お客さま
株式会社デンソーウェーブ
従業員規模
1,001〜5,000人
業種
製造
制御機器製品や産業用ロボット、IoT製品、QRコードなど幅広い事業を展開する株式会社デンソーウェーブ。同社はQRコードを軸としたソリューション(Qプラットフォーム)にクラウド基盤を活用する中で、そのクラウドメリットを最大限に引き出すための取り組みを続けていました。運用負荷を抑えながら、より迅速に顧客ニーズに応える方法を追求する中で、クラウドネイティブ・アプリケーションプラットフォーム(CNAP)を導入。セキュリティや品質を確保しながら、短期間での開発・リリースが可能な環境を実現しました。
定量的な数値効果
リリース回数
年間3~4回→年間10回
DECSSYクラウド版のデプロイ
0.5人月→1~2時間
「これまでソフトバンクと言えばネットワークのイメージでしたが、クラウド技術も対応できるのだと分かりました。AIやDXについても、困りごとはまずソフトバンクに相談すればいいと感じています」
株式会社デンソーウェーブ ソリューション事業部
技術1部 開発室 開発2課 副主任 宇陀 祐也氏
株式会社デンソーのグループ企業として、非車載領域に特化して事業を展開する株式会社デンソーウェーブ。QRコードやRFIDなどのコア技術や、ハンディリーダーなどのハードウェアを組み合わせ、顧客の課題を解決するソリューションを提供しています。
物流倉庫や製造現場における物品管理、店舗でのキャッシュレス決済、オフィスの入退管理システムなど幅広く展開する中の一つが、QRコードを軸とした総合ソリューション「Qプラットフォーム」です。Qプラットフォームは、一般的なQRコードに加えて、デンソーウェーブの多様な独自QRコードを生成でき、エンターテインメント業界をはじめQRコードを大規模に活用する企業への導入が進んでいます。
Qプラットフォームはクラウドで提供していますが、構成が複雑化しており、お客さまに新規機能を提供するまでに時間を有し、運用に手間がかかる状態だったと、Qプラットフォームの運用を担う宇陀氏が語りました。
「Qプラットフォームを立ち上げた2016年はクラウドが徐々に一般化しつつあるタイミングで、手探りで環境を構築しました。必要に応じて構成変更はしてきたものの、当時の構成を踏襲しているため、現在の技術動向やニーズに照らしてやや旧来の状態だったことは否めませんでした」(宇陀氏)
ユーザー企業にサービスを安心・安全にご利用いただく環境維持をするためにかなりの手間がかかり、専任担当がその都度対応するしかありませんでした。加えて、デンソーグループとして求められる品質・運用管理のルールの順守も必要なため、新機能やバージョンアップのリリースは年3~4回が限度で、お客さまへどんどん新しい機能を使っていただきたい状況がなかなか実現できていませんでした。
「今ではInfrastructure as CodeやCI/CDも一般的になっていますが、当時は、私たちもクラウドやコンテナ技術などの知識を一通り身に付けて使い慣れてきたところで、もっと高度に活用できないかと考えていました」(宇陀氏)
知識が身に付いたとはいえ、自社だけでは限界があります。そこで、協力してくれるパートナー探しからスタート。その一つが、以前からモバイルネットワークなどの領域で取引があったソフトバンクでした。
「ソフトバンクについては、その技術力やプロジェクトの進め方を以前から高く評価していました。気軽に相談できる関係ができていたこともあり、クラウドの保守サービスやマネージドサービスも手掛けているとWebサイトを見て知ったので営業担当経由で相談しました」(宇陀氏)
「Qプラットフォームの環境を作り直しお客さまへもっと早く良いサービスを提供したい」「運用を改善したい」といった相談に対し、最初はマネージドサービスとしてデンソーウェーブのインフラ運用保守を代行するという提案がありました。これは宇陀氏にとっては予想の範囲でしたが、次の打ち合わせで新しく提案されたのがCNAPでした。
「CNAPはInfrastructure as Codeの領域にも踏み込んでいるサービスで、こちらの期待を大きく超えてきた印象を受けました。ここまでできるならかなりの課題を解決できそうだと感じました。マネージドサービスを含めてワンストップでのサポートが受けられることも決め手となり、CNAPを採用しました」(宇陀氏)
ソフトバンクのCNAPは、構成管理・バージョン管理なども含めて「パッケージ」として提供され、セルフサービスのポータルからシンプルに運用できることが特長です。これにより、Qプラットフォームの運用は大きく改善しました。
「以前は手順書に基づき『誰が、いつ、どの作業をしたのか』というエビデンスを手作業で残しながら運用作業をしていました。CNAP導入後は、バージョン管理システム『Git』による構成管理へと移行し、切り戻しなども容易になりました。構成管理の手間が大きく削減されたことで、品質を満たすために必要な工程も高速化できました。アップデートのリリース頻度も上がり、以前は年間3回程度だったものが現在では10回にまで増えています」(宇陀氏)
Qプラットフォームと同様の課題を抱えていたのが、食堂自動精算システム「DECSSY(デクシー)」でした。これは、キャッシュレス決済を活用した無人レジによる自動精算サービスで、これまで顧客企業のオンプレミス環境に構築する形で提供していたものをクラウドサービス化すべく、検討していました。DECSSYのサービス企画を担当する横井氏はこう振り返ります。
「社員証を用いた給与控除サービス提供のためには、お客さまの社内ネットワークに接続しなければなりません。一方、電子マネーなどで他社ベンダーと連携するため、そちらへの回線も別途確保する必要があり、構成が複雑になっていました」(横井氏)
ネットワークと同様に、アプリケーション領域もクラウドのコンテナ環境で顧客ごとにテナントを切り分ける構成を想定していましたが、難易度が高く、実現まで進まない状況が続いていました。
「そのタイミングでQプラットフォームでのCNAP導入の話を聞き、DECSSYにも展開できるのではないかということになりました。ソフトバンクからの支援もあり、思い描いていた環境を無事に実現できました」(横井氏)
コンテナ環境で顧客ごとにテナントを切り分ける構成をCNAPで実現。①は従来の構成、②はCNAP導入後の構成
CNAP導入により、想定外の成果も得られています。
「組み込みエンジニアが担当していたのですが、Web公開までの基盤部分をCNAPに任せられるため、アプリの機能開発に集中できました。これまでの方法ではサービス公開まで半月近くかかりそうな工程を、CNAPを活用するとわずか1~2時間で実現したのには驚きました」(宇陀氏)
デンソーウェーブはもともとハードウェアを中心に事業を展開していたこともあり、組み込み系やファームウェアのエンジニアが多く在籍しています。「クラウドに詳しくないエンジニアでも、標準化された手順があれば新規のWebサービスリリースまで問題なく進められると分かり、今後クラウド移行したDECSSYに付加価値として提供予定のクラウドサービスをどんどんとお客さまへ提供していくことが可能になりそうです」と宇陀氏は語ります。
「エンジニアが得意分野に集中するためにも、SaaSの“インフラ”となる部分をCNAPで標準化できたメリットは大きいです」と横井氏も同意します。
インタビュー風景
今後CNAPをよりメンバーが活用していくにあたって、マニュアル・技術TIPS、チュートリアルのさらなる充実が図られるとありがたいと語ったデンソーウェーブ。 開発室の課長として組織をまとめる森氏は、今回の取り組みをこう振り返ります。
「DECSSYはクラウド移行を機にコンテナ化しましたが、セキュリティ面の知見もなく苦戦していました。情報漏えいや不正アクセスなどに対するセキュリティを確保しながらどうやってテナントを増やすのか悩んでいたところで、CNAPのメリットは大きく、ぜひ使いたいと思ったのを覚えています。クラウドの知識不足が課題にある中で、セキュリティ面まで考慮された環境をプラットフォームとして利用できるのは魅力的でした。今後さらに、当社の他製品やサービスにこの成果を横展開していきたいですね」(森氏)
QRコードのソリューション刷新は、ほかにもいくつか進んでおり、タイミングを見てCNAPを展開する予定だと言います。
「海外からの引き合いもきており、海外リージョンへの展開もCNAPを活用して進められればと考えています」(宇陀氏)
DECSSYについても、今後は需要予測や食事が将来の健康にどう影響するかといった健康管理など、新たなトレンドを踏まえた機能拡充を考えているそうです。
「ここで必要となるAI技術についても、CNAPをベースにソフトバンクとうまく連携し、実現を目指したいです」(横井氏)
お話を伺った方
株式会社デンソーウェーブ ソリューション事業部 技術1部 開発室 開発2課
課長 森 泰樹 氏
株式会社デンソーウェーブ ソリューション事業部 技術1部 開発室 開発2課
副主任 宇陀 祐也 氏
株式会社デンソーウェーブ ソリューション事業部 事業戦略企画部 商品企画室
担当課長 横井 文彦 氏
クラウドネイティブ・アプリケーションプラットフォーム(CNAP)とは標準化されたアプリケーション実行環境を手軽に利用できるサービスです。リリースプロセスを自動化し、開発者自身がセルフサービスで実行環境を準備できるようになります。
MSP(Managed Service Provider)サービスは、クラウド導入から運用・保守・監視・活用方法までをソフトバンクのエンジニアがトータルサポートします。お客さまの運用負荷を軽減し、クラウド利用を促進します。
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