地震や洪水などの大規模災害が起こった際、被災地へ足を運び、「災害ボランティア」として役に立ちたいと考える人は多いでしょう。しかし、いざ活動をしようと思っても、何から始めればよいのか、どのようなことに注意したらよいのかが分からない… と、ためらうケースも少なくないようです。
今回は、災害ボランティアを始める上で知っておきたい準備や、被災地の迷惑にならないよう、活動の際に気を付けたいことなどを紹介します。
この災害テーマのポイント
- 被災地に行く前に、まずは情報収集しよう
- 被災地では自己完結が基本。事前の準備はしっかりと
- 現地に行く以外にも、寄付や観光などで支援は可能
この災害テーマのポイント
- 被災地に行く前に、まずは情報収集しよう
- 被災地では自己完結が基本。事前の準備はしっかりと
- 現地に行く以外にも、寄付や観光などで支援は可能
目次
災害ボランティアは、いつから、どうやって参加する?
大規模な災害が発生したときに、災害ボランティアを始めるためには、何をしたら良いのでしょうか。
被災地に入って良い時期は?
まずは、しっかり情報収集をすることが大切です。災害ボランティアは、基本的には現地の受け入れ態勢が整い、災害ボランティアセンターなどが開設されたあとに、募集が始まります。現地に家族や親戚、友人などがいる場合や、すでに現地と関係性が築かれている場合を除き、個人の判断で勝手に現地に行ったり、支援物資を送ったりしないようにしましょう。
災害発生後は、下記のようにいくつかのフェーズがあります。現地の状況にもよりますが、災害ボランティアセンターの開設は、「応急対策(災害発生4日目から3〜6カ月)」の期間となることが多いようです。
どこで申し込めばいい?
災害ボランティアは、基本的には市区町村の社会福祉協議会が運営する災害ボランティアセンターで募集をし、受け付けを開始します。被災地の社会福祉協議会のホームページにアクセスして、事前に登録をしましょう。現地で当日に受け付けをしてもらえる場合もありますが、定員を設けることもあるので、事前の確認は必須です。ただし、電話での問い合わせは、対応のためにかえって被災地に負担をかける可能性があるので避けましょう。
なお、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、市区町村の社会福祉協議会ではなく、石川県が一括して災害ボランティアを募集。また、半島という地形ゆえに交通状況が悪く、不要不急の被災地入りを控えるよう、県から要請を出しています。ただ、必ずしも「すぐに被災地に行ってはならない」ということではないので、被災地入りのタイミングや受付方法は、各地の被害状況、事情によってさまざまだということを念頭に、情報を集めましょう。
どんな仕事を任せてもらえる?
災害の種類や現地の状況にもよりますが、被災地ではあらゆる場面で人手を必要としています。「力がないから役に立てないかも…」と遠慮する必要はありません。がれきの撤去や、家屋の清掃など力仕事のほかにも、災害ボランティアの受付や被災者の相談対応、子どもの遊び相手になるなど内勤仕事もあるので、募集内容を確認しましょう。
被災地に負担をかけない準備をしよう
情報収集をした上で、災害ボランティアとして被災地に行くことを決めたら、どのような準備が必要になるのでしょうか。
- ボランティア保険には必ず入る
災害ボランティアとして活動する際には、事前に「ボランティア保険」に加入しましょう。加入していないと受け付けてもらえない場合もあります。ボランティア保険は、自身がケガをしたときだけではなく、被災者の自宅などでの作業中、家財道具を壊してしまったというような事態も保証対象となっています。安心して活動するためには必須のものと心得ておいてください。
加入は、ご自身が住んでいる地域の社会福祉協議会の窓口や全国社会福祉協議会のホームページから申し込めます。
- 全て自己調達して持ち込む
チェーンソーや草刈り機といった特殊な機材を除き、基本的には現地で必要なものは全て自分で準備をして持参しましょう。下記は、がれき撤去など現場作業をする際に最低限必要な持ち物の例です。ボランティアセンターのホームページで持ち物を記載していることもあるので、チェックしておきましょう。
- 汚れても良い服(長袖・長ズボン)
- 着替え
- 帽子
- サングラスやゴーグル(ほこりや日差しから目を守る)
- 雨具(カッパなど)
- 長靴(底の丈夫なもの、くぎの踏み抜き防止のために鉄板入り中敷きがあるもの)
- マスク(できれば防じんマスク)
- 軍手、ゴム手袋
- タオル、ウェットティッシュ
- ゴミ袋(自分のゴミは各自で持ち帰る)
- 飲料水
- 常備薬
- 日焼け止め
- 保険証
- 食事(基本的には持参)
- 食事や宿泊、交通手段も自己手配
特に災害直後の被災地では、物資も食料も寝る場所も不足しています。現地に負担をかけないように、食事や宿泊場所、現地までの交通手段は全て自分で手配しましょう。
現地での手配が難しい場合は、被災地ではない近隣市町村の旅館やホテルに宿泊をし、現地に通うのが良いでしょう。直接の被災地でなくとも、周辺地域では風評被害で客足が落ちてしまうこともあるため、そのような場所で宿泊や食事をすることも被災近隣地域の経済の活性化につながります。食料や水などは現地へ行く道すがら、近隣市町村で開いているスーパーやコンビニなどで購入して持参するのも良いでしょう。
いつでも被災者への心配りを忘れずに行動しよう
実際に被災地に入ってからは、どのようなことに気を付けて活動したら良いのでしょうか。最低限知っておきたい心得を紹介します。
- 被災者の心情に配慮し、マナーを守る
言わずもがな、何よりも被災者の気持ちに寄り添って、最大限の配慮を心がけましょう。特に、SNSの使い方には十分な注意が必要です。倒れてしまった家や避難所内などを無断で撮影し、SNSにアップするのは言語道断。被災者のプライバシーを侵害するような行為は絶対にしてはいけません。何のためにボランティアに行っているのかを忘れずに行動するようにしましょう。
- 安全第一、健康第一
自分の身は自分で守ることと、体調が悪い場合は速やかに活動をやめることを心がけましょう。無理をして万が一のことがあった場合、被災地に余計な負担をかけることにもつながります。また、大地震が起きた際は余震なども続くため、二次災害にも気を付けましょう。
- 災害直後だけではない、息の長い活動を
がれきの撤去や泥出しなど現場を整える作業がある程度終了してからも、さまざまな場面で人手が必要です。例えば、仮設住宅から新居への引っ越し手伝い、住人がいなくなった住居の手入れ、被災者のケアなど、10年以上支援が続くことも。被災から時間が経つと、災害ボランティアセンターを解消して「地域支え合いセンター」などの名称で、ボランティアなどによる被災者支援が引き続き行われる場合もあります。長期にわたるボランティア活動を検討している人は、社会福祉協議会などに問い合わせてみましょう。
- 自己完結を心がけよう
あらためて、自己完結を心がけましょう。支援物資は被災者のものなので使用せず、装備や宿、食料などボランティア自身が利用するものは自分で準備しましょう。
現地に行く以外にも… 広い意味での「ボランティア」で支援しよう
現地に行けなくとも、被災地を支援することはできます。自分ができることを見つけて、行動しましょう。
- 義援金や支援金
義援金と支援金は、実は異なります。義援金は、被災者一人一人に分配されるお金のこと。一方、支援金は、被災地で支援活動を行う団体に寄付されるお金。それぞれの特徴を理解した上で選択をしましょう。
「義援金」と「支援金」は何が違う?
義援金
自治体や日本赤十字社などを通じて、受け付けます。集まったお金は、義援金配分委員会によって審議され、集まった義援金の100%が被災者に使われます。ただし、被災者が受け取れる金額は、被災者数などの正確な情報を把握した後に、家屋の崩壊の程度などによって分配されるため、被災地に届くまでには少し時間がかかります。支援金
自分が支援したい活動をしているNPO団体、ボランティア団体への活動資金として寄付します。生理用品や尿パッドなど被災地の女性が必要なものを積極的に送っている団体、断水が続いている施設入所者の入浴を支援している団体、被災地のペットの保護をしている団体など、自治体などではケアし切れない部分の支援を行っている団体に寄付すれば、被災者に対してより直接的で速やかな支援が可能です。 - 物産品の購入や観光
ふるさと納税や通販などで被災地域の物産品を買ったり、被災地域や風評被害に苦しむ周辺地域に観光へ出かけてお金を使ったりすることも支援につながります。
災害ボランティアで役立つサービス・ウェブサイト
- Yahoo!ボランティア
全国各地のボランティア情報を掲載。ボランティア活動をしたい人、してもらいたい人を結ぶ場として、自分に合ったボランティアスタイルを探すのに役立つさまざまな情報を網羅しています。
- Yahoo!ニュース
国内外の最新のニュースを閲覧できるサービス。新聞社や通信社などの信頼できる情報提供元からの配信ニュースをチェックできます。
- Yahoo!ネット基金
日本最大級の寄付ポータルサイト。Tポイントでの寄付も可能です。
- さとふる
ふるさと納税ができる総合サイト。災害発生時には、返礼品を受け取らない災害支援金としての寄付もできます。
- 全国社会福祉協議会のウェブサイト
災害ボランティアの活動に関する情報が掲載されています。ボランティアの募集状況のほか、ボランティア保険についての案内も。
監修者プロフィール
防災講師・防災コンサルタント 高橋洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
(掲載日:2024年3月28日)
監修者:高橋洋
文:佐藤葉月
編集:エクスライト
イラスト:高山千草