Alibaba Cloud CEN Traffic Scheduling機能(QoS)のご紹介

2024年3月29日掲載

Alibaba Cloud

クラウドエンジニアの赤羽です。

Alibaba Cloud の CEN (Cloud Enterprise Network)の中で利用できるTraffic Schedulingについてご紹介します。

目次

はじめに

今回は、Alibaba Cloud の CEN (Cloud Enterprise Network)の中で利用できるTraffic Schedulingについてご紹介します。この機能を使用すれば、異なるリージョン間での通信において宛先やポート番号ごとに帯域を調整することができます。

以前、西野さんが書いたCEN Transit RouterでQoS機能を使用してみた記事のアップデートになります。

機能概要

Traffic Schedulingは、CENのTransit Routerの機能のひとつとして提供されています。この機能はネットワークの品質制御(QoS)を行い、異なるリージョン間でのネットワーク帯域幅を制限するという目的に使われます。これにより、ビジネスが複数のリージョンまたは地域にわたる場合でも、ネットワークトラフィックの品質とパフォーマンスを維持しつつ調整し、最適化できます。

一般的に、QoS処理を行うためには優先度などを識別するためのマーキングが必要です。以前は、CEN自身ではマーキングができないため、データ送信元のサーバーやネットワーク機器でマーキングする必要がありました。しかし、Traffic Schedulingの実装により、CENのTransit RouterにてDSCP値のマーキングからQoSの設定まで一貫して行えるようになりました。もちろん、以前同様に送信元でマーキングされたDSCP値を判別して処理することも可能です。複数のVPC間の通信や複数の拠点からの通信も、CENで一元的に設定・処理できるため、より便利になりました。

本記事では設定例と注意事項についてご案内いたします。詳細は公式ドキュメントをご参照ください。(トラフィックスケジューリングを使用してリージョン間接続の帯域幅を制限する)

設定例の構成図

CENを経由する拠点間の通信でQoSが機能するかを検証しました。香港拠点にある端末Dから東京拠点にある端末Aに対して、SMB(TCP445)を使用してファイル転送を行い、帯域制限が想定通りに適用されるか確認しました。※各拠点側はクラウド上に構築し検証しています。

Traffic Scheduling設定手順

※ネットワーク構成やCENの基本設定は完了した状態としてご説明します。

①トラフィックマーキングポリシーの作成
1-1.CEN>対象インスタンスを選択
1-2.QoSを設定するTransitRouterを選択

今回は香港リージョンのTransitRouterを選択します

1-3.トラフィックマーキング タブ>トラフィックマーキングポリシーの作成をクリック
1-4.基本設定>各種入力します

ポリシー名:任意のもの

ポリシー優先度:1~100で設定(低い値が優先)

DSCP設定:今回は48で設定

(※下記分類ルールにマッチしたものはDSCP48に設定する、という設定となります)

1-5.トラフィック分類ルール>手動で追加>各種入力してOKをクリック

手動で追加を選択

トラフィック分類ルール名:任意のもの

プロトコルタイプ:TCP

ソースCIDRブロック:香港拠点のセグメント

ソースポート:445/445

※今回は他空欄でOK

注意:トラフィック分類ルール内のDSCP欄に値を入れると、元のパケットにDSCP値がないものはルールにマッチしなくなるのでご注意ください。

②トラフィックスケジューリング ポリシー設定(キュー)
2-1.クロスリージョン接続 タブ>トラフィックスケジューリングポリシーにある詳細をクリック
2-2.スケジューリングルール>キューの追加をクリック
2-3.スケジューリングルール>キューの追加をクリック>各種入力しOK。完了

キュー名:任意のもの

一致するDSCP:今回は48で設定

帯域の上限:今回は30%で設定

設定は以上で完了です。

通信検証:端末D→端末Aへのファイル転送(SMB) 

受信側の端末AのNICと、CENのトラフィックモニターで確認しました。

・QoS設定前

100%の10Mbpsで通信できています。

・QoS設定後

帯域の30%、3Mbpsを上限として通信するようになりました。

設定どおりに帯域制御されています。

通信検証:端末C→端末Aへのファイル転送(SMB)※デフォルトキュー動作確認

設定したルールにマッチしない通信を確認してみました。ルールにマッチしない通信はデフォルトキューとして処理され、QoSで割り当てられていない残りの帯域を上限として設定されます。下記の通り70%の帯域で通信されることが確認できました。

制限事項および注意事項

Traffic Scheduling機能を使用する際には、以下の制限事項と注意事項があります。

  • TransitRouterのリージョン出口でのみ制御が行われるため、設定箇所に注意してください。
  • キューの設定は最大3つまでです。
  • 双方向で同じ帯域制限を適用したい場合は、双方のTransitRouterにキューを設定する必要があります。
  • 少なくとも1つのキューが設定されている場合、デフォルトキューにも自動的に帯域上限が設定されます。※帯域を分割するイメージです。

まとめ

今回は、Alibaba CloudのCENのTraffic Schedulingをご紹介しました。

この機能を使用することで、CEN内部の設定だけで簡単に帯域制限を行うことができます。今回ご紹介した設定以外にも、送信元や宛先のIPアドレスのみを使用した設定や、ポート番号のみを使用した設定など、さまざまな方法で設定が可能です。これをうまく活用することで、CENの品質とパフォーマンスを確保しながら、帯域へのコストを削減することができます。ぜひ一度試してみてください。以上です。

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