「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの実現に向けて取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、担当社員が自らの言葉で紹介します。27回目は、ソフトバンクのサプライチェーン全体でのネットゼロ達成を目指し、サプライヤーと共に推進する取り組みです。
話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 財務統括 コストマネジメント本部 購買統括部 グループシナジー推進部
佐藤 瞳(さとう・ひとみ)
購買担当者として取引先との交渉・管理の業務を担当した後、2020年からサプライチェーンのサステナビリティ推進を担当。ボランティア活動を通じて個人的にESGの分野に関心を持っていたことから、現在の仕事は「まさに天職」。
目次
購買部門による持続可能な社会への貢献活動
持続可能な社会の実現に向け、多くの企業が気候変動問題の解決に取り組んでいる中、ソフトバンクは2021年に「カーボンニュートラル2030宣言」、2022年に「ネットゼロ」の目標を掲げ、2023年には「ネットゼロ」をグループ企業に拡大しています。
ソフトバンクのスコープ3(自社の直接排出や電力消費などに伴う範囲以外で発生する、事業活動に関連する他社の排出)はスコープ1、2に対しても排出量が大きく、サプライヤーの皆さまの協力なくしてネットゼロは実現できません。そのため、ソフトバンクのサプライチェーンマネジメントを担う購買部門が、環境推進部門と協力して対応することが必要不可欠です。
効率・コスト優先からESG重視へ。基準の変化に伴い新たなアプローチを
企業は、事業活動を行う上で必要となる資機材や役務などの調達にあたって、取引先選定や、価格や条件の交渉、発注、取引開始後の個々の取引や取引先の管理などを行います。ソフトバンクではこうした一連の「バイヤー業務」を購買部門が担当し、現場の社員やサプライヤーと連携しながら交渉を進め、関係者にとって最適な取引を目指しています。
かつては、QCD(Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期)を指標とする、事業の存続性の観点でサプライヤーの財務面を評価するのが主流でしたが、「カーボンニュートラル2030宣言」より少し前から環境配慮に関する対応をはじめとする、ESG要素を含めた評価基準の必要性が求められるようになりました。
年間で数千のサプライヤーに対してバイヤー業務を行う中、ネットゼロの方針に伴う新しい業務手順を導入していくことや、各サプライヤーへ協力要請していくのはなかなか大変です。そのため、われわれグループシナジー推進部のメンバーが主導し、ネットゼロ実現に向けたロードマップの策定や、サプライヤーへの説明、現状調査などを行っています。まずは全体方針を整備し、具体的な施策については取引規模が大きいサプライヤーからアプローチを進めてきました。外部評価機関への回答や、評価に必要な情報集約なども、自社の活動を客観的に知るための大切な業務です。
意識改革、現状把握、リスク対応。サプライヤーと進める改善活動
従来の購買基本方針やサプライヤー倫理行動規範のESG観点の項目を見直すなど、アップデートを進め、2023年度にはネットゼロ推進の基本的な考え⽅を⽰す「サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量削減に関するガイドライン」を定めました。
これらの指針によりサプライヤーの皆さまへ協力依頼を行うとともに、年1回行うサプライヤー調査にもESGの項目を導入しています。環境に配慮した商品・サービスであるかという視点だけでなく、法令順守や人権尊重、倫理といったESG全般に関する項目を盛り込むことで、数多くの課題が見えるようになりました。ハイリスクと特定されたサプライヤーに対しては是正措置計画を立てていただき、一緒に改善活動を進めています。
サプライヤー調査を導入した当初は、サプライヤーの反応は芳しくない状況でした。業界や企業規模に関わらず「当社は該当しないのでは?」「受注を担当する窓口で答えるべきなのか?」など、調査に答えていただく以前に解決しなければならないようなお問い合わせを受けることもしばしば。必要性は理解していても、サプライヤー自身にも関わる内容であることが十分に浸透していない段階だったのだと思います。それから数年かけて一社一社と対話を重ね、説明会なども繰り返してきた結果、サプライチェーン全体の意識が変化してきたと感じています。
通信業界が共同で、サプライヤーとWin-Winの関係を模索
これまでの取り組みでは、購入金額の上位80%以上をカバーする重要サプライヤーを中心にアプローチしていますが、2030年、2050年に定める目標を考えると、どんどんスピードを上げ、範囲も拡大していかなければなりません。そのためには、効率的な評価システムやソリューション導入を進めていく必要があります。
サプライヤー向け説明会では、ESG全体の取り組みや、法人事業部門が提供可能なソリューションの紹介など、今年からコンテンツを拡充しました。依頼する調査の趣旨をご理解いただくとともに、難易度が高い温室効果ガス(GHG)排出量の算出をサポートする提案により、サプライヤーの積極的な対応の後押しをしたいと思っています。
調査の手法も変更し、国際的なサステナブル・サプライチェーン・マネジメント評価機関「EcoVadis(エコバディス)」を活用することになりました。業種・規模・国によりカスタマイズされた質問にサプライヤーが回答すると、国際基準に基づき専門家が評価し、結果はスコアカードとして複数のバイヤーに共有されます。サプライヤー側の回答は一度で済みますし、評価に対する信頼性が高いのも利点です。国内外の企業でEcoVadisの利用が広がっているので、ソフトバンクも積極的な参画を呼びかけているところです。
同じ趣旨で、日本電信電話株式会社とKDDI株式会社と3社合同でサステナブル調達に関する調査票も整備しました。競合関係にありますが、同じ通信事業者として調達先が重なる部分が多いのも事実。共通SAQ(Self-Assessment Questionnaire、自己評価質問票)により、サプライヤー側の負担軽減を実現しています。
さまざまな施策で対応フェーズを進め、ネットゼロの実現へ
ネットゼロに向けた購買部門の取り組みはまだまだこれからです。
すでにEcoVadisや調査票を利用したサプライヤーの評価結果から、ネットゼロの取り組みが進んでいない会社や、人権関連の課題を抱える会社を特に注視していく必要があると考えています。2次・3次のサプライヤーになるにつれ状況が把握しづらくなりますので、時間が許す限りサプライヤー監査による現場を知る機会を作ることも重要です。
現在はサプライヤーの状況を調査し改善するフェーズですが、対応するメリットが十分に伝わっていないとも感じています。よりポジティブなメッセージでコミュニケーションすることを心がけていきたいです。
コミュニケーションの側面でもう一つ、同業者同士の横のつながりを作る機会があるといいなと思っています。実現のハードルは高いですが、積極的なサプライヤーの表彰や、同業者同士の刺激を通じ、取り組みを促すきっかけになるのではないでしょうか。
すでに海外で広まっているように、いずれはESGに積極的に取り組むサプライヤーへのインセンティブを考える段階がきます。省エネ商品を電気代に換算するなど、コスト換算できない要素も含む新しい評価基準が必要になると考えています。その基準をバイヤー業務にどう取り入れるか。現場に浸透させるのがいかに大変か実感しているので、自身のバイヤー業務の経験やこれまでの知見を生かしてチャレンジしていきたいですね。
(掲載日:2024年9月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部
ソフトバンクのサステナビリティ
今回紹介した内容は、「レジリエントな経営基盤の発展」により誠実な企業統治を行うことで、SDGsの目標「1、3、4、5、8、10、12、16、17」の達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。