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1,000km以上先の手術に遠隔参加。沖縄と香川を5Gでつなぐ歯科治療の実証実験

1,000km以上先の手術に遠隔参加。沖縄と香川を5Gでつなぐ歯科治療の実証実験

手術を行う医師の横にあるのはスマホとカメラ…? これは、およそ1,000km以上離れた沖縄県と香川県にある歯科医院を、5G(第5世代通信技術)でつないで行われた歯科医療の手術の様子です。

ほんの少しの誤差も許されない手術でどんな技術が活用されているのでしょうか? 5GやAR、3Dプリンティング模型といった技術を活用し、遠隔で行われた手術支援の様子をご紹介します!

難易度の高い歯科治療。若手歯科医を遠隔からサポート

今回遠隔手術支援の実証実験対象となったのは、上あごの奥歯である上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の根管治療。根管治療とは、虫歯の進行が神経まで及んでしまった際に行われるもので、神経の形態が複雑であること、また治療箇所を直視することが難しいことから難易度の高い手術とされています。香川県に本院、沖縄県に分院を持つ歯科医院「なないろ歯科」で、香川・沖縄間の遠隔による手術支援が行われました。

手術の前には、患者の歯や口内をCTスキャンを用いてリアルに再現した3Dモデルを、タブレットを使ってAR(仮想現実)空間に表示させ、手術を行う上での注意点の確認や手術の事前トレーニングを入念に行ってから本番に臨みます。

計4つのカメラから得た情報で、院長が手術現場の様子を把握

香川にいる院長が沖縄の手術の様子を映像を通して確認。手術を担当する歯科医は、院長のサポートの下治療を行います。

沖縄県にある分院の手術室の様子

沖縄県にある分院の手術室の様子

沖縄側

沖縄側

香川側。手術室に設置されたカメラからの映像を頼りに、タブレットを使って緻密なコミュニケーションを取っている様子

香川側。手術室に設置されたカメラからの映像を頼りに、タブレットを使って緻密なコミュニケーションを取っている様子

遠隔指導を行う院長にとって、重要な情報となるのがカメラからの手術の映像です。沖縄側の分院のオペ室には、全部で4つのカメラが設置され、手術を担当する歯科医が受け取る空間情報をあらゆる角度から撮影。香川側の院長がサポートしやすいようにします。

計4つのカメラから得た情報で、院長が手術現場の様子を把握

遠隔支援を行う際に最も使われる映像は、口腔(こうくう)内の観察用カメラの映像です。手術を行う歯科医が頭に付けたヘッドマウント型のカメラで取得された映像からは、患者の様子が手術する歯科医の目線で伝わります。そのほか、歯科医の手元や患者の様子を補うカメラとして、高精細な4Kディスプレイカメラと、手術室の全体の様子が見られる全天球通話システム用のカメラが完備されています。

こうした万全な準備と遠隔による院長からの手術サポートの下、手術は1時間ほどで無事に終えました。実証実験は、5GやAR、3Dプリンティング模型を用いて歯科領域における遠隔教育や治療支援を行う株式会社Dental Predictionが主導。ソフトバンクは、Dental Predictionの遠隔治療支援サービス「DenPre 3D Lab With 5G」の活用にあたり、5Gや映像伝送技術の提供で協力しています。

近年では、慢性的な医師不足により、こうした高度な技術を必要とする治療を行うために医師が出張して対応している地域が増加しています。遠隔でのサポートが実用化されれば、全国の医師不足問題の解消にもつながります。

遠隔治療支援サービス「DenPre 3D Lab With 5G」

症例のCTデータまたは口腔内スキャナーからのデータにより得られた画像情報をコンピュータ処理することで、オーダーメードのARおよび3Dプリンティング模型を作成するサービス。

少しの誤差も許されない。高精度の映像伝送を可能にする2つの技術

今回の遠隔手術支援の実証実験で活用された「全天球通話システム」とプライベート5Gについて、法人プロダクト&事業戦略本部 5Gサービスプロダクト部の担当者の2人に話を聞きました。

千田 健太(ちだ・けんた)

プライベート5G担当
千田 健太(ちだ・けんた)

小沢 元(おざわ・げん)

全天球通話システム担当
小沢 元(おざわ・げん)

千田 健太(ちだ・けんた)

プライベート5G担当
千田 健太(ちだ・けんた)

小沢 元(おざわ・げん)

全天球通話システム担当
小沢 元(おざわ・げん)

今回行われた遠隔での歯科手術支援の実証実験では、手術室にたくさんのカメラが設置されていましたね。
手術室全体の様子が分かる「全天球通話システム」はどのようなサービスなんですか?

小沢「全天球通話システムは、360度の映像をリアルタイムで届けるサービスです。手術室は狭く、従来の2次元のビデオ通話では、固定した画角の限られた情報しか読み取れませんが、360度全方位が確認できれば、あたかも現場にいるかのような感覚で全体像が分かります。

遠隔治療に向けて進化する歯科領域の現場でも、現場にいる歯科医がどのような立ち位置で手術をしているかといった空間情報を的確に知りたいというニーズがあったので、今回実験的に活用しました。2次元カメラのような、一箇所を拡大して見られる映像とあわせて全体の連携の様子などが分かるとリモートから指示しやすいようです」

360度カメラとスマホを接続して、インターネットで映像を送る

360度カメラとスマホを接続して、インターネットで映像を送る

遠隔で指導を行う際は、全体の映像が分かることが重要なんですね!

小沢「遠隔手術支援を行った歯科医院の院長のように、分院を経営されていて、全体のオペレーションを管理したいというニーズのある方にとって全体を把握することは大切です。今回の実験の結果、香川側の院長が全体像を把握できることで、手術中の安心感にもつながり、また得られる情報が多いためスムーズなコミュニケーションに一役を担ったのではないかと思っています。

コロナの影響もあり、地域間で長距離の移動が必要となる業界などでは、移動の手間を省いて現場の様子を把握したいという需要が増えてきています。国内のみではなく、海外と日本をつなぐこともできますし、最終的には法人のお客さまだけではなく、動画配信といった個人利用のニーズにも合わせて、使っていけるようにしたいと思っています。今は、試験段階でユースケースを増やしていく段階にあるので、ぜひいろんな現場のニーズに合わせて試していただきたいです」

手術中に遅延がほとんどない映像を届けるには、高度な通信技術が欠かせないと思います。今回導入されたプライベート5Gとはどのようなものか教えてください。

千田「動画視聴やSNSなど普段の生活で一般的に利用される5Gとは違い、より閉ざされた空間で構築された通信ネットワークが『プライベート5G』です。より強固で、安全性の高い通信を利用することができ、主に法人のお客さま向けに提供しており、個々の要件に応じてソフトバンクがネットワークを構築し、保守・運用を行っています。

今回の歯科手術支援では、遠隔にある各地域をつないで現場の様子をカメラで共有するため、ソフトバンクが既存で展開するパブリック5Gの一部を切り出す共有型のプライベート5G環境を提供しました。遠隔医療支援のユースケースでは、8Kの内視鏡手術などもあります。歯科医療よりもさらに複雑な手術で、高精度な映像や低遅延を求める手術現場においては、個別のカスタマイズで基地局を立てて5Gを提供する専有型のほうが適していると思います」

プライベート5Gのメリットについて教えてください。

千田「安定したネットワークで、遠隔にある地域同士の映像を送受信できることがメリットです。一般に普及しているビデオ通話でも映像の伝送はもちろん可能ですが、高品質な画像や動画を送る場合は専用のシステムを自分たちで構築する必要があります。プライベート5Gを使えば、自らシステムを組まなくても、遠隔支援が可能な環境を作り出し、高品質な映像を届けることができます」

今後、遠隔医療の領域で、どのように活用していくのでしょうか?

千田「日本の人口が減少する中で、遠隔医療にはますます注目が集まってきています。例えば、衛生の観点から防護服などが必要なリスクの高い手術などにおいても遠隔で行うことでより限られた人数でリスクを最小限に抑えて手術を行うことが可能になるかもしれません。

専用のネットワークにつなぐことで利便性の向上にもつながるプライベート5Gを活用していただければ、わざわざ現地に行かずとも医療が行える世界の実現に貢献できるのではないかと思っています。プライベート5Gのさらなる普及に向けて取り組んでいきたいと思います」

少しの誤差も許されない。高精度の映像伝送を可能にする2つの技術

ヒト・モノ・コトをつなぐ通信で、新たな可能性を

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空気や水と同じように、誰もが意識せずに通信を利用できる未来へ。ソフトバンクは常に技術革新に挑戦し、通信をベースにした新しい技術を提供しています。

通信が変える人々の生活

(掲載日:2023年6月27日)
文:ソフトバンクニュース編集部