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ソフトバンクアカデミア 「孫 正義×柳井 正(ファーストリテイリング社長) 特別対談『志高く』」を開催

2012年9月19日、ソフトバンクアカデミアの特別講義として、ソフトバンクグループ代表の孫 正義と、カジュアル衣料品ブランド「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリング(以下「ファーストリテイリング」) 柳井 正代表取締役会長 兼 社長の対談が、東京都中央区のロイヤルパークホテルにて開催されました。会場には、ソフトバンクアカデミアの現役生徒のほか、2013年4月入校を希望する外部の候補者の中から、抽選で選ばれた約1,500人が詰め掛けました。

日本沈没の恐れあり

ソフトバンクアカデミアは、ソフトバンクグループの代表である孫の後継者を発掘、育成する場として2010年に開校しました。このたび、ソフトバンクアカデミアの生徒の要望に応えた特別講義として、校長を務める孫とファーストリテイリング 柳井社長の対談が行われました。

大きな拍手の中、ステージに登場した孫と柳井社長。着席するや否や孫は、柳井社長の最新著書「現実を視よ」(出版社:PHP研究所、2012年9月21日発売)を手に取り、「素晴らしい本ですね。『竜馬が行く』は私のバイブルですが、経営者が書いた本の中では、一番感動しました」と、感想を述べました。日本の現状を踏まえ、将来を強く危惧している柳井社長は、本書の中で、「国家・企業・個人が今、何をなすべきか」を、身を賭して説いています。「この本の中で、特に強調したことは?」という孫の質問に対し、柳井社長は、「『現実を見て、理想を持つこと』です。

今の政治家や若者たちは元気がない。今は本当に苦しい時期。でも、苦しいときほど理想を持つことが必要だと思います。このままだと日本は沈没するかもしれない」と返答。孫も、「本当に心配ですよね。10年後、20年後、国力が急降下する予感がします」と、日本の未来を危惧しました。

事業展開に国境はない

次に2人の話題は、「海外展開について」に移行しました。海外展開を推し進め、次々と海外で出店しているユニクロ。ファーストリテイリング社内では、公用語として英語が使われています。「これは皆さんに言いたいのですが」と口を開いた柳井社長は、「日本では、日本語が話せないと商売ができない。でも、今は経済に国境がありません。日本でも英語が話せないと、将来ビジネスができなくなる。ですから皆さん、ぜひ英語を勉強してください。英語はビジネスの道具です」と、英語の重要性を訴えました。

他方孫は、海外で商品を展開することについて、「これからは世界に打って出るものを作らないと、商品の生産量が増えない。ボリュームがなければ部品の調達費用が高くなり、価格を抑えられない」と言及しました。これに対し柳井社長は、「日本の技術は少量生産で芸術作品。一部の人にしか理解できない芸術作品を作ってその技術の高さを自慢するが、それはお客さまにとっては関係ない。世界で商売がうまい人たちは、消費者のニーズがどこにあるのかをよく知っている。世界で売れるものは、百点満点のものだけ」と、海外展開における自身の価値観を披露しました。

良い経営者の条件とは

続いて孫と柳井社長は、「良い経営者」について、互いの見解を述べ合いました。柳井社長は、「良い経営者は、良い経営方法の原理原則を体得している。そして実行力がある。特に若い人に注意してもらいたいことは、知っていることとできることは、全く違うということ。知っていても、実行できなければ意味がない」と話しました。その上で、「実行は1人ではできない。ビジネスは団体競技。経営者は才能がなくてもいいのです。自分の強いところを生かせばいい。弱いところは他の人が、いくらでもカバーしてくれる。

大切なことは、皆の力を結集して、全体を包括すること」と、良い経営者に求められる素養を語りました。孫は共感しつつ、「正しい方向を見極める力と、そこに向かって統率する力も必要ですね」と、補足しました。

さらに柳井社長は、「経営者は、成功のビジョンを語れないといけない。加えて、世界一を目指そうとする志が必要。『ユニクロ』は世界一の服屋になろうと考えています。何をするにしても、圧倒的に1位でないと、その事業をやる意味はないと思う。その目標を経営者が公表しない会社は、面白くもなんともない」と、世界規模のビジョンを掲げる意義を強調しました。

孫と柳井社長いわく、経営者にとって経営能力以上に重要なものは、「物事に対する集中力」「負けたくないと思う執着心」、そして「信用」。この信用について、柳井社長は、「経営のスタイルは、それぞれ違っていいと思う。でも、自分が大事にすることは、首尾一貫していないといけない。経営者にとって、信用は不可欠。従業員に『この人についていこう』と思われるためには、人間についてよく知っている必要がある。人を見る目を持たない限り、経営者は無理」と、断言しました。

最後に柳井社長から、経営者を目指す会場の皆さんに向けて、激励のメッセージが送られました。
「皆さんも僕も、いずれにせよ死ぬ運命にあります。だからこそ生きている間に、『これは自分がやった』というものをぜひ作ってもらいたいと思います。ビジネスは、どんな趣味、スポーツよりも面白い、人間を対象とした総合芸術です。それも自分だけではなく、従業員全員と演じることができます。」

終了予定時刻を超えてしまうほど、盛り上がりを見せた今回の対談。「今日はすごく楽しかった」と、孫は笑顔で柳井社長と握手を交わし、特別講義は幕を閉じました。

(掲載日:2012年10月15日)