フォーム読み込み中
こんにちは。ソフトバンク株式会社の王文礼です。
前回では、Alibaba Cloud(以降 Alibaba と表記)、AWS、Azure と Google Cloud (以降 Google と表記)の仮想マシンサービスの料金体系について、4 社共通の料金モデルである「従量課金」、「インスタンス予約購入割引」と「余剰インスタンス割引」を解説しました。
今回の後編では、「Alibaba/AWS セービングプラン」、「Alibaba サブスクリプション」、「Azure ハイブリッド特典」と「Google 継続利用割引」について、ご紹介いたします。
※各クラウドはアルファベット順で記載します。
セービングプランは前編で紹介したリザーブドインスタンスと同じで、一定期間での継続利用を前提に、従量課金に比べて割引価格でインスタンスを利用できます。
リザーブドインスタンスのコミットメントはリソースベースであり、vCPU やメモリなどのインスタンス属性の購入及び割引適用が行われます。一方、セービングプランは利用金額ベースのコミットメントであり、1 時間当たりの利用金額をコミットします。
例を挙げて、セービングプランの料金計算を詳しく解説します。
例えば、東京リージョンで AWS EC2 t3.xlarge インスタンスを利用するとします。t3.xlarge インスタンスの料金について、従量課金の場合、 0.2176 USD/hour で、全額前払い 3 年のセービングプランの場合、0.0818 USD/hour となります。
セービングプランのコミットメント利用額を 0.409 USD/hour と設定します。実際の利用額が 0.409 USD/hour に達するまで、セービングプランの割引(62%)が適用されます。コミットメント利用額を超過した利用分は従量課金が適用されます。セービングプランによって、最大 0.409/0.0818 = 5 つの t3.xlarge インスタンスをカバーできます。
上記の利用条件をまとめると、下記となります。
続いて、稼働するインスタンスの数が時間帯に応じて変化することを想定して、従量課金とセービングプランの利用料金をシミュレーションしてみましょう。
この例なら、稼働インスタンスの数が 2 つ以上であれば、セービングプランによるコストメリットが得られることが分かります。
セービングプランは、時間当たりのコンピューティングリソースの利用料を概算する必要がありますが、AZ、インスタンスサイズ、OS、テナンシーなどの制約がないため、リザーブドインスタンスより柔軟性があります。
セービングプランとリザーブドインスタンスを併用することもできます。併用する時、リザーブドインスタンスが優先的に適用され、リザーブドインスタンスの超過分にセービングプランが適用されます。
4 社の中で、Alibaba と AWS はセービングプランを提供しています。続いて両社のセービングプランを詳しく見ていきましょう。
Alibaba セービングプラン
Alibaba セービングプランには、General Purpose Savings Plans と ECS Compute Savings Plans の 2 つの料金モデルが提供されています。
ECS Compute Savings Plans は、その名の通り、ECS(Elastic Compute Service)インスタンスにのみ適用可能で、コンピューティングリソース(vCPU とメモリ)、システムディスク、およびネットワーク帯域幅が適用対象となります。General Purpose Savings Plans は、ECS インスタンスを含め、ECI(Elastic Container Instance)インスタンスのコンピューティングリソース(vCPU とメモリ)にも適用できます。
インスタンスファミリーに関して、ECS Compute Savings Plans は指定のインスタンスファミリーにのみ適用できます。インスタンスファミリーを指定する時、特定のインスタンスファミリーとインスタンスファミリーセット の 2 つの選択肢が提供されています。特定のインスタンスファミリーの場合、指定したインスタンスファミリーにのみ割引が適用できます。インスタンスファミリーセットの場合、セット内の全てのファミリーに割引が適用できます。
インスタンスファミリーセットとは、Alibaba があらかじめ用意しているグルーピングされたファミリーのことです。予約期間中、インスタンスファミリー変更の可能性がある場合、インスタンスファミリーセットを選んだほうがよいでしょう。
ECS Compute Savings Plans は柔軟性が劣りますが、General Purpose Savings Plans より高い割引を提供します。
AWS セービングプラン
AWS セービングプランには、Compute Savings Plans、EC2 Instance Savings Plans と Amazon SageMaker Savings Plans の3つの料金モデルが提供されています。
Compute Savings Plans、EC2 Instance Savings Plans は、AWS リザーブドインスタンスと同等の割引が適用できることに加え、インスタンスを変更した場合も柔軟に割引を適用できることが特長です。
Compute Savings Plans は柔軟性が高く、リージョン、インスタンスファミリー、インスタンスサイズ、OS、テナンシーに関わらず割引が適用できます。EC2 インスタンスのほか、Fargate と Lambda にも適用できます。
EC2 Instance Savings Plans はリージョンとインスタンスファミリーの柔軟性がなくて、リージョンとインスタンスファミリーを指定すれば、AZ、インスタンスサイズ、OS、テナンシーに関わらず割引が適用できます。
Amazon SageMaker Savings Plans は、2021 年 4 月にリリースされた 3 つ目の AWS セービングプランで、従量課金に比べて、SageMaker の利用料を最大 64% 節約できます。
サブスクリプションは、Alibaba 特有の割引料金モデルです。
Alibaba サブスクリプションを利用するには、インスタンス作成時に予約期間を選択するか、インスタンス作成後、その課金方法をサブスクリプションに変更することができます。予約期間は、1 ヵ月、2 ヵ月、3 ヵ月、6 ヵ月、1 年から選べます。
例えば、東京リージョンで下記のパッケージを利用するとします。
このパッケージの従量課金の料金は 0.124 USD/hour となります。
サブスクリプションの節約効果を計算してみましょう。
Azure ハイブリッド特典(Azure Hybrid Benefit、AHB)は、今まで紹介してきたリザーブドインスタンスやセービングプランなどと違って、コンピューティングリソースに対して割引を提供してくれる料金モデルではないですが、Azure 料金モデルの大きな特徴ともなり、Azure 予約 VM インスタンスとあわせて利用すると、OS 込みの利用料を大幅に減らすことができるため、AHB も解説しておきたいと思います。
クラウド移行を進めると、オンプレミスでの利用のために購入した Windows Server などのライセンスが無駄になってしまうのではないかという課題が出てきます。これを解決するために、AHB が提供されています。
AHB は、Microsoft ソフトウェアアシュアランス(SA)*プログラムの中の 1 つの特典です。AHB によって、既存のオンプレミスの Windows Server と SQL Server のライセンスを Azure で使用できるようになります。これによって、クラウド移行時に Windows Server と SQL Server ライセンスを再購入する必要がなくなり、クラウドの移行コストを大幅に減らせます。言い換えれば、Azure 以外のクラウドを利用する場合、Windows Server と SQL Server ライセンスを再購入する必要があります。また、Windows Server 2012/R2 の拡張セキュリティ更新プログラムを無料で提供しているのも Azure だけです。
さらに、2020 年から AHB が Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と SUSE Linux Enterprise Server(SLES)のサブスクリプションにも適用されるようになりました。Linux も対象になっているのは非常に助かりますね。
* SA とは、Microsoft がボリュームライセンスの利用者向けにオプションとして提供している、各種権利やサポートに関するサービスのことです。その一部の例:
オンプレミスの SA が付いている Windows Server を Azure 予約 VM インスタンスに割り当てることができます。この場合、Azure では Windows Server に対して課金しません。AHB を利用している間は、Windows Server ライセンスおよび SA、またはオンプレミスサブスクリプションの料金を継続して払う必要があります。
AHB 利用時、購入した Windows Server は何台の Azure VM に適用できるのか、そのルールを説明します。
SA 付きの Windows Server を購入する時、最初は少なくとも 16 コアライセンスの購入となります。その後、8 コアライセンス単位で購入できます。16 コア SA 付きライセンスは、8 コア以下の Azure マシンなら 2 台まで、もしくは 16 コアのマシンは 1 台に割り当てることができます。
例えば、3 台の 4 コアマシンを構築して全部ハイブリッド特典を適用させたい場合には、24 コア SA 付きライセンスが必要となります。
ここまで理解できたら、次の表を確認しましょう。セルの中の数字は、特定のコア密度の特定の数の仮想マシンを稼働するために、必要な 2-processor ライセンス(16 コアのセット)の数を示しています。
AHB を使うと、どれくらい節約できるでしょうか。Azure Hybrid Benefit 節約額計算ツール で上表 2 番目の E16ds インスタンスの例で計算してみます。
計算ツールに下記を入力します。
上記を入力すると、インスタンスのサイズに基づいて、AHB でカバーできる VM の数が自動的に表示されます。AHB を使用する場合、34.6% を節約できることが分かります。
継続利用割引は、Google 特有の割引料金モデルです。請求月に特定のコンピューティングリソースの実行時間が一定の割合を超えた場合、自動的に割引が適用されます。
継続利用割引の適用対象は Google Kubernetes Engine と Compute Engine で利用された VM となり、App Engine 環境と Dataflow より作成された VM や、E2、A2、T2D マシンタイプに割引は適用されません。
最大割引率は 30% と 20% の 2 種類あります。それぞれの対象マシンタイプは下記となります。
Google 継続利用割引は、特定の使用量しきい値を超えた後の使用分に適用されます。例えば、6 月なら 30日 × 24時間 = 720 時間ですので、GCE インスタンスを 720 時間の 25%(180 時間)以上を使用すると、25% 超えた利用分に対して、割引が自動的に適用されます。そして、50%、75% がしきい値となって段階的に割引率が上がっていきます。
東京リージョンで汎用 N1 シリーズの n1-standard-2(vCPU:2、RAM:7.5 GB)マシンタイプの利用量と割引率の推移を見てみましょう。
請求月の最初の日に VM インスタンスを作成して、月末までずっと稼働すると、最大 30%* の割引を受けられます。割引は次の月の始めにリセットされます。
* (0%+20%+40%+60%)/4 = 30%
Google 確約利用割引(前編で解説)と Google 継続利用割引の両方を購入した場合、まず確約利用割引が適用されます。確約利用割引を超過した分に対して継続利用割引が適用されます。
前編と後編に分けて Alibaba Cloud、AWS、Azure と Google Cloud の仮想マシンサービスの料金モデルについて、多くの計算例をまじえて解説させていただきました。クラウドの利用料に関しては、仮想マシン以外、例えば、ストレージやデータ転送、その他の自社でよく利用するサービスを含めて総合的に考えるべきですが、今回の記事をご参考にしていただき、仮想マシンの料金を知っていただけたら幸いです。
Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。
ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです
「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。
Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。
Google サービスを支える、信頼性に富んだクラウドサービスです。お客さまのニーズにあわせて利用可能なコンピューティングサービスに始まり、データから価値を導き出す情報分析や、最先端の機械学習技術が搭載されています。
条件に該当するページがございません