最近、動画配信などでゲーム実況コンテンツが人気ですが、今やゲームは「eスポーツ」と呼ばれるスポーツ競技として世界中にプロリーグが存在し、世界大会も開催されるなど年々盛り上がりを見せています。
プロ野球球団を運営する福岡ソフトバンクホークスが、実はプロゲーミングチームも運営しているって知ってましたか?
先日開催されたPCゲーム「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」の国内最高峰リーグLeague of Legends Japan League(LJL)の決勝大会「LJL 2023 Summer Split Finals」にも出場した福岡ソフトバンクホークス ゲーミング。
大会の様子や、選手が考える競技の魅力やプロeスポーツ選手として競技とどう向き合っているのか、インタビューしました。
League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)とは
リーグ・オブ・レジェンドは、チームで戦うストラテジーゲーム。5体の強力な “チャンピオン” で構成された2つのチームが、互いに相手の本拠地を目指して激突します。140体以上の多彩なチャンピオンの中から自分の使う1体を選んで、チームで力を合わせて勝利を目指します。 全世界でプレイヤー人口が1億人を超えるとも言われ、最も人気のあるeスポーツの種目の1つ。
目次
eスポーツ観戦をリアルで! オフラインだから感じられる緊張感と熱量
「LJL 2023 Summer Split Finals」の試合会場となったのは幕張メッセ。オンラインゲームで対戦するeスポーツは試合観戦もオンライン配信のみと思われがちですが、実は会場での観戦が最高に熱いんです。
4年ぶりのオフライン開催とあって、華やかな演出で決勝戦の舞台を盛り上げていましたよ。
国内最高峰の両チームが直接対峙する張り詰めた緊張感、オフラインでしか味わえません。
両チームの息もつかせぬ攻防戦に観客席からはどよめきや声援が聞こえてくるなど、会場は熱気に包まれていました。
決勝戦の模様はアーカイブ配信されていますので、ぜひご覧ください。
©2023 Riot Games, Inc. Used With Permission
eスポーツアスリートが向き合う競技としてのゲーム
(左から)
- Vsta選手・・・【担当ロール】SUP/大韓民国・ピョンテク出身
- Blank選手・・・【担当ロール】JG/大韓民国・大全出身
- Kinatu選手・・・【担当ロール】TOP/愛知県出身
- Marble選手・・・【担当ロール】ADC/北海道出身
- DasheR選手・・・【担当ロール】MID/大韓民国・釜山出身
先日の決勝はお疲れさまでした。本当に熱い戦いになりましたね。今大会の競技「League of Legends」の魅力を教えてください。
「League of Legends」(以下、LoL)は、運の要素のないゲームだと思います。僕はFPS※のプロ選手としても活動していたのですが、FPSはその日のコンディションや運の要素が大きい。でも、ストラテジーゲームであるLoL はとても論理的に作り込まれていて、自分の思考がゲームに反映される。そこが魅力だと感じています。
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FPS:First Person Shooterの略。一人称視点のシューティングゲーム
中学1年生からプレイしていますが、毎日のようにアップデートが入って、チャンピオン(キャラクター)の強さや相性も変わる。僕は本来飽き性なのですが、LoLに関してはチャンピオンのスタイル、アグレッシブさや守備的な細かい違いでも飽きずにずっと楽しめています。
無限大に正解がないゲームですね。キャラクターもアイテムも多いのでいろいろ試して、自分の中で面白さを追求していくのが魅力だと思います。
皆さんは、eスポーツのプロのアスリートですが、アマチュア時代と比べて自身の中で何か変わったことはありますか?
以前はゲームの中で自分が楽しければ良かったのですが、プロになってからは勝つためにチームメンバーとお互いに調整しながらうまくやっていくようになりました。
アマチュアの頃はただただゲームが楽しいだけでしたが、プロになってからは、お給料をいただく立場というのはもちろんですが、ファンの期待に応え、雇ってくれている会社にも貢献したいという責任感と使命感が生まれたように思います。
僕も一つ一つの行動に対するマインドが変わって、プロとしての立ち居振る舞いを意識するようになりました。練習の際オンラインで一般の方とプレイする時でも振る舞い方や態度を意識するようになりました。
求められるのは、常に正確な判断をし続ける安定感
スポーツにはそれぞれの種目で必要とされる能力があると思いますが、eスポーツではどんなものが求められますか?
実力はもちろんですがメンタルが大事だと思っています。LoLでは長期戦がよくあるので、実力が並んでいると、集中力を切らさずどれだけ維持できるかが勝負ですね。
運が不要な分、何よりも練習が必要になります。安定しているときとそうでない時で実力が大きく変わるので、やはり安定感が大事だと思います。
僕の中では大きく2つ「思考」と「操作の精度」のスキルです。FPSであれば、多少思考力が劣っても操作の精度で解決できることがある。でもLoLに限っては、スキルで解決できることがほぼなく、重要なのは思考の部分。判断能力だったり、事前の知識だったりがすごく重要で、長い試合の中で常に正確な判断をしなくてはなりません。他のメンバーもメンタルが大事と話しているのは、結局メンタルが思考に影響していくということですね。
安定感を高めるためにどのようなトレーニングをしているのですか?
個人練習でも、チーム練習でも同じように集中できるよう意識しています。ドリンクを同じ時間に飲んだり生活をルーティン化することで安定させていますね。
メンタルが崩れて良くないプレイをしてしまった時は、録画を見ます。外から試合を客観的に見ることで、メンタル部分を抜きにして分析して、悪かった部分をはっきりさせて直していく。そうすると試合の構図の細分化ができて、メンタルが影響しなくなってくる。
普段はどのぐらい練習しているのですか?
チームの合同練習を毎日6時間から8時間行っています。他のチームと試合をしてお互い学ぶことが多いです。それとは別に個人練習も行いますが、そちらはアップデートの性能を確かめるのがメインです。個人練習で得た知識を合同練習で共有して合わせています。
1日8時間以上… 本当に全力でゲームに向き合っているんですね。今後、国内のeスポーツをどんな風に盛り上げていきたいですか?
以前LJLがオフラインで開催されていた時、僕は1人のファンとして会場で見ていました。会場で感じる熱気が好きだったのを覚えています。これからもっとオフラインで試合ができるといいですね。個人的には、SNSを通じて、ファンにもまだLoLを知らない人にも、もっとゲームの魅力をアピールしていきたいです。
LoLを好きになってくれるファンが増えていかないと、オフラインの大会は盛り上がっていかないので、LoLをたくさんの皆さんに知ってもらえるように頑張っていきたいです。
ソフトバンクホークスのチームがLoLで優勝したら、ルールを知らない人にももっと興味を持ってもらえるんじゃないかな、と思います。優勝して日本のeスポーツリーグを世界にアピールしたいですね。
今回、オフラインの大会を初めて経験しました。オフラインを経験する前は、ファンとの交流はオンラインだけでした。オフラインで試合をしてみて、会場の観客も楽しそうでしたし、何より僕たちも楽しめました。オフラインの場で最高のパフォーマンスをしてファンの皆さんと盛り上がっていけたらと思います。
若い選手やチームがもっと出てくると良いですね。そしてソフトバンクホークスのようにeスポーツを応援してくれる企業ももっと増えていくことを期待しています。
野球でもeスポーツでも目指す先は同じ「世界一のチーム」
長年球団経営を続けてきた福岡ソフトバンクホークスが、なぜ今eスポーツに取り組んでいるのか、チームの運営に携わる担当者にもインタビューしました。
ホークスといえば「野球」というイメージですが、なぜeスポーツ事業に取り組んでいるのでしょうか?
奥村さん:私たちは、ホークスの中で新規事業を検討する部署に所属しています。eスポーツへの参入を検討しはじめたのは5年ほど前になりますが、ちょうどeスポーツがはやり出し注目を集めていた時期でした。
球団のオーナーである孫も話している通り、われわれ福岡ソフトバンクホークスは「世界一の球団」を目指しています。もちろん野球のみならず新規事業でも世界を目指していく。その中で世界規模の盛り上がりを見せていたeスポーツには大きな可能性を感じました。 野球とゲームで全く異なるように見えるかもしれませんが、「世界一を目指す」という共通の考えのもと新規事業としてeスポーツにも力を入れているのが現状です。
「League of Legends」の国内リーグLJLにはいつから参加されているのですか。
藤井さん:国内リーグであるLJLには、2020年から参加しています。LJLには8つのチームがあり、毎年春・夏の2シーズンを通して対戦を行い、優勝チームは世界大会への切符を手にします。これまでなかなか決勝まで進出できず悔しい思いをしてきましたが、昨年の夏にチーム強化を行い、今年初めて決勝に進出することができました。
結果は残念ながら優勝を逃しましたが、まだまだ上を目指せる余地はあると思っています。
今回の大会も非常に華やかな会場で盛り上がっていましたが、世界大会となると規模もかなり大きいのでしょうか?
奥村さん:「League of Legends」はすでに10年ぐらい歴史あるゲームなんですが、日本ではそこまで知名度が高くない。でも、世界ではプレーヤー人口も一番と言っていいぐらい人気のあるゲームになります。
eスポーツの中では「League of Legends」の世界大会が圧倒的に視聴者数も多いんです。2021年の決勝戦はライブ配信の同時視聴数が7,400万人とも言われています。
それだけ世界的に注目度の高いジャンルだからこそ、「世界一」を目指すにふさわしいと思っています。
「League of Legends」の他にもゲーミングチームを運営されているのでしょうか?
内保さん:現在、われわれホークス ゲーミングが参加しているプロリーグのタイトルは3つあります。
まずは、「League of Legends」。もう1つがカードゲームの「Shadowverse(シャドウバース)」。そして「プロ野球スピリッツA」という野球ゲームのリーグにも参加しています。ただ、このゲームは日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント共催のプロ野球eスポーツリーグなので、厳密に言うとホークスゲーミングとしてではなく、球団として参加している形になります。
世界中に無数にいるライバルを相手に戦う選手たちはまさにアスリートですね。
奥村さん:選手たちは、それこそ子どもの頃から一直線にプロを目指してゲームに向き合ってきています。今回大会に出場したチームには韓国出身のメンバーもいますが、ゲーミングハウスを借りて、そこでマネージャーやコーチと24時間共にしながら、生活全てを練習にささげています。まさにプロのスポーツチームの寮生活とほぼ変わらない状況で競技に臨んでいるんです。
われわれは、選手たちが強くなれる環境、ゲームに集中できる環境を提供するため食事や生活面含めてあらゆるサポートを行っています。
これからもトッププレーヤーたちと共に、野球だけでなくeスポーツでも世界一のチームを目指して盛り上げていきます。
ありがとうございました。
(掲載日:2023年9月22日)
文:ソフトバンクニュース編集部