Alibaba Cloud NAT Gateway、フォワードプロキシ構成の構築方法を紹介します

2022年10月20日掲載

キービジュアル

皆さま、こんにちは。 ソフトバンクの結城です。

今回は現在、よく使われているNATについて、Alibaba Cloudが提供しているNATプロダクト、簡単なNAT構成の構築方法についてご紹介させていただきます。

目次

NATとは

NATとは「Network Address Translation」の略で、それぞれの頭文字を取って「NAT」と呼ばれています。NATにはさまざまな種類がありますが、その中でも特に「SNAT」と「DNAT」がよく使われています。

<SNAT>
「Source Network Address Translation」の略で、送信元IPアドレスを別のIPアドレスに変換する技術です。

<DNAT>
「Destination Network Address Translation」の略で、指定のIPアドレスから来た通信を指定のプライベートネットワークに転送する技術です。

また、NATを利用することによって主に以下、メリットがあります。

① グローバルIP数の節約
プライベートIPをもつ複数のサーバを1つのグローバルIPからインターネットにアクセスさせることができます。このため、グローバルIPの数を節約することができます。

② セキュリティレベルの向上
サーバのプライベートIPアドレスを外部に公開しなくて済むため、プライベートネットワークのセキュリティレベルを向上させることができます。

Alibaba CloudのNAT Gateway

Alibaba Cloudは「NAT Gateway」というプロダクト名でNAT機能が提供されています。

NAT Gatewayでは、2種類のNAT Gatewayが提供されており、それぞれSNATとDNATを利用することができます。

Internet NAT Gateway
Internet NATGatewayは、SNAT、DNATを提供するエンタープライズ クラスのゲートウェイです。Internet NAT Gatewayは、最大 100 ギガビット/秒の転送容量を提供し、クロスゾーンの災害復旧がサポートされています。また、高性能、自動弾力性、柔軟な請求、きめ細かい O&Mがサポートされており、インターネットを介したデータ転送をより効率的に管理できます。

VPC NAT Gateway
Virtual Private Cloud (VPC) NAT Gatewayは、VPC 内の Elastic Compute Service (ECS) インスタンスにプライベート NAT サービスを提供します。ECS インスタンスは、NAT IP アドレスを使用してデータセンターや他の VPC にアクセスしたり、外部のプライベート ネットワークにサービスを提供できます。
 

次にこの2種類の代表的な機能、制限の比較について紹介します。一部、制限については、Alibaba Cloudコンソールでチケットを起票し、申請することによって上限数を変更できます。

機能

Internet NAT Gateway

VPC NAT Gateway

SNAT

DNAT

最大接続数

2,000,000
※ 10,000,000

2,000,000
※ 10,000,000

スループット

5 Gbit/s ~ 15 Gbit/s (自動スケーリング)
※ 100Gbps

5 Gbit/s ~ 15 Gbit/s (自動スケーリング)
※ 100Gbps

作成できるNAT ゲートウェイの数

5

5

関連付けできるEIP数

20

サポートなし

VPC NAT ゲートウェイ用に作成できる NAT CIDR ブロックの数

サポートなし

50

NAT CIDR ブロックに含めることができる IP アドレスの数

サポートなし

50

SNAT エントリの数

40

40

SNAT エントリで指定できる IP アドレスの数

50

1

DNAT エントリの数

100

100

※ チケットで上限の変更申請が必要です

◆使い分け
プライベートNATを利用する場合は、VPC NAT Gatewayを、一般的なNATを利用する場合は、Internet NAT Gatewayをご利用ください。Internet NAT GatewayとVPC NAT GatewayのSNAT、DNATのエントリ数や作成できるNAT Gateway数、スループット、最大接続数は同じです。

NAT Gatewayの料金について

Internet NAT GatewayとVPC NAT Gatewayの課金方式は、従量課金方式で、課金項目はインスタンス料金とCPU料金が課金されます。

ご利用料金の概算については、料金分析ツールでご確認いただけます。
※NAT Gatewayの料金詳細については、Billing overviewよりご確認ください。

NAT Gatewayを用いたフォワードプロキシ構成のご紹介

以下にフォワードプロキシ構成の構築方法について紹介します。

■構成について

●構成利用場面

一部SaaS製品や、F/W等などでは、セキュリティ向上のため、接続元IPアドレスで制限できます。動的IP(DHCP)を利用している場合、接続元IPでの制限できますが、IPが変動するため、定期的に許可している接続元IPを見直す必要が出てきます。

静的IPアドレスであれば、IPが変動しないため、定期的に見直す必要がありません。Alibaba Cloudを使って接続元IPを固定したい場合、ご紹介させていただく構成を参考にしてください。

●構成について
クライアントPCからAlibaba Cloud VPN gatewayに対して、SSL-VPN接続を行い、ECS(Proxy)を経由して、NAT GatewayでプライベートIPアドレスをグローバルIPに変換(NAT)させます。NATさせたIPについては、EIPをバインドしているため、固定グローバルIPとなります。

●プロダクト
・Elastic Compute Service (ECS) / 東京リージョン
・NAT Gateway / 東京リージョン
・VPN Gateway / 東京リージョン
・Virtual Private Cloud (VPC) / 東京リージョン
・Elastic IP Address (EIP) / 東京リージョン

■構築手順
●VPCの作成

① Alibaba Cloudコンソールにログインし、プロダクト一覧より、「Virtual Private Cloud」を選択します。
② 左ペイン「VPCs」をクリックし、「Create VPC」をクリックします。

③ 以下の通り、VPCのパラメータを入力します。
※下記の記載がないパラメータについては、任意 / 任意の値でご設定ください。

Region : Japan / (Tokyo)
IPv4 CIDR Block : 172.16.0.0/16

<vSwitch>
Zone : Tokyo Zone A
IPv4 CIDR Block : 172.16.1.0/24

④ 設定値の入力が完了したら画面下部にある「OK」をクリックし、VPCの作成を完了させます。

 

●SSL-VPN(VPN Gateway)の作成と設定

① プロダクト一覧より、「VPN Gateway」を選択します。

② 表示された画面で「Create VPN Gateway」をクリックします。

③以下の通り、VPN Gatewayのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

Region : Japan (Tokyo)
VPC : 作成したVPCを選択
Specify VSwitch : No
IPsec-VPN : Disable
SSL-VPN : Enable

④ 設定値の入力が完了したら画面下部にある「Buy Now」をクリックし、VPN Gatewayの作成を完了させます。

⑤ 左ペイン「Interconnections」のタブをクリックし、「SSL Servers」→ 「Create SSL Server」をクリックします。

⑥ 以下の通り、SSL Serverのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

VPN Gateway : <3-3>で作成したVPN Gatewayを選択
Local Network : 172.16.1.0 /24
Client Subnet : 接続PCのサブネットを入力します

⑦ 設定値の入力が完了したら画面下部にある「OK」をクリックし、SSL Serverの作成を完了させます。

⑧ 左ペイン「Interconnections」のタブをクリックし、「SSL Clients」→ 「Create Client Certifite」をクリックします。

⑨ 以下の通り、Create Client Certificateのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

SSL Server : 作成したSSL Serverを指定します

⑩ 作成されたClient Certificateの「Action」で「Download」をクリックし、クライアント証明書をダウンロードします。「Download」をクリックするとca / crt / key / ovpnの4ファイルが入ったフォルダがダウンロードされます。

⑪ ダウンロードしたフォルダを解凍し、PEM形式の証明書にするため、ca / crt / key / ovpnファイルをそれぞれテキストで開き、ovpnファイルに書き込みます。書き込みが完了したらファイルの内容を保存します。

ovpnファイルの書き込み方の例は以下をご参照ください。

▼記載例

client
dev tun
proto udp
remote xx.xx.xx.xx xx
resolv-retry infinite
nobind
persist-key
persist-tun
ca  xxxx.crt (削除)
cert xxxx.crt (削除)
key xxxx.key (削除)
cipher AES-128-CBC
;comp-lzo
verb 4

<ca>
caファイルの内容をそのままペースト
</ca>

<cert>
crtファイルの内容をそのままペースト
</cert>

<key>
keyファイルの内容をそのままペースト
</key>

⑫ VPNソフトに作成したOVPNファイルをアップロードし、接続の追加を行います。
※今回は「OpenVPN Connect」を使います。VPNソフトのダウンロードをされていない場合、VPNソフトをダウンロードし、ご準備ください。

OpenVPN Connectの場合、作成したovpnファイルをドラッグ&ドロップで接続の追加ができます。

⑬ 接続の追加が完了したら、VPN接続をします。接続した状態で以降の手順を実施ください


●ECSの作成と設定

① プロダクト一覧より、「Elastic Compute Service」を選択します。

② 左ペイン「Instance & Images」のタブをクリックし、「Instances」→ 「Create Instance」の順にクリックします。

③ 以下の通り、ECSのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

OS : CentOS 7.7 64-bit
Region : Japan / (Tokyo)
Zone : Zone A
VPC : 作成したVPCを選択
VSwitch :で作成したVPCを選択
Security Group : 新たに作成 (SSH/22とsquid/3128 で 192.168.0.0/24を許可してください)
 

<設定不要のパラメータ>
・Public IP Address
・IPv6

④ パラメータの入力が完了したら、画面下部にある「Create Instance」をクリックし、ECSの作成を完了させます。

⑤ 作成したECS(プライベートIP)に対してSSH接続を行い、以下コマンドを順に実行します。

# yum -y install squid
#systemctl enable squid
#systemctl restart squid

 

●EIPの作成、設定

① プロダクト一覧より、「Elastic IP Address」を選択します。

② 表示された画面で「Create EIP」をクリックします。

③ 以下の通り、EIPのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

Region : Japan (Tokyo)

④ パラメータの入力が完了したら、画面下部にある「Buy now」をクリックし、EIPの作成を完了させます。

 

●NAT Gatewayの作成、設定

① プロダクト一覧より、「NAT Gateway」を選択します。

② 表示された画面で「Create NAT Gateway」をクリックします。

③ 以下の通り、NAT Gatewayのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

Region : Japan (Tokyo)
VPC : 作成したVPC
Associate vSwitch : 作成したvSwitch
Access Mode : SNAT for All VPC Resources
EIP : Select EIP
EIP : 作成したEIPを選択

④ パラメータの入力が完了したら、画面下部にある「Buy now」をクリックし、NAT Gatewayの作成を完了させます。

⑤ NAT Gatewayの作成完了後、SNATの設定を行います。「Configure SNAT」をクリックし、SNATの設定画面を開きます。

⑥ 「Create SNAT Entry」をクリックし、SNATのエントリを追加します

⑦ 以下の通り、SNATのパラメータを入力します。
※下記、記載がないパラメータについては、任意でご設定ください。

SNAT Entry : Specify ECS
Select ECS Instance : 作成したECS
Select Public IP Address : 作成したEIP

⑧ パラメータの入力が完了したら、画面下部にある「Confirm」をクリックし、SNATエントリの追加を完了させます。

 

●PC側のProxy設定

【 Mac OSの場合 】

①「システム環境設定」を開き、「ネットワーク」をクリックします。

② 「詳細」をクリックし、「プロキシ」のタブをクリックし以下の通り設定をします。

・チェックを入れる
Web プロキシ(HTTP)
保護された Web プロキシ (HTTPS)

・プロキシサーバを指定

squidを設定したECSのプライベートIPを入力
squidのポート番号を入力(デフォルトでは3128)

③設定を保存し、適用します。
 

【 Windows OSの場合 】

① Windowsキーを押下し、「プロキシの設定を変更する」と入力し、開きます。

② 手動セットアップで「プロキシ サーバーを使う」を有効化し以下の通り、設定します。

アドレス : squidを設定したECSのプライベートIPを入力
ポート : squidのポート番号を入力(デフォルトでは3128)

●動作確認

接続元確認ページにアクセスします。
※ブラウザで「接続元IP 確認」と検索いただければ、接続元IPのWebページが表示されます。

表示されたIPがNAT GatewayにバインドされたEIPであることを確認します。
※ EIPのIPが表示されない場合、VPN接続をしているか確認ください。

さいごに

Alibaba CloudのNAT Gatewayは、設定方法がシンプルなので使いやすいです。

他のプロダクトと併せて利用することによって、セキュリティレベルを高めることが可能です。自社でグローバルIPを持っていない場合でも、今回ご紹介させていただいたVPN Gateway + ECS + NAT Gatewayの構成をご利用いただくことによって、接続PCの接続元IPを固定させることができます。もし、PCの接続元IPを固定させたい場合、ご紹介させていただいた構成をご利用いただけますと幸いです。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。
他にも様々な記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

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