5G を活用したサイネージ広告のイノベーションに挑戦! 広告配信機能搭載モビリティの実証実験

ソフトバンクの5Gコラム-5G を活用したサイネージ広告のイノベーションに挑戦! 広告配信機能搭載モビリティの実証実験

目次

縮む屋外広告市場

2020年の我が国の総広告費は6兆1594億円。そのうち、看板や街頭ビジョンなどのいわゆる「屋外広告」は2715億円、前年比84.3%と言う大幅ダウンでした。新型コロナの感染拡大による外出自粛の影響をもろに受けた格好です。(株式会社電通「2020年 日本の広告費」より)屋外広告は、人が集まる場所に設置する、あるいは人目を惹くようなコンテンツを掲げて人を集めないと宣伝効果は限られます。しかし、このコロナ禍においては、人は密に集まらないし、人を密には集められない。では、密ではないターゲットに、効率よく屋外広告を認知させるにはどうするのか?「もう、屋外広告の方から、ターゲットに近づいていくしかない!」と冗談のように話していたことが、本当に実現する可能性が出てきたのです。

検証実験開始

 ソフトバンクの5Gコラム-広告配信機能搭載モビリティの実証実験開始

人を避けながらATC館内を走行するロボット

公益財団法人大阪産業局は、株式会社ロボリューション、株式会社フツパー、株式会社TOMORROW、そして、ソフトバンク株式会社の共同グループによる「5Gを活用した広告配信機能搭載の自動運搬ロボットの機能検証」を、2021年12月19日から12月25日まで、大阪・南港の複合商業施設「ATC・アジア太平洋トレードセンター」にて実施し、12月21日にメディアに向けたデモ体験会を開催しました。
実験の概要はこうです。株式会社ロボリューションが開発した「荷物用自動運搬ロボット」の両側面に約30インチの4Kモニタが設置され、そこに5Gを使ってインターネット経由でATC内店舗の広告が配信されます。このロボットには、1度実際に走行させるだけで空間形状と自己位置を記憶する機能「メモリトレース機能」が組み込まれていて、施設内の決められたルートを、障害物を回避しながら自動的に巡回します。 そして、モニタの上部にはカメラが設置され、そのカメラが撮影する映像を、株式会社 TOMORROW と株式会社フツパーが共同開発しているデジタルサイネージ検証サービス「MIWATASUシステム」を使って、ロボットから約3メートル以内の視聴者数や、性別、年齢などの属性把握を行います。そのサイネージを見たか、見ていないかは、顔の角度で判断します。そうしたデータに広告提供店舗への送客数を組合せることで、広告効果を測定すると言うものです。
これまで、固定式のサイネージではこうした効果測定を行うことはありましたが、“動くサイネージ”で実施するのは、この会社では初めてのこと。

株式会社ロボリューション(代表取締役:小西 康晴氏)

株式会社ロボリューションの小西康晴代表取締役は、「今回の実証実験で、移動体にサイネージが付いた場合にどんな効果が生まれるのかを見極め、今後、自動運搬ロボットと、デジタルサイネージを組み合わせた広告配信サービスの実用化を目指していきたい」と意気込みます。と言うのも、「人」「モノ」を自動で移動させるソリューションのベースは完成した。その次に動かすべきは「情報」。すなわち何某かの「付加機能」を付けていきたいと言う思いがあるからです。 「5G環境を有効に活用して、既に存在している様々なサービスをモビリティに取り込んでいきたい。そうすることで、新たなイノベーションが必ず生まれると信じています」。
小西康晴代表取締役は、熱くそう話しておられました。

ソフトバンクの5Gコラム-株式会社ロボリューション(代表取締役:小西 康晴氏)

広告提供店舗 SCANTEAK南港ATC店(中村 憲史氏)

ソフトバンクの5Gコラム-広告提供店舗 SCANTEAK南港ATC店(中村 憲史氏)

チーク材の天然木だけを扱う家具専門店「SCANTEAK」南港ATC店の中村憲史さんは、この実証実験の話を聞いてまず思ったのは、「面白そうだな」と言うことだったそうですが、実際に実験の様子を見て、さらに期待が膨らんだそうです。
「何と言っても(サイネージが)動いていることが珍しいですよね。まず、このロボットを見てもらう。それから、映像、音に興味を持ってもらい、広告を見てもらう。そして、そこからお店に集客出来ればと言う期待がありますね。今後は様々なショッピングモールで展開出来れば、面白いんじゃないでしょうか」
ただ、課題もあるとも言います。
「広告動画を作るのが難しい。と言うのも、動くものに動画を掲載したことがないから。どう言う風に目を惹かせて、どう言う風に訴求していくか、そのあたりは、今後考えていかねばならないと思いますね」 実際、今回の実証実験では、2種類の動画を流しています。一つは、画面が切り替わるタイミングが早いものと、もう一つは、比較的遅いもの。どちらの動画の視聴率が高くなるのか?それも、結果が出てきます。今後の動画作りに、大いに参考になるはずです。

ソフトバンクの5Gコラム-5G を活用したサイネージ広告

今回の実証実験では、画面の切替えタイミングを変えた2種類の動画を作成

株式会社TOMORROW(代表取締役:津川 大輔氏)

ソフトバンクの5Gコラム-株式会社TOMORROW(代表取締役:津川 大輔氏)

株式会社TOMORROWの津川大輔代表取締役は、まず、デジタルサイネージ検証サービス「MIWATASUシステム」開発の経緯をこう説明します。
「これまで、デジタルサイネージの効果の可視化がまったく出来ていなかった。そこで、その効果を可視化することによって、オフライン広告の価値の創造をしていきたい」と。
確かに、これまで観光地などに設置されたサイネージにこのシステムは導入されていますが、今回のように“動くサイネージ”に設置されるのは初めて。 「どのような結果が出るのか、まだ分からないが、いずれにせよ可視化すると言うことは重要で、そう言う意味からも、この実証実験の意義は大きい」と話しておられました。

ソフトバンクの5Gコラム-動くサイネージ広告

4Kモニタ上部に簡易なウェブカメラを搭載し、荷台に設置したマイクロコンピュータで約3メートル以内の人の動態を把握

ソフトバンクの5Gコラム-デジタルサイネージの効果

瞬時に広告を見たか見ていないかを判断し、視聴者数、性別、年齢などの属性把握を行う

デジタルサイネージが初めて登場したのは、1970年代後半から1980年代にかけてのこと。アメリカのアパレルショップが店頭に置いたテレビでファッションショーの映像を流したことが始まりと言われています。既に今から50年も前のこと。それが、21世紀に入り、2007年頃からは毎年のように「デジタルサイネージ元年」と言われてきましたが、定着こそすれ、爆発的に活用されるまでには至っていません。それは、なかなか効果検証が難しかったから、と言う側面があります。そのサイネージが、効果検証システムと言う武器を手に、文字通り「動き出し」ました。今回の実証実験から、新たなイノベーションが起きる可能性が出てきました。