Looker でダッシュボードを作成してみた!機能と実装方法を紹介

2024年7月31日掲載

Looker でダッシュボードを作成してみた!機能と実装方法をご紹介

Google の BI プラットフォームである Looker を使ってダッシュボードを構築しました。

本記事ではダッシュボードの紹介を通して、Looker の機能や実装方法を紹介します!

目次

Looker とは

Looker は、Google Cloud が提供する「データプラットフォーム」です。

データの集計や可視化だけでなく、データの事前定義、外部ツールと連携することで分析したデータによる具体的なアクションまでの一連のプロセスをカバーします。

特に LookML(Looker Modeling Language)を用いることで、データの定義やアクセス制御、アクション設定などをカスタマイズできます。これにより、企業はデータ駆動型の意思決定を迅速かつ効率的に行うことが可能です。

LookML の主な機能については以前のデータプラットフォーム「Looker」 の機能紹介記事を参照ください。

サンプルダッシュボードの紹介

本サンプルダッシュボードは、全国に店舗を展開する小売業者の利用を想定した売上管理ダッシュボードです。主な目的は、売上データの可視化と管理を通じて、経営戦略の最適化を図ることです。想定ユーザーは、経営層や店舗責任者、データ分析担当者です。

データベースには BigQuery を利用しており、ダミーの注文情報や店舗・顧客情報を格納しています。

それでは、ダッシュボードの内容を紹介します。

  • 全店舗の総売上や注文数、顧客数などをカード形式で表示し、現在の状況を一目で把握できるようになっています
  • 地図上に売上データをプロットすることで、地域ごとの売上傾向を視覚的に分析できます
  • 時系列データを用いたグラフで、売上の増減を把握します
  • 年齢別の購買者割合を確認し、新規顧客獲得のためにリーチするターゲットを判断できます

例えば、仙台の店舗 "A-02" の売上状況を確認したいとします。

グラフの値をクリックするだけで、その値でダッシュボード全体をフィルタすることができます。

ここでは、売上ランキングから "A-02" をクリックします。

ダッシュボード全体が店舗ID "A-02" でフィルタされました。

これにより、仙台の店舗 A-02 では、木曜に売上が落ちる傾向があることがわかりました。

さらに、棒グラフの "Thursday" を選択すると、仙台の店舗 A-02 かつ 木曜日 にデータをフィルタした結果がダッシュボード上に表示されるようになります。

このように、直感的な操作で迅速にデータを探索し、分析していくことが可能です。

ユーザー属性に応じたデータの表示切り替え

Looker では、アクセスフィルタによってユーザー属性(例えば役職や担当地域)に応じて表示データを制御することが可能です。これにより、各ユーザーが必要とする情報にアクセスさせることができます。例えば、経営層には全体の売上データを、地域マネージャーには担当エリアのデータを、店舗責任者には店舗のデータを表示する設定が可能です。

経営層がダッシュボードにアクセスすると、すべてのデータが表示されます。

札幌店長が同じダッシュボードにアクセスすると、札幌店の情報のみが表示されます。

行レベルのデータ制限をかけられることで、部署ごとに複数のダッシュボードを構築する必要がなくなり、1つの画面でユーザーのニーズに合った分析結果を確認することができるようになります。

ダッシュボードの構築・運用コストの削減だけでなく、セキュリティの向上にも繋がります。

 

また、アクセス許可によって、特定の Explore やビュー、フィールドへのアクセスを制限することが可能です。これにより、機密性の高いデータを特定のユーザーのみがアクセスできるようになります。例えば、データ分析担当者には個人情報を表示しない、といった設定が可能です。

アクセスが許可されているユーザーの画面です。

データ分析担当者がダッシュボードにアクセスすると、個人情報が非表示や記号 [***] に置き換えられます。

年齢や性別がマスキングされている

アクセスが許可されていないフィールドは、Explore 画面からも探索ができません。

年齢はフィールドそのものが非表示、性別は表示されるものの、値がマスキングされています。

今回は年齢や性別でしたが、より機密性の高い情報を扱う際に、同様の事前定義を行うことでデータのアクセスを正しく制限することができます。

アクション機能の活用例

Looker のアクション機能を用いることで、ダッシュボードから直接ビジネスアクションを実行することができます。例えば、優良顧客に対してキャンペーンメールを自動送信したり、顧客の担当者に Slack 通知を送ることが可能です。これにより、データ分析から実際のアクションまでのフローがスムーズに行えます。

このダッシュボードでは次の3つのアクションを、顧客IDのフィールドにアクションメニューとして追加しています。

  • 顧客へプロモーションメールを送信する
  • 顧客の担当者へ Slack メッセージを送信する
  • 顧客の詳細ダッシュボードへ遷移する

他にも、アクション機能を独自に実装することで社内ツールとシームレスに連携することができます。

LookML による指標の定義

LookMLは、Lookerのデータモデリング言語でデータの定義を行うためのものです。

生成されるデータは、元々は単純な値ですが、活用するためのルール化=組織内で統一された指標定義や集計ロジックの定義をこの LookML を用いて行います。

ダッシュボード作成者が各々のロジックでダッシュボードを作る場合、「売上」という指標1つをとっても、税を含むのか、注文後のキャンセルされた商品も含むのか、ディスカウント前後のどちらの数値なのかなど、部署や見る人の立場によって定義は変わります。レポートによって数値が異なる事象が発生し、ビジネスユーザーはどれが正しい数値なのかがわからなくなってしまいます。

しかし、Looker では指標を事前に定義することができます。ダッシュボード作成者は事前に定義された指標を使ってレポートを作るだけで、共通の指標をベースに可視化されているため誰が分析しても同じ結果が得られます。その結果、ダッシュボード閲覧者はデータを信頼でき、データ駆動型の意思決定が可能となります。

また、データの指標定義だけでなく、前述のデータアクセス制御、アクションを定義することもできます。

ここでは、サンプルダッシュボードで利用しているモデルの LookML を一部紹介します。

サンプルダッシュボードで指標を定義する

本サンプルダッシュボードにおいても、 LookML を用いてテーブルの結合を定義したり、使用するビュー(データソースのフィールド)を定義しています。

ユーザーの年齢から、年齢層のディメンションを定義する場合は、次のような LookML  をビューファイルに書きます。


 dimension: age_tier {
    type: tier
    tiers: [0, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90]
    sql: ${age} ;;
    style: integer
   }

LookML によるデータアクセス制御

指標を定義する際と同様に、データアクセスの制御もモデルやビューファイル上で定義することができます。

該当のユーザーの属性が yes になっているユーザーのみにデータを表示する場合は、次のような LookML をモデルファイルに書きます。


access_grant: can_view_customer {
  user_attribute: masking_test
  allowed_values: [ "yes" ]
}

ユーザー属性は、ユーザーの詳細画面から設定が可能です。

データ分析担当者(アクセス許可されていないユーザー)の属性値は次のようになっています。

アクション機能

ビューファイルにて、特定のフィールドにアクション機能を実装することができます。

LookML は SQL の知識があれば容易に理解でき、Git でバージョン管理することができます。

バージョン管理によって、誰がいつどこを変更したかが明確になり、データガバナンスの強化とともに、チーム全体の協働が促進され、効率的な作業が可能となります。

LookML プロジェクトの作成から定義、本番環境への反映については以前のLookML でビューやモデルを定義する記事を参照ください。

まとめ

Looker はデータ分析とビジネスアクションを効率的につなげる強力なプラットフォームです。このサンプルダッシュボードを通じて、その柔軟性と多機能性を少しでも感じていただければ嬉しいです。

今回は小売業に焦点を当てましたが、Looker は製造業や金融業など、どの業種でも幅広く活用できます。また、経営層から現場担当者まで、幅広い部門で利用することが可能です。

また、本記事では、データの可視化について触れていませんが、直感的な操作で、グラフ、チャート、マップなど多機能なビジュアライゼーションを実行することができます。

データの可視化については以前のBIツール初心者が Looker を触ってみて感じた4つのスゴいところ記事を参照ください。

さらに、拡張機能を実装することで、自然言語によるデータ探索が可能になりました。

また、生成 AI によるダッシュボードの言語化機能も Looker 上に実装可能です。

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