パブリッククラウドのサーババックアップサービス比較(Alibaba/AWS/Azure/Google)

2022年9月12日掲載

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ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。
本記事ではAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloud上のサーバをバックアップできる各パブリッククラウド提供のサーババックアップサービスについて、概要と特徴を比較します。

パブリッククラウド上のサーバが万が一利用できなくなり、復元もできない状態になってしまってはビジネスに大きな影響が出るかもしれません。そのような万が一の事態に備えるためのサーババックアップサービスについてご紹介します。

サーババックアップサービスと比較するために、サーババックアップサービス以外のデータ保持方法についてもご説明しますので、ぜひご一読ください。

目次

パブリッククラウドのサーババックアップサービスとは。

オンプレミス環境でも「データを誤って削除してしまった」「パッチを適用したらアプリケーションが動かなくなってしまった」「機器が故障してしまいシステムが止まってしまった」というトラブルに遭遇したことがある方もいらっしゃると思います。

パブリッククラウドでは、高レベルの可用性を確保したいろいろなサービスが提供されていますが、高レベルでの可用性が担保されているから大丈夫ということではありません。
最近では一般的になった責任共有モデルに基づいて、パブリッククラウドでも、データについてはパブリッククラウドの利用者側の責任で運用する必要があります。

オンプレミス環境のバックアップにあてはめたとき、機器やソフトウェアの設定で、バックアップジョブを作成してサイクルや保存世代の設定をしていないでしょうか。
同じような設定を各パブリッククラウド内のコンソール内で行うことができ、パブリッククラウド利用者側で、簡単かつ要件に応じたデータを保存できるのが、サーババックアップサービスになります。

また、サーババックアップサービスは、パブリッククラウド上のサーバだけではなく、オンプレミス環境のバックアップに対応しているサービスもあります。
従来のオンプレミス環境のバックアップは、バックアップの保存先の機器を用意し、ハードウェアの機能か別途購入したソフトウェアを利用してバックアップを取得しますが、機器やソフトウェアの調達と維持にコストがかかります。
パブリッククラウドのサーババックアップサービスを利用すると、バックアップデータだけをクラウド上に保存することもでき、バックアップするデータ量次第になりますが、バックアップにかかっているコストを削減できる可能性があります。

パブリッククラウド上でデータを保持する方法。

サーババックアップサービスについて説明しましたが。パブリッククラウドのコンピューティングサービスでデータを保持するには、いくつかの方法があります。

・Windows限定ですが、ボリュームシャドーコピーを使用する方法。
・ディスクやファイルシステムのスナップショットを取得する方法
・サーバをイメージ化する方法。
・サーババックアップサービスでバックアップを取得する方法。

上の4つの方法のメリット、デメリットと利用シーンについて表にまとめますが、何かが起こる前に完全に戻したいのであれば、起こった問題がスナップショットやイメージでは復元できないケースだったということがないように必ずバックアップを取得することをおすすめします。

ボリュームシャドーコピー以外の方法では、通常のサーバで利用するデータ量とは別にクラウド内でデータを保持するための料金がかかり、復元する場合でも何らかの料金がかかるので、事前に見積をしておきましょう。

・データ保持方法別のメリット、デメリット、利用シーンの比較表

 メリットデメリット利用シーン

ボリュームシャドーコピー

※Windows限定

・簡単な設定でファイルが復元できる。

・機能自体に料金はかからない。

・サーバの状態は復元できない。

・OSが壊れてしまった場合にファイルが復元できない場合がある。

・Windowsに限定される。

・Windows内でファイルを復元する。

スナップショット

・簡単な操作でディスクやファイルの状態を保持できる。

・イメージやバックアップと比較して、短時間で取得できる。

・OSを削除してしまったり、ディスクが壊われてしまった場合に復元できない場合がある。

・メンテナンス前にスナップショットを取得し、メンテナンスで不具合があった場合に戻す。

イメージ

・OSが壊われてしまった場合でも、イメージからOS自体を復元できる。

・イメージを毎日作成するような場合は、手間がかかる。

・世代管理は利用者が行うため、適していない。

・リージョンレベルの障害に対応できない場合がある。

・サーバを誤って削除してしまった場合に、イメージから復元する。

・サーバを複製して複数展開する。

サーババックアップサービス

・サーバ以外にも、データベースのデータや、ファイル単位のバックアップも取得できる。

・OSが壊われてしまった場合でも、バックアップから復元できる。

・長期保存や世代保存に適している。

・バックアップで指定した別の場所やサービスへ保管ができる。
復元時も選択した環境へ復元ができる。

・データ量に応じて、バックアップに時間がかかる場合がある。

・サーバを誤って削除してしまった場合に、バックアップから復元する。

・可用性に応じて、災害時に復旧することができる。

サーババックアップサービス概要の比較(2022年9月時点)

ここまでで、サーババックアップサービスとデータの保持方法についてご説明しました。
前項で何か問題が発生する前の状態に戻したい場合は、必ずバックアップを取得することをおすすめしましたので、シェアの高いパブリッククラウドであるAlibaba Cloud、AWS、Azureのサーババックアップサービスについて、概要や特色についての比較表とコメントを掲載します。

Google Cloudでは、2022年9月時点で正式なサービスとして、サーババックアップサービスは提供されていません。
Google Cloudを除いた3社でも、バックアップを取得できるタイプや課金に差があります。単純に参考料金だけ見ると、オンプレミス環境のバックアップと比較して格安に見えるかもしれませんが、データ量に比例して価格が上がったり、復元するときに別料金がかかったり、オンプレミス環境のバックアップからは気が付きにくい課金ポイントもあるので注意が必要です。

また、比較表の中にLRSという略語が出てきますが、Locally Redundant Storageのアルファベット頭文字3つをとったもので、ローカル冗長ストレージのことをさします。LRSは、同一データセンター内で冗長化された最も基本的なストレージです。
LRSよりも冗長性を高めた、ZRSというゾーン冗長ストレージのオプションもあります。ZRSも、Zone Redundant Storageのアルファベット頭文字3つをとったものです。

※パブリッククラウドの比較表とコメントについては、アルファベット順で記載しています。

 Alibaba CloudAmazon Web ServicesMicrosoft Azure

サービス名

Hybrid Backup Recovery

AWS Backup

Azure Backup

仮想サーバへの専用クライアントのインストール

必要

不要

機能要件に応じて選択可能。

バックアップできるリソース

・仮想サーバ
・物理サーバ
・他クラウド
・データベース
・NAS
・Object Storage
・VMware環境
・Container
・Tablestore
・Cloud Storage Gateway
・Amazon Elastic Compute Cloud
・Windows Volume Shadow Copy Service
・Amazon Simple Storage Service
・Amazon Elastic Block Store
・Amazon DynamoDB
・Amazon Relational Database Service 
・Amazon Aurora
・Amazon Elastic File System
・FSx for Lustre
・FSx for Windows File Server
・Amazon FSx for NetApp ONTAP
・Amazon FSx for OpenZFS
・AWS Storage Gateway 
・Amazon DocumentDB
・Amazon Neptune
・VMware Cloud on AWS
・VMware Cloud on AWS Outposts
・Azure VM
・Azure Managed Disk
・Azure Files
・Azure VM内のSQL Server,SAP HANAデータベース
・Azure Database for PostgreSQL
・Azure BLOB
・物理サーバ、Hyper-V、VMware仮想マシン

ファイルベースのバックアップ

別料金が発生するが可能

EBSに比べると、料金は上がるが可能

エージェントのインストールが必要だが可能

料金・バックアップ対象が何かによって、課金対象項目が変わる。

・バックアップ復元時は、インターネット向けのネットワークトラフィック料金は別で発生する。

・容量を先に購入できるリソースプランと呼ばれる支払形態がある。

公式料金ページ
・初期料金なし、最低料金なし。

・1月で使用したバックアップストレージの量で、課金が発生する。

・バックアップ対象によっては、復元する際に別料金が発生する場合がある。

・別リージョンにデータを転送する場合も別料金が発生する。

公式料金ページ
・バックアップ対象が何か、バックアップ先のストレージのレベルによって料金が変わる。

・保存するデータ量によって、段階的に料金が上がる。

公式料金ページ
参考条件でのバックアップ月額費

VMサーバ1台
容量:100GB
復元は考慮しない別リージョン転送なし
 
合計 $3.339395

内訳
$0.152395 ECS Server Backup
$3.1870 バックアップ ストレージ LRS
合計 $5 

内訳
$5 Amazon EBS Volume Snapshot

 
合計 $12.24

内訳
$10 Azure VM Backup
$2.24 Standard LRS 東日本 

公式情報

制限事項

ベストプラクティス
クォータ

デベロッパーガイド
ガイダンスとベストプラクティス

各パブリッククラウドの紹介説明のコメントは、コンピューティングサービスの記事でも触れていますので、よろしければそちらの記事もご覧ください。

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudでは、Hybrid Backup Recoveryというサービス名でサーババックアップサービスが提供されています。

Alibaba Cloudの各製品のバックアップに対応しており、さらにオンプレミス環境や他のクラウド環境のバックアップも取得できるのが特長で、料金も他クラウドと比較して安価になっています。
Hybrid Backup Recoveryでの仮想サーバのバックアップは、エージェントのインストールが必須になっています。

Amazon Web Services

AWSでは、AWS Backupというサービス名でサーババックアップサービスが提供されています。

同一クラウド内で対応している製品は他と比べても製品が多く、料金もわかりやすいものになっており、
バックアップの監査、レポート機能、保存したデータの暗号化といった付加機能も充実しています。
ただ、AWS Backupを使用したオンプレミス環境のバックアップは、VMware環境に限定されています。

Microsoft Azure

Microsoft Azureでは、Azure Backupというサービス名でサーババックアップサービスが提供されています。
仮想サーバやデータベースと言った基本的な対象と、オンプレミス環境のバックアップも取得できます。

エージェントのインストールは、ファイル単位でリストアを行いたいか、バックアップ先を別リージョンにしたいかなどの機能要件次第で選択できますが、インストール可能であればインストールした方が選択の幅がひろがります。
3社の中では価格が高く、ストレージに保管するデータ量に応じて段階的に価格が上がることにも注意が必要です。

Google Cloud

Google Cloudでは、正式なサービスとしてサーババックアップサービスは提供されていません。

マーケットプレースから購入できるサードパーティ製品のイメージから起動したインスタンスを使用してバックアップを取得することができますが、これは他のクラウドでも可能であるため、比較としては無しとさせていただきました。
公式にある情報としては、「Actifio Go」というサードパーティ製品が紹介されています。

まとめ

サーババックアップサービスは、クラウド上やオンプレミス環境のリソースのバックアップを、コンソールから簡単な設定だけでクラウド上にバックアップできるサービスです。
オンプレミスとは違う考慮すべき点がいくつかありますが、オンプレミスに比べてコストが抑えられる可能性があること、サーババックアップサービスを利用しない場合は、利用者側でデータを保護する仕組みを確立しなければならないことを考えると、パブリッククラウド利用時には導入をご検討いただきたいサービスのひとつだと思います。

また、一度設定した後のバックアップ運用のお話になりますが、バックアップには重大トラブルや災害時に復旧できることをもとめるケースが多いと思います。

いざ重大トラブルや災害が発生した時に、何らかの理由で復旧ができないのではバックアップの意味がありませんので、地震や火災の避難訓練などと同様に、定期的に取得しているバックアップから復元ができるかどうか確認することをおすすめします。

バックアップについての定期的な確認ポイントを掲載しますので、これらのポイントを定期的にご確認いただければ、不測の事態にも備えられると思います。

いつのデータで、想定通り取得できていますか?

日次・週次・月次を何世代など

バックアップデータはどこにありますか?

同一ゾーン・別ゾーン・別地域など

誰が復元できますか?

管理者・権限を与えられた人・一般ユーザーなど

どの単位で復元できますか?

ファイル単位・ディスク単位・サーバ単位

どのようなケースで復元しますか?

ファイル誤削除、サーバ誤削除、システム異常、災害など

復元手順はありますか?

ある・なし ※復元するケースが複数あるならケース毎。

実際に復元できるかどうかが、最も重要です。

 

関連サービス

Alibaba Cloud

Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。

Amazon Web Services (AWS)

ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです

「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。

Microsoft Azure

Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。

Google Cloud

Google サービスを支える、信頼性に富んだクラウドサービスです。お客さまのニーズにあわせて利用可能なコンピューティングサービスに始まり、データから価値を導き出す情報分析や、最先端の機械学習技術が搭載されています。

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