パブリッククラウドのVMware on Cloudサービス比較(Alibaba/AWS/Azure/Google)

2022年9月30日掲載

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ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。
本記事ではAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudの各パブリッククラウド上でVMware環境を構築できるVMware on Cloudサービスについて、概要と特徴を比較します。

自社のシステム基盤としてVMwareを利用してプライベートクラウドを構築されている方もいらっしゃるかもしれませんが、既存のVMware環境とパブリッククラウドは相反するものではありません。

VMware on Cloudサービスを上手く利用することで今のVMware環境を生かしつつパブリッククラウド上のリソースも利用したり、既存の仮想マシンをパブリッククラウド上に移動することも可能ですので、既存でVMwareを利用されている方もぜひご一読ください。

目次

VMwareと仮想化ソフトウェアについて。

VMwareとはヴイエムウェアと読み、VMware社が販売している仮想化ソフトウェア製品です。
日本でも2000年以降に発売され、すでに約20年近い歴史があります。

仮想化ソフトウェアは、利用するハードウェア上で仮想化されたハードウェアを構成し複数の環境を稼働させるためのソフトウェアです。通常は1つのハードウェアで、1つのオペレーティングシステムなど1つの環境が稼働しますが、仮想ソフトウェアを利用すると1つのハードウェア上で複数の環境を動かすことができ、ハードウェアの性能をあますところなく利用できたり、CPU、メモリ、ディスクといったコンピューティングリソースとハードウェアの設置スペースを集約することできます。

仮想化ソフトウェアでは、ホスト、ハイパーバイザー、コンテナといくつか種類がありますが、VMware社ではホスト型とハイパーバイザー型を提供しており、特に企業が利用する商用のソフトウェアとしてはハイパーバイザー型で高いシェアを占めています。
ハイパーバイザー型はVMware以外にもMicrosoft Hyper-V、Linux KVM、Citrix Xen Serverなどがあり、企業で長く使われてきた実績があります。

パブリッククラウドのVMware on Cloudサービスとは。

VMwareは企業内のプライベートクラウド基盤などで利用が進みましたが、VMwareを使ってきた企業でも対外的にはパブリッククラウドを利用するケースも増えてきました。
ユーザがプライベートクラウドとパブリッククラウド両方の利用が進んできた結果、VMwareとパブリッククラウドの2つを組みあわせて使いたいというハイブリッドクラウドの需要が高まった結果生まれたサービスがVMware on Cloudサービスです。


VMware環境をパブリッククラウド上で稼働させるメリットは、下記のような点があげられます。

・ハードウェアの調達、構築にかかる時間を省くことができます。
プライベートなVMware環境を新たに構築したり、リソースが不足した場合は調達や構築に時間がかかりますが、VMware on Cloudサービスを利用すると、数クリックで調達と構築を行うことが出来ます。

・VMwareホストの運用をパブリッククラウド側に任せることができます。
構築が完了して運用する段階に入ると、VMwareのホスト環境の障害対応、セキュリティ対応やアップデート運用をする必要があります。
VMware on Cloudサービスでは、このようなVMwareホストの運用をパブリッククラウドベンダ側が行うことで、ユーザはホストの運用から解放されます。


ただし、ホストの運用費用は価格に転嫁されます。見積り時に想像以上に価格が高いと思われることがあるかもしれませんが、ホストの運用費用が含まれている価格であることを知っておきましょう。

・パブリッククラウド上でも、既存のVMwareの知識を生かすことができます。
VMware環境とパブリッククラウド環境では必要な知識が異なりますが、VMware on Cloudサービスを利用すると、VMwareの知識や操作をパブリッククラウド上でも生かすことができるので、学習コストを抑えることができます。

・プライベートクラウド上の仮想マシンを作り直すことなく、パブリッククラウド上に移すことができます。
VMware HCXの利用が必要になりますが、プライベートクラウド上の仮想マシンを作り直さずにパブリッククラウド上に移すことができるので、パブリッククラウド上にディザスタリカバリ環境を構築したり、既存環境の保守が切れるタイミングでクラウドにシフトするような柔軟な対応ができます。

VMware on Cloudサービス概要の比較(2022年9月時点)

ここまでVMwareと仮想化ソフトウェア、パブリッククラウドのVMware on Cloudサービスついてご説明しましたので、シェアの高いパブリッククラウドであるAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google CloudのVMware on Cloudサービスについて、概要や特色についての比較表とコメントを掲載します。

2022年9月時点でAlibaba Cloudの国際サイトでは、VMware on Cloudサービスは提供されていません。
Alibaba Cloudを除いた3社でも、構成や料金面でサービス内容に差があります。

※パブリッククラウドの比較表とコメントについては、アルファベット順で記載しています。

 Amazon Web ServicesMicrosoft AzureGoogle Cloud

サービス名

VMware Cloud on AWS

Azure VMware Solution

Google Cloud VMware Engine

選択可能なVMwareホスト性能

2タイプ
(i4i.metalタイプが追加提供予定)

3タイプ

1タイプ

最低ホスト数
(シングルAZの場合)

2
(Production利用時)

3
 

3
(本番利用時)

ホストの冗長構成通常はシングルAZ。
ストレッチクラスターを利用したマルチAZ構成が可能。
通常はシングルAZ。
マルチAZは、ストレッチクラスターを利用するリクエストが必要。
通常はシングルAZ。
マルチAZはプレビュー段階。
後からホストを追加できるか。アカウントに割り当てられた最大ホストを超えない限りは、追加できる。クォータを超える場合は、リクエストが必要。クォータを超える場合は、リクエストが必要。
管理画面VMware Cloudコンソール
および
vCenter Server
Microsoft Azureコンソール
および
vCenter Server
Google Cloudコンソール
および
vCenter Server
仮想マシンのDRSコンピューティングポリシーで設定する。配置ポリシーで設定する。※公式情報なし

日本での利用可否

可能

(東京、大阪リージョン)

可能

(東日本、西日本リージョン)

可能

(Tokyo (asia-northeast1))

運用主体

AWS / VMware

Microsoft

Google

支払い単位

オンデマンド

もしくは

1年か3年のサブスクリプション 

オンデマンド

もしくは

1年か3年の予約インスタンス

オンデマンド

もしくは

1年か3年支払い
 

料金(ホスト毎)

$8.34 / 時間
(東京 36コア/512 GiB/~10.7TiB)

オンデマンドでの利用料金

$9.81 / 時間
(東日本 36コア/576 GiB/15.36TB)

オンデマンドでの利用料金

$10.59 / 時間
(東京 36コア/768 GiB/19.2TB)

オンデマンドでの利用料金

公開ドキュメントに記載されている、料金に含まれているもの

※詳細は見積り時に確認が必要です。
・Production向け
VMware SDDC software: vSphere, vSAN, NSX-T, vCenter Server

VMware HCX

VMware Tanzu services: TKG Service + TMC Essentials

Dedicated Amazon EC2 Bare Metal Instances

VMware Global Support
Lifecycle management by VMware (updates, patches and upgrades)

Support for High Availability (HA) and Stretched Clusters

Service Level Agreement (SLA) 
NSX-T

VMware vSphere

VMware vSAN

VMware HCX Advanced

上記のVMwareライセンスコスト
VMware vSphere

VMware vSAN

VMware NSX-T

Alibaba Cloud

2022年9月現在、Alibaba Cloudの国際サイトでは、VMware on Cloudサービスは提供されていません。

どうしてもAlibaba Cloudの国際サイトでVMwareを利用したい場合は、Baremetal instanceを使用すれば、VMware環境をパブリッククラウド環境上に構築することはできますが、Baremetal instanceを使用した場合、VMware部分はユーザ側で運用することになるので、あくまで回避策です。

中国サイトでは、VMware on Cloudサービスが提供されはじめていますので、今後、国際サイトにも展開されることを期待しましょう。

Amazon Web Services

AWSでは、VMware Cloud on AWSというサービス名でVMware on Cloudサービスが提供されています。
提供開始時期は、2017年からになりますので約5年が経過しています。

他クラウドよりもホスト数が少ない環境ではじめられることから、オンデマンド料金の単価でメリットがあります。
また、他クラウドではクラウドプロバイダーが運用主体になりますが、AWSではソフトウェアの部分をVMware社が担います。
他のパブリッククラウドでは管理画面が標準のコンソールに統合されていますが、AWSでは標準のコンソールではなく、VMware Cloudのコンソールを利用することになります。

Microsoft Azure

Microsoft Azureでは、Azure VMware Solutionというサービス名でVMware on Cloudサービスが提供されています。
提供開始時期は、2020年から提供されており約2年が経過しています。

ホストの性能を3つのタイプから選べる点が特長で、希望する規模と選択できるタイプが合えば最も高いコストパフォーマンスを発揮する可能性があります。

Google Cloud

Google Cloudでは、Google Cloud VMware Engineというサービス名でVMware on Cloudサービスが提供されています。
Google Cloud VMware Engineも2020年から提供されており、提供開始から約2年が経過しています。

ホストのタイプは1つしか選択できませんが、そのかわり単体のスペックは高いものになっています。


各パブリッククラウドの紹介説明のコメントは、コンピューティングサービスの記事でも触れていますので、よろしければそちらの記事もご覧ください。

まとめ

他の仮想化ソフトウェアではパブリッククラウド上でのマネージドサービスが提供されていないなか、VMwareはこのVMware on Cloudサービスが存在していたり、同じハイパーバイザー型であるHyper-Vを提供しているMicrosoftからもVMware on Cloudサービスが提供されていることからユーザ需要はかなりあることが推測できます。

筆者は以前からVMwareを使用していましたので、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境が簡単に構築できることや、手間がかかる運用をパブリッククラウドベンダにお任せできるVMware on Cloudサービスには驚きを感じています。

ただ、価格にはライセンスや運用費用が含まれており高額に見えがちなので、導入前の比較検討には既存のライセンスや運用費用も勘案した上で比較検討する必要があります。
提供開始からまだ数年といった段階ですので、今後も導入しやすいスペックのホストが増えるといったような利便性の向上や、選択できるメニューが増えるなどの価格面のアップデートを期待したいと思います。

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