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2022年1月31日掲載
南沙図書館(出典:消費日報網)
中国南部に位置する産業豊かな広東省。その省都広州市の南沙区に2020年12月にプレオープンした南沙図書館が、AI大手の「CloudWalk(クラウドウォーク)」と提携し新しい図書館ソリューションを提供し、「AI図書館」とアピールしています。
CloudWalkは中国では「AI四小龍」と呼ばれる、言い換えればAI四強企業の一社です。なお他の中国3社は、Megvii(メグビー)、SenseTime(センスタイム)、YITU(イートゥー)になりますが、 iFLYTEK(アイフライテック)などAIの有力企業は他にもあることから、AI四小龍については「そういうくくり方がある」という認識でよいかと思います。
同図書館は最近できただけあって、「中国の伝統的な四角い硯をイメージした」という現代的な凝った外観であり、最近各地にできて話題になるオシャレな書店と競合するかのようなデザインです。大きさは地上4階、地下2階建て、総建築面積2.5万平米、蔵書数58万冊と、中国の図書館としては大きな部類に入るでしょう。
入口の本の返却場所では、倉庫でも活躍するAMR(自走ロボット)が待機。返却本を受け取ると、本の種類を識別し、いくつかの別れた回収先に本を仕分けます。見ていて面白いギミックですが、こちらは深センの一部図書館などでも導入済みです。
また、図書館内でのリアルタイムの人の動きを把握し、どこが人気なのかという分析ができるとのこと。これをどう活用するかは先の話ですが、ショッピングモールなどでも導入されている技術であり、図書館サービスの向上に使われることでしょう。
この図書館の最大の特徴は、顔認証です。顔認証を導入することでカードレスでサービス利用が可能になり、カードを出す手間が省けます。ここまではありがちな話ですが、この先の中国の図書館業界初の「ARグラスパーソナライズサービスモデル」が意欲的です。
ARグラスで対応する職員(出典:消費日報網)
まず、図書館の司書スタッフが専用の「ARグラス」をかけます。このARグラスをかけることにより、ARグラスを通して顔認証登録をした各人の貸出冊数や予約状況など、利用者の情報を見ることができるのです。
そして、ARグラスをつけたスタッフが図書館を巡回し、メガネに表示された貸し出し本や予約したサービスの情報などの読者情報データを読み取ります。そのデータは、利用者の本の貸出情報や返却遅延情報、それに図書館施設の予約情報の有無などを映し出します。
顔認証で登録(出典:消費日報網)
将来的には読者の個人的な読書傾向に合わせた本の推薦、予約したアクティビティのリマインダー、延滞本のリマインダーなどを、利用者から質問されなくても能動的にアドバイスすることができるようになるとのこと。読者の読書傾向に合わせた本の推薦には、AIやビッグデータも活用されています。
また、図書館で本を探す人向けにカーナビのように図書館内を地図で案内するサービスを提供しています。さらに、ARグラスをかけた司書が利用者が本を検索したという情報を把握して声をかけ、スマートフォンやARグラスでナビゲーションされた司書が引率していくというソリューションもCloudWalkは紹介しています。情報端末で探すことができる利用者なら不要かもしれませんが、図書館によれば情報端末が操作できない高齢者に恩恵があるとしています。
地図でナビゲーション(出典:消費日報網)
どうやらロボットが質問を受け機械的に答えるのではなく、情報機器がサポートし司書が巡回して自ら声をかけることで、的確で人間味があるサービスを目指しているようです。
ARグラスはなかなか利用者から見てもインパクトがありますが、クラウドから利用者情報が見られるウェアラブルデバイスを活用すれば、人間的なケアとAIによる分析を掛け合わせた次世代の公共文化サービスが実現できそうですね。
同社のソリューションは図書館向けだけにとどまらず、他の公共機関へも導入されるかもしれないとのこと。競合他社も、同種のサービスを開発し導入を進めていくことでしょう。
■参考リンク
・消費日報網
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