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2025年9月20日、ソフトバンク本社を会場に「首都圏国立大学合同ハッカソン Day5」が開催されました。
本ハッカソンは、ビジネスコンテストとハッカソンを融合したスタイルで進行します。一般的な「短期集中の開発競争」とは異なり、まずDay1~Day3は事業創造に不可欠な“アイデア創出・検証”に集中。その後、各チームが主体的に開発を進め、Day4で中間発表、Day5で最終発表を行い成果を競います。
Day 1ではチーム結成とAIツールの体験を通じて、協働の基盤を築きました。Day 2では、顧客・課題・解決策という3つの要素に基づく事業アイデアを練り上げました。Day 3では仮説検証を学び、顧客の声を踏まえた検証計画を策定しました。Day 4では、その成果を整理し、改善点を明確にするための中間発表が行われました。
Day5では、1か月間かけて磨き上げてきたプロジェクトの最終発表に挑みます。各チームは8分間のプレゼンテーションと質疑応答で、アイデア創出から仮説検証、プロトタイプ開発までの全過程を披露。会場は緊張感と期待感に包まれ、成果を示す集大成のステージとなりました。
最終日となるDay5では、いよいよ各チームが1ヶ月間の挑戦の成果を披露しました。
発表形式は 8分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答。限られた時間の中で、アイデア創出から仮説検証、プロトタイプ開発に至るまでのプロセスをどのように表現するかが問われました。
学生たちは、自らが取り組んできた課題を背景に、どのように課題を設定し、どのようにAI技術を活用して解決策を導いたのかを論理的に説明しました。スライドやデモ動画を交えながら、審査員や聴衆に強い印象を与えようと工夫を凝らしていました。
会場は緊張感に包まれながらも、各チームの熱意ある発表に大きな期待が寄せられました。学生たちは緊張を隠せない表情を浮かべながらも、堂々とした姿勢で壇上に立ち、時に聴衆を巻き込みながら、自らのアイデアを「事業」として提案する姿を見せました。
会場に詰めかけた企業メンターや大学関係者からは、発表のたびに温かい拍手が送られ、学生たちの挑戦を支える空気が漂っていました。まさに1か月の努力の集大成を示す場としてふさわしいステージとなりました。
最終発表の審査は、AIや新規事業に精通した6名の審査員によって行われました。
評価は「課題解決」「ビジネス&サービス」「AIとデータ活用」「プロトタイプ開発」「プレゼンテーション」の5項目を10点法で採点する方式。 さらに学習プラットフォーム「Axros Recipe」の機能コンテストを活用することで、審査の効率化と透明性が確保されます。コンテスト機能についてはDay4の記事を読んでください。
各チームはいずれも完成度の高いサービスを示唆し、AIを活用した新規事業としての可能性を強く示しました。そのため、審査員は「どこで差をつけるか」という点でじっくり考えて悩むことになりました。
最終的には途中差の評価を経て順位が確定。審査員からは「非常に難しい審査だった」との声も上がるほど、各チームのレベルは高く抗っていました。
最終発表の結果、4チームの順位が発表されました。いずれのチームも短期間で高い完成度のプロダクトを形にし、AIを活用した新規事業としての可能性を示しました。
1位:しみぬきシンキング(花王) ― UVケアをAIで見える化
しみぬきシンキングチームは、日焼け止めの効果を「感覚」ではなく「データ」に基づいて把握できるアプリ「UVミエルノ」を提案しました。アプリは利用者が使用している製品や環境情報をもとに「実効SPF値」を算出し、塗り直しのタイミングを通知。さらに防げた紫外線量や使用状況をもとに、AIがアドバイスや励ましのメッセージを提供します。短期的には日焼け止めの販売促進、長期的には利用データを活用した製品開発やエビデンスベースのマーケティングにつなげる仕組みです。
春名学長(東京外国語大学)は「ターゲットが明確に絞り込まれており、課題設定から解決策までの筋道がしっかりしていた。試算や社会的意義も説得力を高めており、プレゼンも用意周到で質疑応答にも的確に答えていた」と高く評価しました。
チームリーダーは「中間発表のフィードバックを踏まえてアプリケーションの部分をブラッシュアップできたのは大きかったです。メンターやチームメンバーが夜遅くまで粘り強く取り組んでくれたおかげで、最終的に納得できる成果につながりました。ここでの学びを今後のキャリアにも生かしていきたいです」と振り返りました。
2位:わくわくスター(東京スター銀行) ― 推し活を支援する金融アプリ
わくわくスターチームは、アイドルやアニメなど自分の「推し」を応援する活動、いわゆる「推し活」をテーマにした金融アプリ「推しエール」を提案しました。推し活をする若者の多くが「資金不足」や「貯蓄ができない」といった悩みを抱えている現状に着目し、口座連携型の家計簿機能、推し活イベントカレンダー、収支の詳細分析などを提供。さらにAIを用いて「推し活安心度スコア」を算出し、利用者の健全なファン活動をサポートする仕組みを設計しました。銀行ならではの金融支援や低金利ローンとも連動し、推し活と健全な資産形成を両立させることを目指しています。
南副学長(電気通信大学)は「若者市場に着目した点が良い。生成AIに頼り切らず、信頼性ある仕組みを取り入れていたことも評価した。実際のビジネス化の可能性を感じた」と講評しました。
チームリーダーは「中間発表では課題を多く指摘されましたが、それを踏まえてアプリケーションの精度を高められたのが大きな成長でした。金融という専門的な領域に挑む難しさはありましたが、メンターの助言やメンバーの粘り強い努力でここまで形にできたことを誇りに思います」と振り返りました。
3位:BOSS(ハートビーツ) ― 活動可視化・評価支援システム
BOSSチームは、社員の活動を可視化し、公平で効率的な評価を実現するシステム「Shirusia(シルシア)」を提案しました。従来の人事評価は記憶ベースの議論や膨大な準備作業に依存しており、原価計算も曖昧になりがちという課題に対して、PCやチャットツールから活動ログを自動収集。AIが根拠付きで要約を生成し、評価面談の準備や原価管理を支援する仕組みです。導入により、上司1人あたり年間840,000円相当の工数削減効果が見込まれるなど、実務上のインパクトも明確に示されました。
跡部准教授(東京農工大学)は「学生にとっては身近ではない課題だったが、よく調べて取り組んでいた。AI評価システムの弱点を補えば、非常に強力なプロダクトになる」と評価しました。
チームリーダーは「5日間という限られた期間でまとめ上げるのは非常に大変でしたが、仲間が最後までミーティングや作業に力を貸してくれたおかげで、納得のいく成果につながりました。AIを活用したプロジェクトは想像以上にデータやアイデアが膨大で苦労しましたが、最終的には自信を持って発表できるものに仕上げられました」と振り返りました。
4位:ノーヴィーリス(CRI・ミドルウェア) ― ボイスコミック自動生成プラットフォーム
ノーヴィーリスチームは、漫画を音声付きで楽しめる「ボイスコミック」に着目し、その制作を効率化するプラットフォーム「コミミックスタジオ」を提案しました。従来はキャスティングや収録、編集に大きなコストと時間を要していた制作フローを、AIによる台本生成・音声合成・自動編集で大幅に短縮。制作期間は従来の半分以下、コストも約76%削減できる試算を示しました。小規模出版社でも作品を低コストでPRできる仕組みを整え、ボイスコミック市場の拡大と新しいエンタメ体験の創出を目指しました。
中原教授(東京海洋大学)は「漫画から新しい価値を生み出す発想は明確で良かった。市場の可能性や楽しさをもっと伝えられれば、さらに説得力が増しただろう」とコメントしました。
チームリーダーは 「4位という結果は改善点が多いことの表れだと思います。発表を通じて、アイデアの練り込みや開発面での工夫がまだまだ必要だと実感しました。今回の経験を糧に、より魅力ある提案に成長させていきたいです」と振り返りました。
参加学生24名を対象にしたアンケートでは、総合満足度は9.3/10点と非常に高い水準を記録しました。特にDay1(開幕)とDay5(最終発表)に高い評価が集まり、「期待感を持って始まり、達成感をもって締めくくる」というプログラム設計が学生の満足度を大きく高めたと考えられます。
協働と交流の効果
評価の中で最も高い数値を示したのが、企業メンターとの交流による学び(9.5/10点)と異なる大学・分野の学生との協働による成長(9.5/10点)でした。多様な背景を持つメンバーと協力しながら課題解決に取り組む経験が、単なる知識習得にとどまらず、思考の柔軟性やコミュニケーション力の成長を促しました。特に企業メンターからのフィードバックは「学生だからといって妥協しない実践的な助言」であり、社会人と肩を並べて議論する経験が学生にとって大きな刺激となったことが伺えます。
スキルの伸長
自己評価の結果、最も多くの学生が向上を実感したスキルは「AI活用」(18人)、次いで「チャレンジ精神」(17人)でした。生成AIや機械学習モデルを用いたプロトタイプ開発や検証のプロセスを通じて、学生たちは最新技術をツールとして自在に使いこなす力を磨きました。また、短期間で成果を求められる状況が挑戦心を強く引き出し、「困難に直面しても諦めずに工夫を重ねる姿勢」を自然と培うことができました。さらに、コミュニケーション力(15人)や企画力(14人)の伸長も顕著であり、チームワークと発想力の両輪が強化されたことが分かります。
キャリア意識の変化
キャリア形成に与えた影響も大きく、「今後のキャリアの参考にしたい」(19人)、「ネットワークを継続したい」(14人)、「サービスを利用・広めたい」(11人)といった回答が目立ちました。直接的に「就職を希望したい」と回答した学生は少なかったものの、インターンや共同研究などを通じて企業と関わりたいという声は一定数あり、キャリア探索段階での関心の広がりを示しています。特筆すべきは、単に「就職先を見つける場」ではなく、将来のキャリアの選択肢を増やす機会として捉えられている点です。
これらの結果から、本ハッカソンは短期間での成果発表にとどまらず、AI時代を生き抜く実践的スキルの習得、挑戦を楽しむ姿勢の培い、そしてキャリア観の深化に大きく寄与したことが明らかになりました。
首都圏国立大学合同ハッカソンは、大学・企業・ソフトバンクが一体となって取り組む新しい産学連携モデルです。学生はAIを活用した事業創造プロセスを実践的に体験し、企業は新規事業の種や次世代人材の可能性に直接触れることができました。
アンケート結果からは、AI活用力や挑戦心、異分野協働力の大きな伸長とともに、キャリア意識の醸成が確認されました。審査員や企業メンターからも「ネイティブAI世代の強みを実感した」「学生と共に学ぶ機会になった」との声が上がり、互いに成長を促す場であったことが示されています。
本ハッカソンは、短期間であっても学生の成長を加速させ、企業にとっても新たな価値をもたらすことを実証しました。ここで得られた成果とネットワークは、参加者にとって将来のキャリアや事業創造の礎となるだけでなく、産学連携教育の新たな可能性を切り拓くものです。
そして、未来を担う学生たちが、今回の挑戦を糧に社会で羽ばたき、AIと人の協働によって新しい産業や文化を築いていくことが期待されます。
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ソフトバンク株式会社
首都圏国立大学合同ハッカソン運営チーム
担当:中西、寺田
Email: grp-uni-hackathon@g.softbank.co.jp
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