SNSボタン
記事分割(js記載用)

温室効果ガス排出量を2030年までに実質ゼロへ。次世代インフラの構築と脱炭素の取り組みを両立するソフトバンクのネットゼロとは

温室効果ガス排出量を2030年までに実質ゼロへ。次世代インフラの構築と脱炭素の取り組みを両立するソフトバンクのネットゼロとは

持続可能な社会の実現に向け、企業や地域でもさまざまな活動が求められる中、ソフトバンクは事業活動に伴い排出される温室効果ガスの削減に取り組んでいます。自らの温室効果ガスの削減やカーボンニュートラルを推進する一方、同じく脱炭素経営の推進に取り組む企業の支援も行っています。

脱炭素経営の推進や企業活動の支援に携わるソフトバンクの担当者に話を聞きました。

木村 幸絵(きむら・ゆきえ)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR本部 CSR企画部

木村 幸絵(きむら・ゆきえ)

環境保全の取り組みを対応、外部評価対応・ESG推進を担当。

佐藤 誠(さとう・まこと)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR本部 CSR企画部

佐藤 誠(さとう・まこと)

環境保全の取り組みを対応、主にグループ会社の温室効果ガスの排出数値を管理。

西村 近(にしむら・ちかし)

ソフトバンク株式会社 法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部 エネルギービジネス推進部

西村 近(にしむら・ちかし)

カーボンニュートラル関連商材の企画推進、パートナーとの連携や営業推進を担当。

グループ全体で脱炭素社会に向けた取り組みを推進。AIの利用拡大による電力の需要増に対応

さまざまな企業が脱炭素社会の実現に向けた取り組みをしています。ソフトバンクはどんな取り組みをしているのでしょうか?

木村

「携帯電話の基地局やデータセンターの運営など、電力の利用により多くの温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」)を排出している企業として、ソフトバンクではさまざまな取り組みを推進しています。また、今後生成AIなどの利用拡大に伴い、加速度的にデータ処理量が増えて、新たなGHGの排出につながることに対する社会的な責務からも、脱炭素に向けた取り組みを非常に重要なことだと捉えています。

具体的には、ソフトバンクは、2019年度ではGHGをCO2換算で年間約68万トン排出していました。これは平均的な一般家庭に換算すると、約25万世帯分に相当する排出量です。私たちは脱炭素社会の実現に貢献するため、2030年までに自社の事業活動に伴って排出するGHGの排出量を実質ゼロにする『カーボンニュートラル2030宣言』を2021年に掲げました。また、排出量の半分以上が全国の携帯電話などの基地局からによるものなので、まず基地局からのGHG排出量の削減に取り組んでいます」

グループ全体で脱炭素社会にむけた取り組みを推進。AIの利用拡大による需要増に対応

スコープ1、2の目標のことですね。

木村

「はい、そうです。スコープ1、2は、自社の事業活動や電力消費などに伴うGHG排出量が対象です。ソフトバンクの場合、スコープ1は主に社用車のガソリンやデータセンターの非常用発電装置に用いられる重油などが相当しますが、排出量は多くありません。スコープ2は、先ほど挙げた通り基地局からのGHG排出量が多くを占めていて、2022年度は68.6%でした」

重点目標にしている基地局について、具体的な取り組みを教えてください。

木村

「基地局のGHG排出量削減のために、基地局で使用する電力の再生エネルギー化を進めており、2022年度には使用電力の72.1%の再生可能エネルギー化を達成しています。また、『追加性のある再生可能エネルギー』の調達にも動きはじめており、小売電気事業を行う100%子会社のSBパワー株式会社を通して、通信事業で1年間使用する全ての電力に相当する年間20億kWhの再生可能エネルギーの調達を、20年間の長期契約ですでに締結しています。これにより、2030年には事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー化し、そのうち50%以上を『追加性のある再生可能エネルギー』で調達することを目指しています」

実質再生可能エネルギー比率

「追加性」とはどういったことを表しているのでしょうか。

木村

「『追加性』とは、新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す効果があることを指します。

ソフトバンクでは風力や太陽光などの再生可能エネルギー電力の新規調達に取り組んでおり、新たな再エネ発電設備の開発に直接的に貢献しているため、追加性があると言うことができます。この追加性により、脱炭素社会の実現を後押しできると考えています」

では、次にGHG排出量の算定方法を教えてください。

木村

「GHG排出量の計算の仕方は決められているため、スコープ1の対象となる都市ガスやガソリン、重油、スコープ2の対象となる電気など、それぞれの使用量を確認し、その使用量をもとに計算方式にのっとって算定します。電力については、電力会社のサービスごとに決められたGHGの排出係数を用いて算出しています。環境省が公表している電気事業者別の排出係数はこちらです」

スコープ3は、ぐっと範囲が広がりますね。

木村

「スコープ3も含めたサプライチェーン排出量を2050年までに実質ゼロにする『ネットゼロ』に取り組むことを2022年8月に発表しました。さらに2023年6月にはグループ企業全体で『ネットゼロ』に取り組むことを発表しました。スコープ3では、サプライチェーンの上流と下流も対象になります。事業活動のあらゆる工程で原材料の仕入れや販売後などに排出されるGHGを、2050年までに取引先やグループ企業も含め全体でゼロにする目標を立てています。

目標については、国際的気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets initiative)のコンセプトにもとづいた科学的根拠がある目標SBT(Science Based Targets)の認定を目指しています。2030年までの短期目標は2021年にSBTiに認定を受けていて、2050年までの長期目標については、これから認定を受けるための準備を進めているところです」

SBTi(Science Based Targets initiative)

パリ協定が合意した「世界の気温上昇を産業革命前より 2℃を十分に下回り、また 1.5℃に抑える水準」とした5〜15年先を目標年として企業が設定するGHG排出削減目標について、企業と金融機関が最新の気候科学に沿って野心的な排出削減目標を設定できるようにする国際的な団体。

範囲が広がり、さらに算定方法が複雑になりそうですが…。

佐藤

「はい、そうです。以前はExcelを使って各グループ会社からのデータを集約してGHG排出量を計算していたのですが、スコープ3の目標達成に向け、今は、一括で排出量算定や可視化ができるクラウドシステム(Zeroboard)へ切り替えを進めています。グループ会社も直接システムにアクセスできるので、月単位などで、自社のデータを入力してもらうことで、グループ全体の排出量を簡単に可視化することができます。

細かいところでは、社員が通勤や出張で使用する電車・バス・飛行機や、在宅勤務時の電力使用に伴う排出量なども全て計算の対象に含まれます。

Scope3の15のカテゴリ分類

ただし、算定することが本来の目的ではありません。システムを活用して集計作業にかける手間や時間を減らすことで、『GHGの排出量の削減』という本来の目的に集中することができるようになりつつあります」

他に注力している取り組みがあれば教えてください。

佐藤

「SBTiの他に、国際的なイニシアチブ『RE100』へ加盟をしました。加盟の条件は、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することでしたが、追加性のある再生可能エネルギーであることが求められたため、追加性のある再生可能エネルギーへの転換も積極的に推進してきました。

RE100

「Renewable Energy(再生可能エネルギー)100%」の略。企業が事業活動において使用する電力を、100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的な取り組み。

  • 事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化について、期限付きの目標を設定して公表すること
  • グループ全体で参加し、再生可能エネルギー化に向けて取り組むこと

などが加盟の条件とされています。

冒頭で基地局から多くのGHGを排出している企業として責任があると話しましたが、生成AIなどの普及により急増するデータ処理や電力の需要は、新たなGHGの排出につながります。ソフトバンクは、この課題に対し、データの処理や消費電力を地方に分散させ、地産地消を目指す『分散型AIデータセンター』の構築を進めています。データセンターが使用するエネルギーを調達する際に、グリーンエネルギーも組み合わせることで、カーボンニュートラルへの取り組みを加速できます。

分散型AIデータセンター

Core Brain

2026年に北海道苫小牧市で開業を目指す『Core Brain』という大規模な計算基盤を備えたデータセンターでは、北海道内の再生可能エネルギーを100%利用する地産地消型のデータセンターとして運用される予定です」

ネットゼロ

ソフトバンクは、持続可能な社会の実現に向けて、AI(人工知能)などの最先端テクノロジーを活用し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

ネットゼロの取り組みを
詳しくみる

カーボンニュートラルに取り組む企業の課題に寄り添うソリューション

カーボンニュートラルに取り組む企業が多い中、GHG排出量の算定・集計方法や、削減するための手法に課題を持つ企業もあります。そうした課題に応えるため、ソフトバンクでは企業向けのソリューションとして、GHGの排出量を算定・可視化するクラウドサービス「Zeroboard(ゼロボード)」をもとにした「クラウド炭素管理」を提供しています。

ソフトバンクが取引先の脱酸素に関するソリューションを取り扱うようになったきっかけを教えてください。

西村

「元々は、2020年に政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指す『カーボンニュートラル宣言』を出したことがきっかけです。この宣言の後、日本社会の動きが変わり、企業が脱炭素社会への取り組みを続々と強化し始めたことを受け、複数の大手企業から相談を受けるようになり、カーボンニュートラルに向けたソリューションの検討を開始しました」

2020年以降、企業はどんなことを意識し始めていたのでしょうか。

西村

「国際的な環境NGOが各企業の地球環境への対応を採点したスコアの注目度が向上するなど、『企業と取引をする際に環境問題に真剣に取り組んでいるか』が重要視され始め、ESG経営を意識する企業が増える傾向にありました。また、東証プライム市場の上場企業に対し、気候変動関連開示が義務化されたことも、GHG排出量の算定・可視化のニーズが高まった要因であると感じています」

環境系のスコアを気にしはじめた結果、取り組みの成果もあがったのでしょうか。

西村

「カーボンニュートラル宣言の後、取引先と話をすると、宣言を受けて急いでサステナビリティを推進する組織を立ち上げた企業が多かったのですが、組織は作ったものの、実際のところ『何から手を付けたらいいのか分からない』という声が聞こえてきました」

専門知識がある人が少ない… という状況だったということですね。

西村

「はい。加えて、毎年のように新しいルールが設けられ、さらにGHGの算定方法が細かく、厳しくなりますので、手を動かしながら、専門知識を付けていく必要があります」

算定もしつつ、新しいルールにもあわせていくのは大変そうです。

西村

「カーボンニュートラル達成のためには、まずは自社やそのサプライチェーンからのGHG排出量を算定し、どこからどこまでが算定の対象になるのか可視化することが不可欠です。そこで、新しい法制度策定に参画していて、ルール改正に十分な知見のあるゼロボード社との協業について検討を開始しました。ツールの使いやすさを評価し、2023年10月にゼロボード社が提供する『Zeroboard』をもとにした『クラウド炭素管理』の取り扱いを始めました」

クラウド炭素管理

利用する企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。

西村

「クラウド炭素管理では、個々の事業活動の情報を記録していくと、GHG排出量の算定対象が可視化されるようになっています。頻繁にアップデートされる各種の環境法令対応にも対応しているため、企業の担当部署の負担を軽減して、計算ができます。自治体条例に対応したレポートを作成してくれる機能も搭載されています。

カーボンニュートラルに取り組む企業の課題に寄り添うソリューション

算定とレポーティングをZeroboardに任せることで、企業は本来のGHG排出量削減の活動に注力できることが最大のメリットと捉えています。また、事業活動に伴うGHGの排出量を算定するために、例えば手入力でデータを記録していたところを、IoTのデバイスと連携させて自動で事業活動のデータを記録可能にするソリューションを提供するなど、ソフトバンクの強みを生かしたご提案も行っています。

カーボンニュートラルに取り組む企業の課題に寄り添うソリューション

『GHGの排出量が少ないプロセスで作られたものを購入したい』というのが、取引先の選定するときの重要な基準の一つになっている社会で、ソフトバンク自身も脱炭素社会の実現に取り組む一員として、他の企業の取り組みをITの力で支援していきたいと考えています」

企業のサプライチェーンGHG排出量の算定・可視化・削減を効率できる「クラウド炭素管理」

企業のサプライチェーンGHG排出量の算定・可視化・削減を効率できる「クラウド炭素管理」

専用のソフトウエアで活動量の入力またはデータ連携の設定をするだけでGHG排出量の算定・可視化・削減を実現。TCFD開示対応支援、CDP回答支援、SBT取得支援など、より専門的なコンサルティングにより脱炭素経営の実現に導きます。

クラウド炭素管理を
詳しくみる

(掲載日:2024年3月8日)
文:ソフトバンクニュース編集部

ソフトバンクのマテリアリティ④「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」

マテリアリティ

ソフトバンクは、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を特定。そのうち、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を踏まえた「最先端テクノロジーによる新しいビジネスモデルの展開」では、最新のテクノロジーを活用し、気候変動への対応・循環型社会の推進・自然エネルギー普及に貢献することを目指しています。