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今年の旅は「御船印」めぐりがアツい!? 仕掛け人の小林希さんが語るその魅力とは?

今年の旅は「御船印」めぐりの波到来!? 仕掛け人の小林希さんが語るその魅力とは?

「電車や飛行機で行くのもいいけれど、少し目先の変わった旅行がしてみたい」という旅好きさんに今おすすめしたいのが、ずばり船旅。海に囲まれた日本は大小さまざまな島からなる島国で、船でしか行けない場所がたくさんあるんです。

そんな船旅熱をさらに盛り上げてくれるのが、2021年に始まった「御船印(ごせんいん)」。寺社仏閣でもらえる御朱印の船バージョンで、船ごとに工夫を凝らしたデザインが楽しめるほか、獲得数によって認定される称号「御船印マスター」を目指す制度があったりと、船旅の新しい楽しみになっているというウワサです。

今回はこの「御船印めぐりプロジェクト」の発起人であり、これまで130島以上の日本の離島を巡ってきたという船旅アンバサダー 小林希さんに、御船印と船旅の魅力をたっぷり聞いてきました。まだ見ぬ航海へ出発です!

目次

小林 希(こばやし・のぞみ)さん

小林 希(こばやし・のぞみ)さん

2011年から世界放浪の旅をはじめ、2014年に『恋する旅女、世界へゆく!ーー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家デビュー。「旅」「島」「猫」をテーマに書籍や新聞など各媒体で活躍中。2019年に日本旅客船協会公認の船旅アンバサダーに就任。自ら発起人となり、2021年4月から御船印めぐりプロジェクトを始動。これまでに世界60カ国、国内130島をめぐる。

船旅アンバサダー 小林希さんと一緒に御船印をゲットしてみた in 竹芝

船旅アンバサダー 小林希さんと一緒に御船印をゲットしてみた in 竹芝

小林さんと訪れたのは、ソフトバンク本社近くにある東京の海の玄関口、竹芝客船ターミナル。この港からは大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島という伊豆諸島8島や小笠原諸島への船が出ています。現在は海運会社の東海汽船が運営している2隻の大型客船と、4隻のジェットフォイル(超高速船)が運航中。早速ターミナル内の売店「SHOP竹芝」に行くと、各船の御船印が販売されていました。

船旅アンバサダー 小林希さんと一緒に御船印をゲットしてみた in 竹芝

「竹芝客船ターミナルではSHOP竹芝と航路案内所で御船印を買うことができます。売店のスタッフがその日の日付を入れてくれるので、旅の記念になりますよ」

船旅アンバサダー 小林希さんと一緒に御船印をゲットしてみた in 竹芝

今回は取材時にちょうど港に泊まっていた黄色い大型貨客船「橘丸」と、船体がカラフルなイラストで彩られたジェット船「セブンアイランド 友」の御船印をチョイス。「橘丸」は現在運航している三代目版と、二代目復刻版の2つを入手することができました。

左が二代目、右が現在運航中の「橘丸」の御船印

左が二代目復刻版、右が現在運航中の「橘丸」の御船印

高速ジェット船「セブンアイランド 友」の御船印と小林さん。

ジェットフォイル「セブンアイランド 友」の御船印と小林さん。

ゲットした御船印は「船印帳」に貼ってコレクションしていきます。瑠璃色の船印帳は御船印めぐりプロジェクトの事務局公式デザインで、SHOP竹芝でも手に入ります。白色の船印帳は、船員養成に取り組む海技教育機構とのコラボ版で、購入代金の一部が船員教育に生かされるのだとか。

小林さん私物の船印帳。左から海技教育機構とのコラボ版、公式船印帳、神戸市とのコラボ版

小林さん私物の船印帳。左から海技教育機構とのコラボ版 公式船印帳「日本丸の壱」、公式船印帳「瑠璃」、神戸市とのコラボ版 公式船印帳「港町/神戸」

「御船印は季節のデザイン、他の船会社やアニメとのコラボなどの限定版、乗船して到着した島でしか手に入らないものなど、同じ船でもさまざまな種類があるので、ついコンプリートしたくなってしまいますよ」

御船印でめぐる全国の魅力的な船旅 (地球の歩き方 御朱印シリーズ)

公式ガイドブックで、お目当ての御船印を探してみるのもいいかもしれません。

御船印でめぐる全国の魅力的な船旅 (地球の歩き方 御朱印シリーズ)

工夫を凝らしたアイデアに脱帽! 小林さんの御船印コレクション大公開

工夫を凝らしたアイデアに脱帽! 小林さんの御船印コレクション大公開

日本旅客船協会の公認事業として、2021年4月にスタートした御船印めぐりプロジェクト。現在は全国90の船会社(2023年2月時点)が参加し、それぞれに工夫を凝らした御船印を発行しています。小林さんが御船印をつくろうと思ったのはシンプルに、船旅をもっとたくさんの人たちに楽しんでほしかったから。

「伊豆諸島を旅行中に、七福神の安置されている寺社を巡拝しながら御朱印を集めている方に遭遇したんです。船にも御朱印のようなものがあれば、船旅に興味を持ってくれるきっかけになるんじゃないかと思って」

御船印のデザインは船の名前をメインに、船や土地に由来のあるイラストや写真、スタンプを駆使したものなど多種多様。なかには直筆で船名を書いてもらえるものや、船長やスタッフに直筆コメントをもらえるものもあるんです。

小林さんのコレクションから、とりわけユニークなものをいくつかピックアップしてみました。

①まるで絵本? 飛び出す御船印

①まるで絵本? 飛び出す御船印 ジャンボフェリー「りつりん2」

神戸、小豆島、高松を巡回するジェンボフェリー「りつりん2」の御船印は、飛び出す絵本のようなトリック系。開くと小豆島のイラストの上に名物・オリーブの木がポンッと立ち上がり、思わず拍手してしまいます。

「クリエイティブな社長さんのアイデアで生まれた御船印で、小豆島だけでなく、高松のうどんや神戸のポートタワーなど、航路の特徴がぎゅっと詰め込まれています。1枚1,000円と他の御船印に比べると高めなのですが、凝ったデザインで大人気です。ちなみにジャンボフェリーさんの新造船『あおい』もすごく良い船なので注目です!」

②社長さんのオール手書き。電話予約マストの御船印

②社長さんのオール手書き。電話予約マストの御船印 山陽観光開発「ローソク島遊覧船」

世界で1つだけの手書き御船印をゲットできるのが、隠岐(おき)島で就航しているローソク遊覧船。文字はすべて手書きなので、事前の電話予約が必須です。ちなみに御船印を書いてくれる社長さんは、実は地元の伊勢命神社(いせのみことじんじゃ)の宮司さんでもあるそう。

「手書きって人のぬくもりが伝わってきてうれしいですよね。ローソクの形をした岩がそびえ立つ景勝地・ローソク島を回る遊覧船なのですが、日没のタイミングに乗ることができれば、夕日がろうそくにともる灯のように見えて幻想的ですよ」

③憧れの船長を近くに感じる。直筆サイン入り御船印

③憧れの船長を近くに感じる。直筆サイン入り御船印 東京九州フェリー「はまゆう」

神奈川県 横須賀港と福岡県 新門司港を結ぶ長距離フェリー「はまゆう」。船名は横須賀市のお花「浜木綿(はまゆう)」に由来しており、御船印にもそのイラストをデザイン。ユニークなのが、船長さんの直筆サインが入ったバージョンが販売されていること!

「このサインは船長が毎日つける航海日誌に書くのと同じものです。私はスタッフさんにも一言コメントを入れてもらったのですが、長時間乗船する船ではご好意でこういった対応をしてもらえる場合もあるので、御船印を買った時に聞いてみてくださいね」

④全部集めるまで完成しない。つなげて絵になる御船印

④全部集めるまで完成しない。つなげて絵になる御船印 川崎近海汽船「シルバーフェリー」

青森県 八戸港と北海道 苫小牧港の間で運行する長距離フェリーのシルバーフェリー。「シルバーティアラ」「シルバープリンセス」「シルバーエイト」「シルバーブリーズ」という4つの船内でそれぞれ御船印が販売されており、全部集めて並べると、なんと1つの絵が完成。もはやアート作品な御船印です。これは完成するまで乗るしかない。

「絵にはシルバーフェリーの航海中に出会う海鳥やイルカ、サバ、マグロなどの生きものが描かれています。各船に乗らないと4枚集めることができないので、頑張って集めてみてください!」

全国を航海して「御船印マスター」を目指そう!

全国を航海して「御船印マスター」を目指そう!

現在、御船印めぐりプロジェクトをもっと盛り上げようと、さまざまな企画も進行中。

その1つが、集めた御船印の数によって認定される称号制度「御船印マスター制度」です。20社の御船印を集めると一級航海士、さらに40社分を集めると船長に昇格。それぞれシリアルナンバー付きの認定書ももらえるということで、船ファンにはたまりません。また公式ガイドブックも刊行され、今後ますます御船印めぐりをする人が増えそうな予感。

全国を航海して「御船印マスター」を目指そう!

小林さんいわく「御船印自体が始まったばかりですが、すでに一等航海士は全国で約180人、船長は全国に60人ほどいます。30から40代の方が多い印象ですね」ということなので、いまのうちにマスター認定をもらっておくと、御船印がもっと注目されたときに自慢できるかもしれません。

また今後は御船印を通して、船が発着する地域の活性化も行っていきたいと語る小林さん。2022年には御船印めぐりプロジェクト1周年を記念して、西の港町 神戸市との連携企画が実施され、今年も継続中なんだそう。

「海が見えるホテルやお弁当屋の老舗など、地元企業とコラボ商品を作ったり、神戸の船会社さん8社と神戸海洋博物館、カワサキワールドを合わせた10社分の御船印を集めると『神戸ポートエキスパート』の称号やノベルティがもらえる企画などを展開しています。今後は御船印を通じて、本格的に船旅や発着地の経済活性化を目指していきたいですね」

全国各地の御船印がプリントされたクリアファイル(小林さん私物)

全国各地の御船印がプリントされたクリアファイル(小林さん私物)

そして何より小林さんの願いは、1人でも多くの人に船旅の魅力を知ってもらうこと。もともとは離島へ旅することが好きだった小林さんは、旅を通じて島の人々の暮らしに触れ、船という存在に魅了されていったといいます。

「日本には人が暮らす離島が400以上もありますが、そのうち飛行場があるのは数えるほど。つまり船がないと、島の人たちは生きていけません。また船は自然の力を借りなければならない乗り物。天候や潮流にも左右されます。だからこそ人が船で海に出るようになってから自然への信仰が生まれ、航海の無事を祈るために神社を建てたり、船内に神棚を祭ったりするようになったんです。船旅を通して、そうした船の歴史と島の人々の思いも知ってもらえたらうれしいですね」

全国を航海して「御船印マスター」を目指そう!

最後に小林さんがいま感じている、船旅の良さを聞いてみました。

「旅情ですね。目的地はどこであれ、船から朝日や夕日、星空を見ているだけで旅を感じます。それに“海を越える”という感覚がすごく好きで。本土と違う場所に来て、別空間に入る感じというか。海を渡ってみなければ分からない世界があるんです。ぜひ皆さんにも体験してほしいですね」

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歴史や地域の魅力を探訪。集めるだけじゃない「御城印」の楽しみ方を歴史学者が解説

御城印の魅力について、お城をこよなく愛する歴史学者 小和田哲男さんにお聞きしています。

歴史や地域の魅力を探訪。集めるだけじゃない「御城印」の楽しみ方を歴史学者が解説

(掲載日:2023年2月22日)
文:井上麻子
写真:山野一真
編集:エクスライト

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