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皆さんこんにちは。クラウドエンジニアの康です。
この記事ではAlibabaCloudのPremium EIPについて紹介します。
中国向けにWebサイトを公開する場合、ネットワーク遅延や、インターネット規制など様々な課題を抱えています。
まず、中国本土と他の国々との間でネットワーク遅延が発生することが一般的です。これは、長い距離、混雑したネットワーク、さまざまなインターネットサービスプロバイダ(ISP)間の接続の問題に起因することがあります。
また、中国ではデータ保護法、インターネット規制、その他の法的要件が厳格で、これらに従わなければなりません。特に、中国国内で運営するWebサイトはICPライセンスを取得する必要があります。ICPライセンスについて、以下の記事をご覧ください。
【徹底解説】中国向けWebサイトの基礎知識①ICPライセンスって何?
こうした課題に対処するのがAlibaba Cloud Premium EIPです。
Alibaba Cloudが提供するPremium EIP(Elastic IP)は中国向けのWebサイト公開におけるネットワーク遅延の課題を解決するのに役に立ちます。Premium EIPはBGP(Border Gateway Protocol)マルチISP(Internet Service Provider)ルーティングを使用して、より低遅延のネットワーク接続を提供します。これにより、中国本土のユーザーが海外のWebサービスにアクセスする際の遅延を大幅に削減できます。
Premium EIPは主に以下の利点があります。
低遅延接続: BGPマルチISPルーティングにより国際的なデータ伝送が最適化され、特に中国本土からのアクセスにおいて遅延が低減されます。
高い可用性: 複数のISPを使用することでネットワークの冗長性が向上し、サービスの可用性が高まります。
広範な地域サポート: Premium EIPは中国香港、日本、シンガポール、マレーシアなど、複数の地域で利用可能です。
運用上の柔軟性: 使用量ベースの課金モデルにより、ビジネスの需要に合わせてリソースを調整することができます。
本記事ではPremium EIPは中国市場向けのWebサイトのネットワーク遅延問題を効果的に解決できるのか、実際にどのくらいの効果があるのかを紹介していきます。
以下はPremium EIP、通常のEIP (Elastic IP)と Global Acceleratorの違いについて説明します。
・Premium EIP
Premium EIPはBGP(Border Gateway Protocol)マルチISP(Internet Service Provider)ルーティングを利用して、特に中国本土からのアクセスにおいて低遅延の接続を提供します。また、海外のデータセンターと中国本土との間のデータ伝送を最適化し、国際的なサービスへのアクセス品質を向上させます。Premium EIPは中国国内へのサービス提供を最適化するために設計されており、特に中国市場をターゲットとする事業者に適しています。
・通常のEIP (Elastic IP Address)
通常のEIPはインターネット接続が可能な静的な公開IPアドレスであり、ECS(Elastic Compute Service)、NAT gatewayインスタンスなどのリソースに割り当てられ、インターネットに接続するために使用されます。
・Global Accelerator
グローバルアクセラレータは世界中のユーザーに対して、アプリケーションへのアクセスを高速化するネットワークサービスです。ユーザーの接続を最適なパスにリダイレクトし、ネットワーク遅延を減少させることで、グローバルなアクセス性能を向上させます。また、GAは複数の地域に分散するアプリケーションのパフォーマンスを最適化するのに適しています。
Premium EIP vs EIP
・共通点
両方のサービスはインターネット接続が可能な静的な公開IPアドレスを提供します。これにより、クラウドリソース(ECSインスタンスなど)がインターネットに接続することができます。Premium EIPと通常のEIPはいずれもElastic IPの特性を持ち、柔軟にリソースに割り当てたり解除したりすることができます。
・相違点
比較項目 | Premium EIP | 通常のEIP |
ネットワーク最適化と遅延 | BGPマルチISPルーティングを使用して、特に中国本土からのアクセスに対して低遅延の接続を提供します。中国本土と海外地域との間のデータ伝送を最適化し、ネットワークパフォーマンスを向上させます。 | ベーシックな公開IPアドレスサービスであり、Premium EIPのような特別なネットワーク最適化機能は提供しません。 |
ターゲット市場と使用シナリオ | 中国市場をターゲットとする事業者や、中国本土からのアクセス品質を特に重視するシナリオに適しています。 | 汎用的な用途に適しており、特定の地域間のネットワーク遅延の最適化が必要ない一般的なシナリオ向けです。 |
料金体系 | 通常のEIPよりも高価ですが、提供する低遅延のネットワーク接続による価値を反映しています。 | Premium EIPと比較して低コストで提供されることが一般的です。 |
Premium EIP vs GA(Global Accelerator)
・共通点
両方のサービスはユーザーの接続品質とパフォーマンスを向上させることを目的としています。低遅延と高速アクセスを提供することで、エンドユーザーの体験を改善します。Premium EIPもGlobal Acceleratorも、国際的なデータ転送とグローバルアクセスに焦点を当てています。世界中のユーザーがアプリケーションやサービスにアクセスする際の体験を最適化することを目指しています。
・相違点
比較項目 | Premium EIP | Global Accelerator |
機能と目的: | BGPマルチISPルーティングを使用して低遅延の接続を提供する公開IPアドレスサービスです。主に、中国本土からのアクセスを最適化することに焦点を当てており、特に中国市場をターゲットとするビジネスに適しています。 | グローバルネットワークの最適化を通じてアプリケーションへのアクセスを高速化するサービスです。世界中のデータセンターを利用して、グローバルな接続性を提供し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させます。 |
技術的アプローチ | 特定の地域(特に中国本土)と他の地域間のネットワーク遅延を低減することに特化しています。BGPマルチISPルーティングにより、複数のインターネットサービスプロバイダを通じて最適なネットワーク経路を選択します。 | アプリケーションに対するグローバルなトラフィックのルーティングを最適化し、複数の地域に分散するアプリケーションのパフォーマンスを最適化します。これにより、グローバルなユーザーベースに対して均一な高品質のサービスを提供することができます。 |
使用シナリオ: | 中国市場をターゲットとするビジネス、中国本土からのアクセスを最適化したい企業に適しています。 | 複数の地域にまたがるグローバルなアプリケーションを持つ企業や、世界中のユーザーにサービスを提供するビジネスに適しています。 |
Premium EIPの主な機能と典型的なユースケースは次のとおりです。
・Premium EIPはECSインスタンス、プライベートSLBインスタンス、NATゲートウェイにバインドできます。
・中国本土への直接接続、国際キャリアアウトレットの迂回が不要です。レイテンシーが低いです。
・秒単位でスケーリングエクスパンションができます。
・最小限の構成ですぐに使えます。
・DDoSベーシックプロテクションを無料で提供します。
要件 | ユースケース |
クロスボーダー レイテンシの低減 | 中国外、特に香港(中国)でサーバーが展開され、中国本土の顧客にサービスを提供 |
中国本土でサーバーが展開され、海外の顧客にサービスを提供 | |
アクセラレーション サービス プロバイダ | クロスボーダー アクセラレーション サービスを専門に提供するプロバイダ |
Premium EIPの利用料金について、EIPと比較しながら紹介します。
課金項目と課金方法
課金方法に対応リージョンの差がありますが、PremiumEIPは通常のEIPの課金項目と大きな差はありません。
|
| EIP | Premium EIP |
課金項目 | パブリックネットワーク費用 | トラフィック費用 | トラフィック課金 |
帯域幅費用 | 帯域幅費用 | ||
EIP構成費用 | 〇(従量課金のみ) | 〇(従量課金のみ) | |
EIPバインディング費 | EIPバインド料は、地域ごとに各アカウントがEIPにバインドされる回数によって決定されます。 1アカウントあたりのEIPバインディング数が地域ごとにクォーター数の5倍以下である場合、EIPバインディング料は無料です。超えると$0.149 USD/回 バンドル料がかかります。 | ||
課金方法 | サブスクリプション | 〇 | 中国(香港)のみ |
従量課金
| 〇 | 下記リージョンのみ 中国(香港)、日本(東京)、シンガポール、マレーシア(クアラルンプール)、フィリピン(マニラ)、インドネシア(ジャカルタ) | |
料金単価比較
日本リージョンの場合 | EIP
| Premium EIP (USD/時間/個) |
トラフィック単価(USD/GB) | 0.087 | 0.452 |
EIP構成費用(USD/時間/個) | 0.005 | 0.005 |
※2024/03/28 現時点
この節では実際に中国本土のユーザーから香港Webサーバーへのアクセスに関して、PremiumEIPと通常のEIPをそれぞれ利用した場合、どのくらい遅延の差があるか。PremiumEIPを利用した場合、通信速度がどの程度改善を期待できるかを検証したかったのですが、中国現地のインターネットアクセス環境が無く、実際に検証することが出来なかったので、公式ドキュメントの結果を引用し、期待される効果について紹介します。
具体的な構成として、香港地域のElastic Compute Service(ECS)インスタンスにWebサービスがデプロイされ、そのECSインスタンスにそれぞれPremiumEIPと通常のEIPをバインドします。クライアントから香港地域のECSに対して、PINGを実施し、PremiumEIPと通常のEIPの回線をそれぞれテストします。
検証構成1. 通常EIPへのアクセス
検証構成2. Premium EIPへのアクセス
注意
この例では、Linuxを実行しているクライアントが使用されています。使用するオペレーティングシステムによって、接続性を確認するために使用されるコマンドが異なります。詳細については、お使いのオペレーティングシステムのユーザーガイドを参照してください。
この例のテスト結果は参考のために提供されています。実際のネットワークの遅延は、BGP(Multi-ISP)Pro EIPのISPのネットワーク品質に基づいて異なります。
a. 通常EIPの回線をテストする
コマンド:
ping IP address of the EIP
結果:
「図1. ECSインスタンスが通常EIPに関連付けられた際のネットワーク遅延」
b. Premium EIPの回線をテストする
コマンド:
ping IP address of the BGP (Multi-ISP) Pro EIP
結果:
「図2. ECSインスタンスがPremium EIPに関連付けられた際のネットワーク遅延」
上記検証では次のような結果が得られています。
■Pingの応答時間(最小/平均/最大/標準偏差・ミリ秒)
通常のEIP:104.208/109.888/112.068/2.983 ms
PremiumEIP:29.341/29.365/29.409/0.200 ms
単純に考えると性能がおよそ70%改善しており、Premium EIPにバインドしている香港ECSインスタンスが、通常のEIPにバインドしている場合より、中国本土のユーザーがWebサービスに低遅延でアクセスすることが可能であることが分かります。
本章ではPremium EIPの機能、利点、通常EIPやGAとの違い、利用するシナリオとPremium EIPの料金について簡単に紹介させていただきました。また、公式ドキュメントの検証結果により、通常EIPとPremium EIPの通信遅延について比較してみました。
これらの検証結果により、Premium EIPは国際的なビジネスにおけるデータ伝送のニーズに効果的に応え、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。興味を持っている方はぜひお試しください。
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