Vertex AI Agent Builder のパーソナライズアンサーを試してみた

2025年3月28日掲載

皆さま、こんにちは。

今回は、Vertex AI Search の革新的な機能である「パーソナライズドアンサー」について紹介します。

Vertex AI Search には、Search API と Answer API という2つの主要なAPIが存在します。本記事では、特に Answer API の新機能である「パーソナライズドアンサー」に焦点を当てていきます。パーソナライズドアンサーは、ユーザーの特性や興味に合わせてカスタマイズされた回答を提供し、企業の検索体験を大きく向上させる潜在力を秘めています。    

目次

Answer API の新機能 - パーソナライズドアンサーとは?

Vertex AI Search の「Answer API」は、検索結果に基づいて生成AIが回答を作成する強力な機能です。この機能は以前から複雑なクエリの処理やマルチターンの会話をサポートしていましたが、最近になって「パーソナライズドアンサー」という新機能が追加されました。

パーソナライズドアンサーとは、クエリにユーザーの属性や興味などの個人情報を付加することで、その人に合わせてカスタマイズされた回答を生成する機能です。例えば、同じ質問でも、ユーザーの業種や役職、興味のある技術分野などによって、より関連性の高い回答を提供できるようになります。

現在、この機能に関しては Vertex AI Search の Answer API に直接クエリをインプット実装出来る機能になります。

通常の検索を試してみた結果

まずは、パーソナライズドアンサーを使わない通常の検索を試してみました。

Cloud Shell から Vertex AI Search の Answer API に直接クエリを投げる方法で実験しています。

今回は Agent Builder のアプリに BigQuery を接続しており、BigQuery 内には最近の様々なニュースを集めたテーブルを1記事1行になるように格納しており記事のタイトルやURL、要約、公開日などの情報は、それぞれ別々の項目(列)に分けて保存しているテストデータとして用意しています。

①cloud shell を起動する

 

Vertex AI Agent Builder Personalize answers

②APIの実行例
Cloud Shell から以下のようなcurlコマンドを実行して、Vertex AI Search の Answer API を呼び出します

curl -X POST \
  -H "Authorization: Bearer $(gcloud auth print-access-token)" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  "https://discoveryengine.googleapis.com/v1/projects/プロジェクト名
/locations/global/collections/default_collection/engines/アプリ名
/servingConfigs/default_search:answer" \
  -d '{
    "query": {
      "text": "おすすめのニュースは?"
    }
  }'

③実行結果

 "answer": {

    "state": "SUCCEEDED",

    "answerText": "おすすめのニュースは次のとおりです。\n\n*   2025年3月13日には、世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan」の恒例企画となっている「アニメ化してほしいマンガランキング 2025」のトップ10が発表されました。\n*   2025年2月9日〜2月15日には、3月東コレ参加ブランドとスケジュールが発表され、アシッ クスが過去最高業績を更新し、パリコレショー前日のNIGO®が取材されました。\n*   2025年2月2日〜2月8日には、「グッチ」サバトが4シーズンで退任し、“ファミマ”クリエイティブディレクターにNIGOが就任し、「カンペール」のリブランディングが成功しました。\n*   2025年1月19日〜1月25日には、パリコレメンズが開幕し、世界最大の無印良品が奈良県に誕生し、ファレルとNIGOによる「ルイ・ヴィトン」の全貌が明らかになりました。\n*   2025年1月12日〜1月18日には、ジャーナリストの川島蓉子が死去し、ピッティ・イマージネ・ウオモが開幕し、「MM6」初のメンズコレクションがレポートされました。\n*   2025年1月5日〜1月11日には、ファストリが年収を最大54%UPし、LVMH系投資会社が国内ブランド「キャピタル」を買収し、「ミッソーニ」創業者が死去しました。\n*   2025年1月16日には、ロッテリアが2025年1月24日(金)から29日(水)までの6日間限定で、「キング とろたま牛すき焼きバーガー」「キング 絶品チーズバーガー」を提供する「ロッテリア 肉(29)の日」を開催すると発表しました。\n*   カナダでは、FacebookやInstagramでのニュース投稿が禁止されたため、「報道を装った詐欺コンテンツ」が大量に投稿されています。\n*   AIが要約したニュースの多くに「重大な問題」が含まれており、BBCのデボラ・ターネスニュース担当最高責任者は、「生成AIツールは火遊びをしている」と警告し、国民の「事実に対する脆弱な信頼」を損なう恐れがあると指摘しています。\n*   2023年のGoogle Cloudのトップニュースには、Cloud LoggingのLog Analyticsの一般提供開始、新しいGitOpsオブザーバビリティダッシュボード、Looker Studio用Lookerコネクタの一般提供開始、Security Command Centerへのプロジェクトレベルのオプションと従量課金制の導入などがあります。また、2月には、AlloyDB for PostgreSQLが新たに大阪など16リージョンで利用可能になりました。3月には、Vertex AIでのテクノロジーサポートが開始され、Data Cloud & AIサミットでニュースが発表されました。5月には、Duet AI for Google Cloudが発表され、Google CloudがI/Oで生成AIを進化させました。6月には、ジェネレーティブAIに対応したVertex AIの一般提供が開始されました。7月には、Application Integrationによりコードなしでアプリケーションを視覚的に接続できるようになり、Cloud SQL Enterprise Plusエディションが発表されました。8月には、BigQuery Studioが発表され、Vertex AIが拡張され、AIに最適化されたインフラストラクチャポートフォリオが拡大しました。\n",
Personalize answers

このように要約文と、関連する記事の一覧が返されていることが分かります。

メタデータを付与してパーソナライズドアンサーを試してみた

次に、パーソナライズドアンサー機能を使ってみました。パーソナライズドアンサーの特徴は、同じ質問に対してメタデータを付加することで、ユーザーに合わせた回答を生成できる点です。ユーザーのメタデータを API に付与することで、回答がどのように変わるか確認します。

メタデータとして登録できるものとしては以下のような項目があります。これらは事前に定義されたカテゴリやタグ形式で扱われます。

    ①ユーザー属性:業種、役職、専門分野
    ②興味・関心事:技術トピック、ビジネス領域
    ③行動データ:過去の検索履歴、クリックしたドキュメントの種類

まず、異なる役割を持つ3人のユーザーを想定し、それぞれのプロファイルに合わせたメタデータを設定して検索を行いました。

  1. マーケティング担当者:生成AIの活用事例に興味があるので、関心事に「活用事例」を設定

  2. 技術担当者:Vertex AIの最新機能や技術的な詳細に関心があるので、関心事に「Vertex AI」を設定

  3. セキュリティ担当者:AIのセキュリティや倫理的な側面を重視しているので、関心事に「データ保護」を設定

それでは、各ユーザーのプロファイルに基づいて「生成AIの活用方法は?」という質問でパーソナライズドアンサーを試してみます。

 

API実行 例


curl -X POST -H "Authorization: Bearer $(gcloud auth print-access-token)" \
-H "Content-Type: application/json"   "https://discoveryengine.googleapis.com/v1/projects/プロジェクト名/locations/global/collections/default_collection/engines/アプリ名/servingConfigs/default_search:answer"
  -d '{
    "query": { "text": "生成AIの活用方法は?" },
    "endUserSpec": {
       "endUserMetadata": [
         {
           "chunkInfo": {
              "content": "マーケティング",
              "documentMetadata": { "title": "職種" }
           }
         },
         {
           "chunkInfo": {
              "content": "活用事例",
              "documentMetadata": { "title": "関心事" }
           }
         }
       ]
    }
  }'

マーケティング担当者の場合

技術担当者の場合

技術担当者の場合

セキュリティ担当者の場合

セキュリティ担当者の場合

マーケティング職向け回答

  • 観光、ネット販売、企業イノベーションの分野での生成AI活用に焦点
  • Amazon、Bluesky、Vertex AI など、具体的な企業や製品の事例を多く紹介

  • マーケティング視点での活用方法や効果に重点

エンジニア職向け回答

  • Vertex AI や Gemini など、技術的な側面に関する情報をより詳細に提供

  • 生成AIツールの機能や開発中の技術についての言及が多い

  • エンジニアリングの観点から見た活用方法や可能性を強調

セキュリティ職向け回答

  • データ保護に関する内容が含まれている(Bluesky の事例)

  • 他の回答と比べて技術的な詳細が少なく、概要的な情報が中心

  • セキュリティの観点からの生成AI活用については直接的な言及が少ない

メタデータを付与することで、検索結果のリスト内容(表示されるドキュメント)が変わる場合もあれば、変わらず要約文や関連情報だけが変化する場合もあります。これは、メタデータがどのような条件でフィルタリングやランキングに活用されているかによります。
メタデータの付与は検索結果の表示内容と順序の両方に影響を与え、ユーザーにとってより関連性の高い内容の結果を表示します。

今回は3つの共通点として、観光分野でのJNTOの事例、ネット販売での活用、Amazon や Google Cloud との提携など、基本的な活用事例は全ての回答に含まれていますが、各職種や関心事に応じて、強調される点や詳細度が異なっていることが分かります

UIでの実装について

現在のところ、パーソナライズドアンサー機能はAPI経由での利用となりますが、将来的には Vertex AI Search のUIからも簡単に実装できるようになることが期待されます。ソフトバンクのテックブログで紹介されている Vertex AI Studio のようなインターフェースを通じて、よりユーザーフレンドリーな形で提供されれば、多くの企業がこの機能を活用しやすくなるでしょう。

まとめ

Vertex AI Search のパーソナライズドアンサー機能を使うことで、ユーザーの役割や業界などに合わせた回答を生成できることがわかりました。通常の検索と比較して、より関連性の高い、ユーザーにとって価値のある情報を提供できるようになります。

現在はAPI経由での利用が基本ですが、将来的にはUIからも簡単に実装できるようになることが期待されます。生成AIの可能性をさらに広げる機能として、今後の発展が楽しみです。

パーソナライズドアンサー機能を活用することで、ユーザーごとに最適化された検索体験を提供し、情報アクセスの効率を大きく向上させることができるでしょう。ぜひ、皆さんも Vertex AI Search のパーソナライズドアンサー機能を試してみてください!

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