お客さま
アセットマネジメントOne株式会社
従業員規模
501〜1,000人
業種
金融
導入サービス
・Axross Recipe for Biz
・Azure OpenAI Service
・生成AIパッケージ(旧 Azure OpenAI Service スターターパッケージ)
資産運用会社のアセットマネジメントOne株式会社(以下、アセットマネジメントOne)では、業務効率化のために2023年より生成AIサービスである Azure OpenAI Service を用いて、自社専用のチャットUIを持つ「OneQ(ワンキュー)」を展開しています。その利用率を向上させるためにAxross Recipe for Bizを用いた基礎知識の獲得や、未活用者を対象としたハンズオン研修、使い方や活用事例を紹介するショートムービーなど教育体制を整備。社員が当たり前のように生成AIを活用する状態になったことで、今後はAIとほかのツールを組み合わせて、より効果的な業務改善を目指すなど、DXの推進を強化しています。
定量的な数値効果
生成AI利用率(週間)
26%→41%
「生成AIの週間の平均利用率が約26%から41%になりました。プロンプトに慣れてきたことと、モデルの精度が上がったことにより聞き返しが少なくなったためコストパフォーマンスも良くなりました」
アセットマネジメントOne 株式会社
ITシステム・事務本部 DX推進グループ マネージャ
立花慶寛氏
アセットマネジメントOne株式会社は、みずほフィナンシャルグループと第一生命ホールディングスを株主に持つ、総資産残高約73兆円の資産運用会社です。2022年末より生成AIの業務活用を検討しはじめ、2023年6月に生成AIのサービスである Azure OpenAI Service を導入。2023年9月からは、自社専用のUIを持つ「OneQ(ワンキュー)」と呼ばれるチャット型生成AIを社内に展開し活用を進めています。同社でITシステム・事務本部 DX推進グループ マネージャを務める立花氏は当時の様子をこう振り返りました。
「当社でDXを推進する責任者でもあった当本部の役員の号令により、生成AIの導入検討がはじまり、ソフトバンクさんとお話して進めていきました。導入に際し、システム側の人間だけで進めると、さまざまな決定プロセスに際し各部署の人達と折衝しなければならなくなります。そのため、最初からプロジェクトにユーザー部門やリスク管理、人事、サポートなどさまざまな部門の方々に入っていただいて体制を作れたことが、スピーディに導入が進んだ大きな要因だと思っています。
また、プロジェクトへの参加は、指名した方に加えて、やりたい人に手を挙げてもらいました。本当に必要な人材とモチベーションのある人材両方を集めて進められたことは良かったと思っています」(立花氏)
専門的なナレッジを持つ人材をつなげて作る体制(講演より)
検討から数カ月で生成AIの導入に至ったアセットマネジメントOne。導入により、ユーザーからはさまざまな声が届いたようです。
「使い始めてすぐに上がった声として、今まで自分でできなかったことができるようになったという声がやはり多かったですね。例えば、プログラミングをやったことがない方が生成AIを使うことでPythonでプログラムを組めて効率化できたとか、英語で話したことがない人が英文のメールを自分で作って海外の方とやりとりをはじめたという意見がありました。
また、アセットマネジメントOneはみずほフィナンシャルグループという大きな金融機関のグループの一つであるため、ジョブローテーションや離着任が多いのですが、離任された方の業務の代替や引継ぎがスムーズになるという声も多くありました。加えて、着任時に自分にない知識を補完してくれるという意見もあり、生成AIにより働き方が変わったという意見が一番大きな声として届くようになりました」(立花氏)
生成AIが知識の補完や業務のキャッチアップに非常に役立ったという半面、生成AIの利用定着という点では課題があったようです。
「2024年の夏頃まではなかなか利用率が伸びず、2024年7月の従業員あたりの平均週間利用率は26%程度でした。一人あたりの平均利用回数は52回とかなり多かったのですが、自分で学んで使える人はどんどん使っていく一方、そもそもどう使えば良いか分からない、用途が分からないという人が大多数であり、そういう人達にいかに使ってもらうかという課題がありました」(立花氏)
より多くの人に生成AIを活用してもらうことで業務効率化を進めたかったアセットマネジメントOne。そこでいくつかの対策に取り組んだそうです。
「まず生成AIの認知度や知識の全体的な向上が必要と考え、全従業員にオンライン研修サービスであるAxross Recipe for Bizを活用し、ベースの底上げに取り組みました。プロンプトエンジニアリングの実践集だったり、AIを使う上での倫理観を全員に学んでもらいました。ちょうど、生成AIへの関心が高まっていたり、DX領域への取り組みを強化しはじめていた時期でもあったことも重なり、受講率は少しずつ向上していきました」(立花氏)
ユーザーからの反応として、プロンプトエンジニアリング実践集で学んだ内容をいつでも使えるようにしておきたいという意見が届いたといいます。また、管理者の立場としては、研修内容が勝手にアップデートされるため、業務が忙しい中でも知識ベース向上とともに常に新しい情報にアップデートできることも非常にありがたかったと立花氏は述べました。
「事前知識がついただけでは、なかなか利用率は伸びません。そのため、知識のベースアップに加えて『プロンプト道場』というハンズオン研修を30回以上実施しました。これには250名以上が参加し利用率の向上にも寄与したと思っています。加えて、実際にやってみた動画をショートムービー化して展開するようなことも実施しました」(立花氏)
こうした3つの施策を組み合わせて行うことで、2024年12月の週間利用平均は41%に増えただけでなく、プロンプトの知識がついたことで一人当たりの利用回数も52回から17回に下がり、効率的に利用されるようになったと述べました。
生成AIにおける利用促進に向けた試み(講演より)
従業員の利用率が向上し使い慣れてきたことで、要望がどんどん増えてきたと語った立花氏。ビジネスを取り巻く環境もますます変わっていくだろうと話を続けます。
「当初は、生成AIを導入するとこんなことができるんだよという、発展を後押しするテクノロジードリブンの進め方でした。しかし、ユーザーが使い慣れてくると一緒に進めていく動きになり、新たに出てきた課題に対して我々でも業務フローの分析を行い、生成AIがどこに使えるのか、個別最適ではなくて複数の課題や潜在的な課題に解決するにはどうするかといった具体的な話をユーザーと行うようになるイシュードリブンの動きになってきています。
今後はユーザーにももっと参画してもらい、我々もユーザーに寄り添って一緒に課題を解決していくことで、テクノロジードリブンとイシュードリブンの両方を求めて行っていくことになると考えています」(立花氏)
今後の生成AI活用(講演より)
ユーザーとの連携に軸足を置き、ともに進めていくことがポイントであると述べた立花氏。最後にこう述べました。
「生成AIは単品で利用するものではなく、クラウドサービスと組み合わせて使うとか、ほかの別のツールと組み合わせて使うなど、合わせ技みたいな利用が増えていくと思っています。そうなると(さまざまなシステムやデータと組み合わせて使っていくために)より多くの人たちに生成AIを使ってもらって機運を高めていく必要があります。
最近では、全社での活用イベントも実施し、導入者側としてはこういうこと考えてるんだよ、だから一緒にやっていこうよと説明し、普段聞きにくいことでもイベントであれば全部聞けるよ、初歩的なことでもいいよという場も設けました。そのような体制にしたことで、いろんなユーザーの方にも来ていたいただき、これからも(生成AIの活用を)取り組んでいくぞという下地ができたかなと思います」(立花氏)
導入当時は生成AIサービスが整っていなかったこともあり、Axross Recipe for Bizのオンライン研修サービスは利用しつつも、プロンプト道場のようなハンズオン研修やイベントなどは全て自前で行ったため、非常に大変で体力不足も痛感したと語った立花氏。現在のAxross Recipe for Bizではオンライン研修だけでなく、研修・ワークショップや社内イベント対応もしているため、自前で行うのではなく、こういったサービスも活用してみるのが良いのではと述べました。
生成AI活用に向けて機運を高め、全社的なデジタル化・DX推進に取り組むアセットマネジメントOne。全体的な下地作りが生成AIを活用するためのポイントなのかもしれません。
※本事例記事は、2025年3月に開催したウェビナー講演を再編集しています。
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