ストレージオプションの選び方 概要編 (Alibaba/AWS/Azure/Google)」

2022年7月1日掲載

キービジュアル

クラウドコンピューティングのストレージオプションについて、どのような選択肢があり、どういった違いがあるかをふまえて、選択時のポイントについてまとめてみました。

目次

  • この記事ではクラウドコンピューティングでのストレージオプションについて説明しています。
  • これからコンピューティングをはじめてみようという方や、ストレージオプションは何を選んだらいいか迷っている方向けの記事です。
  • この記事を読むことによって、ストレージオプションの違いがわかり、目的に最適なストレージを選択するための手がかりになることを意図しています。

はじめに

私たちの身の回りにある、デスクトップパソコンやノートブックパソコンでも、ほとんどのコンピュータにはデータを読み書きするための補助記憶装置として、HDD(ハードディスクドライブ)や SSD(ソリッドステートドライブ)などが内蔵されています。

クラウドコンピューティングにおいても、データを読み書きするための記憶領域として、ストレージサービスを利用します。

コンピューティング用のストレージは仮想マシンの作成と同じタイミングで、新規作成するか、すでに作成済みのものを利用できます。また、仮想マシンを作成したあとでも、ディスク容量を動的に拡張したり、新たなドライブ/ボリュームを追加したりできます。(一部制限あり)

仮想マシンのプロビジョニングではCPUやメモリのスペックに目を奪われがちになりますが、頻繁にデータを読み書きするアプリケーション(とくにデータベースなど)では、いかに高性能なCPUやメモリを使用しても、その先のデータの書き込みに時間がかかってしまえばそこがボトルネックとなり、全体の性能を低下させてしまいます。

今回はデータの読み書きを目的としたストレージオプションについて、以下のクラウドベンダごと(アルファベット順)にまとめてみました。

  • Alibaba Cloud
  • Amazon Web Services (AWS)
  • Microsoft Azure
  • Google Cloud

ちなみに、オブジェクトストレージという似たような名前のサービスもありますが、こちらはファイルの保管や共有が主な目的となるため、用途が異なります。

なお、クラウドコンピューティングの概要については、以下の関連記事を参考にしてみてください。

ストレージの分類

ストレージを3つの観点から分類してみます。

1. 補助記憶装置の種類

現在、主流となっている補助記憶装置は「HDD」と「SSD」の2種類があり、いずれも今回の記事の対象となります。

なお、参考までに「RAMディスク」についても記載しておきます。

⚠️ RAMディスクはストレージサービスのプロダクトではありません。

種類概要特徴
HDD高速に回転する金属などの円盤上の磁気を読み書き
  • 大容量、低価格であるが、補助記憶装置としては旧世代になりつつある
SSD

不揮発性メモリを電気的に読み書き

  • HDDより5倍以上高速
  • HDDより高価ではあるが、価格差は縮小傾向
RAMディスクOS上でメモリを仮想的にディスクとして利用
  • SSDよりも高速
  • サーバーの再起動の際にデータが失われるため、用途が限定される

2. ストレージの用途

ストレージの使い方としては以下の3つが挙げられます。

今回の記事の対象は3つめの「データディスク」になります。

分類説明
起動ディスク
(ブートディスク、システムディスク、OSディスクなど)
オペレーティング システムのイメージ、起動情報などの保存用
一時ディスク
(ページファイル、スワップなど)

アプリケーションやプロセスなど、短期間データの保存用

データディスクアプリケーションなど、ユーザーデータの保存用

3. 仮想マシンとの接続方式

仮想マシンとストレージを接続する方式には以下の2つがあります。

今回の記事の対象は「ネットワーク接続」方式である、「ブロックストレージ」になります。

⚠️ 接続可能なストレージプロダクトとその台数は仮想マシンのスペックに左右される場合があります。

接続方式概要特徴
ネットワーク接続
  • 仮想マシンとネットワークで接続されたストレージ
  • ファイルストレージやオブジェクトストレージと区別する意味で、ブロックストレージと呼ばれている
  • スナップショットや冗長化など、可用性、信頼性の向上が図られている。
  • 共有ディスクなど、柔軟性の向上が図られている。
物理マシン直結
  • 仮想マシンの実体となる物理的なハードウェアに直結したストレージ
  • ローカルディスク、インスタンスストアなどと呼ばれている
  • ブロックストレージよりもレイテンシやスループットは向上するが、可用性、信頼性、柔軟性は低下する
  • 仮想マシンをシャットダウンするとデータは失われる

プロダクトの特徴とユースケース

各ベンダのストレージプロダクト

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
名称クラウドディスクAmazon EBS
( Amazon Elastic Block Storage )
Azure Managed Disks
Persistent Disk
特徴
  • 三重化技術と呼ばれる冗長化により、99.9999999%の高い信頼性を謳っています。
  • 1インスタンスあたり、最大16台までのクラウドディスクを接続できます。
  • プロビジョニングされた IOPS を最大限に発揮できるように、EC2のインスタンスをEBSに最適化するオプションがあります。
  • 最大16台の仮想マシンに同時接続が可能なマルチアタッチが利用可能です(制限あり)
  • 信頼性 99.8%〜99.999%
  • 複数のマネージドディスクをグループ化(ストレージプール)できます。(プレビュー)
  • Premium SSDの場合、最大で 280台のディスクを接続できます。
  • 信頼性 99.999%
  • カスタム マシンタイプか、最小 1 vCPU の事前定義されたマシンタイプの場合、最大で 128台の永続ディスクを接続できます。
  • 信頼性 99.99%〜99.9999%

 

それでは、ストレージのプロダクトについて、ベンダごとに特徴とユースケースについて見ていきます。

Alibaba Cloud - クラウドディスク

名称種類特徴ユースケース
Ultra ディスクHDD
  • ハイコストパフォーマンス
  • 中程度のランダム I/O パフォーマンス
  • 高いデータ信頼性
  • MySQL、SQL Server、PostgreSQL などの小〜中規模のリレーショナルデータベース
  • 高いデータ信頼性および中程度のパフォーマンスを必要とする中〜大規模な開発またはテストアプリケーション
標準SSDSSD
  • 安定した高いランダム I/O パフォーマンス
  • 高いデータ信頼性
  • ハイパフォーマンスなストレージ
  • MySQL、SQL Server、PostgreSQL および Oracle などの中〜大規模なリレーショナルデータベース
  • 高いデータ信頼性を必要とする中〜大規模な開発またはテストアプリケーション
Enhanced SSDSSD
  • 次世代の分散ブロックストレージアーキテクチャ
  • 超ハイパフォーマンスなストレージ
  • IOPSを指定できるようになり、新しいインスタンスファミリーではESSDのみ利用可能
  • 中〜大規模のリレーショナルデータベース
  • エンタープライズレベルの商用ソフトウェア
  • コンテナアプリケーション

Amazon Web Services - Amazon EBS ( Amazon Elastic Block Storage)

名称種類特徴ユースケース

ColdHDD

(sc1)

HDD
  • アクセス頻度の低いワークロード向け
  • 最も低コストのストレージ
  • データへのアクセス頻度が低く、コストの削減が必要なケース

スループット最適化HDD

(st1)

HDD
  • IOPSよりもスループットが要求されるワークロード向け
  • 低コストのストレージ
  • MapReduce、Kafka、ログ処理、データウェアハウス、ETL のワークロードなど、データセットや I/O サイズが大きく高いスループットを必要とするアクセス頻度の高いワークロード

汎用SSD

(gp2, gp3)

SSD
  • 料金とパフォーマンスのバランスに優れた、さまざまなワークロードに対応
  • コスト効率の高いストレージ
  • 幅広いトランザクションワークロード
  • 仮想デスクトップ
  • 中規模の単一インスタンスデータベース
  • レイテンシーの影響を受けやすいインタラクティブアプリケーション
  • 開発/テスト環境

Provisioned IOPS

(io1, io2, io2 Block Express)

SSD
  • ミッションクリティカルな低レイテンシーまたは高スループットワークロードに適したストレージ
  • 高パフォーマンスなストレージ
  • I/O集中型のデータベース・ワークロード
  • 持続的なIOPS

 

Microsoft Azure - Azure Managed Disks

名称種類特徴ユースケース

Standard HDD

HDD
  • 遅延に耐性があるワークロードを実行する仮想マシン向け
  • 信頼性の高い低コストのストレージ
  • 開発/テスト シナリオや重要度の低いアプリケーション

Standard SSD

SSD
  • 低い IOPS レベルで一貫したパフォーマンスを必要とするワークロード向け
  • Standard HDD に比べて、可用性、一貫性、信頼性、遅延に優れている
  • Web サーバー
  • 低IOPS のアプリケーション サーバー
  • 使用の少ないエンタープライズ アプリケーション
  • 非運用ワークロード

Premium SSD

SSD
  • IO(入出力)を集中的に行うワークロードが存在する仮想マシン向け
  • 高パフォーマンスで待ち時間の少ないストレージ
  • 運用環境のワークロード
  • パフォーマンスに影響されやすいワークロード
  • ミッションクリティカルな運用アプリケーション
Ultra ディスクSSD
  • ミリ秒単位の待機時間と一貫した高い IOPS/スループットを構成可能
  • 小さな IOPS とスループットで開始し、ワークロードの IO の負荷が高くなった場合はパフォーマンスを調整可能
  • SAP HANA やトップ レベルのデータベース (例えば SQL や Oracle) などの I/O 集約型のワークロード
  • トランザクションが多いワークロード

 

Google Cloud - Persistent Disk

名称種類特徴ユースケース

標準永続ディスク

(pd-standard)

HDD
  • 効率的で信頼性の高いストレージ
  • 標準的なスループット
  • 最も費用対効果が高い
  • コストを重視するアプリケーション
  • ビッグデータなど

バランス永続ディスク

(pd-balanced)

SSD
  • 信頼性の高いストレージ
  • GBあたりの費用対効果が高い
  • 基幹業務アプリ
  • Webサービス
  • ほとんどのワークロードに適合

SSD永続ディスク

(pd-ssd)

SSD
  • 高速かつ高信頼性のストレージ
  • IOPSあたりの費用対効果が高い
  • データベース
  • 永続キャッシュ
  • スケールアウト分析
  • 性能を重視するアプリケーション

エクストリーム永続ディスク

(pd-extreme)

SSD
  • 最高パフォーマンスのストレージ
  • 性能最適化
  • 妥協なきパフォーマンス
  • SAP HANA
  • Oracle
  • インメモリデータベース

バックアップ

バックアップの機能については、どのベンダも大差ありません。初回に完全なスナップショットを作成して、以降は必要に応じて増分スナップショットを作成していきます。

なお、ここで言及しているバックアップの対象はストレージであり、仮想マシンのバックアップではないことに注意してください。

⚠️ 作成されたスナップショットにはストレージ料金が発生します。

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
名称クラウドディスクAmazon EBSAzure Managed DisksPersistent Disk
既定のスナップショット先Alibaba Object Storage のバケット

Amazon S3のバケット

スタンダードマネージドディスク

Google Cloud Storage のバケット
スケジュール実行自動スナップショットポリシー

Amazon データライフサイクルマネージャー

Azure ディスク バックアップ(プレビュー)

スナップショット スケジュール

セキュリティ

暗号化については大差なく、いずれもストレージ、スナップショットの暗号化が可能です。

アクセス制御もあまり差はありせんが、ベンダによってはストレージ用のロールが事前定義されている場合があります。

 

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
名称クラウドディスクAmazon EBSAzure Managed DisksPersistent Disk
暗号化に使用する鍵
  • Key Management Service(KMS)によって提供されるサービスキー
  • Bring Your Own Key(BYOK)機能を使用して作成された独自のキー
  • Amazon が管理するキー
  • Amazon Key Management Service(KMS) を使用して作成と管理を行っているキー
  • プラットフォーム マネージド キー
  • カスタマー マネージド キー
  • 暗号化プロセスは Azure Key Vault と統合
  • システム定義のキー
  • 顧客指定のキー
アクセス制御
  • リソースアクセス管理(RAM)によるアクセス制御
  • AWS Identity and Access Management (IAM) によるアクセス制御
  • Azure ロールベースのアクセス制御 (Azure RBAC)
  • Identity and Access Management(IAM)によるアクセス制御
  • Compute Engine ストレージ管理者ロール(ベータ版)

 

料金体系

料金の詳細については、シミュレーションも交えてパート3で紹介したいと思います。

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud
名称クラウドディスクAmazon EBS
Azure Managed DisksPersistent Disk
課金方法
  • 従量課金
  • サブスクリプション
  • 従量課金
  • 従量課金
  • 予約(一部)
  • 従量課金
課金単位時間
  • 時間(一部)
課金対象
  • 割り当てた容量
  • 割り当てた容量
  • 割り当てたIOPS(一部)
  • 割り当てたスループット(一部)
  • 割り当てた容量
  • 割り当てたIOPS(一部)
  • 割り当てたスループット(一部)
  • バーストIOPS(一部)
  • バーストスループット(一部)
  • トランザクション回数(一部)
  • 冗長オプション
  • 割り当てた容量
  • 割り当てたIOPS(一部)
ストレージの無料枠なし一部ありなしなし

ここまでのまとめ & 次回は

今回はストレージオプションの概要について、簡単に紹介しました。

ストレージのディスクタイプには2種類あり、HDDは性能よりコストを重視する場合、SSDはコストより性能を重視する場合のひとつの目安になると思います。

セキュリティ、バックアップについては、どのベンダも必要にして十分な機能を持っているようです。

次回は、各プロダクトについて、より詳細に違いを見ていきたいと思います。

関連サービス

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。

Amazon Web Services (AWS)

ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです

「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。

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Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。

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