマホの株式投資 | 普通の株式投資 | |
---|---|---|
投資金額 | 1株~、1,000円~、など | 100株~ |
手数料 | 0円、15円~
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0円、33円~
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取扱い銘柄 | 国内銘柄がメイン | 国内銘柄・海外銘柄 |
取引ツール | スマホ(簡単なテクニカル指標機能有り) | パソコン・スマホ(テクニカル指標機能などの分析ツールが豊富) |
「スマホ投資と普通の投資の違いは大まかに言うとこのような感じですね。Google、Amazon、Microsoftといった巨大IT企業などの米国株を買いたいという方が増えているので、最近ではスマホ投資でも米国株が買えるようになってきています。そんな人気の米国株もPayPay証券であれば1,000円から買うことができます。ハードルが高いと感じてしまいがちな世界的な企業にも、少額から投資できることがスマホ投資ならではの魅力でしょう」
スマホ投資をする際のポイント
初めて投資をするときは、誰でも不安に感じがちです。スマホ投資を始める際は、以下のポイントに気をつけるようにしましょう。
①まずは少額の投資から始める
「初心者の方は、“値動きが怖いから”と思いがちです。株価には波がありますので、ある程度の値動きは必然ということを前提として理解しましょう。いきなり高額な投資をするのではなく、まずは少額から始めて経験を積むことがポイントになります。日中帯の取引手数料が低く設定されている場合もありますよ」
②投資を検証する時間を設ける
「ずっとその株を持っていて良いのか、売却した方が良いのかという判断も、検証を積み重ねることでできるようになります。また、初心者向けに業績の見方の本もありますので、気になる企業の業績をチェックしてみるのもいいでしょう」
③日常生活や街の中にも投資のヒントがある
「日経新聞を読んだり、銘柄選びだと日経ヴェリタスに目を通すのがおすすめです。投資信託は購入すると運用レポートが見られるので、プロが選んでいる組入銘柄を見るのもおもしろいですよ。SNSでバズった商品も銘柄選びのヒントになるので、広い視野で社会の動向を追いかけてみましょう。また、“大好きな企業なので100株の単元株まで持ちたい”というような自分なりの目標を決めることも非常に大事です。投資も貯蓄と一緒で明確な目標があった方が続きやすい傾向があります。1年間ごとを目安に目標を設定すると、投資を続けるうえでのモチベ―ションにつながりますよ」
投資で得た利益には税金がかかる!?
株式投資で得た配当金と譲渡(売却)益には、税金がかかります。配当金は「配当所得」として税率20.315%、譲渡(売却)益は「上場株式等の譲渡所得等」として20.315%の申告分離課税となります。
確定申告の有無は、どの証券口座を選ぶかによっても変わります。証券口座を選ぶ際は特定口座源泉徴収あり・なし・一般口座の3つから選ぶことになり、特定口座源泉徴収ありの場合は税金を引かれた後の金額が口座に入金されてくるので、確定申告の必要はありません。
特定口座源泉徴収なし、もしくは一般口座を選択した場合は確定申告が必要になります。ただし、投資の利益が年間20万円以下の場合は確定申告の必要はありません。
スマホ投資は少額から手軽に始められますが、損失が出る可能性もあります。投資は自己責任ですので、事前に投資についての基礎知識を勉強してから、自分が使いやすいアプリや証券会社を選ぶようにしましょう。
「自分が使いやすいアプリを選ぶことが大切です。スマホはいつでも手に取れるので、なんとなく『ながら投資』をしたり、没頭しすぎないように、1日の中で取引をする時間を決めてメリハリのある運用をしましょう」
また、忘れがちなのがスマホのセキュリティ対策です。紛失時に不正利用されないようにパスワード設定など、厳重にロックをかけて第三者がアクセスできないようにセキュリティには細心の注意を払いましょう。
投資に関する基礎的な知識を増やせるスマホ投資
スマホ投資は初心者でも気軽に始めることができ、普通の株式よりも少額から投資にチャレンジできます。慣れてきたらパソコンを使って詳しく業績分析をしながら投資をする中級者へとステップアップが可能です。投資に興味があるなら、まずはスマホ投資で実践的な経験を積むことから始めてみましょう。
(掲載日:2022年2月22日)
文:川添祥子
編集:エクスライト
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